『ダイバージェントNEO』:2015、アメリカ

「博学」のリーダーであるジェニーンは国民に対し、「5日前に勇敢を装った異端者のグループが無欲を攻撃した。派閥システムの破壊が目的であり、私が無欲を攻撃したという噂も広めたのも異端者だ。評議会のリーダーとして、安全確保のために外出禁止令を発令した」と語った。トリスの実家を捜索したエリックやマックスたちは、ジェニーンが求めている箱を発見した。「平和」の村へ逃げ込んだトリスは、ウィルを殺したことへの罪悪感から悪夢にうなされた。母親の死を回想した彼女は自分を変えるため、髪を短く切った。
マーカスはトリスに、「君の母親が死んだのは、ある物をジェニーンから守るためだ」と告げる。そこへフォーが現れ、「アンタと話すことは何も無い」とマーカスへの敵対心を示してジェニーンを連れ出した。マックスはジェニーンに箱を届け、「中に何が?」と質問する。ジェニーンは「私たちの祖先からのメッセージよ。この箱で異端者の排除が可能になる。でも開けられるのは、異端者だけ。1人残らず捜し出して」と指示した。
フォーはトリス、ケイレブ、ピーターに「勇敢の仲間たちの居場所を掴んだら、ここを出よう」と告げた。「ジェニーンを殺すべきよ」とトリスが訴えると、彼は「分かってるが、まだだ」と言う。ケイレブが「人を殺すなんて」と消極的な態度を示すと、ピーターはトリスに「お前1人で殺して来いよ。お前は両親を殺した」と言い放つ。激昂したトリスはピーターに襲い掛かるが、フォーが制止した。「平和」のリーダーであるジョアンナはトリスたちを呼び、「暴力を振るった者は出て行ってもらう約束よ」と述べた。
トリスは「初めから長居させる気なんて無いんでしょ。ジェニーンが怖いから。貴方たちも無関係ではいられない。ここもジェニーンに支配されるわ」とジョアンナに反抗的な態度を取り、フォーは「仲間の居場所が分かるまで留まらせてくれ」と頼む。ジョアンナが「博学を攻撃するの?私は加担しない」と言うと、彼は「あと数日、置いてくれればいい」と告げる。ジョアンナは「もう一度だけチャンスをあげる」と告げ、トリスに意識を変革するよう説いた。
ジェニーンの指示を受けたエリックやマックスらの部隊が平和の村を訪れ、ジョアンナに調査を要求した。ピーターは「ここにいるぞ」と大声で叫び、トリスたちを売る。トリス、フォー、ケイレブは逃走し、貨物列車に乗り込んだ。すると無派閥のエドガーたちが乗っており、3人は降りるよう要求される。セスはケイレブを突き飛ばし、挑発的な態度を取った。トリスは無派閥の連中に襲い掛かり、フォーも後に続いた。ケイレブは慌てて身を隠すが、無派閥の男が襲って来たので身を守るために殺害した。
フォーはトリスを守る目的で、「トバイアス・イートン」と本名を名乗った。するとエドガーは「ずっと待ってたぜ」と言い、無派閥の隠れ家へ3人を案内した。無派閥のリーダーであるイヴリンは、フォーの母親だった。死んだと思っていたトリスとケイレブが驚くと、イヴリンは「暴力的な夫から逃げるには、姿を消すしか無かった。夫の評判を守るため、無欲が死を偽装した」と説明した。フォーは自分を捨てたイヴリンを恨んでおり、1年前に向こうから連絡があったことも「俺を利用するためだ」と断言した。
フォーが「軍を作って復讐を企んでる」と言うと、イヴリンは「そうじゃない。特定の派閥が支配するシステムを終わらせたいの」と主張する。しかしフォーは「戦争を起こしてジェニーンを殺し、誰が権力を?自分の目的を果たしたいだけだ」と批判し、イヴリンに共鳴している様子のトリスにも「信用するな」と忠告した。「仲間の居場所を知ってるわ。高潔の本部に隠れてるはず。勇敢と無派閥が手を組めば無敵よ」とイヴリンは提案するが、フォーは「有り得ない。明日には出て行く」と拒絶した。
その夜、イヴリンはトリスに、「私は彼のためを思って言ってるの」と話す。トリスが「彼を分かってない」と言うと、彼女は「私が一番の理解者であることを恐れてるのね」と口にした。次の朝、ケイレブはトリスとフォーに、「高潔の本部へは行かない。勇敢と合流してジェニーンを殺すなんて僕には出来ない。無欲に戻る」と告げた。彼が立ち去った後、フォーはトリスに「彼が自分で決めたことだ。君の責任じゃない」と告げた。
トリスとフォーは高潔の本部へ行き、クリスティーナやトーリ、ユライアやリンたちと合流する。クリスティーナからウィルのことを質問されたトリスは、何も知らないフリをした。「高潔」のリーダーであるジャック・カンはトリスとフォーを捕まえ、「君たちは評議会で裁かれる」と告げる。トリスが「ジェニーンに殺される」と訴えても、彼は耳を貸さなかった。フォーが「裁判は博学ではなく高潔が開くべきだ」と告げると、カンは「同感だ」と口にした。
フォーは高潔が入会の時に自白導入剤を使うという極秘情報を知っており、「その薬を私たちに使え。結果がクロなら裁判を受ける。シロなら、君たちの忠実な味方ということになる」と持ち掛けた。自白導入剤を飲まされたフォーは、ジェニーンが襲撃を企てたことを話した。続いて薬を飲んだトリスは、ウィルが襲って来たので殺害したことを苦しみながらも告白した。告白を聞いたクリスティーナはショックを受け、謝罪しようとするトリスを拒絶した。
ジェニーンは捕まえた異端者を使って箱を開ける実験を繰り返していたが、6人が連続で死亡した。彼女は異端者にも優劣があると知り、人員を増やして捜索するよう命じた。エリックやマックスたちは高潔の本部を襲撃し、大勢を殺害してトリスたちを捕獲した。エリックはトリスが異端者だと知り、連行しようとする。そこへフォーたちが駆け付け、トリスを救ってエリックを拘束した。フォーが「トリスをどうする気だ?」と尋ねると、エリックは「ジェニーンの実験に必要なのだ」と答えた。
フォーはエリックに「手を血で汚す覚悟はあるか」と挑発され、その場で射殺した。彼はカンたちに「反撃しよう。無派閥と組む」と告げ、イヴリンの元へ赴いた。ジェニーンはトリスに関する報告を受け、何としても彼女を捕まえようと考える。ピーターはジェニーンに、「貴方の政権に入れてほしい。将来が約束されたポストを」と告げる。ジェニーンは彼に、トリスをおびき寄せるために協力するよう要求した。するとピーターは、「彼女は情に弱い。そこを突くのさ」と余裕の態度で述べた。
ジェニーンは無派閥の隠れ家に移動したクリスティーナとヘクター、マーリーンを操り、「トリスを引き渡さないと犠牲者が増える」と言わせてから飛び降り自殺させようとする。トリスとフォーがクリスティーナとヘクターを救うが、マーリーンは命を落とした。彼女の遺体を調べると、発信機能を備えた高性能の導入剤注入器が頭に埋め込まれていた。エドガーを始めとする無派閥の面々はトリスを引き渡すべきだと主張するが、フォーと仲間たちは反対した。トリスは責任を感じ、独断でジェニーンの元へ向かった…。

監督はロベルト・シュヴェンケ、原作はヴェロニカ・ロス、脚本はブライアン・ダッフィールド&アキヴァ・ゴールズマン&マーク・ボンバック、製作はダグラス・ウィック&ルーシー・フィッシャー&プーヤ・シャーバジアン、共同製作はヴェロニカ・ロス&ジョン・ワイルダーマス&チャーリー・モリソン&ティナ・アンダーソン、製作総指揮はトッド・リーバーマン&デヴィッド・ホバーマン&バリー・ウォルドマン&ニール・バーガー、撮影はフロリアン・バルハウス、美術はアレック・ハモンド、編集はナンシー・リチャードソン&スチュアート・レヴィー、衣装はルイーズ・ミンゲンバック、視覚効果監修はジェームズ・マディガン、音楽はジョセフ・トラパニーズ、音楽監修はランドール・ポスター。
出演はシェイリーン・ウッドリー、テオ・ジェームズ、オクタヴィア・スペンサー、ジェイ・コートニー、ケイト・ウィンスレット、ナオミ・ワッツ、レイ・スティーヴンソン、ゾーイ・クラヴィッツ、マイルズ・テラー、アンセル・エルゴート、マギー・Q、メキー・ファイファー、ジャネット・マクティア、ダニエル・デイ・キム、エムジェイ・アンソニー、キーナン・ロンズデール、ローサ・サラザール、スーキー・ウォーターハウス、ジョニー・ウェストン、アシュレイ・ジャッド、トニー・ゴールドウィン、ベン・ロイド=ヒューズ、コンラッド・ハワード、ルチェラ・コスタ、ジャスティン・ワックスバーガー、レオナルド・サンタイティー、ケイト・ラチェスキー、キャリー・マッキンリー他。


ヴェロニカ・ロスのヤング・アダルト小説を基にしたシリーズ第2作。原作は『ダイバージェント2 叛乱者』。
監督は前作のニール・バーガーから、『RED/レッド』『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.』のロベルト・シュヴェンケに交代。
脚本は、これが初長編のブライアン・ダッフィールド、『アイ・アム・レジェンド』『天使と悪魔』のアキヴァ・ゴールズマン、『ウルヴァリン:SAMURAI』『猿の惑星:新世紀(ライジング)』のマーク・ボンバックによる共同。
トリス役のシェイリーン・ウッドリー、フォー役のテオ・ジェームズ、役のジェイ・コートニー、ジェニーン役のケイト・ウィンスレット、マーカス役のレイ・スティーヴンソン、クリスティーナ役のゾーイ・クラヴィッツ、ピーター役のマイルズ・テラー、ケイレブ役のアンセル・エルゴート、トーリ役のマギー・Q、マックス役のメキー・ファイファーらは、前作からの続投。
ジョアンナをオクタヴィア・スペンサー、イヴリンをナオミ・ワッツ、カンをダニエル・デイ・キムが演じている。

1作目からガッツリと内容が繋がっている形での続編なので、前作を見ていなかったら何が何やら全く理解できないことは確実だ。
しかも、このシリーズは登場するキャラクターが多いし、それぞれの派閥も設定されている。おまけに、「最初はAグループだったけど、途中でBグループに転向した」など、ポジションや関係性が変化している面々も少なくない。
なので、前作を見た」というだけでは不充分であり、かなり詳しく覚えている必要がある。
そうじゃない場合、事前に復習することを推奨する。
わざわざ復習してまで観賞するほどの映画なのかと問われたら、「貴方の感性にお任せします」と答えておく。

冒頭、ジェニーンは「派閥システムのおかげで平和が達成された。適性に応じた派閥に属することで、秩序ある平和な社会を実現した」と話す。
しかし具体的に、何がどうなったから派閥システムによって秩序ある世界が達成されたのかは、サッパリ分からない。
この作品は何から何まで、そういう状態である。ファンタジーな社会を構築するための様々な設定が用意されているが、そこに理屈など無い。
最初から細かいディティールは考えていないだろうってのは透けて見えるので、そこに説得力や意味を求めたところで時間の無駄だ。
「そういう設定だから」ってことで、問答無用で受け入れるしかない。

前作の段階で既に「派閥システムって破綻してないか?」と強く感じていたので、もはや2作目で言い出すようなことでもない。
ただし、それは観客だけが感じることであり、劇中では「派閥システムには問題が多い」と感じる人々こそ存在するものの、「派閥システムなんて実質的はマトモに機能していない」ってことについて指摘するような人物はいない。
それは言っちゃダメな現実なのだ。
っていうか、それは暗黙の了解などではなく、劇中では「そんな現実など無い」という設定になっているのだ。

トリスを「戦うヒロイン」にしたいのは分かるし、もちろん話の内容を考えても「男に守ってもらうだけのヒロイン」では困る。
ただし、やたらと好戦的なのも困りモノだ。すぐにカッとなって、やたらと暴力を行使したがるのよね。
そういうのって、脇役のキャラクターが担当するような役回りじゃないかと。
彼女は平和の村で過ごすシーンで「息が詰まりそう」と漏らすんだけど、平穏な生活があるのに不満を漏らしているってことだ。ようするにトリスは、やたらと刺激を求めたがる女なのだ。

すぐにトリスがカッとなるのは、「両親やウィルの死に罪の意識を抱き、心がささくれ立っている」という設定なんだろう。
だけど、そういう事情が無かったとしても、そもそも好戦的な性格にしか見えないのよ。
列車で無派閥と遭遇するシーンでも、先に挑発して来たのはエドガーだけど、隙を見て襲い掛かるのはトリスなのよね。
そうやって「すぐに暴れたがる」という様子ばかりを見せられると、ただ単に「短気で好戦的」ってだけに留まらず、「オツムが良くない奴」という印象になっちゃうのよ。

フォーとトリスは高潔の本部でカンに捕まるが、「そりゃそうだろ」と言いたくなる。
何しろ、普通に正面から本部へ入って、堂々と行動しているわけだから。
自分たちが追われる身だということを、完全に忘れているのかと。なぜ隠密に行動しようとしないのか、まるで理解できんよ。
ぶっちゃけ、そこまでの行動だって、お世辞にも利口とは言えないよ。
ただ、高潔の本部で堂々と行動して捕まるのは、特にボンクラ度数が高いわ。

フォーはカンに捕まって連行されそうになった時、「自白導入剤を使え」と持ち掛ける。
だけど、それは最初から計画していたことではないからね。ピンチになって、咄嗟に思い付いただけだからね。
ようするに、行き当たりばったりなのよ。
イヴリンの提案を拒絶したフォーが「無派閥と組む」と言い出すのも、やっぱり「深い考えに基づかない行き当たりばったりの作戦」にしか思えないよ。
「トリスを守るため」とか言ってるけど、そう言えば何でも許されると思うなよ。それって無派閥の隠れ家へ案内される時も口にしていた台詞だけど、カッコ悪い言い訳でしかないぞ。

この映画で最も厄介なのは、「すんげえ陰気」ってことだ。
まだ物語は続くので、「全て解決して大団円」という着地に到達しないのは当然だし、そんなのは一向に構わない。
ただ、シリーズの途中であっても、1本の映画として「何かしらの問題が解決して一息つく」とか、「とりあえずの達成感があるようなミッションをクリアする」とか、そういうエピソードは用意できるはずだ。
だけど、本作品には、爽快感や高揚感を抱かせるような展開が何も無いのだ。

ヒロインが何かに付けて責任感や罪悪感を抱いて思い詰める性格なので、それに引っ張られて映画全体の雰囲気が陰鬱になるってのは仕方が無いかもしれない。
だけどトリスは、一方で好戦的な性格も持ち主でもあるわけで。
っていうかヒロインの性格がどうであろうと、その気になれば幾らだってスカッとするシーンは作れるはずなのよ。
まあ原作付きの映画だから、そういうことをやっちゃうと大幅に内容を逸脱してしまうという事情もあるんだろうけどさ。

トリスはフォーの言葉を聞かず、ジェニーンの元へ投降する。もちろん「責任を感じての行動」ではあるんだけど、まるで共感できない。
で、トリスはピーターから銃を奪って突き付け、ジェニーンに「自殺者を止めないと撃つわよ」と告げる。
でも、それまでの経験から、ジェニーンがピーター程度の奴なんて平気で見捨てることぐらい分かりそうなモンでしょ。実際、まるで相手にされていないし。それでジェニーンが要求を飲むと、なぜ思えたのか。
そこは一応、「ジェニーンに見捨てられたピーターが再びトリス側に寝返る」という展開のための伏線ではあるんだけど、無理があり過ぎるわ。

ピーターを使った脅しが通用しないと分かると、トリスは自分に銃を突き付けて「実験には私が必要なんでしょ」と言う。
すると、そこへジェニーンの手先となったケイレブが現れ、トリスから銃を奪い取る。
なぜケイレブが無欲へ戻らず、ジェニーンの手先になっているのかサッパリ分からない。
本人は「正しいことをした」と言うだけであり、その後は実験でトリスを見殺しにするような奴なので(実際は生き延びるけど)、ただのクズ野郎にしか思えんぞ。

トリスは実験を承諾し、5つの派閥に対応したVR映像の中で試練と対峙する。
それぞれにアクションをやったり、親しい人間への対応を迫られたりするんだけど、「所詮はVRだからね。現実じゃないしね」という冷めた気持ちになってしまう。それによって死者が出る危険があるような実験ではあるんだけど、ヒロインであるトリスが死なないことは明白だしね。
で、その実験のラストでトリスは自身の幻影と対峙し、「私自身を許す」と言うことで全てクリアってことになる。
ずっと好戦的で短気だったのは、そこへ向けての伏線だったわけだ。
でも、急に物分かりが良くなって冷静に対処するので、すんげえ都合がいい展開だなあと感じるぞ。

ジェニーンは箱のメッセージを読み取ることに躍起になっているんだけど、そんなに重要かね。
それが無い状態でも、「異端者は危険で、派閥システムを破壊しようとする存在」ってのは、「事実」として広く知れ渡っているわけで。
だったら、そんなメッセージが無くても、ジェニーンの野望は達成できるんじゃないのかと。
その箱にジェニーンが望むようなメッセージが隠されていたとしても、直接的に異端者を排除する力があるわけでもないんだしさ。

箱が解放されると、フェンスの外の住人を名乗る女(トリスの祖先のイーディス)が「異端者は人類存続の希望」と語る。ジェニーンの望んでいた内容とは真逆であり、メッセージが国民に知らされることでトリスの立場は一気に逆転する。
そういう意味では大きな影響を与える内容だったと言えるけど、メッセージが明らかにされた時点では「だから何なのか」という感想しか沸かなかった。
何しろ、こっちは「異端者は危険な破壊者」なんて、これっぽっちも思っていなかったからね。とは言え、「人類存続の希望」とも思わなかったけどさ。
ただ、そのメッセージにしても、具体的にどういう理由で異端者が人類存続の希望なのかは何も説明してくれないのよね。

(観賞日:2017年5月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会