『デッド・オア・ラン』:2016、アメリカ

犯罪プランナーのニック・バローは、強盗の計画を立ててバイヤーに渡すことだ。アレハンドロという男と会ったニックは、3万ドルの前払いを要求した。アレハンドロが「何の保証も無い」と難色を示すと、ニックは「無理強いするつもりはない。嫌から別に構わない」と告げた。アレハンドロが承諾すると、彼は「裁判所にある25万ドルの奪い方を教える。間違いなく中に入れるよう手配する」と告げた。アレハンドロは仲間のペドロたちと計画を実行し、25万ドルを手に入れて倉庫で合流した。しかしキーナンの率いる男たちが来て発砲し、アレハンドロたちを皆殺しにした。一味は倉庫に油を撒き、火を付けて立ち去った。
ニックは娘のキャサリンを愛しているが、一緒に暮らしていない。彼は離婚しており、キャサリンは妻のルーシーが引き取った。ニックはルーシーに仕送りを続けているが、キャサリンとは距離を置いている。キャサリンは未成年飲酒で捕まり、ニックは娘を更生させたいと考えていた。ニックは射撃場へ行き、仕事の師匠で親友のハーパーに声を掛けた。刑事のマーフィーが来ていたことをニックが気にすると、ハーパーは「彼はガキの頃からの付き合いだ。信用できる男だ」と告げた。
ニックはハーパーに、「ライブハウスに行ったが娘はいなかった」と相談する。「ルーシーと話せ」とハーパーが言うと、彼は「何度か話そうとしたが、あいつは怒るだけだった」と告げる。ハーパーは「ちゃんと話し合わないとダメだ。それに、娘のことも考えろ」と助言するが、ニックは「状況が変わった。ルーシーが飲酒で更生施設に入れられた。キャサリンは悪い友達が出来て、夜に遊び歩いてる。道を正す大人が必要だが、俺には無理だ」と相談した。
ニックは夜遊びするキャサリンを車から観察するが、彼女に声を掛けることは出来なかった。そこへハーパーから電話が入り、ニックはアレハンドロと仲間が全滅したことを知らされる。ハーパーはニックの自宅で彼と会い、「アレハンドロの父親のヴィクターは、メキシコ麻薬連合のリーダーだ。息子のことを知って、どう動くか分からない。裏切った相手を容赦しない危険な男だ」と語る。ニックは「ケイトが心配だ。最悪の事態を考えて準備するよ」と言い、翌日に貯蓄型生命保険の事務所へ赴いた。ニックは「近い将来に備えたい」と担当者のサマンサに語り、ケイトを受取人とする50万ドルの定期保険を契約した。サマンサは手続きを進めることを承諾し、3週間で保険証を送ると告げた。
ニックはハーパーから中古車の鍵を受け取り、「詳しいことが分かるまで安全な場所で待機しろ」と言われる。しかしニックは麻薬連合のマルコたちに捕まり、ヴィクターの隠れ家へ連行された。ヴィクターの「他の者にも計画を売ったか」という質問に、ニックは「売っていない。俺は計画しただけだ」と答える。しかしヴィクターはニックが犯人について何か知っていると決め付け、ケイトのことを口にした。ヴィクターは「娘を連れて来てやる」と言い、隠れ家を後にした。
ニックは隙を見て見張りの連中を倒し、隠れ家を飛び出した。彼は車を走らせながらハーパーに連絡し、「ヴィクターに狙われた。誰かが絡んでる。ジミー・リンカーンを見つけてくれ」と頼む。ニックはケイトのアパートへ乗り込み、「もうすぐ奴らが来る。逃げるぞ」と告げる。ケイトは拒否するが、ニックは強引に部屋から連れ出した。拳銃を所持しているマルコの姿を見て、ケイトは危険な状況にあることを理解した。ニックは火災報知機を鳴らし、ケイトを車に乗せて逃亡した。
ニックが自宅とは別の隠れ家へ連れて行くと、ケイトは「泥棒なんでしょ。ママが言ってた」と口にする。ニックは「そうだ」と認めて、「自宅はあるが今は行けない」と言う。ケイトが「どうでもいい」と携帯を使おうとしたので、彼は「やめろ。追跡されるかもしれない」と注意する。ニックはケイトの携帯を取り上げ、乱暴に踏み付けて破壊した。ケイトは自分の盗撮写真が大量にあるのを発見し、「昔から見張ってたのね」と激怒した。
ニックはハーパーと合流し、ケイトに食事を与えた。ハーパーは「この年頃は親に反抗するものだ。とにかく怒らせないようにしろ」とニックに忠告し、使い捨て携帯を渡した。ニックはケイトを車に乗せ、使い捨て携帯を与えた。彼はヘイスティングズに移動し、ホテルを取った。警官がヴィクターの隠れ家で待っていると、刑事のキーナンが仲間のダリルやマティーたちを連れて来た。キーナンはヴィクターの手下たちに死体を一瞥し、「5分くれ」と警官たちを追い出した。キーナンは部下たちに「ニックはヴィクターに狙われている。今夜中に殺されるぞ」と語り、焦りの色を見せた。
ニックが転寝している間にケイトはホテルを去り、ヒッチハイクで家に帰ろうとする。ニックが車で近付いて「もっと大変なことになるぞ。車に乗れ」と命じると、ケイトは「アンタの世話にはならない。自分のことは自分で何とかする」と拒否した。ニックは「お前と遊んでいる暇は無い」と怒鳴り付け、彼女を車に乗せてホテルへ連れ帰る。ヴィクターはオスカーという男の家に乗り込んで彼の妻を人質に取り、「アトランタ警察にコネがあるだろう」と協力を要求した。
ニックはケイトの機嫌を取るため、水着を買い与えてプールで泳ぐよう勧めた。ケイトはアダムという若者と親しくなって一緒にピールを飲む様子を、ニックは険しい表情で観察する。彼女が部屋に戻ると、ニックは「まだ16歳だ。ビールは駄目だ」と鋭い口調で注意した。ルーシーから携帯に着信が入り、ニックは「ママには何も話すな」と指示した。ルーシーが酒浸りのままなので、ケイトは優しく忠告した。ニックはケイトから「どれぐらいヤバいの?」と問われ、「殺人犯だと思われてる」と教えた。
ニックはケイトを伴って情報屋のジミー・リンカーンを訪ね、「あの金のことを、どうやって知った?」と質問する。「いつもと同じだ。裁判所で会った男に金があると聞いた」と彼が言うと、ニックは「その男に会わせろ」と凄む。ジミーは仕方なく承諾し、電話を掛けた。ニックはケイトとジミーを車に乗せ、待ち合わせ場所の駐車場へ赴いた。するとエレベーターから男が現れて発砲し、ジミーは殺された。ニックは男と格闘して始末し、相手が刑事のディナルディーだと知った。
ニックは現場を離れ、ハーパーに連絡してディナルディーを調べてもらう。テレビのニュースを見たニックはアレハンドロに盗まれた金が刑事の不正を記す証拠だったことを理解した。ヴィクターはマルコから、アレハンドロが組織の金を持ち出してカジノで使い果たしたこと、取り戻すために強盗事件を起こしたことを聞かされる。さらに彼は、ルーシーが更生施設に入っていることを教えた。しかしニックが12年前に離婚していることを聞いたヴィクターは、「連れて来ますか」と問われて「監視するだけでいい。女房より娘の方が大事だろう」と指示した。
キーナンは仲間のディナルディーが殺されたことを受け、ダリルたちから「早く奴を始末しないとマズいんじゃないか」と言われる。不安を見せる仲間たちに、キーナンは「不正な金に手を出した時から覚悟していたはずだ」と苛立ちを示した。買い物に出たケイトが部屋に戻ると、ニックは「何を買った?」と尋ねる。ケイトはサングラスや金髪のウィッグを見せて「逃走グッズよ」と言うが、ニックは軽く笑って「人の注目を集めるだけだ。その場所に合った格好をすればいいだけなんだよ」と告げた。
「二度目のルールを頭に入れておけ」とニックが告げると、ケイトは「何それ?」と質問する。ニックは彼女に、「人は初対面の相手を、単なる顔としてしか認識しない。しかし二度目に会えば心に引っ掛かり、記憶されてしまう」と説明した。ニックはハーパーからの電話で、ディナルディーの仲間にキーナンがいること、あらゆる悪事に手を染めている男であることを知らされた。ケイトはニックの仕事に興味を示し、次々に質問した。ニックは強盗計画について具体例を挙げ、詳しく説明した。ずっと監察官に見張られているマティーは精神的に疲弊し、キーナンに「もう抜けたい」と吐露した。キーナンは「ダメだ。やるしかない」と諭すが、マティーは「あと2年で定年退職だぞ。抜けさせてくれ」と懇願した。
ニックはケイトにフォークギターをプレゼントし、移動遊園地へ連れて行った。風船をダーツで割る露店では、ジェイミーという女性が店主に「娘が欲しがってるのよ。イカサマじゃないの」と抗議していた。ニックが風船を割って景品をプレゼントしようとすると、彼女は「慈善事業のつもり?ほっといてよ」と激怒する。そこへブライドン保安官が現れ、「後は私が」とニックに告げた。ニックはジェイミーの娘に景品を渡し、その場を去った。ケイトはニックに微笑し、「一段落したら旅行に行こうよ」と誘った。
キーナンはマティーが監察官と会っていた証拠写真を発見し、彼を始末してニックに罪を被せた。ニックは指名手配され、ブレイドンの姿を見て危機を察知した。彼はケイトに行動を指示し、ホテルから逃亡させた。ホテルにブライドンが来てショットガンを構えると、ニックは隙を見て逃走した。彼はケイトと合流しようとするが、ブライドンに見つかって連行された。ニックは濡れ衣を着せられただけだと主張するが、ブレイドンは耳を貸さなかった。ブレイドンが連絡を入れたため、キーナンはニックの身柄を引き取りに行こうとする。しかし彼が行く前に、マルコたちが刑事に成り済ましてニックを連れ去った…。

監督はピーター・ビリングスリー、原作はA・J・リーバーマン&ニック・ソーンバロウ、脚本はアンディー・リーバーマン、製作はヴィンス・ヴォーン&ヴィクトリア・ヴォーン&マイカ・メイソン&ケヴィン・フレイクス&マイケル・J・ルイジ、製作総指揮はラジ・ブリンダー・シン&アンクル・ルングタ&ヴィシャル・ルングタ&ティモシー・M・バーン&スチュアート・ブラウン&トム・ロック&アショク・アムリトラジ、撮影はロベルト・シェイファー、美術はデニス・ワシントン、編集はダン・レーベンタール&ケヴィン・スターマー、衣装はアリックス・ヘスター、音楽はデイヴ・ポーター、音楽監修はマチュー・シュレイヤー。
出演はヴィンス・ヴォーン、ヘイリー・スタインフェルド、ビル・パクストン、テレンス・ハワード、ジョナサン・バンクス、マイク・エップス、ジョルディー・モリャ、シェー・ウィガム、ジョン・ファヴロー、ウィリアム・レヴィー、タラジ・P・ヘンソン、アナベス・ギッシュ、ケイン・ヴェラスケス、マヌエル・ガルシア=ラルフォ、ブレント・ブリスコー、ブライアン・ダーキン、リオ・ハックフォード、ジェームズ・パクストン、ハヴィエル・カラスキジョー、フェルナンド・マルティネス、エルリ・オースティン、カイリー・ターナー、ジョシュア・ミケル、モーガナ・ブリッジャーズ他。


A・J・リーバーマン&ニック・ソーンバロウのグラフィック・ノベル『Term Life』を基にした作品。
監督は『南の島のリゾート式恋愛セラピー』のピーター・ビリングスリー。
脚本は原作者の1人であるA・J・リーバーマンがアンディー・リーバーマン名義で担当している。
ニック役のヴィンス・ヴォーンが、製作も兼任している。ケイトをヘイリー・スタインフェルド、キーナンをビル・パクストン、ブレイドンをテレンス・ハワード、ハーパーをジョナサン・バンクス、ダリルをマイク・エップス、ヴィクトルをジョルディー・モリャ、マティーをシェー・ウィガム、ジミーをジョン・ファヴロー、サマンサをウィリアム・レヴィー、ルーシーをタラジ・P・ヘンソンが演じている。
『二重逃亡』という邦題でテレビ放送されたこともある。

最初に「ニックは強盗の計画を綿密に立案してバイヤーに売るのが仕事」ってことが、本人のモノローグで説明される。
実行するのではなく、ただ立案してアドバイスするだけで金を稼いでいるのだから、それだけプランナーとして優秀ってことになる。
なので、冒頭シーンでは「ニックの見事な計画で強盗は大成功」という形にすべきだろう。
しかし、強盗は成功したものの、アレハンドロたちは殺されている。なので、「ニックが優秀」という印象は受けない。

尺の都合も考慮すれば、「まずニックの優秀さをアピールする犯行があって、その後で罠に掛けられる」という手順を踏まずに進めるのは、分からんでもない。
ただ、それがマイナスになっていることは確かだ。
しかも、その後でケイトについて説明する際の回想シーンでも、ニックがバイヤーから「テメエの計画で失敗した。ボスに金を返せ」と殴られる様子が描かれているんだよね。
そうなると、ニックは何度もヘマをやらかしている二流のプランナーじゃないのかと思ってしまうのよ。

アレハンドロと仲間が倉庫で合流すると、男たちに射殺される。この時、キーナンが堂々と顔を見せている。
そりゃあ皆殺しにしたから顔を見せても問題は無いんだけど、観客に対しても顔を見せちゃってるのよね。
こいつが犯罪組織のボスか何かなら、それでもいいだろう。だけど、こいつって刑事なのよ。
だったら、この時点では姿を見せずに刑事として登場させて、途中で「実はワルでした」と明かす流れにした方がいいんじゃないか。
使える要素を、早い段階で1つ潰しているように感じるのよね。

っていうか、そもそも最初に「アレハンドロたちが殺される」というシーンを見せている時点で、違うんじゃないかと。
尺の都合ってのを前述したけど、それを考慮しても改変は可能だと思うんだよね。
具体的に書くと、まずニックが犯罪プランナーとしてアレハンドロに計画を説明するシーンを描く。次に、ニックがケイトを心配しているシーンを見せる。その後で「アレハンドロたちがキーナン一味に殺され、ニックがハーパーから事件を知らされる」という展開にすればいいんじゃないかと。
描いている内容は同じでも、順番が変わるだけで印象は大きく違ってくるからね。

ニックは自分の稼業を考えて、ケイトとは距離を取っているという設定だ。
だけど、幾ら本人が距離を取ったところで、裏社会の人間からしてみれば「ケイトはニックの娘であり、そこは弱みになる」ってのは誰でも簡単に分かることだ。
つまりニックが足を洗わない限りは、幾ら距離を取ったところで、ケイトのためになっているとは言えないのだ。
なので、「娘のことを考えて距離を置いている」という設定は、ニックの好感度を上げるためには全く貢献していない。

ニックはアレハンドロの事件を知らされた時、「ケイトが心配だ。最悪の事態を考えて準備するよ」と言う。
なのでケイトを安全な場所に避難させるのか。彼女が危害を加えられないような策を練るのかと思いきや、そうではなかった。ケイトを受取人とする定期保険の契約をするのだ。
それは「もしも自分が死んだらケイトに大金が渡る」ってことだから、「最悪の事態を考えた準備」の答えとして間違っているわけではない。だけど、「そういうことじゃないだろ」と言いたくなるぞ。
なぜ自分だけが命を狙われる前提の準備なのかと。
ニックが死を免れるために行動した場合、相手がケイトに目を付けることだって充分に考えられるでしょ。ボンクラなオツムなら予期できないかもしれないけど、そういうことが起こり得る世界で仕事をしてきた男でしょうに。

本気で娘のことを心配しているなら、一刻も早く足を洗うのが最も正しい選択だろう。
「娘は宝物だと言っておきながら、なぜ裏社会の仕事から足を洗おうとしないのか」という疑問に対して、この映画は答えを用意していない。
犯罪組織に弱みを握られていて協力せざるを得ないとか、多額の負債を抱えているので危険な仕事で稼ぐしかないとか、そういった設定は無い。少年時代から裏社会で生きて来たから他の道を知らないとか、ボスに命を救われた恩義があるとか、そういう過去も無い。
そもそも、「納得できる答えは否か」という以前の問題であり、何の答えも用意されていないのだ。

ハーパーが「あの年頃の子は親に反抗するものだ」とニックに告げるシーンがあるが、どうやら「ケイトは反抗期」ということらしい。
でも、そういう問題じゃないよな。
母親が飲酒で更生施設に入って、父親は裏社会で犯罪行為を繰り返しているんだから、そんな親の言うことなんて聞きたいと思わないのは何の不思議も無い。反抗期じゃなくても、反抗したくなるだろう。
ただ、とは言っても拳銃を持った男が追って来たのを見ているわけで、「勝手に行動している場合じゃないな」と気付くべきじゃないかと。
その後も、ホテルを抜け出して家に帰ろうとする行動を取られると、ただのバカにしか見えない。ニックに反抗的な態度を取るのはいいけど、それは違うだろうと。
「自分も下手をすると殺されるかも」という認識に至らないのは、「まだ子供だから」ってことで許容できる範囲を超えている。そういう行動を取らせたいのなら、マルコが拳銃を持っている姿を見せちゃダメだよ。

ジミーが殺された後も、ケイトには危機感が欠如している。目の前で人が殺されたのに、そのことで怯えたりパニックになったりすることは無い。
もはや敵が武装しているだけでなく、殺人も平気で遂行する連中であることをハッキリと理解できたはずなのに、なぜかニックの前でノンビリした態度を取っている。もっと緊張感の張り詰めた状態になっているべきなのに、なぜかニックとケイトがホテルで過ごしているシーンだけは緩和が入っているのだ。
もしも「緊張と緩和」みたいなことを考えていたとしても、そんな緩和は要らない。ヴィクターもキーナンもシリアスまっしぐらで行動しており、ニックは窮地に追い込まれているはずなのに、そこだけユルいのは場違いなだけだよ。
そういうテイストを盛り込みたいのなら、いっそコメディー方面へ傾けるべきだ。

ずっとニックに反抗的な態度を取り続けていたケイトだが、途中で彼の仕事に好奇心を示して詳しく尋ねるようになる。
なぜ彼女の反発が無くなったのか、きっかけも理由も全く分からない。なぜ彼女がニックの仕事に強い興味を示すのか、その理由も全く分からない。
確実に言えることは、その展開にスムーズさが皆無ってことだ。
ケイトがニックの仕事に興味を抱く展開を持ち込みたいのなら、もっと早い段階から始めるべきだ。

ただし、早い段階から始めりゃ全てが解決するのかというと、そうではない。それ自体が、話のテイストに上手く合致していないという問題は残る。
そういうキャラとして動かしたいのなら、コメディー方向へ寄せた方がいい。
っていうか、娘が強盗プランナーに興味を抱く展開を用意するのなら、そこを軸にしてシナリオを構築すりゃいいでしょ。
ニックが罠に落とされるとか、命を狙われるとか、そんなのは全て削除して、「ケイトが強盗プランナーに興味を持って手伝いたがり、ニックが振り回される」というドタバタ風味の犯罪コメディーとして作ればいいんじゃないかと。

あと、ニックは自分の仕事を考えて娘と距離を置いていたのに、なんで強盗プランナーの仕事を彼女に詳しく教えているんだよ。それだと、まるで娘に強盗プランナーの仕事を受け継がせたいかのように見えるぞ。
娘を守りたいのなら、「お前は何も知らない方がいい」とでも言った方がいいだろうに。
そこもキャラの動かし方に難があるんだよね。これはコメディー方向に寄せたとしても、解決できない問題だ。
どっちにしろ、ニックは積極的に強盗プランナーの仕事を娘に説明するキャラとして動かすべきではない。

ホテルにブライドンが来ると、ニックは隙を見て逃亡する。だったら、「無事にケイトと合流して逃亡に成功」というトコへ繋げるのかというと、ブライドンに捕まって連行されちゃうんだよね。
そうなると、「ニックが逃亡し、駐車場で策を仕掛けてブライドンを騙す」といった手順が無駄になってしまうのよ。どうせ捕まるのなら、もう「ニックがケイトをホテルから逃がすが、自分は捕まってしまう」という流れで良かったんじゃないかと。
そもそも、ブライドンって移動遊園地でニックが少女に優しくしているのを見ているんだよね。それなのに、ニックが凶悪な殺人犯ってのを全く疑わずに捕まえているのだ。
そうなると、移動遊園地でニックと会っている出来事も無駄になっちゃうのよ。ニックが指名手配されてホテルへ捕まえに行く時が初登場でも、大して変わらなくなっちゃうのよ。

ブライドンはニックの主張を全く信用せず、電話を掛ける。連絡を受けたキーナンは、ニックの身柄を引き取りに行こうとする。だったら、「キーナンが来てニックを連行し、始末しようとする」という流れでいいはずだ。
ところが、まだヴィクターがニックを疑っているため、彼の手下たちが刑事に化けてニックを連行するという展開になってしまう。
こうなると、「ブライドンはヴィクターに騙されたと気付き、慌てて動き出す」という流れになっても、「まだキーナンの陰謀に気付いていない」という状態になってしまうわけで。
ニックが2つのグループから狙われていることが、そこに来て単なる邪魔な要素になってしまっている。

ブライドンはヴィクターの車を追って来て銃撃戦になるのだが、マルコに撃たれて死亡する。そんなに簡単に殺しちゃうぐらいなら、このキャラって全く要らないでしょ。何のために登場したのか、サッパリ分からない。
で、ニックはケイトに助けられるのだが、「助けなど要らない」と言って彼女を怒らせる。それでケイトがニックを置いて単独行動を取ったせいで、キーナンたちに捕まってしまう。
もう物語も佳境に来ているのに、愚かな仲違いでピンチになるってのは、ものすごくマヌケだわ。もう後は「真犯人を捕まえて濡れ衣を晴らす」というだけなんだから、ニックとケイトが協力して逆転劇を演出すればいいでしょうに。
あと、「キーナンを挑発して罪を白状させる」という最後の大事な役目をケイトが担当し、ニックが全く関わっていないってのは、誰がどう考えても完全なる計算ミスだぞ。

(観賞日:2020年1月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会