『ターザン:REBORN』:2016、アメリカ&イギリス&カナダ

レオン・ロムはムール大尉の軍隊を率いてコンゴを移動し、秘境のオパールを発見した。しかし肌を白く塗った現地の蛮族に襲われ、軍隊は全滅する。ムボンガ首長は握っていたダイヤの原石をロムに見せ、「これが欲しくて来たんだろ。引き換えに何を?」と質問する。ロムが「何でも言ってくれ」と告げると、ムボンガは「奴をここに連れて来い。そうすればダイヤをやる」と述べた。イギリスのロンドン。ジョン・クレイトンは、ベルギー国王であるレオポルド2世からの招待状を受け取った。それはコンゴへ赴き、現地に建設した学校や教会を視察するよう依頼する書状だった。
レオポルド2世はコンゴを支配しているが、多額の借金を抱えて有力なビジネスパートナーを探していた。イギリス首相と大臣たちはコンゴに介入する絶好の機会だと捉え、招待を受けるようジョンに求めた。会合に同席した米国特命公使のジョージ・ワシントン・ウィリアムズは、「君はターザンだ。レオポルド2世が君を招いたのは、ジャングルの王が感激する様子を同行記者に報じさせたいのだ」と話す。ジョンは「断る。もうアフリカは見飽きた。陛下には丁重にお詫びを」と言い、ジョージに「私の名はターザンではない。ジョン・クレイトン、貴族院のメンバーだ」と述べて去った。
ジョージはジョンを追い掛けて非礼を詫び、視察団に加わることがアメリカの目的だと明かす。ベルギーのコンゴ支配を真っ先に認めたアメリカは、そこで得られる利益から外されることを危惧していた。ジョージは「私には別の目的がある。レオポルド2世は何かを隠している。財政破綻した国の王が、どうやって植民地を維持できる?奴隷だろう。真実を知りたい。君も知りたいはずだ」と語った。彼は「君は誰よりもアフリカに通じている。不正を見つけたら世界を訴えてほしい。世界は君の言葉を信じるはずだ」と言い、「手続きは全て済ませる。リバプールで会おう」と告げて去った。
帰宅したジョンは、妻のジェーンにコンゴへ行くことを話す。ジェーンは8年ぶりに旧友たちと再会できることを喜ぶが、ジョンは「休暇じゃないんだ。連れて行けない」と告げる。それでもジェーンが譲らないので口論となり、父の日記を読んだジョンは「村から出ない」という条件で彼女の同行を承諾した。ジョンとジェーンはジョージと共に、アフリカの草原を移動した。ロムはボマの港へ赴き、クレイトン夫妻とジョージが乗船したことを確認した。
銀行家のフラムから「まんまとジョンに逃げられたな」と激怒されたロムは、落ち着いた態度で「彼らは最初の寄港地で船を降り、故郷のクバへ向かいました」と教えた。すぐに追い掛け、ターザンを捕まえて戻ります。1週間お待ちを」と彼が言うと、フラムは「いつまで待たせるんだ。返済期限は3ヶ月も前だぞ。もう時間稼ぎは無理だ」と告げる。しかしロムがダイヤの原石を見せると、彼は「残りと引き換えに傭兵部隊を渡す」と述べた。
ジョンたちはクバへ戻り、ワジリ族の族長であるムヴィロや村人のワシンブたちと再会した。ジェーンが育った家は、当時と変わらぬ状態で残されていた。ムヴィロは夜になると見張りを立て、疑問を抱くジョンに「噂が流れてきた。奴隷商人が人を漁っている」と告げた。その夜遅く、ロムの率いる部隊がクバへ乗り込んで来た。ロムはジョンとジェーンを捕まえ、奴隷にする10人を選ぶよう部下に命じた。彼は村に火を放ち、船着き場へ向かった。
ジョージがワシンブを含む村の若者たちと共に船着き場へ乗り込み、部隊と戦ってジョンを解放した。ロムはジョンがジェーンを必ず助けに来ると確信し、奴隷にしたワシンブたちも連れて船で逃亡した。ジョンは自分が狙いだと分かっており、村の若者たちを率いてムボンガの集落へ行くことにした。ジョンは同行を志願したジョージと共にジャングルを突き進み、奴隷を運ぶ列車に飛び乗った。ジョンは公安軍の兵士を次々に叩きのめし、ジョージが発砲して脅しを掛けた。
公安軍に同行していたフランス人技師は、橋を架けるために800人の奴隷が集められていることを話す。彼が「ロムの軍隊のためだ。鉄道と船の通れる川を組み合わせれば、コンゴ全域の60%は3日以内で移動できるようになる。50の砦は出来たが、兵が来ていない。何ヶ月も前に来るはずだったが、給与の支払いが遅れているらしい。数は2万で、全て傭兵だ」と説明すると、ジョージはロムが奴隷王国を築き上げる計画を立てていると悟った。
ロムの部下はワシンブを檻に閉じ込めて海上に吊るし、ジェーンに「下手な真似をすると彼が死ぬ」と通告した。ロムはジェーンに会食を強要し、「王の軍隊は3日後に到着します。後はターザンをムボンガに引き渡せば終わりだ」と告げる。ジェーンはムボンガを知っており、「なぜ彼は御主人を憎むのですか」という問い掛けに「一人息子を殺したの」と答えた。ジョンは「ロムは俺が始末する。もう2日も無駄にした」と言い、列車を途中で降りた。ジョージは同行していたワジリ族のクエテに不正の証拠資料を委ね、ジョンと行動を共にすることにした。
ジョンはクエテに「ボマで落ち合おう。もし戻らなかったら、証拠はロンドンの首相に渡せ」と告げ、ジョージと共に徒歩で草原を移動する。ジャングルに入ったジョンは、かつて共に暮らしたゴリラの群れと遭遇した。リーダーのアクートは、かつてジョンと共に育った乳兄弟だった。ジョンは上着を脱ぎ捨て、群れから逃げたと思っているアクートと戦った。叩きのめされた彼は跪いて服従の意を示し、ジョージにも同じ行動を指示した。彼らを受け入れたアクートは、その場から静かに去った。
ジェーンはワシンブに、原住民の言葉で「仲間を集めて」と指示を出した。彼女は見張りの隙を見て川へ飛び込み、ワシンブを檻から救出する。ジャングルに入ったジェーンはワシンブに仲間の元へ行くよう指示し、彼と別の道を進む。ゴリラの群れと遭遇した彼女は跪いて服従の意を示し、ロムも彼女に従う。しかし部隊はジャングルのルールを無視して群れを攻撃し、「やめて」というジェーンの叫び声を耳にしたジョンは崖からジャングルに飛び降りた…。

監督はデヴィッド・イェーツ、原作はエドガー・ライス・バローズ、原案はクレイグ・ブリュワー&アダム・コザッド、脚本はアダム・コザッド&クレイグ・ブリュワー、製作はジェリー・ワイントローブ&デヴィッド・バロン&アラン・リッシュ&トニー・ルドウィグ、製作総指揮はスーザン・イーキンス&ニコラス・コルダ&キース・ゴールドバーグ&スティーヴン・ムニューチン&デヴィッド・イェーツ&マイク・リチャードソン&ブルース・バーマン、共同製作はスコット・B・チェリン、撮影はヘンリー・ブラハム、美術はスチュアート・クレイグ、編集はマーク・デイ、衣装はルース・マイヤーズ、特殊視覚効果はティム・バーク、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ。
出演はアレキサンダー・スカルスガルド、サミュエル・L・ジャクソン、マーゴット・ロビー、ジャイモン・フンスー、クリストフ・ヴァルツ、ジム・ブロードベント、ベン・チャップリン、サイモン・ラッセル・ビール、ユール・マシテン、シドニー・ラリツォエレ、ローリー・J・セイパー、クリスチャン・スティーヴンズ、オシー・イカイル、メンス=サナ・タマクロエ、アントニー・アチームポング、エドワード・アペアギエイ、アシュリー・バイアム、キャスパー・クランプ、アダム・ガンヌ、アレクサンダー・ミキッチ、ゲイリー・カーギル、ショーン・スミス、イアン・マーサー他。


エドガー・ライス・バローズの冒険小説『ターザン』シリーズをモチーフにした作品。
監督は『ハリー・ポッター』シリーズの第5作から第8作までを手掛けたデヴィッド・イェーツ。
脚本は『エージェント:ライアン』のアダム・コザッドと『ハッスル&フロウ』『ブラック・スネーク・モーン』のクレイグ・ブリュワー。
ジョンをアレキサンダー・スカルスガルド、ジョージをサミュエル・L・ジャクソン、ジェーンをマーゴット・ロビー、ムボンガをジャイモン・フンスー、ロムをクリストフ・ヴァルツ、イギリス首相をジム・ブロードベント、ムールをベン・チャップリン、フラムをサイモン・ラッセル・ビールが演じている。

ムボンガが率いる蛮族は、あっという間に部隊を全滅させられるほどの戦闘能力を持っている。
その戦闘中、ロムは姿を隠して怯えている。ところが1人の戦士が近付いて襲い掛かると、見事な身のこなしで始末してみせる。
それはキャラの動かし方として、あまりにも不自然だわ。こいつのキャラ設定を考えても、そんな意外な戦闘能力なんて全く要らないんだし。
そこは「襲って来た戦士を返り討ちにする」という余計なシーンなんて挟まず、「ロムがムボンガと交渉する」という手順を片付ければ済むだけでしょ。

ジョンが「リバプールで会おう」と言うジョージと別れた後、カットが切り替わるとクレイトン邸の外観が写し出される。すると「家族を守る。そのために、あらゆる手を尽くした。船が難破してからは、獣の脅威にさらされてきた」というモノローグが語られ、ジョンの父が赤ん坊を産んで死んだ妻を埋葬する様子や、赤ん坊がゴリラに育てられる様子が回想シーンとして挿入される。
だけど、そのモノローグを語るのがターザンの父なので、「どういうことだよ」と言いたくなる。
回想シーンが終わった後、例えば「父の残した日記をジョンが読んでいた」という様子が描かれたとしたら、それは理解できるのよ。でも、そういう手順が無いので、「既に死んでいる人間のモノローグが入るのは変でしょ」と言いたくなる。
その出来事をジョンが回想しているような見せ方をしているのも、やっぱり変だし。自分の両親が難破してアフリカに辿り着いたことも、母が自分を出産したことも、彼は絶対に見ていないんだからさ。

今回の映画は「ターザンがジャングルで生まれ育って動物たちと仲良くなり、やがてジェーンと出会って云々」という、最も有名な物語を採用していない。ジョンが英国で貴族となり、ジェーンと暮らしている状態から物語がスタートする。
原作は長いシリーズであり、ジョンが英国へ戻った後の物語も描かれているので、この映画のために用意された完全オリジナルの後日談というわけではない。
ただ、これまで数多くのターザン映画が製作されているものの、その続編というわけではなく、あくまでも独立した1作として製作されているわけで。
それなのに、「ターザンがジャングルで生まれ育って云々」という部分を過去の出来事にしているのは、かなり大胆だ。

一応、ターザンの両親が船の難破でアフリカに流れ着いたことや、赤ん坊のターザンがゴリラに育てられたことは、短い回想シーンの中でチラッと触れている。
しかし、それはターザンの有名な物語を知らない人からすると、何のフォローにもならない程度のモノだ。
この映画は明らかに、「観客はターザンの有名な物語を知っている」という前提で製作されている。
まあ実際、それを描いた映画や小説に触れたことが無くても何となく知っている人が大半だろうから、その説明を省くってのは、そこまで無茶な判断とも言えないだろう。

ただ、そうやって「ジャングル時代のターザン」の物語を過去の出来事として扱うのなら、彼が幼い頃の回想シーンを挿入するのは無駄な手順でしかない。前述したように、そんなのはターザンを知らない人からすると何の助けにもならないし、知っている人からしても半端な説明でしかないからだ。
どっちにしろ脳内補完しなきゃ全く意味が無い程度の回想シーンなので、そんなことで話の流れを止めたり時間を使ったりしているデメリットの方が圧倒的に大きい。
いっそのこと、そういう回想シーンを全面的にカットした上で、ジョンのジャングル時代を知らない人物を同行させた方が良かったんじゃないか。そして彼の視点から物語を描けば、「立派な貴族だと思っていたジョンが、ジャングルの王としての姿を見せるので驚く」という形になる。
もちろん大半の観客は、かつてはジョンがジャングルの王だったことを知っている。それでも、「何も知らない人物が別の一面を見て驚く」という様子を描くことで、そこに面白味が出たんじゃないかと思うんだけどね。
っていうか、その役割をジョージに任せればいいと思うんだけど、彼は最初からターザンのことを良く知っている設定なのでね。

っていうか、そうでもしなければ、有名な物語を選ばずに「貴族として暮らすジョンがジャングルへ戻る」というエピソードを使っている意味が薄いんじゃないかと思うのよ。
そういう物語を採用するからには、「都会での生活に染まっていたジョンが次第に野性を取り戻して云々」みたいな展開があるんだろうと思っていた。
しかしジョンは最初から、ずっと中身はターザンなのだ。格好が違って普通に英語を喋っているだけで、野生としての能力は全く衰えていない。
なので彼がアフリカに到着すると、後は「ターザンが悪党と戦ってジェーンを救う」という、ジャングルを出て8年も経過している設定が全く活用されない単純明快な活劇が待ち受けているだけだ。

クバに到着した後、ジェーンがジョージに「ジョンはゴリラに育てられてジャングルの王になった。ある部族が大人への通過儀礼として家族を襲ったので、ジョンは人間を敵だと思っていた。でもムヴィロは彼の生い立ちを知り、あるがままを受け入れた」などと話すシーンがある。
そこには補足として過去の映像も挿入されているが、これも前述した回想シーンと同様、「ジョンの過去を紹介する」という意味では無駄でしかない。
ただし、そこは「その時の因縁でムボンガがジョンを恨んでいる」というトコに関わって来るので、一応は意味があると言ってもいいだろう。
でも「だったら、そういう因縁話とか無しにすれば良くねえか」とは思うけどね。どうせ、そこをドラマの中で上手く活用できているとは言い難いんだし。

その回想の後には、ジェーンがジョンと出会った頃の回想シーンも挿入される。こっちに関しては、完全に要らないシーンだと断言できる。
っていうかさ、ホントに回想シーンが多いのな。
これが「現在の物語に過去が大きく関わって来る」とか、「むしろ過去の方がメインで、基本的には回想劇として構築されている」とか、そういうことなら回想シーンが多いのは何の問題も無いよ。だけど、そうじゃなくて「現在の物語が、ほぼ全て」という内容のはずでしょ。
なので、やたらと回想で時間を費やすのは、「現在の物語の薄さを誤魔化している、もしくは回想シーンが長いせいで現在の物語が薄くなっている」としか思えんのよ。

もう1つの問題として、ジェーンの回想シーンで成長したジョンの姿を見せているってことが挙げられる。それはジャングルの王だった頃なので、つまり「上半身が裸のターザン」としての姿だ。
そういうのを回想シーンで先に見せるって、どういうセンスなのかと。
わざわざジョンが貴族として暮らしている状態から始めたんだから、「それまではビシッとスーツで決めていたジョンが初めて上半身裸になり、ジャングルの王としての姿を披露する」ってのは、物語を盛り上げる大きな要素のはずでしょ。それなのに、ターザンとしての姿を回想シーンで先に見せちゃったら、せっかくの仕掛けが台無しでしょうに。
ただでさえ現在のシーンに使う時間が回想シーンで浸食されているのに、「ジョンがコンゴへ行く前に父の日記や思い出の品を見る」とか、「ロムが船でジェーンと会食して饒舌に喋る」とか、まるで物語に面白味を与えないような出来事に余計な時間を費やしている。
大体さ、そこまで回想シーンを何度も入れるぐらいなら、変に捻らず素直に「赤ん坊のターザンがゴリラに育てられてジェーンと出会って」という有名な話にしておけばいいじゃねえか。

終盤、ジョンはムボンガに「こんな戦いは終わりにしよう。本当の敵は誰か良く考えろ」と説き、ジョージは「ロムはお前たちを殺すぞ」と訴える。
これによって和解は成立しているので、「終盤の戦いにムボンガが部族を率いて加勢する」という展開があるのかと思いきや、そんなシーンは無い。
ロムが倒された後、盛り上がっている原住民の中に紛れ込んでいるようだけど、その程度だ。
だから「ムボンガはジョンを憎んでいたけど和解する」というエピソードは、消化不良で終わっている。

また、クライマックスの戦闘では動物たちが参加するのだが、その種類にも違和感がある。
ジョンが「友達を呼んで来る」と言って連れて来るのがヌーの群れなんだけど、そいつらって、そこが初登場なのよね。
そこはゴリラの群れじゃないのかと言いたくなるが、なんせ大半が殺されているので使えないんだよな。とは言え1頭は残っているんだけど、こいつも「ヌーの群れに指示を出す」という仕事だけ。
その後でジョンが窮地に陥るとワニの群れが現れるけど、そこも「そこで初登場するワニなのかよ」と言いたくなる。
ジョンがヌーやワニと絆で結ばれていることなんて全く描かれていなかったのに、なんでライオンやゴリラじゃなくて、そいつらの方が活躍する様子をクライマックスに持って来るのかと。

(観賞日:2017年12月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会