『ダーティ・キッズ/ぶきみくん』:1987、アメリカ

ある日の深夜、アンティーク・ショップのゴミ箱の中で“彼ら”の声がした。“彼らはゴミ箱から外に出て騒ぎ出すが、声を耳にした店長 のキャプテン・マンジーニがやって来たため、慌ててゴミ箱に戻った。キャプテンはゴミ箱に物をを乗せ、蓋を閉めた。翌日、キャプテン の助手をしている14歳のドジャーは、不良のジュースと仲間のウォーリー、ブライスに追い掛けられ、金を奪われて泥水に落とされた。 ジュースは恋人のタンジェリンと共に、その金で遊びに出掛けた。
ドジャーが店に行くと、キャプテンは泥まみれの服を脱がせ、アフリカの民族衣装に着替えさせた。ドジャーがゴミ箱に触れようとすると 、キャプテンは「他の者は触れてもいいが、これはダメだ」と注意した。彼は「これはパンドラの箱だ。とても危険な物だ」と説明し、棚 の上に片付けた。ジュースたちが店の前を通り掛かったので、ドジャーはタンジェリンに「中も見て行けば?役に立ちそうな物がある」と 誘う。ドジャーはタンジェリンに好意を寄せていた。
ドジャーはタンジェリンに商品を見せ、彼女の気を惹こうとする。そこへジュースが戻り、「俺の女に手を出すな」とドジャーを睨んだ。 タンジェリンがなだめてもジュースの怒りは治まらず、ウォーリーとブライスにドジャーを痛め付けるよう命じた。ドジャーはウォーリー に投げ付けられて棚にぶつかり、その勢いでゴミ箱が落下した。蓋の開いたゴミ箱からは、緑色のスライムが流れ出した。
ジュースたちはドジャーを捕まえ、店の外に連れ出した。彼らはマンホールの下にドジャーを押し込み、下水を浴びせて立ち去った。そこ へ“彼ら”が駆け付け、ドジャーを店に連れ帰って介抱した。“彼ら”は醜い姿をした様々な種類のゴミ箱人形だった。ドジャーが目を 覚ました途端、ゴミ箱人形たちは店の商品を散らかして暴れ始めた。ドジャーが注意しても、彼らは聞く耳を貸さなかった。
キャプテンが店に戻り、「あれほど注意したのに開けたのか」とドジャーを叱責した。「僕じゃないよ」とドジャーは釈明する。人形たち をゴミ箱に戻そうとしたキャプテンだが、必要な道具が揃っていなかった。キャプテンはドジャーに、人形たちを紹介する。グリーザー・ グレッグ、ヴァレリー・ヴォミット、アリ・ゲイター、ファール・フィル、ナット・ナード、ウィンディー・ウィンストン、メッシー・ テッシーという7体だ。キャプテンは「ゴミ箱に戻る気が無いのなら、ノーマルな人々には絶対に近付くな」と言い含めた。
ドジャーはタンジェリンの家を訪れ、ディスコへ服を売りに行く彼女に同行した。ドジャーが「商売のコツを教えて」と言うと、「最初は 高く吹っ掛けるのよ」と彼女は告げた。タンジェリンはデザイナー志望で、早く町を出たいと思っていた。ジュースたちが車でディスコに 来たので、ドジャーは慌てて身を隠した。街に出た人形たちは食料を調達し、ペプシのトラックを奪って飲み物を手に入れた。
人形たちはドジャーの力になるため、服を作った。そして、その服を着てタンジェリンの気を引き、デートに誘うよう促した。ドジャーが タンジェリンの家に行くと、彼女は服を見て「最高よ、どこで手に入れたの」と強い関心を示した。ドジャーが「作ったんだ」と答えると 、彼女は「他にもあるなら、私の商品と一緒に出してもいいわ。でも金曜までに少なくとも12着は必要よ」と述べた。それは3日後だが、 ドジャーは「何とかするよ」と口にした。
店に戻ったドジャーは、人形たちに服作りを依頼した。人形たちは必要な道具を調達し、服を作り始めた。仕事に疲れた彼らは、気分転換 として映画を見に行くことにした。彼らは帽子とサングラス、トレンチコートで変装し、映画館へ向かう。アリとウィンストン以外の5体 は、3バカ兄弟の映画を観賞した。一方、バイクの調子が悪くなったアリとウィンストンは、ガラの悪い連中ばかりがいる酒場の前で停車 した。ウィンストンがバイクを修理している間に、アリは酒場へ足を踏み入れた。
アリはバイカーの足を噛んで、その仲間たちに取り囲まれる。そこでウィンストンが修理したバイクで突っ込み、大暴れした。すると バイカー軍団のリーダーが争いを制止し、「気に入った。乾杯だ」とアリたちに告げた。キャプテンは戻って来たアリに対して、「君は リーダー失格だ。ゴミ箱に戻る呪文が分かるまで、おとなしくしていろ」と注意する。しかし人形たちは聞く身を貸さず、下水管を使って ジュースたちに嫌がらせをした。
人形たちはドジャーから「これから君たちはどうするつもりだ」と問われ、他の仲間が幽閉されて危険にさらされていることを語った。 「醜人収容所に閉じ込められている」という話を信じないドジャーだが、キャプテンが来て「醜人収容所は存在する。汚い現実に目を 背けて来たが、今こそ戦うべきだ。醜人収容所へ乗り込むぞ」と言う。街に出たキャプテンとドジャーは、醜人収容所の警官たちが醜人を 捕まえるために巡回している姿を目撃した。醜人収容所の場所を特定したキャプテンは、夜まで待機することにした。
ドジャーはタンジェリンと会い、人形たちの作った服を持って彼女の車に乗り込む。その売り上げに満足したタンジェリンは、「また一緒 に商売しましょ」とドジャーの頬にキスをして別れる。ジュースはタンジェリンと会って稼ぎを受け取り、「金のためだ、あのガキは 生かしておく」と告げて車で去った。ドジャーがタンジェリンと会っていると、人形たちがやって来た。嫌悪感を露わにしたタンジェリン だが、ドジャーが「彼らが服を作ったんだ」と説明すると、証拠を見せて欲しいと要求した。
人形たちが服を作っている様子を見たタンジェリンは、ドジャーに「いいことを思い付いた。デパートでファッション・ショーを開くのよ 。ブランドには私の名前を使うわ。あの連中にどんどん服を作らせるのよ」と語った。キャプテンはドジャーを連れて収容所へ赴くが、 厳重な警備を目の当たりにして、ひとまず退却する。ファッション・ショーの当日、タンジェリンは完成した服を受け取り、デパートへ 向かおうとする。人形たちはショーを見に行こうとするが、ドジャーから話を聞いたタンジェリンは「もし見つかって収容所送りにでも なったらどうするの」と告げた。
タンジェリンは部屋の扉に鍵を掛け、人形たちを閉じ込めた。彼女はドジャーと共にデパートへ向かい、ジュースに部屋の鍵を渡した。 ジュースはウォーリーとブライスを伴って店に乗り込み、キャプテンをスプレーで気絶させた。彼らは鍵を開けて人形たちを捕まると、 醜人収容所に連行して看守から謝礼を受け取った。デパートに乗り込んだジュースたちは、ドジャーに「奴らの命は貰った」と不敵な態度 で言い放った。ゴミ捨て場に投げ込まれたドジャーは、すぐに抜け出して人形たちの救出に向かう…。

製作&監督はロッド・アマトゥー、脚本はメリンダ・パーマー&ロッド・アマトゥー、共同製作はマイケル・ロイド&メリンダ・パーマー 、製作総指揮はトーマス・コールマン&マイケル・ローゼンブラット、製作監修はジョン・ストロング、撮影はハーヴェイ・ジェンキンス 、編集はレオン・カレル、美術はロバート・I・ジリソン、衣装はジュディー・C・チャンピオン、音楽はマイケル・ロイド。
出演はアンソニー・ニューリー、マッケンジー・アスティン、ケイティー・バーベリ、フィル・フォンダカーロ、ロン・マクラクラン、 J・P・アマトゥー、マージョリー・グラウエ、デビー・リー・キャリントン、ケヴィン・トンプソン、ロバート・ベル、ラリー・ グリーン、アルトゥーロ・ギル、スーザン・ロシット、ジョン・ケイド、リン・カートライト、チェスター・グライムズ、パティー・ ロイド、レオ・V・ゴードン、ギャヴィン・モロニー、リンディー・ハドルソン他。


1980年代、全米ではザビエル・ロバーツが作ったキャベツ畑人形(Cabbage Patch Kids)という人形が大ヒットした。
ちなみに日本にも輸入されたが、全くヒットせずに消えた。
で、そのキャベツ畑人形をパロディー化した「Garbage Pail Kid」という人形のトレーディングカードをアメリカのトップス・カンパニ ーが発売すると、これが大ヒットとなった(現在もシリーズが続いている)。
そのカードを基にしているのが、この作品である。
世界で初めて、トレーディングカードを基にした映画だ。

日本ではトレーディングカードが発売されていないし、そもそも本家のキャベツ畑人形もブームにならなかったので、当然のことながら 劇場未公開。
ビデオ発売されているだけでも驚きだが、他の映画を購入する時に、抱き合わせで買わされたのかもしれない。
北米での興行成績も惨敗だったが、続編の予定もあったそうだ。
監督のロッド・アマトゥーは、この作品がコケたことで干されてしまったらしく、2003年に死去するまで二度と映画を撮らせて もらえなかった。

キャプテン役は歌手や作曲家としても活躍していたアンソニー・ニューリーで、本作品以降、1999年に死去するまで二度と映画出演して いない。ドジャーをマッケンジー・アスティン、タンジェリンをケイティー・バーベリ、ジュースをロン・マクラクラン、ウォーリーをJ ・P・アマトゥー(監督の息子)、ブライスをマージョリー・グラエが演じている。
ゴミ箱人形を演じたのは小人俳優の面々で、グレッグ役のフィル・フォンダカーロは『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(『スター・ ウォーズ/ジェダイの帰還』)ではイウォークを演じていた。
当時はCGでゴミ箱人形を描くような技術も無く、特殊メイクで人形っぽく見せることも難しかったようで、その小人俳優の面々が、 作り物の頭部を被って演じている。
その頭部、出来栄えがものすごくチープ。
しかも、予算的な問題もあって、まだ未完成のままで撮影に入っちゃってるという始末。
そりゃコケても当然だわ。

ゴミ箱人形の見せ方も上手くない。
ドジャーを助け出すところまでは姿を見せていないのに、彼を店に連れ帰って体を拭いた後、あっさりと姿を見せちゃう。
そこはタイミングが違うだろ。
意識を取り戻したドジャーが目を開き、彼らを見て驚く、というところで、初めて姿をカメラに写し出すべきでしょ。
そこまで引っ張っておいて、なぜドジャーより先に観客へのお披露目をしちゃうのかと。

それと、彼らを見たドジャーが全く驚かず、平然と対応しているのも違うでしょ。
そこは「まず驚いたり怖がったり嫌悪感を示したりして、でも好感の持てる奴らだと分かったので恐怖は無くなり、警戒心を解く」という ような手順を踏むべきでしょ。
せっかく「ゴミ箱から現れたお下劣で醜い奴ら」というキャラ造形なのに、それが全く活かされていない。
主人公が最初から普通に受け入れちゃったら、醜くて下劣なキャラである意味が無くなっちゃうでしょうに。

主人公を「最初から彼らを醜い存在として敬遠せず、受け入れる優しい少年」ということにしたいのであれば、その前にゴミ箱人形を見て 怖がったり嫌悪したりするキャラを用意すべきだ。
そうすることで、「普通の人々からは嫌がられる存在だけど、ドジャーはそうではなかった」という違いを見せることが出来る。
最初のドジャーの反応が普通で、しかも次にゴミ箱人形と接するのは仲の良いキャプテンなので、嫌悪感を示さずに受け入れる方が ノーマルな反応のように見えてしまう。

ドジャーが目を覚ました後の、ゴミ箱人形たちの行動はおかしい。
そもそもドジャーを助けたのも、いい奴らなのかと思ったら、「目を覚ましてボクらを助けてくれよ」と言っているし。
で、それは受け入れるにしても、助けてもらいたいのなら、ドジャーが目を覚ました途端、みんなが好き勝手に店の商品をいじくり まわして暴れるのは、どういうつもりなのかと。
それと、「助けてほしい」と言っているけど、そのことはすっかり忘れちゃうし。

人形のキャラ紹介は、ほぼ名前だけ。それぞれの性格や特技などはまるで紹介されず、一括りの扱いにされている。
それぞれが個性を発揮するとか、それぞれにスポットを当てたエピソードが用意されているとか、そんなことは無い。
「見た目だけでなく心も醜い」という設定のようだが、ペプシのトラックを奪うシーンが挿入されるだけ。
しかも、それを挟むことが、むしろ物語の進行としては邪魔になっている。
「力になる」と言った後、トラック襲撃&食事シーンがあって、それから店に戻ったドジャーに服をプレゼントしているんだけど、それ だと流れが悪いでしょ。

ドジャーに服をプレゼントする直前、ゴミ箱人形は飯を食って腹を壊していたわけで、いつの間に服を作ったのかと。
そもそも、ドジャーにプレゼントした服を作るシーンも無いし、その服をドジャーが貰うシーンも淡白だ。
「ただ騒がしくて醜い連中だと思っていたら、裁縫の技術とデザインのセンスだけは優れていた」というギャップを用意しているので あれば、そこをもっと強調すべきじゃないのか。なんで淡々と処理しちゃっているのかと。
それと、なぜ彼らがドジャーのために働くのか、サッパリ分からない。ドジャーに対して、そんなにしてやるような恩義は無いはずなのに。
こいつらがお人好しキャラという設定なら別に構わんが、そうじゃないはずでしょ。

ゴミ箱人形は何の警戒もせず、人に見つからないように隠れているわけでもなく、平然と街に出ているが、なぜか見つからない。ペプシ 以外にも物を盗んでいるのだが、その辺りも淡白に処理されている。
で、じゃあ彼らが周囲を気にせず外に出ているのかと思ったら、映画を見に行く時は「外は危険だ」「変装しよう」ということになって いる。
でも、外は危険だということで変装してバレないようにしたのに、酒場でアリ(人形の中でも特にバレたら怖がられそうなワニのキャラ) の姿がバレても、そこにいた連中は何のリアクションも見せない。すぐに受け入れている。
なんだよ、そりゃ。

映画館の方でも、ゴミ箱人形は観客にちょっかいを出したりポップコーンをまき散らしたりして迷惑を掛けているが、それで大きな騒ぎに 発展するようなことはない。
観客が彼らの姿を見て悲鳴を上げたり、逃げ出したりすることも無い。「迷惑を掛けられて不愉快だから」ということで立ち去る連中は いるけど、それは意味が違う。
そうなると、キャプテンが「ノーマルな連中とは近付くな」と口うるさく言っていたことの意味も弱くなっちゃうと思うんだけど。
っていうか、ひょっとすると「ゴミ箱人形の存在が広く知られている」という世界観だったりするのか。
だとしても、それを説明していないことの不備がダメだし。

他にも、例えば「ゴミ箱に戻る呪文」とかいう設定が急に出て来る。
なぜかゴミ箱人形が急にジュースたちを懲らしめたりする。
何の脈絡も無くドジャーが人形たちに「これから君たちはどうするんだ」と問い掛けたり、それに対して人形が「仲間たちが心配だ。命が 危ない。幽閉されてる」と唐突に言い出したりする。
急に醜人収容所へ乗り込む展開になったりもする。
何から何まで、話が行き当たりばったりでデタラメ放題。
ドジャーがタンジェリンに気に入られるために人形が服を作るというエピソードは、どこへ行ったのかと。

仲間を助けるために醜人収容所へ乗り込むにしても、そっちのエピソードを投げっ放しにするのはダメだろ。
一応、収容所を見つけた次のシーンでドジャーがタンジェリンと一緒に服を売るシーンがあるんだけど、上手く処理できているとは言い 難い。流れが全く作られておらず、ツギハギ状態になっているのでね。
あと、ジュースが人形たちを収容所に送り込む理由も良く分からん。謝礼が目当てなのかと思ったら、そうでもなさそうだ。
わざわざドジャーに「奴らの命は貰ったぜ」とバラしているけど、ドジャーへの嫌がらせが目的ってことなのか。だったら本人に手を 出せばいいわけで。
とにかく、人形の造形だけでなく、他の面でもドイヒーな仕上がりだ。

(観賞日:2013年3月22日)


第8回ゴールデン・ラズベリー賞(1987年)

ノミネート:最低新人賞[ダーティ・キッズ7人衆]
ノミネート:最低オリジナル歌曲賞「You Can Be A Garbage Pail Kid」
ノミネート:最低特殊視覚効果賞


第10回スティンカーズ最悪映画賞(1987年)

ノミネート:作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会