『トランザム7000 PART3』:1983、アメリカ

還暦を迎えたジャスティス保安官は引退セレモニーを開くが、会場に足を運んだ客は少なかった。そこへビッグとリトルのイーノス親子が現れ、賞金25万ドルのレースを持ち掛けた。ジャスティスが「フロリダで息子のジュニアと余生を送る」と拒否すると、イーノス親子は気が変わったら連絡するよう告げて去った。フロリダでの生活を始めたジャスティスは、すぐに飽きた。彼がジュニアを連れてイーノス親子の元へ行くと、マスコミが集まっていた。
イーノス親子はジャスティスに、「明日の午後5時半までにテキサス州オースティンのイーノス牧場に到着すれば賞金25万ドル。負ければバッジを貰う」と説明する。マイアミから牧場までは約2200キロで、ジャスティスは楽勝だと考える。イーノス親子はジャスティスの車の屋根に自分たちが経営するフィッシュ&チップス店のマスコットであるサメの作り物を取り付け、フランチャイズのための広告が目的だと告げた。ジャスティスはジュニアほ車に乗せ、余裕の態度で出発した。
ジャスティスは出発直後から道に迷い、なかなかマイアミを出られない。イーノス親子は幾つもの妨害工作を用意しており、ジャスティスはガス欠や渋滞などのトラブルに見舞われた。ビッグは確実な保険として、タンクローリーに道を塞がせた。しかしジャスティスは全く動じず、スピードを上げてタンクローリーを突き抜けた。ビッグはスノーマンに連絡し、25万ドルの報酬で仕事を依頼した。スノーマンは快諾してバンディットに変装し、イーノス親子が用意したトランザムに乗り込んだ。
中古車店で働くダスティー・トレイルズは、経営者のステップに騙され続けて来た。とうとう耐えられなくなった彼女は、町を出ることに決めた。スノーマンのトランザムが通り掛かると、ダスティーは停止させて助手席に乗り込んだ。スノーマンは母親トラッカーと遭遇し、バンディットだと自己紹介する。母親トラッカーは彼に、ジャスティスが近くにいることを教えた。スノーマンはジャスティスの背後から忍び寄り、サメを奪って挑発する。ジャスティスがスノーマンを追跡していると、地元の保安官であるベートーヴェンが発見する。すぐに後を追った彼は、自分に任せるようジャスティスに告げる。しかしジャスティスが拒否したため、ベートーヴェンは対抗心を見せる。彼は停止中の車に激突して横転し、ジャスティスはスノーマンの追跡を続行した。
スノーマンは工事現場に入り、ショベルカーを操縦している男たちに頼んでジャスティスのパトカーを砂で埋めてもらった。スノーマンがハンバーガー店に立ち寄ると、荒っぽいバイカーたちの溜まり場になっていた。スノーマンが店に入ってハンバーガーを注文しようとすると、パンチを浴びて追い出される。諦めずに再び店へ入ると、また殴られた。しかし3度目は相手を殴り倒し、他の連中もKOした。彼はハンバーガーを受け取り、余裕の態度でトランザムに戻った。
またジャスティス親子に追われたスノーマンだが、簡単に振り切った。ジャスティスは行く手を塞いだ大型トラックに腹を立て、運転手にバックするよう要求した。彼がトラックを誘導している間に、婦人警官が違法駐車でパトカーを検挙していた。彼女が相棒のチャーリーにパトカーをレッカー移動させようとすると、ジャスティスは激怒し田。彼はジュニアにフックを外させ、その場から逃亡した。スノーマンがジャスティスの追跡を受けてトランザムを走らせていると、カースタントのイベント会場に迷い込んだ。観客はショーの一環だと思い込み、2台の走りを見て盛り上がった。
スノーマンはイベント会場から逃走するが、橋の工事で道路が封鎖されていた。そこで彼は来た道を戻り、途中にあったモーテルで宿泊することにした。実は、橋の工事はイーノス親子が仕掛けた罠だった。親子は作業員役として雇った男たちの元へ行き、ジャスティスの時も同じように追い払うよう指示した。ジャスティスはモーテルの駐車場に停まっているトランザムを見つけ、スノーマンの捜索に向かった。イーノス親子もサメを見つけるため、女装してモーテルに侵入した。ダスティーが席を外している間に、スノーマンは眠りに就いた。戻って来たダスティーは、自分のベッドに置いてあったサメを廊下に出した。
イーノス親子はサメを見つけ、持ち去ろうとする。しかしパンツ一枚の男たちに囲まれ、部屋に連れ込まれた。ジャスティスはサメを発見し、モーテルを去ろうとする。彼はサウナにバンディットがいると思って手錠を掛けるが、それはカウボーイハットを被ったティナという女性だった。ジュニアが手錠の鍵を車に置いて来たため、ジャスティスはティナと手錠で繋がれたまま窓から外へ出た。ジャスティスは牧場を目指すが、イーノス親子の妨害でタイヤがパンクしてしまう。ジャスティスとジュニアが車を離れている隙にスノーマンが追い付き、サメを奪い返して牧場を目指す…。

監督はディック・ロウリー、キャラクター創作はロバート・L・レヴィー&ハル・ニーダム、脚本はスチュアート・バーンバウム&デヴィッド・ダシェフ、製作はモート・エンゲルバーグ、撮影はジェームズ・パーゴラ、美術はロン・ホブス、編集はバイロン・“バズ”・ブラント&デヴィッド・ブルウィット&クリストファー・グリーンバリー、音楽はラリー・キャンスラー。
主演はジャッキー・グリーソン、共演はコリーン・キャンプ、パット・マコーミック、ジェリー・リード、マイク・ヘンリー、フェイス・ミントン、バート・レイノルズ、シャロン・アンダーソン、シルヴィア・アラナ、アラン・バーガー、レイモン・ブシャール、コーニー・ブライトン、アール・ヒューストン・ブロック、エヴァ・カデル、キャシー・ケイヒル、デイヴ・キャス、レオン・チートム、キャンディス・コリンズ、ピーター・コンラッド、ジャニス・カミンズ、ジャッキー・デイヴィス、ディー・ディー・ディーリング、アル・デ・ルカ他。


『トランザム7000』シリーズ第3作。
監督はTV映画『愛しのジェーン・マンスフィールド』『トム・ソーヤとペテン師たち』のディック・ロウリー。これが初めての、そして唯一の劇場映画。
ジャスティス役のジャッキー・グリーソン、リトル役のパット・マコーミック、スノーマン役のジェリー・リード、ジュニア役のマイク・ヘンリーは、シリーズのレギュラー。
ダスティーをコリーン・キャンプ、ティナをフェイス・ミントン、ベートーヴェンをレイモン・ブシャールが演じている。

原題は「Smokey and the Bandit Part 3」だが、「Smokey」はハイウェイのパトロール警官を意味する言葉であり、つまりジャスティスのことだ。そして「Bandit」はトラック運転手のバンディットのことで、つまりバート・レイノルズが演じる主人公を指している。
ところが今回は、そんなバート・レイノルズが主役を降板している。
彼と前2作の監督を務めたハル・ニーダムは、『ストローカー・エース』の製作に取り組んでいたのだ。だから今回は、タイトルと内容に大きなズレが生じているのである。
ちなみにバート・レイノルズだけでなく、バンディットの恋人のキャリーを演じていたサリー・フィールドも出演していない。

途中、車を運転するスノーマンの体が急に太くなるシーンがある。それは、ジェリー・リードではなくジャッキー・グリーソンのスタント・ダブルが運転しているシーンだ。
どういうことかと言うと、当初はスノーマンではなくジャスティスがバンディットになる内容で企画が進められ、そのシナリオで撮影も済んでいたのだ。
ところが試写の評判が悪かったため、スノーマンがバンディットに変装する話に変更して再撮影された。
しかし再撮影前のスタントシーンも残ったため、そういうことが起きたのだ。

前2作のジャスティスは、バンディットの逮捕に執念を燃やして追い掛け続ける保安官だった。それが今回は、退屈を持て余してイーノス親子の賭けに乗っている。
それはキャラ設定が変化してないか。すぐにスノーマンをバンディットだと思い込んで追い掛けるようになるが、最初からそっちで良かっただろうに。
で、今回はスノーマンがバンディットとして行動することにより、タイトルの「Bandit」の部分を補おうとしているわけだ。
でも「偽者が本物に成り済まして行動する」ってのは、本物がいてこそのネタじゃないかと思うのよ。
偽者だけが最初から最後まで本物として行動する様子を見せられても、それはバッタモンみたいな映画でしかないのよ。

ジャスティスがマイアミを出発すると、イーノス親子が妨害工作を繰り返す。そのせいでジャスティスがトラブルに見舞われるケースもあるが、一方でジャスティスが難なく突破してイーノス親子が酷い目に遭うケースもある。
そのため、そこに統一感が無いと感じる。
それと、全てがイーノス親子による妨害工作というわけではなくて、それとは全く無関係なトラブルにジャスティスが巻き込まれることもある。
なので、そういう意味でも統一感が取れていない。

スノーマンがバンディットに化けて登場すると、今度はイーノス親子がすっかり消えてしまう。そして今度は、「スノーマンを追い掛けるジャスティスが酷い目に」というパターンが基本形になる。
ただし、ここでも統一感は皆無で、その場だけ登場するベートーヴェンが酷い目に遭ってジャスティスはノーダメージというエピソードが早々と入る。
パトカーをレッカーされそうになるエピソードでは、婦人警官とチャーリーが酷い目に遭い、ジャスティスは高笑いを浮かべる。
でも、そこは絶対にジャスティスが痛い目を見るべきシーンなので、そこで彼が婦人警官をギャフンと言わせて嘲笑しても、ギャグシーンとして気持ち良くないのよ。

これだけでも既に散らかっているのだが、スノーマンがハンバーガー店で荒らくれ者に殴られるエピソードも入る。
ここはジャスティスが絡んでいないので、どうやっても彼が酷い目に遭う内容には出来ないのだが、「スノーマンのエピソード」としてもガッチリと固まっていない。
スノーマンは2度目に店へ入っても殴られるが、3度目は余裕で相手をノックアウトする。
そんなに強いのなら、1度目と2度目でパンチを浴びせて追い出されるのは筋が通らないでしょ。まだ1度目は不意打ちだとしても、2度目は要らないでしょ。
そこに天丼としての効果なんて無いよ。

イーノス親子はジャスティスに勝たせたくないので、スノーマンに25万ドルの報酬で妨害を依頼する。ところが、今度は「スノーマンにも勝たせたくない」ってことで、イーノス親子が彼の妨害工作を始める。
そうなると、余計な手間が掛かるわけで。
それならスノーマンに仕事を頼まず、ジャスティスだけを妨害すれば良かっただろうに。スノーマンを勝負に引き込む理由がデタラメだわ。
その辺りは、慌ててシナリオを変更した影響が出ているってことなのかねえ。

今回はヒロインとしてダスティーという新キャラが登場するのだが、存在意義は皆無に等しい。
スノーマンを単独で動かすと会話の相手がいないから、そのためだけに配置しているようなモンだ。
そこにロマンスがあるわけでもないし、ダスティーがトラブルメーカーとして使われているわけでもない。ジャスティスやイーノス親子との絡みで話を盛り上げるわけでもない。
ティナの存在意義は、もっと乏しい。何のために登場させたのか、サッパリ分からない。

それにしても、「ジャスティスがバンディットに化ける」というシナリオで、どこに勝算があると思ったんだろうか。
そもそも、バート・レイノルズが降板したのに3作目を作ろうという時点で、「そこまでして作る意味があるのか」と言いたくなるわ。
まあ、ともかく今回はシリーズ3作目と言うよりも、実質的にはスピン・オフだよね。
ちなみに本物のバンディット、つまりバート・レイノルズは、ラスト直前にジャスティスの妄想として1シーンだけ登場する。
特別ゲストみたいなモンだね。

(観賞日:2022年5月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会