『CHASE/チェイス 猛追』:2022、アメリカ

ロイ・ピーターソン刑事は車内でナックルズを暴行し、誘拐した女性の居場所を白状するよう迫った。するとナックルズは弱々しい態度で、「あの女は死んだ」と漏らした。8時間前、ウィル・スパンは妻のリサを車に乗せ、彼女の実家へ向かっていた。夫婦は会話を交わすが、冷たい空気が漂った。ガソリンスタンドに立ち寄ったウィルは、「給油が終わったらマンチェスターに戻らないか」と持ち掛けた。リサが「距離を置いて頭を整理したいのよ」と言うと、彼は「まあ実家だし、2週間もあれば俺に会いたくなるはず」と語った。
リサはトイレに行き、クリントから届いた「電話をくれ。メールは見た?」というメッセージを確認した。彼女はコンビニに入り、水を買った。店から出て来たリサは、ナックルズに話し掛けられた。給油を終えたウィルは、リサが戻らないのでコンビニに行く。しかし彼女はおらず、電話を掛けても繋がらなかった。店員のオスカーやガソリンスタンドにいた客に訪ねても、リサの居場所は分からなかった。彼は車で周囲を捜索するが、リサは見つからなかった。
ウィルは地元の警察署に連絡し、リサの捜索を要請した。応対したピーターソンは、すぐに人を送るから待つよう指示した。しかしウィルは待っていられず、リサの実家へ向かった。彼は義父母のバリー&アンナ・アダムスに会い、リサが来ていないことを知った。ガソリンスタンドに戻ったウィルは、リサに「距離を置こう」と言われた時のことを振り返った。「俺の仕事のせいか?忙しかったが、もうすぐ落ち着く」とウィルが語ると、リサは「それは分かってる。自分でも何が問題か分からないから解決できないの」と言う。激しく苛立ったウィルが詫びると、彼女は「何も感じなくなってる。距離を置くことで何か見えてくるはず」と告げた。
ピーターソンはガソリンスタンドに到着し、オスカーに防犯カメラの映像を見せるよう告げた。オスカーが故障中だと答えると、彼は署に戻って手配を掛けることにした。ウィルはリサのパソコンを渡し、その場にとどまった。彼は、防犯カメラが作動していることに気付き、オスカーに詰め寄った。オスカーが「勝手に入るな」と言うと、ウィルは「なぜ嘘をつく?」と激怒して掴み掛かった。オスカーはデータを引き渡し、ウィルは警察署に直行した。
ウィルとピーターソンと共に映像を確認し、リサがナックルズと話す姿を確認した。大型トラックが前を通過いると、リサの姿は消えていた。ピーターソンは調書を取る際、ウィルに夫婦関係や仕事を尋ねた。不動産開発をしていることをウィルが話すと、彼は恨んでいる役員がいるのではないかと質問した。ピーターソンはリサが半年前に不倫したことを聞き出し、彼女に掛けた生命保険について質問した。「俺が保険金目当てで妻を殺したとでも言いたいのか」とウィルは苛立ち、「今すぐ妻を捜さないと」と焦りを見せた。「証拠を持って来ただろ」と彼が訴えると、ピーターソンは「策略かもしれん」と冷淡に言い放った。
ウィルはアダムス夫妻の元へ戻って防犯カメラの映像を見せ、ナックルズがリサの幼馴染で便利屋だと知った。彼はナックルズの住所を教えてもらい、家へ押し掛けた。ウィルはリサの居場所を訊き、ナックルズと格闘になった。彼が激しい暴行を加えると、ナックルズは「フランクの命令でやった。リサはトレーラーにいる。アンタを連れて行く」と言う。ウィルはナックルズの手足を縛って口を塞ぎ、車のトランクに閉じ込めた。
ピーターソンがガソリンスタンドに戻ると、オスカーの姿は無かった。店員が「帰りました」と言うと、彼は「連絡を寄越せと伝えろ。出来なければ、ここは閉店だ」と通告した。ウィルは車を走らせるが、スピード違反でパトカーに停められた。彼はトランクを開けるよう言われ、その場から逃亡した。トランクを開けた警官は、ナックルズを発見した。ピーターソンはアダムス家を訪ね、クリントについて質問した。アダムス夫妻はリサの浮気相手であること、別れた後も会いたがっていたがリサは連絡していないことを語った。
ピーターソンはクリントの電子機器を調べたこと、関与の証拠は発見されなかったことを夫妻に教えた。さらに彼は、ナックルズの家へ行ったが無人だったことも語った。森を抜けて山道を進んだウィルは、大柄な男と遭遇した。ウィルが「ナックルズからフランクを紹介された。車が故障して歩いて来たが、フランクが待ってる」と説明した。男は怪しみながらも、先に進むよう指示した。ウィルは覚醒剤を精製しているフランクのアジトに到着し、手下たちの姿を目にした。彼はガレージに忍び込み、車にいた手下を倒した。彼はショットガンを奪い、工場に侵入した。一方、ピーターソンはナックルズの元へ行き、リサの居場所について尋問した…。

監督はブライアン・グッドマン、脚本はマーク・フライドマン、製作はブライアン・ピット&ニコラス・シャルティエ&マーク・フライドマン&ジェラルド・バトラー&アラン・シーゲル、製作総指揮はジョナサン・デッカー&ロッド・ルーリー、共同製作はダニエル・ロビンソン、製作協力はデヴィッド・ショージャイ&テイラー・コンラッド&ダニエル・カスロウ&モーガン・エメリー&ジャン=シャルル・レヴィー、撮影はピーター・A・ホランド、美術はグラント・アームストロング、編集はジュリア・ウォン、衣装はビヴァリー・セイファー、音楽はサム・ユーイング、テーマ曲はビア・マクリアリー、音楽監修はジョシュ・ケスラー&ディラン・ボスティック。
主演はジェラルド・バトラー、共演はジェイミー・アレクサンダー、ラッセル・ホーンズビー、イーサン・エンブリー、マイケル・アービー、シンディー・ホーガン、ブルース・アルトマン、ジョーダン・サローム、ダニ・ディーテ、チップ・レイン、ブライアン・スキャンネル、デヴィッド・カラウェイ、アルフォンソ・エイケン=エイテン・ジャクソン、ブライス・アンソニー・ヘラー、ロバート・ウォーカー・ブランチャード、デヴィッド・スティーヴン・ペレス、ロビン・イネス・フレッチャー、ヴィジェイ・ビラジ他。


『ブラック・バタフライ』に続いて、監督のブライアン・グッドマンと脚本家のマーク・フライドマンがタッグを組んだ作品。
ウィルをジェラルド・バトラー、リサをジェイミー・アレクサンダー、ピーターソンをラッセル・ホーンズビー、ナックルズをイーサン・エンブリー、オスカーをマイケル・アービー、アンナをシンディー・ホーガン、バリーをブルース・アルトマン、フランクをデヴィッド・カラウェイが演じている。

盛り込まれた多くの要素や設定が、ことごとく無意味や無価値になっている。
例えば時系列を入れ替え、冒頭にピーターソンがナックルズを追及するシーンを冒頭に配置する構成。それで「あの女は死んだ」と言われても、だから何なのかと。
それが「リサは殺された」というミスリードに繋がっているとは、全く思わない。まあ仮に死んでいたとしても、「別に」って感じだし。
どっちにしても、わざわざ冒頭に持って来る意味は感じない。

夫婦関係にはヒビが入っており、ウィルは妻の不倫を知っても修復を熱望しているが、リサは距離を置きたがっている。この設定も、全く意味が無い。仮に夫婦円満だったとしても、どうせウィルは必死でリサを見つけようとするし。
「不和になっていた夫婦が、事件や災害を経てヨリを戻す」ってのは良くあるパターンだが、それをやりたかったのは良く分かる。だけどウィルとリサはずっと一緒にいるわけじゃないので、「協力して危機を乗り越える」という内容ではないんだよね。
そこにドラマが無いので、設定を上手く活かし切れていない。
誘拐されたリサの様子を、何度も挿入するわけじゃないし。何度か入る回想シーンも、話に厚みや深みをもたらす効果は無い。

ウィルがガソリンスタンドに着くと「午前9時30分」、アダムス家に着くと「午前10時30分」など、何度も時刻が表示される。
これも全く意味が無い演出だ。タイムリミットが設定されているわけじゃないし、後から「実は同じ時刻に、こんなことが起きていた」と明かされる仕掛けがあるわけでもない。
その出来事が何時何分に起きていようと、何時何分に誰がどこにいようと、まるで無価値な情報でしかない。
前述した時系列のシャッフルも、時刻の表示とは全く関係ない。

アダムス夫妻はウィルの言動に腹を立て、バリーは「信用できない、アンナは「様子が変だった」と言う。しかし、これも全く意味が無い。
夫妻が「ウィルは嘘をついている、何か隠している」などと疑ったり、それでウィルが厄介な立場に追い込まれたりするわけでもないし。
ピーターソンがウィルを怪しむのも、「なんでだよ」と呆れるだけだ。
そのせいで警察がウィルに協力しないわけじゃないし、「実はピーターソンもグルだった」みたいな展開が待っているわけでもないし。

ナックルズが「アンタを連れて行く」と言った時、ウィルが手足を縛って口を塞ぎ、トランクに閉じ込める意味が良く分からない。それだと、リサの居場所を教えてもらえないでしょ。
その状態で車を走らせてどこへ行くつもりだったのか。ナックルズの家で、さらに暴行を加えてリサの居場所を聞き出せば良かったんじゃないのか。あるいは拘束した状態で助手席に乗せて、案内を命じるとかさ。
っていうか、警察への不信感はあるだろうけど、まずはピーターソンに連絡すればいいだろ。そんで電話越しにナックルズに喋らせればいいだろうに。
とにかく、ウィルの行動がアホすぎて呆れる。「頭に血が上ってマトモな判断力を失っている」ってことで、甘受しなきゃならないのか。
そもそも、そういう設定でウィルの行動がバカになっているとも思えんし。

ピーターソンがアダムス夫妻にクリントのことを訪ねるシーンも、まるで無意味だ。
彼が事件に何の関係も無いことは、とっくに分かっているんだから。
それに、アダムス夫妻への聴取で出て来る「クリントはリサの浮気相手だが、もう終わっている」「リサの浮気はウィルの浮気に対する仕返しではなく、彼女か勝手にやった」という情報も、これまた既に分かっていることばかりだ。
ナックルズの家に行ったが無人だったことも、犯罪の証拠が無いからヘリコプターでの捜索は出来ないことも、わざわざ言う必要は無い。

ウィルがショットガンを手に入れて工場に侵入すると、ピーターソンがナックルズを尋問する様子と並行して描かれる時間になる。
たぶんナックルズの尋問シーンを入れることで、「リサの居場所はどこなのか、無事なのか」という要素でハラハラさせようという狙いがあるんだろうと思われる。
だけど残念ながら、まるで効果が無い。
どのみち、ウィルがフランクの一味を倒すのは分かり切っている。その結果として、おのずとリサの居場所は分かるはずなので。

フランクが一味を率いて覚醒剤を精製しているのは、リサの誘拐と何の関係も無い設定だ。
もっと言っちゃうと、フランクの一味はリサの誘拐に全く関与していない。
ネタバレになるが、ナックルズがフランクに「金持ちと結婚した知り合いの女が帰郷する。誘拐すれば夫から大金を巻き上げられるかも」と吹き込み、勝手にリサを拉致しただけなのだ。
フランクのアジトにリサは連れ込まれているけど、彼が指示して誘拐させたわけではないのだ。全てはナックルズの単独犯行であり、フランクは黒幕でも何でもないのだ。

ピーターソンによる尋問の最後に、ナックルズは「フランクは防犯カメラの存在を知っているので、リサを連れて行ったら激怒した。彼はリサを殺し、穴を掘って埋めろと命じた。だが自分が埋められると確信して逃げ出した」と語る。
つまり、死体を埋める穴を掘ったので、「もうリサは死んでいる」と断言したわけだ。
でも、もちろんリサが殺されていないことは確定事項と言ってもいい。
そこで「ウィルが敵を倒したけど、既に妻は殺されていました」という結末を用意しても、何の得も無いからね。

ウィルは工場に侵入した直後、フランクを撃ちしている。向こうが銃を手にしたから仕方なくという形ではあるが、いきなり組織のボスであるフランクを始末するという展開。
意外性は少しぐらいあるけど、それで話が面白くなっているわけではない。
そしてナックルズが「穴を埋めろと命じられて云々」と証言する直前のシーンで、ウィルはアジトに来ていたオスカーと対峙する。オスカーが「金を出せばリサの居場所を教える」と言うので、ウィルは取引に応じる。しかし口論になった直後に工場が爆発し、爆風を浴びたオスカーは死ぬ。
何とも冴えない決着である。

その後、ピーターソンがアジトに到着して穴を見つけるが、そこにリサはいない。そしてウィルはフランクの家に飛び込み、監禁されていたリサを発見する。
最後の最後までリサの居場所や生死を明かさず、緊迫感を引っ張ろうという狙いだったのか。
でも、普通に「ウィルが敵を倒してリサを救出する」とか「ウィルがリサを発見し、敵を倒す」という流れで良かっただろ。
「いきなりフランクを殺し、その後でオスカーと取引しようとするが彼が爆死し、落ち込んでいたけどリサを見つける」という展開は、変に捻った余計な手順にしか思えない。
それはアンチ・クライマックスにしか繋がっていないのよ。

(観賞日:2025年5月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会