『タンク・ガール』:1995、アメリカ

2033年、巨大彗星が衝突したため、地球は滅亡寸前だった。11年も雨が降らず、地表は砂漠と化していた。ケスリー率いるウォーター&パワー公社は、砂漠の95パーセントを支配し、わずかに残された水の権利を独占していた。
レベッカは、ウォーター&パワー社の水と電力を拝借しつつ、砂漠のボロ家で恋人リチャードや少女サムと共に暮らしていた。だが、ウォーター&パワー公社の兵隊が家を襲撃し、リチャードは殺され、レベッカは捕まってしまった。
レベッカは囚人となり、ウォーター&パワー公社の地下作業場で働かされる。彼女は戦車を見つけて乗り込み、逃げ出そうとする。確認コードが分からなかったため、催涙ガスで眠らされそうになるが、囚人のジェット・ガールに助けられる。しかし戦車は動かず、レベッカはケスリーとスモール軍曹に捕まって監禁された。
ケスリーは、水を強奪するリッパーの一味に悩まされていた。リッパーは、人間とカンガルーのDNAを合わせて作られたミュータントだ。ケスリーはリッパーの秘密基地を探し出すため、レベッカに発信機を取り付けて隠し通路に入らせようとする。
だが、そこにリッパー達が現れ、ウォーター&パワー公社の連中を襲撃する。身を隠して助かったレベッカは、駆け付けたジェット・ガールと共に、戦車を奪って逃亡する。2人は戦車を改造し、売春宿で下働きをさせられているサムの救出に向かう。
ケスリーはリッパーの襲撃で重傷を負い、顔と右腕を潰されていた。彼はチェツァイ医師の治療によって機械の右腕を手に入れ、顔をホログラムにして復活した。ケスリーはレベッカが売春宿に向かったことを知らされるが、全て彼の計算通りだった。
レベッカはサムを見つけ出し、店のマダムを銃で脅した。だが、そこへウォーター&パワー公社の兵隊が襲い掛かり、サムを連れ去ってしまう。レベッカは、サムの救出のためには仲間が必要だと考え、リッパー達を探すことにした。しかし、レベッカとジェット・ガールはリッパーの秘密基地に監禁され、彼らの仕事を手伝わされることになる。
レベッカとジェット・ガールが指示されたのは、ウォーター&パワー公社の荷物を強奪するという仕事だ。2人は仕事を遂行してみせたが、荷箱に入っていたのはリッパー達を作った博士の死体だった。怒ったリッパー達は、レベッカのサム救出作戦に協力することになった。しかし、それも全てケスリーの筋書き通りだった…。

監督はレイチェル・タラレイ、原作はアラン・マーティン&ジェイミー・ヒューレット、脚本はテディ・サラフィアン、製作はリチャード・B・ルイス&ペン・デンシャム&ジョン・ワトソン、共同製作はクリスチャン・L・Rehr、製作総指揮はアーロン・ワーナー&トム・アストー、撮影はゲイル・タッターサル、編集はジェームズ・R・サイモンズ、美術はキャサリン・ハードウィック、衣装はアリアンヌ・フィリップス、リッパー・デザインはスタン・ウィンストン、視覚効果監修はピーター・クロスマン、アニメーション・デザイナーはマイク・スミス、音楽はグレーム・レヴェル。
出演はロリ・ペティー、マルコム・マクダウェル、アイス・T、ナオミ・ワッツ、ドン・ハーヴェイ、レグ・E・キャセイ、スコット・コフィー、ジェフ・コーバー、ステイシー・リン・ラムソワー、アン・キューザック、ブライアン・ウィマー、イギー・ポップ、ドーン・ロビンソン、ビリー・L・サリヴァン、ジェームズ・ホン、チャールズ・ルシア、ハーラン・クラーク、ダグ・ジョーンズ、エイタ・スカンラン他。


イギリスでカルトな人気を博したパンクコミックを映画化した作品。
レベッカ(タンク・ガール)をロリ・ペティー、ケスリーをマルコム・マクダウェル、ジェット・ガールをナオミ・ワッツ、スモール軍曹をドン・ハーヴェイ、サムをステイシー・リン・ラムソワーが演じている。

オープニングロールでは、漫画が使われている。これがポップでカラフルで、雰囲気もノリノリで気持ちいい。ところが、このオープニングが終わって実写に入った途端、一気に期待が萎む。色彩は暗くなるし、オープニングにあったノリの良さも消えてしまうからだ。
漫画のレベッカは、パンキッシュでボーイッシュだが、キュートな雰囲気を持っている。ところが、実写に登場するレベッカは色気も何も無くて、ヒロインとしては、かなり厳しい。色気が無くてもカッコ良さがあるのかというと、それも無い。あのキャラクター造形でキュートな魅力が無かったら、ただのガラの悪いアンポンタン女になってしまう。

劇中、コミック原画が何度も挿入される。しかし、その使い方がおかしい。例えば、漫画でレベッカのボロ家やウォーター&パワー公社の建物の外観を見せる。そこから実写で同じ情景を見せるのかと思ったら、内部の様子に移ってしまうのだ。
レベッカ達が序盤で襲撃される場面では、彼女が殴られた瞬間に漫画の吹き出しで「アタシ気絶」と入る。しかし、そこまでのアクションシーンがタルいので、漫画を挿入してもノリの良さに繋がらない。終盤には、アクションの途中で漫画を入れるという演出もあるが、これもグルーヴしておらず、ギクシャク感を強めるだけになっている。

ボロ家と公社の建物については、後から外観が映し出される。これが凡庸で、何の魅力も無い。先に見せられていた漫画のイメージからは、かなり遠い。もっとチープなら逆にアリかもしれないが、ギャグにもならないようなショボさなのだ。
漫画の部分はカラフルでポップなのに、それが実写には全く反映されていない。漫画の部分に比べて、実写の映像イメージが貧困なのだ。どうして漫画のように原色を使ったカラフルな色使いにせず、ものすごく地味なカラーリングにしたのだろうか。

登場キャラクターにしたって、もっとカリカチュアライズして、マンガチックにすりゃ良かったのに。そこを中途半端にしちゃってる。乗り物や建物の造形にしても、タンク以外は凡庸。そこも思い切ってマンガチックにしちゃえば良かったのに。
タンクが改造される辺りで、ようやく少しだけポップな感覚、カラフルなイメージが出てくる。ただし、それはタンクがポップになり、レベッカの見た目がカラフルになっただけのこと。全体的なイメージは、相変わらず地味。これ、夜ばかりってのもマイナスなのでは。漫画だと夜でもカラフルに出来るけど、実写だと屋外では難しいからね。

確かに、舞台が砂漠なので、そこでカラフルに見せるってのは難しい部分もあるだろう。だけど、だからこそ余計に、乗り物や建物や道具のカラーリングは考えなきゃいけないんじゃないの。漫画を超えるぐらいのカラフルな色付けでもいいぐらいなのに。
漫画をそのまま再現すれば、それで必ずしも映画が面白くなるというわけではない。しかし、色もノリも消して凡庸でイメージで塗り潰すのが間違いだということは、誰だって分かる。漫画を挿入して誤魔化そうとしても、逆に漫画部分のポップでカラフルなイメージが、実写の貧困なイメージを際立たせてしまうという皮肉に陥っている。

コミック原画だけではなく、その原画を使ったアニメーションも何度か挿入される。これがスピード感もグルーヴ感もあって、なかなか楽しい。いっそアニメーション映画にすれば良かったんじゃないかと思うぐらいだ。でも、あれが2時間ぐらい続くと疲れるかな。
土台にバカさ加減が足りないからグルーヴしてないのに、キャラクターに半端にバカな行動をやらせるから、完全に空回りしている。空気が温まっていないのに、バカなことをやっても寒いだけでしょ。結婚式のスピーチでウケを狙ってスベるみたいなモノよ。

映画は後半、連れ去られたサムを助けに行くのかと思ったら、レベッカ達がリッパーに捕まって仕事をさせられることになる。これ、逆にすべきでしょ。前半で公社からレベッカが逃亡した時に、リッパー達に捕まって仕事をさせられ、仲間になっておく。そんで、サムが連れ去られた時に、リッパーに協力してもらう流れの方がいい。
この映画の進め方だと、サムが連れ去られてピンチなのに、レベッカはリッパーと仲間になって、なんかウダウダやってるという状態になってるのね。つまり、話が停滞してしまっているわけ。グズグズせずに、早くサムを助けに行けよって話だもんね。

ヒロインもタンクも、それほど活躍するわけじゃない。
行き当たりばったりの展開の中で、レベッカは大半の時間、フラフラしてる。
カメラワークに冴えが無いから、アクションの面白さも味わえない。
売春宿でみんなが歌って踊り始めるシーンは、ちょっと面白くなりそうな感じだったが、そこも中途半端なままで、歌の途中で終わっちゃうしなあ。

 

*ポンコツ映画愛護協会