『ターミネーター:新起動/ジェニシス』:2015、アメリカ

ミサイル防衛システムのスカイネットは、人類を守るはずだった。しかし1997年8月29日、起動したスカイネットは人類をシステムの敵とみなし、世界各地を核ミサイルで攻撃した。30億の人類が死亡し、生き残った者は「審判の日」と呼んだ。それから10年間、生存者は身を潜めて過ごした。機械軍に見つかった者は、収容所へ連行されて殺害された。少年のカイル・リースは殺人マシン「ターミネーター」に追われ、必死で逃亡した。そこへ抵抗軍を率いるジョン・コナーが現れてカイルを救い、仲間に引き入れた。
成長したカイルは、スカイネットの壊滅を目指すコロラドの突入部隊への参加を志願した。しかしジョンはロサンゼルスに残るよう指示し、スカイネットが格納庫に最終兵器を隠していると教える。ジョンが指揮する部隊は、機械軍を壊滅に追い込んだ。しかし機械軍は既に、最終兵器である時間転送装置を使っていた。ターミネーターのT-800はジョンの母であるサラを抹殺するため、1984年のロサンゼルスへ転送されていた。
カイルは1984年へ行く任務を志願し、ジョンから「昔の母は何も知らないし、まだ戦士じゃない。お前が必要だと認識していない」と説明を受けた。転送装置に乗ったカイルは、ジョンの背後から何者かが襲い掛かる様子を目にした。カイルは慌てるが、装置が作動しているため、どうすることも出来なかった。転送されている最中、ジョンは少年時代に父からコンピュータのジェニシスを誕生日プレゼントにもらったことを思い出す。すると、少年時代の自分が「ジェニシスがスカイネットだ。起動すると審判の日が始まる。その前に殺せ」と語り掛けて来た。困惑する中、カイルは1984年のロサンゼルスに到着した。
全裸のT-800が街を歩いていると、中年姿のT-800が現れる。中年T-800はT-800を攻撃するが、格闘の影響で右腕が動かなくなる。しかし何者かがT-800に銃弾を浴びせ、動きを止めた。カイルはホームレスのスボンを盗んだ直後、警官に見つかって逃げ出した。その警官はT-1000の本性を現し、カイルを追い詰める。カイルは警官のガーバーと新人のオブライエンに逮捕されるが、そこへT-1000が現れる。彼はガーバーを殺害し、カイルとオブライエンは逃走した。
そこへサラが駆け付け、カイルをトラックに乗せて脱出した。サラはT-1000のことも、カイルが抵抗軍のジョンに送り込まれたことも全て知っていた。動揺するカイルに、彼女は「全てが変わったの。貴方が知っている1984年は存在しない」と告げる。サラは「私を殺すために贈られたターミネーターは2人で倒した」と言い、後ろに乗っていた中年T-800を紹介しようとする。早合点したカイルが攻撃しようとしたので、中年T-800は彼を殴って気絶させた。
意識を取り戻したカイルに、サラは中年T-800から全ての情報を教わったと説明する。中年T-800はサラの守護神として、彼女が9歳の頃から見守って来たのだ。だが、誰が守護神をサラのために送り込んだのか、そのファイルは抹消されていた。T-1000がパトカーで追って来たため、サラとカイルは発砲した。T-1000はトラックに飛び移ろうとするが、カイルがパトカーを撃って爆破した。3人は廃工場に入り、サラは「考えがある」と言う。彼女は守護神に手伝ってもらい、トラックに積んでいたT-800を運び出した。
カイルはサラに、「転送の時、ジョンが襲われた。たぶんターミネーターだ。死んだかどうかは分からない」と話した。そこへT-1000が飛び込み、守護神の動きを止めてからT-800を再起動させた。カイルはT-800を感電させ、その首を切断した。サラは地下通路に逃げ込み、追って来たT-1000の体を溶かす。そこへ守護神が駆け付け、T-1000を捕まえて息の根を止めた。サラと守護神は、カイルに時間転送装置を見せた。しかし作動させるには未来のチップが必要だったため、この日を待っていたのだ。
守護神はT-800のチップを時間転送装置に取り付けるが、使えるのは1度だけだった。守護神はスカイネットを止めるため、1997年にサラを向かわせようとする。カイルは2017年の10月へ向かうべきだと主張し、「13歳の誕生日の記憶から、メッセージを貰った。ジェシニスがスカイネットだ。それが起動する2017年10月、審判の日が始まる」と説明する。守護神は「その少年は別の時間軸の君だ」と言い、サラは1997年へ向かおうとする。カイルはチップを取り外し、自分を信じるよう訴えた。
サラとカイルは時間転送装置を使い、2017年のサンフランシスコへ移動した。2人は守護神と合流できないまま、警察に捕まって病院へ移送される。カイルは守護神への不信感を抱いて「君には知らない指令があるのかも」と言うが、サラは「私は彼に育てられた」と反発した。刑事のマシアスとチャンが病院に到着すると、オブライエンが来て「あの2人は1984年から来た」と言う。彼は30年前からロボットと遭遇したことを訴え続けていたが、誰にも信じてもらえずにいた。
マシアスとチャンはオブライエンを無視し、サラたちの病室へ赴いた。サラとカイルは担当の医師がジェニシスについて話すのを聞き、詳しい情報を知ろうとする。だが、そこへマシアスとチャンが来て、医師を退室させた。カイルは2人から、2ヶ月前に警察の逮捕記録があること、両親が指紋を登録させたことを聞かされる。そこへオブライエンが現れ、サラたちに「覚えてないか?ロスで警官をしてた」と告げて協力を申し出た。刑事たちが出て行った後、病室にジョンが入って来たので2人は驚いた。
サイバーダイン社のダニー・ダイソンはテレビに出演し、開発したジェニシスについて語っていた。サラとカイルはジョンに連れられ、病院を抜け出そうとする。しかし駐車場に守護神が駆け付け、ジョンに銃弾を浴びせた。サラは激しく抗議するが、ジョンが平然と立ち上がる。彼は人間ではなく、ターミネーターだったのだ。ジョンは「私が2014年に送られたのは、スカイネットを守るためだ。24時間以内に審判の日が始まる」と言い、一緒に来るようサラとカイルを誘う。サラたちは拒絶し、守護神は2人を殺そうとするジョンと戦う。サラとカイルはMRIの磁力でジョンの動きを止め、損傷した守護神を連れて病院から脱出した。
守護神はサラとカイルに、スカイネットがジョンをターミネーターへ変えたのだと説明した。カイルが元に戻す方法を尋ねると、彼は「無理だ。体が細胞レベルで変化している」と告げた。カイルは「何か方法があるはずだ」と反発するが、サラは「もうジョンは人類の救世主じゃない。彼はスカイネットよ」と述べた。一方、ジョンはサイバーダイン社へ赴き、ジェニシス開発への協力をダニーの父であるマイルズから改めて感謝される。ダニーはジョンと共に、時間転送装置の開発を行っていた。
守護神は秘密の武器倉庫へサラとカイルを案内し、サイバーダイン社へ乗り込む準備を整える。そこへジョンが現れ、「誰もスカイネットは止められない」と勝ち誇った態度で言い放つ。サラとカイルはジョンを撃ち、守護神と共にスクールバスで出発する。だが、バイクを走らせたジョンが追い付き、3人に襲い掛かる。3人は金門橋でジョンと戦い、バスごと落下させる。しかし警官隊に包囲されたため、逮捕されることを選択した。彼らは警察署で事情聴取を受けるが、そこへチャンに化けたジョンが現れる…。

監督はアラン・テイラー、脚本はレータ・カログリディス&パトリック・ルシエ、製作はデヴィッド・エリソン&デイナ・ゴールドバーグ、製作総指揮はビル・カラッロ&レータ・カログリディス&パトリック・ルシエ&ミーガン・エリソン&ロバート・コート、製作協力はシャリ・ハンソン、撮影はクレイマー・モーゲンソー、美術はニール・スピサック、編集はロジャー・バートン、衣装はスーザン・マシスン、第二班監督&オープニング演出はアレクサンダー・ウィット、視覚効果監修はジャネク・サーズ、視覚効果プロデューサーはシャリ・ハンソン、音楽はローン・バルフェ、音楽製作総指揮はハンス・ジマー。
主演はアーノルド・シュワルツェネッガー、共演はジェイソン・クラーク、エミリア・クラーク、ジェイ・コートニー、J・K・シモンズ、イ・ビョンホン、ダイオ・オケニイ、マシュー・スミス、コートニー・B・ヴァンス、マイケル・グラディス、サンドリーヌ・ホルト、ウェイン・バストラップ、グレゴリー・アラン・ウィリアムズ、オットー・サンチェス、マティー・フェラーロ、グリフ・ファースト、イアン・エスリッジ、ノーラン・グロス、セス・メリウェザー、アフェモ・オミラミ、テリー・ワイブル、ケリー・ケイヒル、マーク・アダム・ミラー、ケリー・オマリー他。


「リブート」として発表されたシリーズ第5作。
監督は『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のアラン・テイラー。
『アレキサンダー』『シャッター アイランド』のレータ・カログリディスと『ブラッディ・バレンタイン3D』『ドライブ・アングリー3D』のパトリック・ルシエが脚本を担当している。
『ターミネーター3』まで出演していたアーノルド・シュワルツェネッガーが、12年ぶりに復帰している。
ジョンをジェイソン・クラーク、サラをエミリア・クラーク、カイルをジェイ・コートニー、未来のオブライエンをJ・K・シモンズ、T-1000をイ・ビョンホン、ダニーをダイオ・オケニイ、T-5000型ターミネーターのアレックスをマシュー・スミス、マイルズをコートニー・B・ヴァンス、マシアスをマイケル・グラディス、チャンをサンドリーヌ・ホルトが演じている。

アーノルド・シュワルツェネッガーがシリーズに復帰することは、全面的に歓迎できる。
ただし、「幾ら頑張っても、老化を全面的に隠すことは難しい」という問題がある。
彼が演じているのはターミネーターなので、老化するなんてことは普通に考えれば有り得ない。
その問題をどうやって解消するのかと思ったら、「1作目や2作目とは別のターミネーター」というキャラクターを用意した。そして、「古い型なので、表面の皮膚組織は年を取る」という設定を持ち込んだ(ちなみに若い頃のT-800の姿は、CGで表現されている)。

かなり苦しい処理ではあるが、アーノルド・シュワルツェネッガーをシリーズに復帰させるメリットを考えれば、その程度の無理なんて屁でもないだろう。
っていうか、その程度の強引さなら、「でもシュワちゃんがシリーズに復帰するんだから、まあいっか」と甘受できてしまう。
それぐらい、このシリーズにとって「アーノルド・シュワルツェネッガーの復帰」ってのは大きな意味を持つのだ。
それが実現するのなら、かなりのデメリットはチャラに出来てしまう。

1作目のアーノルド・シュワルツェネッガーは、悪玉として登場していた。しかし1作目の大ヒットを受けてシュワルツェネッガーの人気も高まり、2作目のT-800はベビーフェイスになった。
そして久々に復帰した本作品は、もはや「シュワルツェネッガーのスター映画」と呼んでもいいような状態になっている。
スター映画ってのは、「まずスターありき」だ。何よりもスターを輝かせることが優先され、スターのためにシナリオが用意される。
物語も周囲の人物も、全てはスターを輝かせるための道具だ。

新たな3部作の第1弾として企画された本作品は、アーノルド・シュワルツェネッガーの要請を受けたジェームズ・キャメロンがアイデアを提供している。
そんなキャメロンへのリスペクトなのかどうかは分からないが、この作品は彼が監督を務めたシリーズ1作目と2作目を強く意識した内容になっている。
っていうか、3作目と4作目に関しては、ほぼ「無かったこと」にされている。
後述するようにシナリオはシオシオのパーなのだが、「とにかくアーノルド・シュワルツェネッガーが主演を務めるための状況を整える」ということに製作サイドが何よりも苦心したんだろうなあってことは、悲しいぐらいハッキリと感じ取れる。

ただし、シュワルツェネッガーを復帰させるにしても、「他のキャラクターは別人が演じている」というトコの欠点が残る。
っていうか皮肉なことに、シュワルツェネッガーが復帰したことで、他のキャラは別人ってことが余計に気になってしまう。
これまでの作品とは全く異なる話を描けば、そこの問題は解消されただろう。なぜなら、今までのキャラを使わずに済むからだ。
だが、このシリーズの場合、それは難しい。どうしても、サラ&ジョン・コナーとカイル・リースが登場する内容を使わざるを得ない。

とは言っても、もちろん私だって馬鹿じゃないので、サラ役にリンダ・ハミルトン、カイル役にマイケル・ビーン、ジョン役にエドワード・ファーロングを起用しろと要求したいわけではない。
リンダ・ハミルトンとマイケル・ビーンは年齢的に全く合わないし、エドワード・ファーロングは色々とヤバい奴になっちゃってる。
だから他の役者を使うのは当然なのだが、もうちょっとイメージを大切に出来なかったものかと。
サラにしろジョンにしろカイルにしろ、コレジャナイ感が強すぎるわ。
例えばサラは「貴方が助けに来たサラは、もういないの。今の私は強い」と言うけど、ちっとも強そうに見えないし。

1作目に登場したT-800型ターミネーターは、もちろん初めてのキャラクターなので、そこには引き付ける力があった。
そして2作目で登場した液体金属型のT-1000も、特殊視覚効果の面白さがあった。
で、そこが本シリーズのピークになっている。
3作目のT-Xは見た目が女性という以外に特徴が見当たらず、T-1000より弱体化していた。
4作目は「いかにもマシーン」のような奴らばかりの「質より量」作戦が展開され、これといった強敵は登場しなかった。

今回はサラたちの敵として、まず前半にT-800とT-1000が登場する。
しかし両方とも、1作目と2作目のキャラクターだ。そして両方とも、ほぼ雑魚キャラ扱いと言っていいだろう。
後半に入るとジョンがT-3000型ターミネーターとして登場するが、引き付けるような特徴は見られない。「ジョンがターミネーターになりました」という要素だけで勝負しており、ほぼ出オチみたいなモンだ。
このシリーズって結局のところ、2作目のT-1000を超える悪玉キャラクターを生み出せていないんだよね。

それとさ、今回のT-1000に関しては、どうせ雑魚キャラみたいな扱いなんだから、わざわざ「and」でクレジットされるような扱いのイ・ビョンホンを起用する意味は全く無いでしょ。
さすがに全くの無名俳優では困るけど、ハリウッドで活動している「そこそこ知名度のあるアメリカ人俳優」で充分だわ。
っていうかさ、そこはロバート・パトリックに似た俳優でも使ってくれた方が、よっぽどファンサービスになるぞ。
まあホントはロバート・パトリックを起用して、シュワちゃんと同じような細工を施してくれるのがベストだけどさ。

T-3000に関しては、「なんでジョンをターミネーターにしちゃうのか」と言いたくなる。
わざわざ1作目と2作目を意識させて、そこのノスタルジーを喚起させるような作りにしておいて、その中でT-800と強い絆で結ばれたジョンを悪玉に変貌させてしまうって、どういうつもりなのかと。
まあ「意外性」ってトコで勝負してるんだろうけど、そこの力なんて微々たるモンだぜ。むしろ、1作目と2作目を意識させたことを、全て台無しにしちゃうような悪行だぜ。
でも困ったことに、演じているジェイソン・クラークが「いかにも悪党顔」で登場するので、そういう意味では納得できちゃうんだよね。ただし、意外性は無いけどさ。

前半はアクションに次ぐアクションだし、考える暇を与えずテンポ良く進んでいく。今までのシリーズを見たことが無い人からすると、「何が何やらワケが分からない」という状態なのは間違いないから、一見さんには不親切と言わざるを得ない。
ただ、今までのシリーズを見ていた人からすれば、かなり満足度が高いんじゃないかと思う。
このシリーズってタイムリープの要素を持ち込んでいるけど、実は科学的な知識が必要な部分には、そんなに面白味があるわけではないのよね。
1作目にしろ2作目にしろ、そんなトコの知識が無くても、分かりやすい娯楽映画としての面白さがあったわけで。

しかし「1作目と2作目をなぞって二次創作してみました」という状態の前半部分を通り過ぎ、今回のオリジナルとなるストーリーに突入すると、一気に引き付ける力が減退する。
ようするに本作品の面白さって、ほぼ「1作目と2作目の要素」に頼っているんだよね。そして前半で1作目と2作目の内容をなぞり、その面白さをファンに思い出させた結果、この映画オリジナルのストーリー部分の低調ぶりが余計に際立つという皮肉な結果になっている。
そもそもさ、車寅二郎っぽい言い回しをするなら「それを言っちゃあ、おしめえよ」ってことになるんだけど、このシリーズって実質的にはジェームズ・キャメロンが監督を務めた第2作で完結しているのよね。それなのに、「大ヒットしたから、もっと稼げるだろ」ってことで3作目が作られ、さらに4作目までズルズルと続けてしまったことで、どんどんダメな状態へと落ちぶれていったのだ。
リブートで何とかサルベージできるんじゃないかと目論んでいたんだろうけど、まあ失敗したってことだわな。

(観賞日:2016年11月22日)


2015年度 HIHOはくさいアワード:第2位

 

*ポンコツ映画愛護協会