『トランザム7000』:1977、アメリカ

クアーズ・ビールを無許可でジョージア州に持ち込んだトッドというトラック運転手が、保安官に逮捕された。「ある親子と賭けをしただけですよ」と釈明するトッドに、保安官はイーノス親子が多くの運転手と同じ賭けをしていることを教えた。ジョージア州アトランタで開催されているトラック・ロデオ大会の会場を訪れたイーノス親子は、伝説のトラッカーであるバンディットと会って賭けを持ち掛ける。8万ドルの成功報酬を提示されたバンディットは、トラックを守る新車の購入費用を要求した。
28時間でクアーズ・ビール400ケースをテキサスから運ぶ仕事を成功させるため、バンディットは元相棒のスノーマンに協力を求める。最初は難色を示したスノーマンだが、すぐに承知した。飼い犬のフレッドを連れていくことにしたスノーマンに、バンディットは購入したファイヤーバード・トランザムを見せる。「今回の仕事はトラックしか使わないぜ」とスノーマンが言うと、バンディットは「お前がトラックに乗って、俺はこれで護衛する」と説明した。
テキサスに到着した2人は、誰もいない店から勝手にビールを持ち出した。アトランタへ戻る途中、道路の真ん中にウェディングドレス姿のキャリーという女が立ちはだかり、バンディットは慌ててブレーキを掛ける。するとキャリーは、いきなり助手席に乗り込んで来た。バンディットが車を発進させると、キャリーは式場から逃げて来たことを話す。キャリーはドレスを脱ぎ捨てて私服に着替えながら、自分がダンサーだったこと、展示会で出会った男との結婚話が知らない内に進んでいったことを語った。
キャリーの結婚相手であるジュニアは、ジャスティス保安官の息子だった。ジャスティスは自分の顔に泥を塗ったキャリーに激怒し、息子を伴って捜索していた。ジャスティスはキャリーを見失った追跡隊の青年たちの元へ行き、彼女を乗せた車の情報を聞いた。スピード違反のトランザムはパトカーに追われるが、あっさりと撒いてみせた。ジャスティスのパトカーが後ろに付くと、バンディットはスピードを上げて軽く引き離し、トラックの前に出た。
ジャスティスは前に出ようとするが、トラックとぶつかりそうになり、バランスを失って道路脇に停まった。ジャスティスは無線を使い、誰もバンディットに手出ししないよう要求した。アーカンソー州のブランフォード保安官は、「ここはアンタの管轄外だ。後は当方で処理する」と彼に告げた。ブランフォードはパトカーで道路を封鎖するが、バンディットはハイウェイを外れて林道を逃走する。バンディットは橋の落ちている場所へ来てしまうが、ジャンプしてパトカーの追跡を撒いた。
スノーマンから無線で「このままじゃ間に合わないぞ」と言われたバンディットは、「レストランで女を降ろして仕事に戻る」と返した。バス乗り場の隣にあるレストランで車を停めたバンディットは、彼女を見送ってからチーズ・バーガーとアイス・ティーを注文する。そこにジャスティスが入って来るが、彼はバンディットが追っている相手だと気付かなかった。ジャスティスがトイレへ入るのを見届けたバンディットが外へ出ると、キャリーがトランザムで逃げようとしていたので、慌てて飛び乗った。
キャリーはバンディットに、「本当は降ろされるのが嫌で、口実を探してた」と打ち明けた。バンディットの友人であるグレイヴが仲間と共にジャスティスのパトカーを通せんぼし、時間稼ぎをして協力した。バンディットはスノーマンと合流し、キャリーを紹介した。彼は無線のチャンネル変更を指示し、車に戻った。ミシシッピー州のガソリンスタンドに停まったバンディットは、ジャスティスから無線で「必ず貴様を捕まえてやるぞ」と言われ、余裕の態度でバカにする言葉を返した。
アラバマの州境で警官隊が道路を封鎖して待ち受けるが、バンディットは脇道を利用して簡単に回避した。バンディットの仲間であるトラッカーは、わざとジャスティスのパトカーにぶつけて走り去った。バンディットは仲間の老女から情報を得て、危険なルートを避けた。彼は時間を潰すため、森の中で車を停めてキャリーと散歩する。スノーマンは腹ごしらえをするため、ラマーのレストランに立ち寄る。キャリーはバンディットに惹かれており、それとなく彼の気持ちを確かめる。バンディットは帽子を脱ぎ、彼女とキスを交わす…。

監督はハル・ニーダム、原案はハル・ニーダム&ロバート・L・レヴィー、脚本はジェームズ・リー・バレット&チャールズ・シャイア&アラン・マンデル、製作はモート・エンゲルバーグ、製作総指揮はロバート・L・レヴィー、撮影はボビー・バーン、編集はウォルター・ハンネマン&アンジェロ・ロス、音楽はビル・ジャスティス&ジェリー・リード。
主演はバート・レイノルズ、共演はジャッキー・グリーソン、サリー・フィールド、ジェリー・リード、マイク・ヘンリー、ポール・ウィリアムズ、パット・マコーミック、アルフィー・ワイズ、ジョージ・レイノルズ、メイコン・マッカルマン、リンダ・マクルーア、スーザン・マッカイヴァー、マイケル・マン、ローラ・ライザー、ラマー・ジャクソン、ロニー・ゲイ、クイノン・シェフィールド他。


後に『キャノンボール』や『メガフォース』などを手掛けるハル・ニーダムの監督デビュー作。
バンディットをバート・レイノルズ、ジャスティスをジャッキー・グリーソン、キャリーをサリー・フィールド、スノーマンをジェリー・リード、ジュニアをマイク・ヘンリー、リトル・イーノスをポール・ウィリアムズ、ビッグ・イーノスをパット・マコーミック、ブランフォードをジョージ・レイノルズが演じている。
カントリー歌手でもあるジェリー・リードは、挿入される3曲の歌唱も担当している。

原題は『Smokey and the Bandit』で、もちろん「Bandit」は主役であるバンディットのことだ。
でも「Smokey」という名前のキャラは登場しないので、どういう意味なのかと思ったら、それはハイウェイのパトロール警官を意味する言葉だった。
バンディットが主役だから『Bandit and the Smokey』の方が内容に合致しているんじゃないかと思ったが、『Smokey and the Bandit』の方が語呂はいい。
語呂で原題を決めたのかどうかは知らないが、『トランザム7000』という分かりやすい邦題にした日本の担当者は正解だと思う。

ハル・ニーダムはスタントマンとしてキャリアを重ね、バート・レイノルズのスタント・ダブルも担当して、この2人は仕事を通じて仲良くなった。
その後、ハル・ニーダムはスタント・コーディネーターの仕事が多くなる中でスタンツ・アンリミテッドという会社を設立し、この映画の原案を担当した。
主演が決まっていたバート・レイノルズの勧めで、ニーダムは初監督を務めることになった。
この映画はヒットし、2本の続編が作られた。

1961年に映画デビューしたバート・レイノルズは、アクション俳優として着実に評価を高めていった。
1972年には雑誌『コスモポリタン』でヌードを披露し、セクシーな色男としても人気を得た。
1970年代は彼の絶頂期であり、1972年の『シェイマス』、1973年の『白熱』、1974年の『ロンゲスト・ヤード』、1975年の『ハッスル』、1976年の『ゲイター』など数々の映画で立て続けに主演した。
そして1977年に本作品で主演を務め、ヒットに導いたわけである。
前置きが長くなったが、そのように絶頂期のバート・レイノルズが主演し、ヒットして続編も作られた映画である。

普通に考えれば、かつてのバンディットはスノーマンと交代で1台のトラックを運転して仕事をやって来たわけで、今回だって同じように仕事をやればいい。
それを今回だけ「別の車で護衛する」ということにして、しかも護衛の車がファイヤーバード・トランザムってのは、不自然さが否めない。
で、なぜ今回はそんな仕事のやり方になっているかというと、それは「派手な車が走っている様子を見せたい」という理由に違いない。
トランザム7000なんて目立つ車、そんな闇の仕事に使うべきじゃないもんな。

とにかく能天気で御陽気な話である。
イーノス親子が「クアーズ・ビールをテキサスから移送する」という違法な仕事を高額の報酬を渡してまでトラッカーに頼むのは、「絶対にクアーズ・ビールが必要だ」という切羽詰まった理由があるわけではない。
単なる賭けであり、つまりゲーム感覚でやっているだけだ。
そんなゲーム感覚で、下手すりゃ警察に捕まる仕事を依頼されたバンディットは、8万ドルを提示されてホイホイと乗る。
コンビ再結成に難色を示したスノーマンも、報酬を聞かされると簡単に乗る。

スノーマンは「ここからテキサスまで、行きと帰りの900マイルをトラックで走り切った奴はいないぜ」と懸念を示すが、バンディットが「俺たちが挑戦しなかったからだ。俺たちは一度も失敗していないだろ」と言われると、「なるほど、そうだな」と納得する。
キャリーが車に乗り込んで来ると、バンディットは戸惑う様子も見せず、追い出そうともいない。
「動かないの?」と問われて、「そうだな」とすぐに出発する。
揃いも揃って、すげえ安易な連中ばかりだ。

最初から最後まで、物語はサクサクと進行していく。じっくりと人間ドラマを描くとか、キャラクターを深く掘り下げるとか、そういうことには目もくれない。
バンディットはイーノス親子に賭けを持ち掛けられたら、その場で承諾する。バンディットからコンビ復活を求められたスノーマンは、その場で承知する。
バンディットやスノーマンのキャラクター描写や周辺関係の紹介に時間を割くことも無く、コンビが復活したら、すぐに出発する。
出発したら挿入歌が流れ、あっという間にテキサスへ到着する。
映画開始からテキサスに到着するまでに、約15分しか費やしていない。

バンディットは無人の店から勝手にビールを持ち出すが、それが後からトラブルに発展するようなことも無い。
キャリーが式場から逃亡様子は描かれておらず、バンディットの車へ乗り込んで来た彼女のセリフだけで説明される。
ビュフォードもジュニアも、キャリーを捜索しているところで初登場する。
そうやって色んなことを簡単に処理してテキパキと進める理由は簡単で、ようするにカーチェイスを見せることが一番の、っていうか唯一の目的だからだ。

ただし、それは緊張感に満ちたカーチェイスではなく、そこも陽気で能天気なテイストに溢れている。
どれだけ危険な運転をする時でも、どれだけ多くのパトカーに追われても、バンディットは常に余裕を持っており、あくまでもカントリー・ミュージックが似合う雰囲気を守り続ける。
「バンディッドがパトカーに追われてスノーマンと離れてしまう」とか、「フレッドが湖で泳ぎ始めたのでスノーマンがバンデイットから引き離されてしまう」といった展開があるが、それがピンチやトラブルに発展することは無い。
バンディットは何事も無くスノーマンに合流するし、遅れて出発したスノーマンなど全く無視して物語は進行する。

特に後者に関しては、何のためにスノーマンの出発を遅らせたのかサッパリ分からん。
スノーマンはレストランでバイカーたちに殴られ、そいつらのバイクを全てトラックで踏み潰して去っているけど、それって出発が遅れなくても「バンディットと別ルートを走っている」とか、「腹ごしらえのためにスノーマンだけがレストランに立ち寄る」ってことでも成立するし。
もっと言っちゃうと、バンディットもジャスティスも関与しないところで、そんなエピソードを用意しなくてもいいんじゃねえのかと思っちゃうし。

ここまでの批評だと文句ばかり書いている感じだけど、「オツムをカラッポにして観賞するポップコーン・ムービー」としては、そんなに悪くないんじゃないかな。
個人的には、そんなに嫌いじゃない。っていうか、結構好き。「なんか憎めない映画」ってな感じなんだよな。
仲間のトラッカーたちがバンディットに協力して警察を妨害するとか、バンディットの応援団がいるとか、色んな所で『トラック野郎』シリーズを連想させて楽しいし。
そうそう、「トラック野郎」シリーズ第1作『御意見無用』は1975年封切だから、これの真似をしたわけじゃないのよね。こっちの方が後なのよ。

(観賞日:2014年4月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会