『ターミネーター3』:2003、アメリカ&ドイツ&イギリス

未来社会を支配するコンピュータ・スカイネットは、人間達のリーダーであるジョン・コナーの抹殺を計画した。スカイネットは1994年のロサンゼルスにT-1000型ターミネーターを送り込み、少年時代のジョンを殺害しようとする。ジョンは彼を守る指令を受けたT-800型ターミネーターの協力で、人類を滅亡に追いやる“審判の日”の到来を阻止した。
それから10年後、ジョンは俗世間を捨て、不安を抱きながら暮らしていた。同じ頃、ロサンゼルスにはT-X型ターミネーターが出現し、人々を殺害していく。さらにT-800型に瓜二つの外見を持つT-850型ターミネーターも、T-Xとは別の場所に出現する。
バイク事故で負傷したジョンは、ある動物病院に忍び込んだ。そこへ、獣医助手のケイト・ブリュースターが現れる。ジョンとケイトは、中学時代の同級生だった。2人の前にT-Xが出現し、ケイトの命を狙う。そこへT-850が駆け付け、ジョンとケイトを救った。
T-850はジョンに、審判の日が回避されておらず、先送りになっただけだと告げる。ジョン、ケイト、T-850は1997年に死亡したジョンの母サラの墓に行き、棺に隠されていた武器を持ち出した。事態が飲み込めないケイトは、隙を見て逃げ出そうとする。彼女は婚約者スコットが来たことに喜ぶが、それは姿を変えたT-Xだった。
T-850はジョンとケイトを連れて逃亡し、詳しい事情を語る。スカイネットは未来世界でジョンの仲間になる面々を抹殺するため、T-Xを送り込んでいた。そして殺人リストの中には、ケイトの父ロバート・ブリュースター将軍の名もあった。ロバートは現在、スカイネットの開発責任者を務めていたが、システムの起動には難色を示していた。
ジョンとケイトを守るためにT-850を送り込んだのは、未来社会でジョンの妻となったケイトだった。未来社会では、スカイネットがT-850を使ってジョンを殺害させた。ケイトはジョンの遺志を継ぎ、T-850を再プログラミングして送り込んだのだ。
今日の3時間後には、核戦争が勃発する。しかしT-850は核戦争阻止ではなく、ジョンとケイトの救出を命じられていた。ケイトから核戦争を止めるよう指示され、T-850は彼女とジョンを伴なって基地へと向かう。一方、基地ではスカイネットが発動されるが、たちまち制御不能となってしまう。ジョン達は基地に到着するが、そこへT-Xが現れる…。

監督はジョナサン・モストウ、キャラクター創作はジェームズ・キャメロン&ゲイル・アン・ハード、原案はジョン・ブランカトー&マイケル・フェリス&テディ・サラフィアン、脚本はジョン・ブランカトー&マイケル・フェリス、製作はハル・リーバーマン&コリン・ウィルソン&マリオ・カサール&アンドリュー・G・ヴァイナ&ジョエル・B・マイケルズ、製作総指揮はモリッツ・ボーマン&ガイ・イースト&ナイジェル・シンクレア&ゲイル・アン・ハード、撮影はドン・バージェス、編集はニール・トラヴィス&ニコラス・デ・トース、美術はジェフ・マン、衣装はエイプリル・フェリー、視覚効果監修はパブロ・ヘルマン、デジタル・アニメーション監修はダン・テイラー、ターミネーター・メイクアップ&アニマトロニック・エフェクツはスタン・ウィンストン、音楽はマルコ・ベルトラミ、テーマ音楽はブラッド・フィーデル。
主演はアーノルド・シュワルツェネッガー、共演はニック・スタール、クレア・デーンズ、クリスタナ・ローケン、デヴィッド・アンドリュース、マーク・ファミリエッティー、アール・ボーエン、モイラ・ハリス、チョッパー・バーネット、クリス・ローフォード、キャロリン・ヘネシー、ジェイ・アコヴォーン、M・C・ゲイニー、スーザン・マーソン、エリザベス・モアヘッド、ジミー・スナイダー他。


アーノルド・シュワルツェネッガーがロボット戦士ターミネーターを演じるシリーズ第3作。
マリオ・カサールとアンドリュー・G・ヴァイナによる「帰って来たカロルコ」ことC2ピクチャーズの作品である。大ヒット映画の続編を作りたがるのは、彼らなら当然のことだ。そんな2人が、『ターミネーター』という使える商売道具を見逃すはずが無い。

今回の敵役としては、当初は男性が想定されており、ヴィン・ディーゼルやシャキール・オニールが候補となった。女性を起用するアイデアになってからは、女子プロレスラーのジョウニー・ローラー(元WWFのチャイナ)、ファムケ・ヤンセン、キャリー=アン・モスなどが候補に挙がり、結局はスーパーモデル出身クリスタナ・ローケンに決定した。

サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンは、ジェームズ・キャメロンとの私生活の問題(離婚のゴタゴタ)もあってか、オファーを受けなかった。
「ならば、死んだことにすればいい」というのが製作サイドの出した答えだった。
前作でジョンを演じたエドワード・ファーロングは、ドラッグで使い物にならない。
「ならば、代わりの役者を使えばいい」というのが製作サイドの出した答えだった。
起用されたのは、サル顔のニック・スタールだった。

前2作を監督したジェームズ・キャメロンは、3作目にタッチすることを拒否した。しかし、そんなことは続編製作に関して何の意味も無い。誰が監督であろうが、とどのつまり『ターミネーター』という冠さえ付いていれば客は入るのである。代わりの監督にはリドリー・スコットなどの名が挙がったが、結局はジョナサン・モストウに決まった。
ジョナサン・モストウは『ブレーキ・ダウン』にしろ『U−571』にしろ、人間ドラマやサスペンスを作り出すための設定を持ち込んでも、そこを避けてアクションに特化してしまうタイプの監督である。大作映画を連続して任され、ビッグネームとして扱われているが、しかし実質的には、B級アクション映画に向いているセンスの持ち主だ。

ケイトが恋人や父親の死に遭遇しながら、ジョンに「母親みたい」と言わせるまでに成長するドラマは無い。時間が無いので、身内が死んでも簡単に立ち直る。ケイトが事情を把握せぬままに話が進行し、ジョンとの絆を深める時間は無い。
ダメ人間だったジョンが、リーダーとしての自覚を持つまでの成長ドラマも無い。とにかく、ドラマなんて充実させている暇があったら、ド派手な破壊シーンや金を掛けまくったカーチェイスを見せる。それこそが、多くのファンを持つ『ターミネーター』シリーズを出切る限り貶めないためにモストウがやれる、最大限の仕事なのである。

T-800に父親のような親愛の情を抱いていたはずのジョンだが、T-850と会った時の第一声は「殺しに来たのか」である。しかも、前作でジョンとターミネーターの絆を描いたはずが、今回は違うロボットということなので、前作の設定はまるで意味が無い。前作と別のロボットにしては、なぜか車のキーの場所は知っているようだが。
T-Xは大量の武器を内蔵しているらしいが、ほとんど見せてくれない。前作のT-1000のように変形は可能なのだが、どうやら骨格は液体金属ではないようだ。T-850を圧倒するほど強いはずだが、最後はあっけなく潰される。T-1000よりも遥かに弱体化しているように見えるのは、気のせいだろうか。

パート2のT-800は1作目とガラリと変わり、すっかり人間的になって、ガキの命令に従う姿をさらした。
今回のT-850は、さらに人間味がアップ。いきなり星型のサングラスを掛けるという、コミカルな面を見せる。
どうやらゴジラと同じように、不気味で恐ろしい殺人モンスターから、愛すべきヒーローへの転身を図ろうとしているようだ。

3作目を作るに当たって、大きな問題があった。ジェームズ・キャメロンは3作目を作ることなど考えておらず、2作で物語を完結させていたのだ。
そこで製作サイドは3作目を作るために、前2作で描かれた設定を大きく覆してしまうことにした。「運命は変えられる」というテーマを消去して、「運命は変えられない」という話にしたのである。
結局、シリーズを続けてサーガを作るためにエンディングを変える必要があったので、前作を焼き直して最後だけ変更した、という感じ。前2作にあったピースを幾つも散りばめて作った、リメイク版の如き内容になっている。
だから『ターミネーター3』というよりも、『ターミネーター2’』と呼ぶのが正しいのではないだろうか。

 

*ポンコツ映画愛護協会