『007/慰めの報酬』:2008、イギリス&アメリカ

ジェームズ・ボンドはテロ組織の仲介人ミスター・ホワイトをアストンマーチンのトランクに押し込み、追っ手と激しいカーチェイスを 繰り広げた。彼は敵を蹴散らし、イタリアのシエナに辿り着いた。ボンドはMと部下たちが待つ地下室に行き、ホワイトを引き渡す。 「CIAはご立腹よ」と言うMに、ボンドは「ル・シッフルを確保したのに?」と告げる。Mが「彼の死体をね。ホワイトは?」と言うと 、ボンドは「黙秘している」と告げた。
Mはヴェスパー・リンドと恋人のツーショット写真をボンドに見せ、「ヴェスパーが救おうとした恋人よ。死体でイビサ海岸に漂着した。 ポケットにはIDがあった。彼女が小箱に入れていた毛髪をDNA検査したら、別人だった」と語る。ボンドは「そんなにセンチメンタル な女だったのか」とクールを装って告げる。「貴方のことは信じてもいいの?愛した女が死んで、復讐を考えてない?」とMに訊かれ、 ボンドは「ご心配なく」と返答した。
ボンドやMたちは、ホワイトの尋問を開始した。しかしボンドが「誰に雇われた」と尋ねると、ホワイトは余裕の態度で「ヴェスパーから 君のことは聞いているよ。彼女が自殺しなければ君は我々に寝返っていた。あれだけ惚れていたからな」と告げる。Mが「自分の立場を 考えなさい。無駄に痛い思いをしたいの」と言うと、ホワイトは笑って「我々の仲間はあらゆる場所に出向いている」と告げた。
Mの警護役だったミッチェルが拳銃を発砲したので、慌ててボンドは取り押さえようとする。ミッチェルが逃走したので、ボンドは後を 追って射殺した。地下室に戻ると、全員の姿が消えていた。ロンドンに戻ったボンドはMに呼び出され、「ミッチェルは在任8年で、 人物照明・嘘発見器テストに合格。5年間は私の警護を担当していた」と信頼していた部下だったことを語る。彼女は「尋問すれば何か 分かったのに、貴方が殺した」と怒った。
ボンドはMに「ホワイトの行方は?」と訊かれ、「何も。階段の警備員は殺されていた」と告げる。Mの部下のタナーがミッチェルに ついて調べるが、慈善事業に多額の寄付をしていたという程度しか判明しなかった。MI6はル・シッフルに入る洗浄用の金の行方を 追っていた。その内の一部が、スレイトという地質学の名前でハイチの銀行口座に預けられていることが判明した。そしてスレイトは今朝 、ロンドンからハイチへ入っていた。入国申告書では、滞在先はデサリヌ・ホテルの325号室だった。
ボンドはハイチへ飛び、デサリヌ・ホテルに向かった。325号室に忍び込んだボンドはスレイトに襲われるが、返り討ちに遭わせた。彼が フロントで伝言を確認すると、ブリーフケースを預かっていたので渡してもらう。ボンドが外に出るとカミーユという女が車で現れ、 「乗って」と告げる。ボンドが乗り込むと、彼女は「貴方、予想と違うわね。地質学者と聞いていたけど」と言う。カミーユはバイクの男 が尾行していることに気付き、すぐに撒いた。
カミーユが「値段を決めなきゃ。飲みながら相談を。ドミニクに問題は無い?」と訊くので、ボンドは「ああ」と答える。ブリーフケース を開けて書類を渡すと、それは白紙だった。「これは何?」と睨むカミーユに、ボンドは「君を殺す気かな」と答える。ブリーフケース には、拳銃とカミーユの写真が入っていた。いきなりカミーユが発砲してくるが、ボンドは回避して車を降りる。カミーユが走り去った 直後、バイクの男がやって来た。ボンドは「失敗しやがって」と言う男からバイクを奪い、カミーユを尾行した。
カミーユは埠頭へ行き、ドミニク・グリーンと会う。「私を殺そうとしたわね」と非難すると、「心が痛んだよ。会えなくなるからね」と 彼は微笑した。「私は味方なのよ。裏切り者を探ってた。その私を殺すの?」とカミーユが言うと、ドミニクは「いい物を見せよう」と 建物の外へ連れ出す。すると海に沈むスレイトの死体があった。「彼に情報を売る話をしたか」と尋ねるドミニクに、カミーユは「彼の方 から情報を売ると。嘘なら私がここに来ると思う?彼が貴方を裏切るのを防いだのよ」と抱き付いた。
ドミニクは「見え透いた嘘は腹が立つ。メドラーノ将軍に近付くために俺と寝たんだろ」と言い、埠頭に近付くボートを指示した。その ボートにメドラーノが乗っている。ドミニクは「失脚した独裁者は、まず身の安全を守りたがる」と口にした。ドミニクはメドラーノと 2人になり、「政府の地盤は揺るぎ始めてる。既に26ヶ国がアンタの新しいボリビア政権を承認すると約束してる。返り咲きたいだろ?俺 の組織なら1週間で実現できる」と語った。「求める見返りは?」と言うメドラーノに、彼は「砂漠だ」と答えた。
ドミニクが欲しがっている土地の地図を見せると、メドラーノは「石油は出ない。不毛の地だぞ」と言う。「それはどうかな。何か出たら 全て我々の物だ」と、ドミニクは述べた。それから「エルネスト・モンテスを覚えてるか。かつての権力者だ。その娘が俺の助手でね。今 まではだ。取り引きのおまけに付けようか。飽きたら捨てていい」と言い、カミーユをメドラーノに紹介した。メドラーノと部下たちが カミーユをボートに乗せて埠頭を離れたので、ボンドは後を追った。
カミーユはメドラーノを射殺しようとするが、ボンドが船に飛び乗って彼女を突き飛ばした。ボンドはカミーユを別のボートに乗せ、そこ から逃走する。「なぜ邪魔をするの」と声を荒げるカミーユに、ボンドは「奴は後で殺す」と言い、追っ手を蹴散らした。ボンドは島に 到着し、気絶したカミーユを係員に預けた。彼は本部に連絡し、ドミニク・グリーンを調べろと指示する。ドミニクは慈善団体グリーン・ プラネットのCEOで、土地を買収して環境保護活動を行っていた。
MがCIAに連絡すると、南米局長のグレゴリー・ビームに回線が回される。ビームは「当方はグリーンに関心がありません」と言うが、 Mはボンドに「CIAも関心を持ってるわ」と知らせる。タナーが意見しようとすると、Mは「電話は南米局長に回されたのよ。彼らも グリーンを追ってる」と述べた。ドミニクは側近のエルヴィスを引き連れて空港に行き、オーストリアのブレゲンツへ向かうチャーター機 に乗り込んだ。すると機内ではビームとフェリックス・ライターが待ち受けていた。
ビームはドミニクに、「話はまとまったな。ボリビアのクーデターは阻止せず、新政権は米国に精油の採掘権を貸与する」と語った。 ドミニクが「アンタたちが中東で手一杯の間に、南米は様変わりした。これ以上、共産政権に自然資源を委ねるのか」と言うと、ビームは 「クーデターはそっちに任せる」と告げる。ドミニクは「それには、こいつが邪魔だ」とボンドの写真を見せる。「始末してくれるか」と 言うドミニクに、ビームは「任せてくれ」と答えた。
飛行機はブレゲンツに到着し、ドミニクは空港を後にした。ビームはフェリックスから「グリーンみたいな悪党と組むのか」と問われ、 「君もチームの一員だ。出世は大事だろ」と告げる。ドミニクがオペラ『トスカ』の上演会場に入ると、追尾していたボンドも潜入する。 ドミニクは客席に座り、離れた席にいる複数の連中と通信機を使って密かに会話を行った。ボンドが盗聴していると、「ティエラ計画を 優先するのか」「カナダの件も重要だぞ」「ボリビアが最優先だ」といった言葉が聞こえた。
ボンドは一味の会話に割り込み、「話し合いの場は他にあるだろ」と告げる。ボンドは慌てて会場を去ろうとした数名の連中を確認し、 その顔を撮影した。ボンドは会場を去ろうとするドミニクに遭遇し、その一味と戦う。一人を捕まえたボンドは「誰に雇われた?」と追及 するが、何も答えなかったので、屋上から突き落とした。タナーは写真の人物を特定し、Mに知らせる。一人はシベリアの鉱山を所有する 元大臣のカラコフ、一人は元モサドのソラフ、一人は英国首相付き特命大使ガイ・ヘインズだった。
タナーはMに、ボンドがヘインズの護衛を殺したことを知らせる。Mはボンドに連絡し、「すぐに戻りなさい。貴方は特別警護部の部員を 殺したのよ」と告げる。しかしボンドは「貴方を狙った男を捜すのが先です」と拒否した。Mはボンドのクレジットカードを停止し、 パスポートを要注意扱いにするようタナーに指示した。ボンドはボリビアのラパスに行こうとするが、カードが無効になっていた。そこで 彼はイタリアのタラモーネにいるマティスを訪問し、クレジット・カードとパスポートを用意してほしいと頼んだ。
ボンドがオペラ会場で撮影した数枚の顔写真を見せると、マティスは「何か共謀しているのか」と尋ねる。ボンドが「石油パイプだ。 ティエラ計画とか」と言うと、マティスは「破棄しろ。ヘインズは首相の側近だ」と告げる。しかしボンドは聞く耳を貸さず、「ボリビア に知り合いはいないか。一緒に来てくれ」と言う。ボンドとマティスがボリビアのラパスへ行くと、領事館のフィールズが出迎えに来た。 彼女は「貴方をロンドン行きの飛行機に乗せて帰らせろと言われました」と言う。
ボンドが「次のロンドン行きは」と尋ねると、フィールズは「明朝です」と答える。「一晩ある」と言うボンドに、フィールズは「逃亡を 図ったら逮捕します」と述べた。マティスはタクシーの中から、旧知の仲である警視総監のカルロス大佐に電話を入れた。フィールズが 予約しておいた安ホテルへ案内すると、ボンドは「他へ移る」と高級ホテルに足を向ける。すると、グリーン・プラネットから資金集めの パーティーへの招待状が届いた。
ボンドはフィールズを伴い、パーティー会場へ赴いた。マティスはカルロスを連れて来ており、ボンドに紹介した。ドミニクが客と話して 資金援助の約束を取り付けようとしていると、カミーユが現れた。カミーユは、ドミニクが前政権から土地を購入し、森林を買い占めて いる企業に伐採権を売り払ったことを暴露した。ドミニクはカミーユを別の場所に連れて行き、「パーティーを台無しにするつもりか。 それとも狙いは将軍の首か」と訊く。カミーユは「両方ね」と答えた。
そこへボンドが来て、カミーユを連れて会場の外に出た。ボンドは「ティエラ計画を見たい。案内してくれ」と言い、カミーユを車に 乗せる。するとバイクの警官2人組が来て車を停めさせ、トランクを開けろと要求した。ボンドがトランクを開けると、マティスが瀕死の 状態で押し込まれていた。ボンドは警官2人を始末し、マティスを抱き上げる。マティスは「ヴェスパーは君に全てを捧げた。許してやれ。 そして自分も許せ」と言い残して死亡した。
ボンドはマティスの遺体をゴミ箱に捨て、再び車を走らせた。ボンドは荒野の空港に到着し、飛行機を手に入れた。ボンドはカミーユを 乗せて離陸する。カミーユは地図を確認し、「ここよ。不毛の地と呼ばれているけど、地質学者は何か見つけた」と言う。その時、戦闘機 とヘリが出現し、飛行機を攻撃して来た。プロペラが損傷したため、ボンドとカミーユはパラシュートを使って何とか脱出した。
Mは外務大臣から呼ばれ、「首相もお怒りだ。我々の認識は変わった。我々とグリーンの利益は相反しない」と告げられる。「グリーンは 危険な組織の中心人物です」とMは反論するが、外務大臣は「彼が悪人だとしても、今や取引できる相手は悪人だけだ。善悪など関係が 無い。それが国策だ」と語った。さらに彼は、「ボンドはもう抑えが利かない。呼び戻せ。CIAに消されるぞ」と告げた。
ボンドはカミーユに「なぜグリーンを追ってる?」と問い掛けた。カミーユは「グリーンじゃなくてメドラーノ将軍よ。私の父は軍事政権 の一員で残酷な人だった。それでも私の父。私が幼い頃、メドラーノは父を殺し、母と姉を強姦して私の目の前で絞殺した。メドラーノは 私を家に残して火を放った」と語る。それを聞いて、ボンドは「復讐の思いは同じだな」と口にした。「復讐の相手は?」とカミーユに 訊かれたボンドは、「まだ分かっていない」と返答した…。

監督はマーク・フォースター、脚本はポール・ハギス&ニール・パーヴィス&ロバート・ウェイド、製作はマイケル・G・ウィルソン& バーバラ・ブロッコリ、製作協力はアンドリュー・ノークス、製作総指揮はアンソニー・ウェイ&カラム・マクドゥーガル、 撮影はロベルト・シェイファー、編集はマット・チェシー&リチャード・ピアソン、美術はデニス・ガスナー、衣装はルイーズ・ フログリー、特殊効果監修はクリス・コーボールド、視覚効果監修はケヴイン・トッド・ハウグ、音楽はデヴィッド・アーノルド、 主題歌"Another Way to Die"歌唱はジャック・ホワイト&アリシア・キーズ。
主演はダニエル・クレイグ、共演はオルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジャンカルロ・ジャンニーニ、ジュディー・デンチ 、ジェフリー・ライト、ジェマ・アータートン、アナトール・トーブマン、イェスパー・クリステンセン、デヴィッド・ハーバー、ロリー ・キニア、ティム=ピゴット・スミス、ホアキン・コシオ、 フェルナンド・ギーエン・クエルヴォ、ヘスス・オチョア、ルクレツィア・ランテ・デッラ・ローヴェレ、グレン・フォスター、ポール・ リッター、サイモン・カシアニデス、スタナ・カティック、ニール・ジャクソン、オーナ・チャップリン他。


シリーズ第22作。ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドとなってからは2作目。今回はシリーズで初めて、前作から話が続いている。
原題は短編『ナッソーの夜』から取られているが、内容は全く違う。
監督は『チョコレート』『ネバーランド』のマーク・フォースター。
ボンド役のクレイグの他、マティス役のジャンカルロ・ジャンニーニ、M役のジュディー・デンチ、ホワイト役のイェスパー・ クリステンセン、フェリックス役のジェフリー・ライト、が前作からの続投。今回のボンド・ガールは、カミーユを演じたオルガ・ キュリレンコと、フィールズを演じたジェマ・アータートン。
ドミニクをマチュー・アマルリック、エルヴィスをアナトール・トーブマン、ビームをデヴィッド・ハーバー、タナーをロリー・キニア、 外務大臣をティム=ピゴット・スミス、メドラーノをホアキン・コシオ、カルロスをフェルナンド・ギーエン・クエルヴォ、ミッチェルを グレン・フォスター、ヘインズをポール・リッターが演じている。

最初に思ったのは、「これってワシが『妄想映画大王』でデッチ上げた『007〜誓いのレクイエム』と似てないか?」ってことだ。
前作の完全なる続編で、しかも愛する女を殺された復讐にボンドが燃えるというのは、全く同じだよな。
でも、私は『女王陛下の007』という失敗作の続編として、お蔵入りにされちゃうような作品として、『007〜誓いのレクイエム』を 考えたわけで。
それと同じような大枠を持った作品ってことは、そりゃポンコツと捉えざるを得ないでしょ。

前作の続編だから当然と言えば当然だが、前作でワシがダメだと感じた部分は全く修正されていない。
まずダニエル・クレイグは、若い頃のボンドには全く見えない。実際にクレイグは若くないし、見た目が若いわけでもない。
ユーモアのセンスは薄められており、マジすぎて余裕が無い。
でもね、そういうことをやっちゃうと、「“ジェイソン・ボーン”シリーズの二番煎じ」でしかないでしょ。

それまでのシリーズからガラリとテイストを変えた前作は、明らかに“ジェイソン・ボーン”シリーズを意識した作りになっていた。
今回は『ボーン・スプレマシー』と『ボーン・アルティメイタム』でスタント・コーディネーターを担当したダン・ブラッドリーを第二班 監督に迎え、ますます“ジェイソン・ボーン”シリーズへの傾倒が強くなっている。
前作を観賞した時にも思ったが、“ジェイソン・ボーン”シリーズが007シリーズとは全く違う路線のスパイ・アクション映画をやった後、 なぜ、それを真似するのかと。
「バッカじゃなかろかルンバ」と言いたくなるよ。

スパイ映画の先駆者であったはずの007シリーズが、なんで後発作品の二匹目のドジョウを狙うようなことをやっているのか。
「“ジェイソン・ボーン”シリーズがヒットしたから似たような作風にしましょう」って、それで恥ずかしくないのか。
これがB級映画や低予算映画だったら、そういう意識で映画を作っても、面白ければ別にいいかもしれんよ。
だけど、007シリーズなんだぜ。かつては世の男どもがこぞってジェームズ・ボンドに憧れた、007シリーズなんだぜ。
この映画を見ても、ちっともジェームズ・ボンドへの憧れなんて抱かないもんな。

スタントの内容だけでなく、非常に細かくカットを割るというアクションシーンの映像表現も、“ジェイソン・ボーン”シリーズの模倣に なっている。
そもそも私は、“ジェイソン・ボーン”シリーズにおけるアクションシーンの演出を全く評価していない。「細かくカットを切り刻んで しまったために、やたら目がチカチカしてしまい、何がどう動いているか分からなくなっている」というのが私の感想だ。
で、そんな“ジェイソン・ボーン”シリーズを真似しているんだから、当然のことながら、この映画におけるアクションシーンの評価も 同じことになる。
冒頭のカーチェイスからして、何がどうなっているのか良く分からない。地下室の格闘なんかも、ゴチャゴチャしていて何がどうなって いるのか良く分からない。
ただカットを細かく割るだけでも分かりにくくなるのに、人物のアップを主体にしてカットを繋ぎ合わせているから、余計にアクションが 分かりにくい。

今回は完全に『カジノ・ロワイヤル』の続きとして作られているので、前作を見ていなければ、見ていたとしても内容を覚えていなければ 、話に付いて行くことが出来ない。
前作をちゃんと覚えていないと、もう冒頭からして、ボンドやMが何のことを話しているのかサッパリ分からない。
だけどさ、007シリーズで「前作の内容を覚えていること」という条件を観客に要求している時点で、もう間違いだと思う。
ボンド映画って、そんなに気合いを入れてみなきゃいけないモノなのかと。もっとリラックスした気分で、楽しく見られるスパイ映画じゃ なかったのか。
ダニエル・クレイグになってから、急に宗旨替えしちゃってるんだよな。

導入部の内容が理解できなくてつまずくと、もはやボンドやMI6が何を目的として動いているのかも分からなくなる。
あと、ボンドは復讐目的で動いているのかと思ったら、組織の任務で動いている感じもある。
「任務と復讐の間で揺れ動く」とか、「任務をこなすフリをして復讐を狙う」とか、そういうことではなく、どっちの意識で動いて いるのかがハッキリしない。
終盤の「復讐の思いは同じだな」というセリフからすると、どうやら一貫して復讐目的だったみたいだけど、そこまではボンヤリしている。

それもあってか、ボンドの行動って、かなり行き当たりばったりに見えるんだよな。
例えば、ボンドの目的がテロ組織の調査だとしたら、どうしてメドラーノを尾行するんじゃなくて、ボートを突っ込ませたのか。
とにかく今回のボンド、その場その場で、勢いだけで行動している感じが強いぞ。
あと、ボンドはMにも叱責されているが、無駄に人を殺しすぎる。特にホテルの時なんか、スレイトを殺さずに捻じ伏せることも可能 だったはず。そうすれば尋問も出来ただろうに。

ボンドは復讐目的で行動しているけど、復讐の相手がグリーンってわけではないのよね。
そうなると、グリーンの悪党としての存在意義が微妙なことになってしまう。
っていうか、復讐が目的なら、ボンドがグリーンの目的を探ろうとする意味は何なのかってことになるでしょ。
そこは任務として動いているってことなのか。
なんか復讐と任務遂行を上手く両立させることが出来ていないよなあ。

ボンドは復讐まっしぐらで突き進んでいるのかと思ったら、その割りには、どうやらフィールズとはベッドインしたらしく、その辺りは 違和感が強い。
「ヴェスパーへの思いと下半身は別物です」ってことなのか。
それだけでなく、ラパスに入った途端、フィールズが手錠を持っていると知ったら「楽しめる」と言ったり、彼女に「教師という設定 だから安ホテルにすべき」と言われたら高級ホテルに移動してフロント係に「宝くじに当たった教師です」と言ったりと、ジョークを急に 飛ばし始めたりして、なんかキャラが変わっちゃってるし。
シリアスな復讐の鬼になるならなるで、それを徹底しなさいよ。
そこに来て急に「このままだとボンドらしくないから、少しはボンドらしさを出しておこう」と思ったのかもしれんが、もう手遅れ なんだし。

ボンドと関わった面々が次々に殺されていくので、彼が疫病神に見えてくる。
しかも任務遂行のために犠牲になるならともかく、完全にボンドの個人的な目的遂行のために犠牲になっているわけだから、ボンドの印象 はかなり悪い。
「ボンドが復讐心で周囲が見えなくなっているせいで、マティスやフィールズを危機から守ったり救ったりすることが出来ていない」と いう風に受け取れるのだ。
Mが「何人死なせた?」と非難しているけど、そりゃ非難されて当然だ。
もはや不快感さえ覚えるぐらい、今回のボンドには魅力(もっと細かく言うと“ジェームズ・ボンド的な魅力”)が微塵も感じられない。

(観賞日:2012年7月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会