『TAXI NY』:2004、アメリカ&フランス

ニューヨーク。自転車便ライダーのベルは、仕事仲間の中で最もスピードを出せる女だ。そんな彼女も、自転車便の仕事を終えることに なった。彼女はタクシー運転手のライセンスを習得し、車を手に入れて転職することを決めたのだ。彼女は仲間から、チタン製のスーパー チャージャーをプレゼントされた。恋人のジェシーも事務所に現れ、同棲中の家に戻ってからプレゼントがあることを告げた。しかし ライセンスの交付に手間取り、ジェシーとの約束をすっぽかすハメになってしまった。
ライセンスを手に入れたベルは、改造を施したフォード・クラウンヴィクトリアで翌日から仕事を開始した。最初に乗せた客から、15分で 空港まで間に合えば高額を支払うと言われ、スーパーチャージャーを使って9分28秒で到着した。一方、NY市警のウォッシュバーン刑事 は素性を偽り、同僚と共に偽造カードの犯罪組織と接触した。しかし喋りすぎて正体に気付かれ、敵に逃げられる。車で追跡しようと したウォッシュバーンだが、どうしようもなく運転がヘタクソな彼は店に突っ込んでしまった。
警察署に戻ったウォッシュバーンは、元恋人で上司のマータ・ロビンス警部補に叱責された。ウォッシュバーンは車を取り上げられ、 巡回パトロールの仕事に格下げとなった。マンハッタン銀行で強盗事件が発生したと知った彼は警察バッジで車を停めようとするが、 玉突き事故を発生させてしまう。慌てて走り去った彼は、停車していたベルのタクシーに乗り込んだ。
タクシーが銀行に到着すると、ちょうど犯人のヴァネッサたちが車で逃走するところだった。ウォッシュバーンから追跡を命じられたベルは 、「交通法規を無視して構わない」と言われたため喜んで応じた。ベルは猛スピードで犯人の車を追跡するが、ウォッシュバーンは誤って タクシーの窓ガラスを撃ってしまう。結局、ウォッシュバーンのヘマもあって犯人には逃げられてしまった。
FBIのマリンズ捜査官が警察署に現れ、事件の陣頭指揮を担当することになった。ロビンスの進言もあり、ウォッシュバーンは捜査から 外された。ベルは証拠物件としてタクシーを没収された上、取り調べで時間が掛かったため、またもジェシーとの約束に遅刻した。 そんな彼女にウォッシュバーンは声を掛け、「タクシーを取り戻してやるから協力しろ」と持ち掛けた。
ベルは逃走車を追跡した際、犯人がブラジル人の女であり、車種が真っ赤なBMW760Liだということを確認していた。犯人は特殊な タイヤを使っており、交換するためルーズ・ガレージへ赴くだろうとベルは推理した。ウォッシュバーンは母親の車を使い、ベルを乗せて ガレージへ向かおうとする。しかし運転が下手で全く前に進まないため、ベルが交代した。
ベルとウォッシュバーンは、ガレージの近くで張り込んだ。夜になって犯人4名が現れたたため、ウォッシュバーンは応援を呼ばずに突入 しようとする。しかし敵に気付かれて失神させられ、ベルも捕まった。2人は銃を奪って反撃を試みるが、犯人たちは逃亡してしまった。 ウォッシュバーンがガスボンベの栓を開いたため、ガレージでは大爆発が起きてしまった。
ベルはウォッシュバーンに、家へ来て事情をジェシーに説明するよう求めた。しかしウォッシュバーンが出向くと、ジェシーは全く聞く耳 を持たなかった。彼は問答無用で警察バッジを奪うとバーナーで焼き、2人を追い払った。ウォッシュバーンはベルを連れて母の待つ家へ 行き、一泊させることにした。彼の母は酒が好きで、いつも酔っ払っている女性だった。
翌日、警察署に赴いたベルとウォッシュバーンは、犯人グループが銀行を襲撃して今も中にいることを知った。ウォッシュバーンは車両係 を騙し、ベルのタクシーを取り戻した。2人は銀行へ向かおうとするが、その時には既に犯人グループが銀行から逃亡していた。ベルは 逃走経路を推測し、犯人の車を待ち構えた。ヴァネッサたちの車が現れたため、ベルはタクシーを飛ばして追跡する。しかし通行人をかわす ために水道栓へ突っ込み、ヴァネッサたちに逃げられてしまった。
ベルとウォッシュバーンは、ロビンスから叱責された。ベルはタクシーを返してもらえたが、「走っているのを見たら没収する」と通告 された。ウォッシュバーンはクビを宣告されるが、犯人逮捕を諦めていなかった。ベルとウォッシュバーンは、犯人が清掃車を利用して いることに気付いた。清掃局のコンピュータを調べた2人は、スカリアという男が協力していると突き止めた。実はヴァネッサたちは、彼の 妻を人質にして脅していたのだ。ベルとウォッシュバーンはスカリアのスケジュールを調べ、次の犯行日と襲う銀行を特定した…。

監督はティム・ストーリー、オリジナル版脚本&製作はリュック・ベッソン、脚本はロバート・ベン・ガラント&トーマス ・レノン&ジム・カウフ、共同製作はスティーヴ・チャスマン、製作総指揮はロバート・シモンズ&アイラ・シューマン、撮影はヴァンス ・バーバリー、編集はスチュアート・レヴィー、美術はメイン・スカイラー・バーク、衣装はサンジャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、音楽は クリストフ・ベック、音楽監修はスプリング・アスパーズ。
出演はクイーン・ラティファ、ジミー・ファロン、アン=マーグレット、ジゼル・ブンチェン、ジェニファー・エスポジート、ヘンリー・ シモンズ、クリスチャン・ケイン、アナ・クリスティーナ・デ・オリヴェイラ、マガリ・アマデイ、イングリッド・ヴァンデボッシュ、 GQ、エイドリアン・マルティネス、パットン・オズワルド、ジョン・ロスマン他。


リュック・ベッソンが脚本と製作を手掛け、大ヒットしてシリーズ化されたフランス映画『TAXi』をハリウッドでリメイクした作品。
この映画にもベッソンはプロデューサーとして携わっている。
イザベルをクイーン・ラティファ、ウォッシュバーンをジミー・ファロン、彼の母をアン=マーグレット、ヴァネッサをジゼル・ ブンチェン、ロビンスをジェニファー・エスポジート、ジェシーをヘンリー・シモンズ、マリンズをクリスチャン・ケインが演じている。
監督は『バーバーショップ』のティム・ストーリー。

「リュック・ベッソンの脚本&製作」ということで想像が付く人もいるだろうが、オリジナル版はホントに脳味噌カラッポでテキトーな 話だった。ものすごく粗が多く、手抜き感たっぷりの内容だった。
ただし、それをリメイクするに当たって、「頭をカラッポにして何も考えず、後になれば忘れるが、その時は能天気に楽しめる映画」と して仕上げることは充分に可能なはずだ。
ところがベッソンの製作だと彼の色に染まってしまうのか、もしくはハリウッド版の脚本家も同じ類だったのか、「話が超テキトーで雑 すぎる」という部分を引き継いでしまった。しかもオリジナル版に輪を掛けてダメなスクリプトに改変している。オリジナル版でマトモに 機能していた部分さえ、全てぶっ壊していく。
リュック・ベッソンよりダメな脚本って、余程のことだぜ。

日本公開時の宣伝では、クイーン・ラティファが主演だということは全くアピールされていなかった。テレビの予告CMにも、ポスター にも、彼女の姿は無かった。
主演女優を無視した宣伝ってのは普通では有り得ないが、その戦術が間違いだとは思わない。日本で彼女はそれほど有名ではないし、 知らない人からすると「ただの太った黒人のオバサン」でしかない。そして、ただの太った黒人のオバサンが主演だということで、客が 呼べるとは思えない。
というか、そもそもクイーン・ラティファを主役に据えたのって、アメリカ市場を考えても、どうなのかと思うんだよな。
いや、訴求力が云々ということじゃなくてさ、ミスキャストなんじゃないのかと。
とてもスゴ腕の走り屋には見えないのよ。
ただの肝っ玉オバさんにしか見えないんだよな。
主演予定だったアイス・キューブがダメになって、「だったら同じ太った黒人で、女に変えようか」というテキトーな思い付きで配役 したのかと邪推したくなる。

クイーン・ラティファが「ダントツで速い自転車便のライダー」として登場するところからして、違和感があるのよね。
そもそも、自転車で始めること自体が果たして賢明な判断だったのかどうかということもある。BMXアクションって、それなりに 惹き付けるモノがあると思うのよ。で、そうなると、そのまま自転車によるアクションをメインにした方がいいんじゃないかと思ったりも してしまうのよ。
それと、「走り屋気質でカーレーサー志望の女が、なぜ今まで自転車便の仕事をやっていたんだろうか」という疑問も生じる。
いや、一応は「タクシーを手に入れる金を貯めていた」ということなんだろうとは思うよ。でもさ、自転車から始めることの意味が 分からんのよ。
タクシー業を始めてすぐに「車が変形してスーパーチャージャーで猛スピード」というのも違和感が強く、そこは「既にカミカゼタクシー として営業しており、それが初めてじゃない」という設定で入った方が自然に受け入れられるはずだ。

ウォッシュバーンがカード偽造犯を追跡する時、自ら「車のキーを貸せ」と積極的に運転を買って出るのは、いかがなものか。
幼少時代のトラウマが原因で運転が下手だという設定なのだから、そこは「運転に恐怖を感じている」という描写になるべきだ。だったら 、相棒から運転を指示され、「怖い」と言い出せずに強がってハンドルを握るが失敗するという流れにすべきではないのか。運転が弱点 だと自覚しているのに、なぜ自ら名乗りを挙げるのか。
あと、ウォッシュバーンがえらく癇に障るキャラになっているんだが、オリジナル版のエミリアンって、ここまで神経を逆撫でするキャラ だったかなあ。
彼だけじゃなくて、なんかベルもジェシーもロビンスも、みんなオリジナル版より好感度がグッと下がっている感じがする。
ウォッシュバーンのママは好感度が云々という以前に、登場シーンが取って付けた感覚に満ち溢れている。

犯人4人組の仲間であるブラジル人の男やスカリアが終盤まで出てこないのは、計算できてないなあと感じる。
ベルが4人組追跡のために協力を要請する自転車便の面々は、冒頭で顔は見せているが、「その場でサヨナラ」的な扱いに見えた。
終盤の大事なところで絡むなら、途中でも存在アピールをしておくべきだ。
っていうか、そこに来て自転車便に頼っていること自体がどうなのよ。そこは自分たちで何とかしろよ。
最後は強引極まりない形でカーチェイスに持って行くが、もう少しスムーズに行けただろうに。

(観賞日:2008年3月22日)


第22回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪のカップル】部門[クイーン・ラティファ&ジミー・ファロン]

ノミネート:【最悪の助演女優】部門[アン=マーグレット]

 

*ポンコツ映画愛護協会