『デンジャラス・ビューティー2』:2005、アメリカ&オーストラリア

FBIニューヨーク本部の捜査官グレイシー・ハートは、任務のためミス・アメリカ大会に出場したことで、すっかり有名人になった。 そんな人気に浮かれることも無く、彼女は同僚たちと共に銀行を張り込み、強盗を繰り返す主婦軍団を逮捕しようとしていた。しかし客が グレイシーに気付いたことで騒ぎになり、犯人グループにも張り込みが知られてしまう。何とか逮捕したものの、同僚のクロンスキーは 危うく命を落とすところだった。
その夜、ミス・アメリカ大会の任務で恋人になったFBI捜査官エリック・マシューズと電話で話したグレイシーは、別れを告げられた。 翌日、出勤した彼女は、格闘技道場でサム・フラー捜査官と出会った。彼女は誰に対しても突っ掛かる態度を示す荒くれ者で、飛ばされて 来たのだ。フラーはグレイシーにも突っ掛かり、ケンカが勃発しそうになったところを他の捜査官が制止した。
以前からグレイシーは、FBIのスポークスマンとして働くよう勧められていた。現場での仕事が難しいと考えたグレイシーは、本部長 ハリー・マクドナルドにスポークスマンの話を引き受けると申し出た。しかし服装やメイクをスタイリストに整えて貰えと言われ、もう 着せ替え人形になるのは嫌だと拒む。だが、エリックがエリートコースとしてマイアミ支局へ異動することを聞いたグレイシーは、やはり スポークスマンの話を承諾することにした。
グレイシーはスタイリストのジョエル・マイヤーズによって美しく変身し、10ヶ月後にはトークショーに出演していた。ショーにはゲスト として、ミス・アメリカ大会の司会者スタン・フィールズとミス・アメリカに輝いたシェリル・フレイジャーが招かれていた。グレイシー は再会を喜び、ジョエルやメイクのパム、ヘア・アシスタントのジャニーンを紹介した。
フラーはハリーの命令でグレイシーの護衛を務めていたが、不満を溜め込んでいた。テレビ局を出たところでグレイシーと言い争いに なった彼女は、任務を放棄して立ち去った。その後も広告塔として仕事を続けていたグレイシーだが、スタンとシェリルが慰問先の 老人ホームを出たところで誘拐されたことを知った。リムジンに戻ろうとしたところを、覆面2人組に拉致されたのだ。
ウィルソン長官からマスコミ対応の指示が下り、グレイシーは事件の起きたラスベガスへ赴くことになった。フラーはハリーから、「また 問題を起こしたらクビだ」と言われ、グレイシーの警護を命じられた。その頃、スタンとシェリルは荒野の小屋に監禁されていた。2人を 拉致したルーとカールのスティール兄弟は、身代金を要求するための脅迫ビデオを撮影した。
FBUラスベガス本部に到着したグレイシーは、本部長ウォルター・コリンズと面会した。滞在中の世話係として、ジェフ・フォアマンが 付くことになった。ジェフは、コリンズの秘書ジャネットと付き合っていることを話した。グレイシーはコリンズから、事件の説明を 受けた。老人ホームには、スタンの母も入居している。監視カメラの映像には、スタンとシェリルがトラックに押し込まれる様子が撮影 されていた。リムジンの運転手は、何も見ていないと証言していた。
グレイシーはジェフの案内で、宿泊するホテルに赴いた。たちまちファンが寄ってくるが、フラーはいきなり捻じ伏せた。部屋に入った グレイシーは、スタンとシェリルが身代金要求のコメントを言わされるビデオ映像をTVのニュースで見た。犯人たちは、金曜の夜までに ミス・アメリカ大会執行部が500万ドルを支払わねば2人を殺すと脅迫していた。
監視カメラの映像を確認したグレイシーは、リムジンを停めた位置の不自然さに気付いた。彼女は運転手トム・アバナシーの元へ行き、 彼がドリー・パートンの似た女から金を貰って玄関から遠い場所に車を停めたことを聞き出した。ホテルに戻ったグレイシーは、自分の 指示を聞くよう怒るフラーと言い争いになる。ロビーでドリー・パートン似の女性を見掛けたグレイシーは、慌てて追い掛け、捕まえた。 だが、それはドリー・パートン本人だったため、大失態としてマスコミから騒がれるハメとなった。
コリンズはグレイシーをニューヨークへ追い返すと決定し、ジェフに空港まで送らせた。グレイシーは空港ロビーで監視カメラを確認し、 犯人がシェリルではなくスタンを狙ったと気付いた。指示に従うよう求めるフラーを説き伏せ、グレイシーは捜査を続行することにした。 ジェフも協力を承諾し、グレイシーとフラーは彼の自宅で泊まることにした。
グレイシーは老婆アイダ・フラメンバウムに変装し、スタンの母キャロルがいる老人ホームへ赴いた。キャロルと話をしたグレイシーは、 スタンがギャンブルで多額の借金を抱えていたことを聞き出した。借金取りが怪しいと睨んだグレイシーは、ラスベガス中の高利貸しの データを洗うようジェフに頼んだ。資料を集めたジェフは、コリンズの会見を目撃し、傍らにいるジャネットが彼と浮気していることに 気付き、ショックを受けた。
ジェフはコリンズに見つかり、資料を奪われてしまった。呼び出しを受けたグレイシーは、コリンズから「ウィルソン長官は君をFBIの 負債だと感じている」と言われ、ショックを受けた。失意のグレイシーは、ニューヨークへ送り返されることになった。彼女と共に空港へ 来たフラーは、クラブの物真似ショーにドリー・パートン似の女が出演しているという情報を掴んだ。
グレイシーはフラーの言葉で意欲を取り戻し、2人は同行した捜査官を騙して逃走した。一方、コリンズたちは荒野の小屋を包囲するが、 既にスティール兄弟はスタンとシェリルを車に乗せて移動していた。ヘリコプターが飛んでいたため、彼らはFBIが来たと気付たのだ。 一方、グレイシーとフラーは出演者の扮装をして、物真似クラブに乗り込んだ…。

監督はジョン・パスキン、キャラクター創作はマーク・ローレンス&ケイティー・フォード&カリン・ルーカス、脚本はマーク・ ローレンス、製作はサンドラ・ブロック&マーク・ローレンス、共同製作はジョジーナ・ブロック=プラド、製作協力はスコット・エリアス、 製作総指揮はブルース・バーマン&メアリー・マクラグレン、撮影はピーター・メンジースJr.、編集はガース・クレイヴン、美術は メイハー・アーマド、衣装はディーナ・アッペル、音楽はジョン・ヴァン・トンジェレン。
出演はサンドラ・ブロック、レジーナ・キング、エンリケ・ムルシアーノ、ウィリアム・シャトナー、アーニー・ハドソン、ヘザー・ バーンズ、ディードリック・ベイダー、トリート・ウィリアムズ、エイブラハム・ベンルービ、ニック・オファーマン、アイリーン・ ブレナン、エリザベス・ローム、レスリー・グロスマン、ルシア・ストラス、モリー・ゴットリーブ他。


2000年のヒット映画『デンジャラス・ビューティー』の続編。
グレイシー役のサンドラ・ブロック、スタン役のウィリアム・シャトナー、ハリー役のアーニー・ハドソン、シェリル役のヘザー・ バーンズ、クロンスキー役のジョン・ディレスタが、前作からの続投組。
前作の中心人物だった、エリック・マシューズ役のベンジャミン・ブラット、美容コンサルタントのヴィクターを演じていたマイケル・ ケインの2名は出演していない。
新たにフラー役のレジーナ・キング、ジェフ役のエンリケ・ムルシアーノ、ジョエル役のディードリック・ベイダー、コリンズ役の トリート・ウィリアムズ、ルー役のエイブラハム・ベンルービ、カール役のニック・オファーマン、キャロル役のアイリーン・ブレナンら がキャストに加わっている。他に、モーニング・ショーのホスト夫妻リージス・フィルビン&ジョイ・フィルビン、歌手ドリー・パートン が本人役で出演している。

原題は「DRACULA 2000」だが、日本で公開された時には『DRACULA 2001』と表示された。
日本での公開が本国より1年後だったため、そこをいじったわけだ。
こういう「まるで原題が異なるかのような修正」ってのは、たまに見受けられるが、ややこしいし無意味だと思う。
ちなみに邦題は『ドラキュリア』だが、劇中では「ドラキュラ」という呼称になっているし、ジェラルド・バトラーの役目もドラキュラだ。
ここも字幕では、御丁寧に全て「ドラキュリア」に変更してあるんだけどさ。

シェリル本人から「スポークスマンになる」と申し出るのは解せない。
彼女としては「美女として着飾って広告塔になる」という解釈では無いようだが、そうであっても自ら申し出るのは避けた方が賢明だろう。
シェリルはミスコン参加も渋っていたぐらい、現場へのこだわりが強かったはず。
そこはシンプルに、「上司に言われ、他に選択肢も無く、渋々ながら」という形にしておけばいい。

フラーのキャラ造形には、強い引っ掛かりを覚える。
捜査方針や捜査官としての在り方を巡ってグレイシーと考えの相違があり、それで対立するというのなら分かる。しかしフラーは最初から 、誰彼構わず当たり散らしている。無闇やたらとイライラしているだけだ。
一匹狼タイプの、はみ出し捜査官というわけではなく、ただのキレやすい女でしかない。
それだと、グレイシーとフラーの対立の原因が次第に解消されて、仲良くなっていくという展開も作りにくい。
実際、いつの間にやら、なし崩し的にチームになっている。

しかもフラーは、捜査に対しては全く興味を示さない。グレイシーに説き伏せられて、ようやく行動を開始するぐらいだ。
あれだけの荒くれ者キャラなのに、捜査に対しては消極的ってのは、どうもキャラとしてピンと来ない。
また、グレイシーとフラーの言い争いが全く笑いに繋がらず、ただケンケンしているだけにしか見えないのもツラい。
終盤、物真似クラブでフラーがティナ・ターナー、グレイシーがバックダンサーの紛争でステージに上がって踊るシーンは、見せ場として 設定されているのだと思われる。そこは渋ったフラーを強引にグレイシーがステージに立たせるのだが、そういう展開へ持って行くのなら 、フラーは荒くれ者よりも、むしろ引っ込み思案で臆病キャラか、無口で社交的じゃないキャラにしておいた方が良かったのではないかと 思ったりもするのだが。

前作では、使い古されたパターンではあるものの、「見た目の冴えない女がエレガントな美女に変貌する」というネタを使っていた。
だが今回は、既に前作で「ヒロインは美女」ということがアピールされているため、そのネタは使えないというハンデがある。その上、 前作の主要キャラを演じていたベンジャミン・ブラットとマイケル・ケインが出演していない。これは大きなダメージだ。
かなりのマイナスを背負っているのだから、それを取り返すには相当の頑張りが必要になる。
今回は「ミスコンに参加する」というイベントも無いのだから、事件の捜査、事件の中身というのは、前作よりも遥かに重要となる。v ところが、その事件がショボい。
犯人は最初に顔を見せる2人組だけであり、裏で糸を引く黒幕が後で出てくるわけではない。
単純な身代金目的の誘拐に見せ掛けて、裏に隠された陰謀があるわけでもない。

実は、前作の「普段は冴えない外見だが変身すると美女に」というギャップは、二度と使えないわけではない。
例えば、ヒロインが本当は美女だと知らない人や地域を設定すれば、別の形で使うことは可能だ。
ミスコン入賞者としての振る舞いを強いられるが、がさつで男勝りな本性が時に出てしまうという形でも使えるだろう。
前作の“肝”はグレイシーのギャップにあったはずで、続編を作るに当たって何より踏襲すべきは、その部分だったのではないかと思うぞ。
しかし製作サイドは、そのネタを使う考えは最初から全く念頭に無かったようだ。
その代わりというわけでもないのだろうが、今回は「前作でミスコン美女をバカにしていたヒロインが、ミスコン美女としてバカにされる 」という作りにしてある。
しかし映画を引っ張っていく要素としては、あまりに脆弱だ。
そもそも、コリンズがグレイシーを見下して冷遇するというのは、グレイシーがミスコン入賞者でなくても成立してしまう。
「ラスベガス本部の人間で解決したいという気持ちが強く、ニューヨークから来た人間を冷遇する」ということでも成立してしまうのだ。

さすがの製作サイドも、それだけで行けると考えるほど愚かではなかったようで、バディー・ムーヴィーとして盛り上げようと画策して いる。
しかし残念ながら、これはサンドラ・ブロックのスター映画なのである。だから、彼女だけが目立つようになっているのだ。
それが悪いわけではない。スター映画なのにバディー・ムーヴィーの要素を持ち込んだことが悪いのだ。
つまり、続編製作に際しては「いかに映画を面白くするか」という以前に、「いかにサンドラを輝かせるか」というところから思考に入る べきだったのだ。
そうすれば、おのずとバディー・ムーヴィーにしようなんて考えは頭から消え去るはずだ。

ちなみに、「ドリー・パートンに似た女」とされている人物が、実際に登場すると全く似ていないってのは何なのか。
っていうか、あれを実際に会っていながら女だと思う運転手はおかしいだろ。
で、「全く似ていない」ってのをギャグにするという手もあるわけだが、その気ゼロ。
そういう細かいところにも脚本の粗さを感じてしまうのは、過剰反応なのかねえ。

(観賞日:2008年3月7日)


第28回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[サンドラ・ブロック]
ノミネート:【元気とは程遠い2人組】部門[サンドラ・ブロック&レジーナ・キング]
ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会