『TAXi 3』:2003、フランス

マルセイユの刑事エミリアンは8ヶ月前から出没しているサンタクロース強盗団を追い掛けていたが、37回連続で逃げられていた。強盗団のことで頭が一杯のエミリアンは、同棲中の恋人ぺトラの妊娠にも気付いていなかった。一方、エミリアンの友人でスピード狂のタクシー運転手ダニエルは愛車を雪上仕様に改造し、恋人リリーに愛想を尽かされる。
女性ジャーナリストのキウが警察署を訪れ、ジベール署長は喜んで取材を受けた。その時、署長宛に「5分後に銀行を襲う」と書かれたサンタクロース強盗団からの犯行予告が届いた。ジベール署長と部下は銀行を包囲するが、サンタクロース強盗は車で突破する。警察は追跡するが、サンタクロース強盗団に逃げられてしまった。
キウはジベールの前に再び現れ、マッサージをする。しかし、キウはジベールが眠った隙にパソコンからデータを盗み出した。一方、エミリアンとダニエルは顔を合わせ、どちらも恋人の妊娠に気付いたことを語る。2人は通り掛かったサンタクロース強盗団を尾行するが、アジトを調べようとしたエミリアンが捕まってしまう。
強盗団のボスは、キウだった。強盗団はエミリアンを監禁したまま、最後の計画を実行した。強盗団はエミリアンの監禁場所に処刑装置を仕掛け、逃亡した。ダニエルは監禁場所に駆け付け、エミリアンを救出する。ダニエルとエミリアンは残された手掛かりを元に推理し、サンタクロース強盗団を追ってスイスのスキー場所へタクシーで向かった…。

監督はジェラール・クラウジック、脚本はリュック・ベッソン、製作はリュック・ベッソン&ロラン・ペタン&ミシェル・ペタン、製作総指揮はベルナール・グルネ、撮影はジェラール・ステラン、編集はヤン・エルヴェ、美術はジャック・ビュフノワール、衣装はアニエス・ファルク、音楽はDJコア&DJスカルプ。
出演はサミー・ナセリ、フレデリック・ディフェンタール、ベルナール・ファルシー、バイ・リン、エマ・シェーベルイ、マリオン・コティヤール、エドュアルド・モントート、ジャン=クリストフ・ブーヴェ、レオン=ピエール・モンディーニ、ベルナール・ロピス、ジャン=ルイ・シュレッサー、ジャン=ピエール・マス、ミシェル・ニューガーテン、パトリス・アブー、クロード・シセ、シリル・ブリュネ他。


リュック・ベッソンが脚本と製作を務めるカーアクション・コメディーのシリーズ第3作。
監督は2作目に引き続き、ジェラール・クラウジック。ダニエル役のサミー・ナセリ、エミリア役のフレデリック・ディフェンタール、ジベール役のベルナール・ファルシー、ペトラ役のエマ・シェーベルイ、リリー役のマリオン・コティヤールといった主要キャストは1作目から変わらず。他に、キウ役でバイ・リン、エミリアンの相棒の黒人刑事アラン役でエドュアルド・モントートが出演している。

このシリーズの最大のセールスポイントといえば、もちろんカーチェイスである。ダニエルをスピード狂のタクシー運転手にしている意味は、そこにある。
しかし今回、激しいカーチェイスは皆無に等しい。
広々とした雪山を、のどかに走るシーンはある。しかし、なぜか強盗団は車よりも、ローラーブレードを使いたがるのである。

カーチェイスが出来ない理由の1つに、今回の悪党が中国人だということがある。
1作目の敵がドイツ、2作目の敵が日本で、それぞれ悪党の乗る車はドイツ車、日本車に設定されていた。しかし中国の場合、フランスでも通用するような有名な車が無いのである。だからタクシーと強盗団とのカーチェイスは無いのだ。
というか、そんな国を悪党に設定するなよ。

いつの間にかリュック・ベッソンは、「頭の悪い脚本を書かせたら世界ナンバーワンかもしれない」という人になってしまった。実はアンディー・シダリスよりオツムが悪いんじゃないか、エロいサービス精神が無い分だけシダリスよりタチが悪いんじゃないかと、そんなことを思ったりもしている。
さて、話の順を追って、その頭の悪さを表記していこう。まずアヴァン・タイトルでは、ジャッキー・チェン作品など様々な映画からネタを拝借し、組み合わせている。ちなみにアヴァン・タイトルの内容は、本編とは全く関係が無い。カメオ出演のスタローンが登場した後、オープニング・タイトルで『007』のネタ。
スタローンと全く関係が無い。

さて、サンタクロース強盗は8ヶ月前から37回も現れているのだが、わざわざ夏場からサンタクロースの格好をしている意味が無い。一応、「クリスマスにサンタの格好で目を紛らせて逃亡するので、そのための準備だった」と言っているが、何の説明にもなっていない。
8ヶ月前からサンタの格好をしていたら、むしろ冬場でも怪しまれて逆効果だろうに。

ジベールは「潜入捜査のため」ということでサンタクロースの扮装をしていたため、エミリアンに捕まる。
あのねえ署長、サンタクロース強盗を捕まえるためにサンタの格好をしても、それは潜入捜査にならないのよ。アンタは強盗団の前にサンタの格好で現れて、「俺も仲間だぜ」とでも言い張るつもりだったのか。

強盗団は、なぜか犯行予告を送るという無意味なことをする。
で、わざわざ予告してもらった警察は、これ幸いとばかりに銀行を包囲するのだが、強盗団は車で脱出。強盗団は確か10人ぐらいいたと思うのだが、車はたった1台だ。ギュウギュウ詰めだな、おい。
そんで警察は何をしているのかというと、逃げる車をボーッと見ているだけで追い掛けない。
ようやく警察は車を調達して、強盗を追跡する。しかし、強盗も警察も、なぜ猛スピードで走ろうとせず、ノンビリしたものだ。
それはカーチェイスではなく、ただのドライブだ。
で、しばらく真っ直ぐ進んでいると、ジベールの車がプールに転落する。真っ直ぐ走っていたのに、なぜか先行する強盗の車は転落せず、後ろの車だけが落ちる。

キユはどうやら機械音痴のようで、インタヴューの際もレコーダーは使わず、手帳にメモを取る。まあ、それはいいとしても、コンピュータからデータを盗み出す時に、フロッピーなどの記録媒体は使わず、コードを貼り付けるという方法を取る。しかもデータが入っているのはハードディスクなのに、なぜかディスプレイに貼り付ける。
エミリアンは強盗団に捕まるが、なぜかキウは拷問せずにフェラチオする。
友人が捕まったのに、なぜかダニエルは警察に連絡したり救出しようとしたりしない。
キウは強盗の後、5分経つと鉄球が落ちてきて人間を押し潰すという最新の処刑装置(どこがだ)をエミリアンにセットする。普通、そこは時限爆破装置だろ。
で、ダニエルが駆け付けた後、エミリアンは椅子から飛び降りて鉄球から逃げる。
おいおい、ってことは最初から椅子に固定されてなかったのか。だったら、椅子から降りれば鉄球に潰されないってことだろ。動けないようにしておかないと、全く意味が無いじゃねえか、その処刑装置。

強盗団の最後の計画は、銀行襲撃の後でデパートの出口からサンタの格好で堂々と逃げるというもの。で、それに気付いた警察は、なぜか「強盗は車で突破してくる」と考え、重装備でデパートを包囲。
いやいや、「強盗はサンタの格好で堂々と出てくる」と考えるのが正解だろ。
で、警察の動きに気付いた強盗は、サンタの格好で堂々と逃げる。
そりゃ、そうなるわな。だって、警察の対策は、「サンタの格好で堂々と逃げる」という作戦に対するものじゃないんだから、強盗としては最初の計画のままでいいわけだ。

ダニエルは強盗の残した車からこぼれる水で、「水が冷たいのは山、山といえばスイス」ということで強盗団がスイスに逃げたと推理。
これが当たっているんだから、どうしようもない。
で、さらに強盗団がヘリポートがあるスキー場に向かったことも分かる。なぜフランスのヘリポートへ行き、そこからヘリでスイスへ逃げないのかは不明。もはやスイスに逃げられた時点でダメなんじゃないかと思うのだが、そんなことはお構いなし。
とりあえず、雪山でタクシーを走らせたかったんだろう。
スイスなのに当たり前のようにフランスの警察が仕事をしているが、そんなことを気にしてはいけない。
そうそう、ここまでの表記だとリュック・ベッソンだけが悪いみたいだけど、演出もヘロヘロよ。

 

*ポンコツ映画愛護協会