『鉄板スポーツ伝説』:2007、アメリカ

1986年にシェイ・スタジアムで開催されたMLBワールドシリーズのボストン対ニューヨークの試合。ボストンのコーチであるランボー・フィールズは、試合中にも関わらず一塁手にクロスワードクイズの答えを尋ねた。そのせいで一塁手がボールをトンネルし、ボストンは試合に敗れた。NASCARのコーチを務めたランボーはサーキットに食べ終わったバナナの皮を放り投げ、チームの車を転倒に追い込んだ。2006年、サッカーのワールドカップ決勝のイタリア対フランス。ランボーはイタリアの交代選手にジダンを侮辱する発言を指示し、ピッチに送り込んだ。指示に従った選手は、ジダンの頭突きを食らった。
どのチームでコーチを務める時にも、ランボーの隣には盟友のフレディー・ワイズマンがいた。やがて時が過ぎ、フレディーはランボーと再会した。ランボーはコーチの仕事を離れた後、競争馬の血統を守る仕事に就いていた。フレディーはテキサスのプレーンフォークにあるハートランド州立大学でフットボールのヘッドコーチを探していることを話し、また一緒に仕事をしないかと誘う。しかしランボーは「今の仕事に誇りを持っている」と言い、その話を断った。
帰宅したランボーは、フレディーからカレッドフットボールのヘッドコーチに誘われたことを妻のバーブに語る。「断ったよ」と彼は言うが、「コーチ業はフィールズ家の伝統でしょ」とバーブが復帰を勧めると簡単に考えを変えた。バーブは「コーチ業にのめり込み過ぎて家族のことを忘れないでね」と釘を刺すが、早くもフレディーは娘のミシェルの存在を忘れていた。警察からの連絡を受けたフレディーとバーブは、ミシェルが器物損壊や強盗など数件の罪状で逮捕されたことを知った。ミシェルは裁判に掛けられ、スポーツ判事から体操のアメリカ代表に復帰するよう命じられた。
フィールズ一家はプレーンフォークへ引っ越し、ランボーはハートランド州立大学のヘッドコーチに就任した。ランボーはグラウンドへ行き、フットボール部員のランディーやバディー、アシール、アイポッド、トロッターたちと会った。ランディーやアイポッドは全く役に立ちそうになく、チームにはQBもキッカーもいなかった。ランボーは野球部のランス・トルーマンがQBの逸材だと知り、ピッチング練習を終えた彼に声を掛けた。ランスは父親から野球に専念するよう言われており、ランボーの誘いに迷惑そうな表情を浮かべる。しかしランボーは父親と話すことを承諾させ、彼の家を訪れた。トルーマンと会ったランボーは、ランスがファンブルを繰り返していたことを聞かされる。ランスは父を説得し、フットボール部への復帰を認められた。
ランボーはバディーから、キッカーとして女子サッカー部のジズミンダー・フェザーフットを推薦される。ジズミンダーのシュートを見たランボーが勧誘すると、彼女は「保守的な両親には内緒にしてほしい」と入部の条件を付けた。ランボーはロッカールームに選手を集め、全員の成績が優秀であることを叱責する。彼は契約書を回し、授業をサボって成績を下げるよう要求した。ホルヘが反発すると彼は「俺のやり方が気に入らなければガツンとやれ」と挑発し、頭突きを食らって倒れ込んだ。
ミシェルは体操の代表チームに復帰して練習に参加し、小遣い稼ぎで洗濯係のアルバイトをしているランスと知り合った。ランスは好意を抱いてデートに誘うが、トロッターと付き合っているミシェルは断った。ランボーは「カムバックス」と呼ばれるチームに練習を積ませ、美容室へ赴いて支援者の面々に挨拶した。カムバックスはボーナー州立大学のトロージャンズとの初戦に挑むが、第1Qを終えて0対17と大差を付けられる。トロッターは遅刻してミシェルと一緒に現れるが、悪びれた様子を見せなかった。ランボーは「ベンチに座ってろ。出番は無い」と言うが、トロッターを欠いたカムバックスはアシールの負傷もあって0対83で大敗した。
帰宅したランスがボールをファンブルしないための個人練習を積んでいると、ミシェルが訪ねて来た。ランスとミシェルは、スポーツ馬鹿の父親に育てられる苦労を語り合った。ミシェルはランスとキスを交わすが、「やっぱり私には彼氏がいる」と部屋を去った。ランスはロッカールームでトロッターを挑発し、喧嘩が勃発した。他の選手たちも加わって乱闘になるとランボーが現れ、チームとして1つになるよう説いた。チームは一致団結し、タイタンズとの試合に挑んだ。同点で迎えた終了直前、ランスのロングパスをキャッチしたホルヘのタッチダウンでカムバックスは勝利した。
ランボーは選手たちに、勝利を祝って町で遊ぶよう促した。彼は自宅でパーティーを開き、選手たちを招いた。ランスはミシェルと2人になって「チャンスが欲しい」と自分の気持ちを訴えるが拒絶された。ランスやバディーたちが集まって勉強していると、ランボーは「酒を飲んで羽目を外せ」と要求する。彼はビールを飲んでドラッグを吸い、服を脱ぐ。警官が来ると彼は挑発するが、逮捕されてテキサス州立刑務所に収監された。ランボーはフレディーに連絡し、保釈を頼む。しかしフレディーはローンスター州立大学の「アンビータブルズ」でヘッドコーチをしていると明かし、「だからアンタをカムバックスのヘッドコーチに据えて、ボロボロにしてもらうことにした」と企みを教えた。ランボーは脱獄し、カムバックスは勝利を重ねてカンファレンス決勝に進出する…。

監督はトム・ブレイディー、原案はジョン・アブード&マイケル・コルトン&アダム・ジェイ・エプスタイン、脚本はエド・イェーガー&ジョーイ・グティエレス、製作はピーター・エイブラムス&アンドリュー・パネイ&ロバート・L・レヴィー、製作総指揮はアダム・F・ゴールドバーグ、共同製作はローラ・グリーンリー&ケヴィン・サッベ&マイク・シュレイバー、撮影はアンソニー・B・リッチモンド、美術はマーク・フィジケラ、編集はアラン・エドワード・ベル、衣装はサルヴァドール・ペレス、音楽はクリストファー・レナーツ、音楽監修はバック・デイモン。
出演はデヴィッド・ケックナー、カール・ウェザース、メロラ・ハーディン、マシュー・ローレンス、ブルック・ネヴィン、ニック・サーシー、ジョージ・バック、ノーリーン・デウルフ、ジェシー・ガルシア、ジャッキー・ロング、ロバート・リチャード、マーティン・スパンジャーズ、ジャーメイン・ウィリアムズ、フィネッセ・ミッチェル、ウィル・アーネット、ダックス・シェパード、ブラッドリー・クーパー、ジョン・グライス、アンディー・ディック、エリック・クリスチャン・オルセン、フランク・カリエンド、ステイシー・キーブラー、ドリュー・ラシェイ他。


『ホット・チック』のトム・ブレイディーが監督を務めたパロディー映画。
脚本はTVシリーズ『ロザンヌ』『ダーマ&グレッグ』のエド・イェーガーと『ドリュー・ケリー DE ショー!』『クリストファー・ベリー』のジョーイ・グティエレスによる共同。
ランボーをデヴィッド・ケックナー、フレディーをカール・ウェザース、バーブをメロラ・ハーディン、ランスをマシュー・ローレンス、ミシェルをブルック・ネヴィン、ランスの父をニック・サーシー、バディーをジョージ・バック、ジズミンダーをノーリーン・デウルフ、ホルヘをジェシー・ガルシア、トロッターをジャッキー・ロング、アシールをロバート・リチャード、ランディーをマーティン・スパンジャーズ、アイポッドをジャーメイン・ウィリアムズ、タイタンズのコーチをフィネッセ・ミッチェルが演じている。

荒唐無稽な映画だから、そういうトコを指摘するのは違うのかもしれないけど、どうしても「同じ人物が全くジャンルの異なるスポーツで監督とコーチを務めている」という設定に引っ掛かってしまう。
「スポーツのパロディー」という企画だから色んなスポーツを見せなきゃいけないし、だからそういう無理のある設定になっているのは分からんでもないのよ。ただ、色んなスポーツのネタを描くにしても、そのコーチじゃない設定で何とか出来なかったのかと。
パロディーとしてのネタを楽しむことよりも、そこの強引さが気になってコメディーに入り込めないのよ。
しかも主人公だけじゃなくて監督まで一緒って、幾ら荒唐無稽でも、やり過ぎじゃないかと。これまで何度もヘマをしているのに復帰の誘いが来るってのも、無理があるし。
そこに「こういう理由が」という設定は無いしね。

ちなみにワールドシリーズとワールドカップのシーンは、ちゃんと事実に即した内容になっている。
実際のワールドシリーズではボストン・レッドソックスがニューヨーク・メッツと対戦し、3勝2敗で第6戦を迎えた。
延長10回の時点で2点をリードしていたが同点に追い付かれ、最後は一塁手のビル・バックナーがトンネルしてサヨナラ負けを喫している。
このシーンでビル・バックナーが本人役を演じているってのが、このシーンの大きなポイントだ。

2006年のワールドカップ決勝戦では、イタリアのマルコ・マテラッツィー(途中交代で入ったわけではなくスターティング・メンバー)がフランスのジネディーヌ・ジダンに侮辱的な発言を浴びせ、頭突きを食らっている。ただ、これによりジダンは退場となり、イタリアはPK戦を制して優勝しているのだ。
この映画でも「ジダンがイタリア選手に頭突きをする」という形なので、それを指示したランボーを「史上最低のコーチ」と評するのは少しズレているでしょ。それで相手を退場に追い込んでイタリアが優勝したのなら、それは「チームを勝利に導いた」と捉えることも出来るわけでね。
だからホントにパロディーとして描くのなら、「結果としてイタリアが負けました」というトコまで見せなきゃ中途半端なのよ。
あと中途半端と言えば、NASCARのエピソードだけ元ネタが無いのもダメだろ。

パッと思い付いたのは、主人公をスポーツジャーナリストやスポーツカメラマンという設定にする方法だ。
そうすれば、様々なジャンルのスポーツ現場に赴くことが出来る。そのスポーツに参加していなくても、彼を使ってパロディーを描くことは難しくない。
本人をネタの発信源として使わず、「滑稽なことが起きるのを見ている」という立場でもいいわけだし。
それに、ランボーが久々にコーチ業に復帰してからは基本的にアメフトのネタしか使えなくなるので、そういう意味でも「コーチ」という設定がプラスとは思えない。

バーブはフレディーがヘッドコーチの誘いを断ったと知り、「貴方にはコーチの血が流れてる。コーチ業はフィールズ家の伝統でしょ」と言う。どうやらフィールズ家は先祖代々、ずっとコーチの仕事をやってきたらしい。
だけど、そういう設定があるなら、先祖代々のコーチとしての経歴をザックリと描写すべきでしょ。
ホントはミッシェルの台詞より先に描いておくべきだけど、そこで「こういう血筋です」ってのを説明しても遅くはない。でも、そこの説明は何も無いのだ。ただ台詞でサラッと触れているだけなのだ。
それだと全く設定の意味が無いぞ。ただランボーが「とにかくコーチが好き」というだけでも全く変わらないぞ。

そろそろパロディーを中心にした解説を始めよう。
コーチ業を離れたランボーは種牡馬の精子を採出する仕事をしているが、担当する馬の名前がシービスケット。映画『シービスケット』の題材になったサラブレッドだ。
不良娘のミシェルは体操復帰が判事に命じられるのは、『スティック・イット!』のパロディー。
カムバックスのヘッドコーチに就任したランボーは、まだプレーを見ない内から「俺には才能を見抜く力がある」と言って3人にクビを通告する。ここでクビを言い渡されるのは、元NFL選手のエリック・ディッカーソン、マイケル・アーヴィン、ローレンス・テイラー。

フットボール部員のランディーは線が細くて体が小さく、ランボーは使えないと感じてタオル係に任命する。このランディーのキャラは、『ルディ/涙のウイニング・ラン』のパロディー。
アイポッドはオツムが弱く、ランボーの足に抱き付いてヘコヘコと腰を振ったりする。このキャラは『僕はラジオ』のパロディー。
いずれも実話が基になった作品だ。
後者なんかは知的障害者が主人公の感動ドラマだけど、それを茶化すんだから、なかなかの意地の悪さである。

QBがいなくてランボーが困っていると目の前にトウモロコシ畑が広がり、天から「それを作れば彼は来る」という声が聞こえる。これは『フィールド・オブ・ドリームス』が元ネタ。
ジズミンダーはインド系の衣装を着たまま強烈な角度で曲がるシュートを放っているが、彼女のキャラは『ベッカムに恋して』のパロディー。
初戦に敗れたランボーは家でビデオを見ながら「分析している」とバーブに言うが、映写機で再生しているのはゲイのハードコアポルノ。
ランスが父親の指令でガムテープを両手に巻き付けてボールを固定しているのは、『プライド 栄光への絆』のパロディー。

途中で何度か挿入されるスポーツニュースでは、まずマリア・シャラポアとビーナス・ウィリアムズの試合について触れる。ビーナスはマッチョな男で、強烈なサーブを受けたシャラポアは服が弾け飛んで下着姿になるがポーズを取って写真撮影に応じる。
次のニュースでは、『ロッキー』のロッキー・バルボアが93歳で現役復帰したことに触れる。歩行補助器を使っているジジイのロッキーは、一発のパンチを食らって消滅する。
選手たちがロッカーで喧嘩をすると、ランボーはチームとして1つにまとまるよう諭す。すると選手がJourneyの『Don't Stop Believin'』を歌い出し、ミュージカルシーンになって1つになる。
タイタンズとの試合前、ランボーはボビーという重病の少年から手紙を貰ったことを選手たちに話す。彼は「ボビーの最後の願いは、タイタンズが勝つことだ。そんな願いを叶えてやるか」と言い、チームは盛り上がる。このシーンは、『タイタンズを忘れない』が元ネタ。
タイタンズのコーチは選手たちに「色んな肌の色の選手がいる。だが、フィールドに立てば白も黒も無い。俺たちは家族だ」と言うが、黒人選手だけを起用して白人には侮辱的な言葉を浴びせる。

タイタンズに勝利した後、カムバックスはホームパーティーで盛り上がる。ここにミシェルは水着姿でサーフボードを抱えて現れるが、このシーンは『ブルークラッシュ』のパロディー。
ランボーがテキサス州立刑務所に収監されると、刑務所長が来て「釈放してほしければバスケで勝負しろ」と要求する。強気に出たランボーだが、相手がデニス・ロッドマンだと知って「保釈を待つことにする」と口にする。
ランボーが脱獄して最初の対戦相手は「Friday Night Lights」というチーム名だが、これは同名のTVドラマから。
ランボーは「多くのドラマが繰り広げられるだろう。リックは禁酒を破って再び酒を飲み始め、ライラはジェイソンを裏切ってティムと関係を持つ」などと語り、相手が色んな問題を起こしたってことでカムバックスは不戦勝になる。

カンファレンス決勝の相手であるアンビータブルズは犯罪者揃いだが、これは『ギャングスターズ 明日へのタッチダウン』のパロディー。
ハーフタイム・ショーでは「ジャネット・ジャクソンとジャクソン・ティンバーレイクは来ていないが、代わりに古き良きアメリカを一緒に楽しみましょう」という前置きの後、「古き良き4人家族」のミュージカルシーンが始まる。父親役は元98ディグリーズのドリュー・ラシェイ(ニック・ラシェイの弟)、母親役は元WWEディーヴァのステイシー・キーブラー。
途中で父親が母親の上着を脱がし、母親はセクシーなガーター姿で踊る。優勝したランボーがバーブの名前を呼び、バーブが駆け寄って抱き合うのは『ロッキー』。
でもカール・ウェザースを起用しているのに、『ロッキー』のパロディーには絡ませないのね。

(観賞日:2020年8月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会