『飛べ、バージル/プロジェクトX』:1987、アメリカ

女子大生テリーは論文を書く目的で、チンパンジーの訓練を行うことになった。彼女は預かったチンパンジーのバージルに手話を教えてコミュニケーションを取るが、1年後に保険協会から補助金の打ち切りを告げられる。仕方なく、テリーはバージルと別れることになった。
テリーには、バージルがヒューストンの動物園に引き取られることになったと告げられる。しかし、実際にはバージルはフロリダ州のロックリッジ空軍基地内にある戦略兵器研究所に送られていた。バージルはパイロット能力実験プロジェクトに利用されることになったのだ。
パイロット志望のジミー・ギャレットは、そのプロジェクトに新たに加わることになった。彼はチンパンジーに初級の航空技術を教え込む係になる。ジミーはバージルが手話を使うことに気付き、自分でも手話を覚えてコミュニケーションを取り始める。
だが、ジミーはプロジェクトの実体を知って驚く。それは放射能を浴びたパイロットがどこまで飛べるかという実験であり、チンパンジーは死ぬまで酷使されるのだ。ジミーは密かにテリーに連絡を入れ、基地にやって来た彼女と共にバージルを逃がそうとする…。

監督はジョナサン・カプラン、原案はスタンリー・ワイザー&ローレンス・ラスカー、脚本はスタンリー・ワイザー、製作はウォルター・F・パークス&ローレンス・ラスカー、製作総指揮はC・O・エリクソン、撮影はディーン・カンディ、編集はO・ニコラス・ブラウン&ブレント・A・ショーンフェルド、美術はローレンス・G・ポール、衣装はメアリー・E・ヴォート、音楽はジェームズ・ホーナー。
出演はマシュー・ブロデリック、ヘレン・ハント、ビル・サドラー、ジョニー・レイ・マクギー、ジョナサン・スターク、ロビン・ギャメル、スティーヴン・ラング、ジーン・スマート、チャック・ベネット、ダニエル・ローバック、マーク・ハーデン、ダンカン・ウィルモア、マーヴィン・J・マッキンタイア、スウェード・ジョンソン他。


アメリカ空軍が実際に行った実験を元に構成された作品。
たぶん感動させようとしているが、これっぽっちも感動できない作品。
ジミーをマシュー・ブロデリック、テリーをヘレン・ハントが演じている。
ただし人間達は、チンパンジーの芝居に完全に食われている。

テリーがバージルと会って10分足らずで、彼女がバージルを手放す場面がある。
テリーは「バージルを手放したくないので大金を払ってでも引き取りたい」という旨の発言をするが、バージルとの交流がわずかしか描かれていない。
なので、彼女の気持ちに同意するのは難しい。

そもそも、テリーがジミーから連絡を受けるまで「ヒューストンの動物園にバージルが送られた」というのが嘘だということに気付かないのは不自然だ。
あれほど手放したくないと言っていたのだから、動物園に会いに行くのが当然だろう。そして、動物園にバージルがいないことに気付くはずだ。

ジミーが実験の内容を知って驚くというのも奇妙な話だ。
そもそも戦略兵器研究所で実験が行われているのだから、軍事関連でチンパンジーが利用されていることぐらい誰だって気付くはずだ。
チンパンジーが酷使されることも予想できるだろう。
「知らなかった」というより、頭が悪いだけだ。

これって、「人間を使った放射能実験が不可能なのだから、代わりにチンパンジーを使うことは仕方が無い」という見方も出来るわけだ。
軍事的な実験の全てを批判的に描くのならともかく、動物を使って実験をするのが悪いことだという風に描くのは、エセ動物愛護というものだろう。

ジミーとテリーがバージルだけを助けようとするのはどうなんだろうか。
完全に差別じゃねえか。
他のチンパンジーも助けようとするべきだろ。
確かにバージルと数匹のチンパンジーは助かったかもしれないが、それ以降も他のチンパンジーは実験で殺されるということなのよね。
で、エセ動物愛護主義としては、それでいいのか?

 

*ポンコツ映画愛護協会