『トランザム7000VS激突パトカー軍団』:1980、アメリカ

ビッグ・イーノスは次の州知事を目指し、息子のリトルを伴って選挙演説を行う。しかし同じく次期州知事を目指すジャスティス保安官の嫌がらせを受けたため、すぐに報復した。州知事はビッグ、リトル、ジャスティスを呼び出し、「私は引退するが、幾ら金を積まれても、お前たちは推薦しない。消え失せろ」と激怒した。知事室を出たビッグは、知事が電話で「マイアミで荷物を受け取り、ダラスの党大会へ9日以内に届けろ。党幹部への贈り物だ。絶対に送れるな」と話している声を盗み聞きした。
ビッグは州知事の推薦を取り付けるため、腕のいい運び屋を雇おうと考える。彼はリトルを引き連れてトラック・レースの開催されているサーキットへ向かい、優勝したスノーマンに声を掛けた。ビッグはスノーマンにバンディットの居場所を尋ね、荷物を運ぶ仕事があることを明かす。20万ドルの報酬を持ち掛けられたスノーマンは、仕事を承諾する。バンディットがヨレヨレで使えないという噂をイーノス親子から確認された彼は、「元気バリバリだ」と否定した。
バンディットはキャリーに捨てられ、酒浸りの生活を送っていた。彼が宿泊するモーテルへ赴いたスノーマンは、「イーノス親子と会う間はシャキッとしてくれ」と頼む。バンディットをベッドに座らせたスノーマンはイーノス親子を招き入れ、上手く交渉して報酬を倍額に引き上げた。キャリーはジャスティスの息子であるジュニアとヨリを戻し、結婚式を挙げようとしていた。そこへスノーマンから電話が入り、バンディットを助けてほしいと頼まれる。「5万ドル出す」と言われた彼女は「すぐ行くわ」と答え、教会を去った。
キャリーがモーテルに到着すると、バンディットと言い争いになった。スノーマンが仲裁に入ると、キャリーはバンディットに「愛情のカケラは残っているけど、あくまでも目当てはお金よ」と告げた。バンディットがトレーニングを積むことで日数が経過し、期限まで残り4日になった。彼は大量の缶ビールを購入するために、トランザムを売り払っていた。しかしキャリーがジュニアの車を下取りに出して、新しいトランザムを調達した。
バンディットとキャリーがトランザム、スノーマンがトラックに乗り、?3人はマイアミを目指して出発した。バンディットが女にモテモテだと自慢するので、キャリーは嫌味を浴びせた。倉庫に到着した3人は荷物を受け取ろうとするが、警備責任者から「積荷は検疫で3週間の足止めた」と告げられる。深夜の倉庫に潜入した3人は、積荷が象だと知った。シャーロッテと名付けた象は、バンディットに懐いた。バンディットが指示すると、シャーロッテはトラックの荷台に自ら乗り込んだ。
3人が倉庫を出発しようとすると、ジャスティスとジュニアがパトカーで現れた。ジャスティスは拳銃を構え、バンディットたちを逮捕しようとする。しかしバンディットはジャスティスを挑発して弾丸を全て使わせ、倉庫から逃走した。バンディットがガソリンスタンドに給油で立ち寄ると、スノーマンは「シャーロッテの様子がおかしい」と言い出した。田舎なので獣医など見つかりそうもないが、運良く救急車がガソリンスタンドに停車した。運転手がトイレに駆け込んでいる間に、バンディットたちは救急車のドクと接触する。ワインとパンで昼食を楽しんでいるドクに、3人は「女性を診察してほしい」と依頼した。
ドクは診察対象が象だと知って怯えるが、シャーロッテがおとなしいと分かって歩み寄った。彼は「アスピリンを飲ませて、明朝に電話してくれ」と言い、メモを渡して去ろうとする。しかしトイレから戻った運転手は、ドクを置いたまま救急車で出発してしまった。ドクはシャーロッテの診察を引き受け、その代わりにトラックへ乗せてもらった。しばらく進んだ一行は、可動橋でジャスティス&ジュニアのパトカーを目撃する。一行は仲間のブルドッグ・ジョンにパトカーの行く手を塞いでもらい、その間に逃走した。ジャスティスは可動橋を強引に渡ろうとするが、パトカーごと川に落下した。
休息を取ったバンディットたちは、ドクに金を渡して診察の続行を頼む。ドクはシャーロッテの妊娠に気付き、出産が近いことを3人に知らせた。次の日、一行が走っていると、ジャスティス&ジュニアのパトカーが追って来た。バンディットはカーチェイスに誘い、移動遊園地の会場へ乱入する。彼は建設中のローラーコースターを崩落させ、ジャスティスのパトカーを撒いて走り去った。ジャスティスはジュニアに、カナダのケベックに住む兄と弟を呼び寄せて対抗する作戦を話した。
ドクはバンディットたちに、「シャーロッテの陣痛が始まりそうだ。トラックの外で寝かせるべきだ」と告げる。バンディットが「すぐに出発するぞ」と主張すると、ドクは「赤ん坊が死んでも知らんぞ」と言う。スノーマンは「赤ん坊を死なせてまで金は欲しくない」と口にするが、バンディットは激しく反発する。彼はキャリーに、「これが名前を上げる最後のチャンスだ」と述べた。スノーマンが「俺たちは働き過ぎだ。町に出て景気よくやろうぜ」と提案すると、バンディットは声を掛けて来た黒人少年のアンソニーに金を渡して象の番を頼む。4人は町へ繰り出し、カントリー歌手のドン・ウィリアムズが出演している酒場に入った…。

監督はハル・ニーダム、キャラクター創作はハル・ニーダム&ロバート・L・レヴィー、原案はマイケル・ケイン、脚本はジェリー・ベルソン&ブロック・イェーツ、製作はハンク・ムーンジーン、製作協力はピーター・バーレル、撮影はマイケル・バトラー、美術はヘンリー・バムステッド、編集はドン・キャンバーン&ウィリアム・ゴーディーン、サリー・フィールド衣装はボブ・マッキー、音楽監修はスナッフ・ギャレット。
出演はバート・レイノルズ、サリー・フィールド、ジャッキー・グリーソン、ジェリー・リード、ドム・デルイーズ、ポール・ウィリアムズ、パット・マコーミック、デヴィッド・ハドルストン、マイク・ヘンリー、ジョン・アンダーソン、ブレンダ・リー、ザ・スタットラー・ブラザーズ、メル・ティリス、ドン・ウィリアムズ、テリー・ブラッドショー、“ミーン・ジョー”・グリーン、ジョー・クレッコー他。


1977年に公開された映画『トランザム7000』の続編。
監督は前作に引き続いてハル・ニーダムが担当。脚本は『おかしな泥棒ディック&ジェーン』のジェリー・ベルソンと、これがデビューとなる自動車ジャーナリストのブロック・イェーツによる共同。
バンディット役のバート・レイノルズ、キャリー役のサリー・フィールド、ジャスティス役のジャッキー・グリーソン、クリーダス役のジェリー・リード、リトル役のポール・ウィリアムズ、ビッグ役のパット・マコーミック、ジュニア役のマイク・ヘンリーは、前作からの続投。他に、ドクをドム・デルイーズ、ジョンをデヴィッド・ハドルストン、知事をジョン・アンダーソンが演じている。
また、カントリーのコーラス・グループであるザ・スタットラー・ブラザーズ、カントリー歌手のドン・ウィリアムズ、当時は現役NFL選手だったテリー・ブラッドショー&ジョー・グリーン&ジョー・クレッコーが、それぞれ本人役で出演している。

監督と主要キャストが続投しているので、前作と同じく陽気で能天気なテイストに満ち溢れている。
序盤、バンディットがヨレヨレで使えないという噂についてイーノス親子から問われたスノーマンは、「元気バリバリよ」と否定する。直後にカットが切り替わると、酒を飲んでヨレヨレになっているバンディットの姿が写し出される。
ベタっちゃあベタだけど、分かりやすい笑いの作り方だ。
ちなみに前作でバンディットが運んだのはクアーズ・ビールだったが、そのシーンで飲んでいる缶ビールはバドワイザーだ。

スノーマンはバンディットに「5分でいいからシャキッとしてくれ」と頼み、ベッドに座らせて喋らせないようにする。イーノス親子を部屋に招き入れた彼は、「バンディットは禅に凝ってて口を利かないんだ」と言う。
バンディットはヘラヘラして白目を剥き、すぐに後ろへ倒れ込む。その度にスノーマンが「あまり仕事をやる気が無いみたいだ」などと嘘をつき、顔を近付けてバンディットの言葉を聞いているフリをしてイーノス親子と交渉する。
バカバカしいけど、嫌いじゃないよ。
バンディットが「冴えてるトコを見せてやる」と言って歩き出した途端、ベッドにつまずいて派手に転倒するのも、ドリフ的で分かりやすい。

ジャスティスは脳卒中予防の警報器を腕に装着しており、血圧が上がると鳴る仕掛けだ。そして警報機が鳴ると、ジャスティスは両手を水平に上げて呆けた表情を浮かべ、「ウォーン、オーン」と低い声で唸る。
それは彼曰く「おまじない」で、そうすると血圧が下がるのだ。
結婚式直前に婦人から「前回は花嫁さんがバンデイットと駆け落ちして」と言われると警報機が鳴り、「今回もバンディットと駆け落ちするかも」と言われると再び鳴る。バンディットの名前が出ると血圧が鳴り、おまじないをするために動きが止まるってのが、何度も繰り返される。
いわゆる「天丼」って奴だね。
キャリーが式場を去ろうとする時も、ジャスティスは立ちはだかって止めようとするが、警報機が鳴ったのでおまじないをしている間に逃げられる。

結婚式の最中、教会に置いてある電話が鳴り、神父が出る。
そもそも、教会に電話が置いてあるのも、結婚式の最中に神父が出るのも変だが、そこでマジに批判していたら、こんな映画は最後まで見ていられない。ただのクズであり、そんな映画を観賞するのは時間の無駄遣いでしかない。
なので、そういうのを温かい目で見るべき作品である。
なかなかハードルが高いように思えるかもしれないけど、前作と同じく「オツムをカラッポにして観賞するポップコーン・ムービー」なので、そういうモンだよ。

さて、神父から「花嫁さんに長距離電話です」と言われたジュニアは、キャリーに出るよう促す。キャリーが「今は出ない方がいいんじゃない?結婚式の最中だし」と言うと、ジュニアは「出なきゃ悪いよ、長距離だし」と告げる。
攻撃的でカッとしやすいジャスティスとは対照的に、息子のジュニアはノンビリした性格で、お人好しな性格だ。
っていうか、かなりのアホだ。
だからキャリーがスノーマンからの依頼を引き受け、「いい子で待っててね。山ほどお金を持って帰って、アンタが欲しがってた乳搾り器を買ってあげるわ」と話すと、呑気に「いいね、その内、牛だって買えるかもね」と答えて彼女を行かせてしまう。

キャリーがモーテルへ来た後、すぐにマイアミへ向かって出発するのかと思いきや、バンディットがゴルフ場や競馬場で走ったり、ジムでマシーンを使ったり、カートを走らせたりする様子がダイジェスト的に描写される。
「酒浸りで鈍った体を元に戻すためのトレーニングが必要」ってことだろうけど、期限は9日しか無いのに、そんなことで何日も費やしてどうすんんのかと。
たった数日で元に戻るわけもないし、テンポは悪くなるんだから、さっさと出発した方がいい。そんなトコで時間を使うぐらいなら、キャリーがジュニアの車を下取りに出してトランザムを購入する手順をセリフだけじゃなくて映像付きで見せた方が、遥かに有意義だ。
あと、タイムリミットが設定されているのに、そこを使ったサスペンスも全く用意されていない。

前作と同様に、ファイヤーバード・トランザムを使う必要性は全く無い。3人がトラックで積荷を運べば、それで成立する話だ。トラックの護衛として、トランザムが機能しているわけでもない。
何しろ離れて走行するシーンもあるぐらいだし、今回の仕事は護衛が必要な内容でもないし。
そこを納得させるための答えは、今回も用意されていない。
荷物を届ける仕事をバンディットたちが引き受けるんだから、本来なら乗り物のメインはトラックじゃなきゃいけないはずなのに、トランザムがメインになってしまうという問題は今回も解消されていない。
トランザムをメインに据えたいのなら、そもそもトラックで荷物を運ぶという話にしている時点で間違いだわな。

ジャスティスは倉庫でバンディットたちに逃げられた時、警報機が鳴る。
ところが、「もう警報機なんかに構っていられるか」と言い放ち、それを無視してバンディットたちを追い掛ける。
それはダメでしょ。「警報機が鳴ったら、おまじないをするために動きが止まる」というネタを持ち込んだのなら、それは最後まで使わないと。
途中で変化を加えるのなら構わないけど、放棄するのはダメ。しつこくても、パターンは繰り返すべきだわ。

序盤の展開は、ヌルいっちゃあヌルいし、ユルいっちゃあユルい。ただし、それは「37度ぐらいの湯船に浸かっている」という感じで、ちょっとヌルいけど居心地は悪くない。
しかし話が進む中で、その印象が変化する。
キャリーがバンディット&スノーマンと合流して3人が揃ったら、そこからはギアを上げてテンポ良く進めるべきなのに、むしろダラけてしまう。
ザックリ言うと前作と同じことの繰り返しなのだが、そのマンネリズムは、ある程度は仕方が無い。でも、前作よりも劣化している印象が強い。

変化を付けるために投入したはずのドクとシャーロッテは、あまり上手く機能してるとは言い難い。
ドクが「シャーロッテは妊娠しており、24時間は休ませないと」と説明すると、バンディットは「すぐに出発するぞ」と主張する。
しかし、キャリーが嫉妬させる態度を取り、シャーロッテがバンディットを鼻で抱き上げると、何となくヌルッと解決してしまう。
「バンディットの怒りをユーモアで解決しよう」という考え方は悪くないんだけど、どうにもキレが悪い。

ドクが「トラックの外でシャーロッテを休ませるべき」と主張した時も、バンディットは激しい怒りを示す。
キャリーに「俺だって赤ん坊を死なせたくないが、最後のチャンスだ」と彼は話すが、スノーマンから「町へ出て景気良くやろう」と提案されると、すぐに承諾する。そしてアンソニー少年に象の番を任せて、酒場へ繰り出す。
いやいや、なんでだよ。
象の出産が近いのなら、付いているべきじゃないのか。酒場で盛り上がっている場合じゃないだろ。
その間に産気づいたら、どうするつもりなのかと。

結局のところ、「積荷は象」「象は妊娠しており、出産が近い」という設定は、仕事を成功させるための旅路を止めてダラダラするためにしか使われていないのよね。
シャーロッテは早い段階でバンディットに懐くけど、そこの絆がドラマとして昇華することも無い。
ドクは登場した時に陽気な様子でワインを飲みながら昼食を取っているけど、ほぼ出オチに近い。
それ以降は、「シャーロッテの診察係」という以上の役目を全く果たさず、個性の強さは発揮されない。

町へ繰り出したバンディットは、ネットでシャーロッテを吊るして運ぶ方法をキャリーに話す。キャリーは名声を得ることばかり考えるバンディットに憤慨し、彼の元を去る。
だが、それでバンディットが改心することはなく、シャーロッテを吊るして輸送を開始する。
そのことでシャーロッテが危険な状態に陥ったり、バンディットが反省したりすることも無い。
そりゃあ、走り続けなきゃカーアクションは出来ないけど、やはり象の仕掛けが充分に機能しているとは言い難い。

途中でシャーロッテは産気付くが、無事に胎児を産む。
そこまで来て、ようやく「バンディットがダラス行きを断念し、キャリーと仲直りする」という展開になるけど、もう映画が終わる寸前なのよね。
どうせ最終的に「バンディットが改心して象を優先する」という形に着地することは分かり切っていて、そこに向けたドラマをいかに描写するかってのが重要なのに。
そこを大雑把に流して、ゴールだけ辻褄を合わせたような状態になっている。

(観賞日:2016年9月17日)


1980年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(女性)】部門[サリー・フィールド]
ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジャッキー・グリーソン]
ノミネート:【最もでしゃばりな音楽】部門
ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(男性)】部門[ジャッキー・グリーソン]
ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会