『大脱出3』:2019、アメリカ
オハイオ州マンスフィールド。ダヤ・ジャンはのバオ・ヤンを伴い、かつて電機メーカーが入っていた廃墟のビルを見学した。案内の面々から説明を受けたダヤは、アメリカ進出の物件として購入を決める。彼女は香港でジャン社を経営する父のウー・ジャンに電話を掛け、「私を信用して」と説得する。ジャンは側近から「我が社が手掛けた船の監獄のことを知って、王族が砂漠に監獄を造ってほしいと」と聞く。ジャンは側近に指示を出した後、ダヤの提案を承諾した。
ダヤが空港に着くと、部下のウォンが「貴方の護衛は完璧だ」と褒める。しかしダヤは、「バオは優秀だけど、シェンの穴は埋まらない」と言う。かつてダヤの護衛を担当していたシェンは、彼女に惚れて解雇されていた。バオは格納庫で働く連中が敵だと察知して攻撃するが、飛行機から出て来たレスター・クラーク・ジュニアに気絶させられた。一味のシルヴァやラルフたちは3人を始末し、ダヤと部下たちを飛行機で連行した。その際、ジュニアはバオの上着のポケットにレイ・ブレスリンの名が書かれたUSBを入れた。
カリフォルニア州ロサンゼルス。ブレスリンはアビゲイルと電話で話し、同棲についての意見を語る。アビゲイルは彼に、「ディスクには秘密刑務所と私たちを結び付ける情報が含まれているかも」と言う。シェン・ローはチュウの会社へ行き、彼との面会を要求した。シェンは襲って来る一味を撃退し、ディスクを手に入れた。そこへブレスリンが現れて拳銃を構え、ディスクを渡すよう要求した。シェンは彼を知っており、要求を拒む。するとブレスリンは、「中身を確かめたらディスクは渡す」と持ち掛けた。
バオは警察署へ連行され、刑事から責任を追及される。連絡を受けて駆け付けたジャンは、バオを激しく非難した。ブレスリンはシェンをオフィスへ案内し、秘書のジュールスや仲間のハッシュ、アビゲイルたちと会う。ハッシュがディスクの中身を確認するが、「ジャンとの接点を示す情報は無い」とブレスリンに言う。シェンに「ジャンの出資を受けただろ」と訊かれたブレスリンは、「取引したのはレスリー・クラークだ。俺じゃない」と否定した。
シェンは「秘密刑務所にはジャン社の技術が使われてる。ジャン社は資金洗浄会社だ」と告げ、「個人的な理由で奴を破滅させたい」と口にした。アビゲイルが「勝手にどうぞ」と冷たく突き放すと、彼は「では、レスター・クラークはどこに?」と尋ねる。ブレスリンは彼に、「噂では船旅に出たらしい」と嘘をついた。そこへバオが現れ、ジュニアが残したUSBをブレスリンたちに見せた。ハッシュがUSBの中身を確認すると、ジュニアのビデオメッセージが入っていた。ジュニアはブレスリンに、「因果応報だ。ダヤ・ジャンを預かってる。お前も覚悟しておけ」と言い放った。
映像を分析したブレスリンたちは、ジュニアが東欧にある監獄の礼拝堂だと推理する。ブレスリンはエストニアのタリンにいるデローサに連絡して動画を見てもらい、場所の特定を要請した。デローサは「特定は難しい」と言い、「最も有力なのは?」とブレスリンに訊かれると「悪魔砦だ。ベラルーシから約300キロの場所にある」と答えた。ブレスリンとアビゲイルが悪魔砦へ向かうことを決めると、シェンが同行を求めた。ブレスリンは彼も連れていくと決め、準備に取り掛かった。
ラトビアのデルバニシュキにある悪魔砦に、ジュニアの一味はダヤと部下たちを連行した。ジュニアが部下の1人を容赦なく始末したため、ダヤは身を震わせた。アビゲイルは電話でブレスリンと話している最中、ジュニアの放った手下たちに拉致された。ジュニアはジャンに電話を掛け、「アンタは父を利用し、自分の手を汚さずに富を得た。アンタを破滅させてやる。要求額は5億円から7億円になった。まだ上がるぞ」と告げた。
ブレスリンとシェンが車で出発しようとすると、バオは「俺の責任だ」と同行を志願した。ベラルーシの空港に着いた3人は、デローサと合流する。ジャンはシェンに電話を掛け、「娘が大変なんだ」と訴える。シェンは「俺の言う通りにしてくれ」と言い、犯人からの電話に出ないよう指示した。ジュニアはダヤを脅し、「ジャン社の機密情報にアクセスできる者は?」と詰め寄った。ダヤが答えをためらうと、ジュニアは部下を順番に指名して銃を突き付ける。ウォンは耐えられなくなり、「僕ならアクセスできる」と名乗り出た。ジュニアは彼を連行して拳銃で脅し、「開発中の情報を見せろ。闇市場で売りさばく」と告げた。
ブレスリンたちは悪魔砦の図面を見ながら、アビゲイルとダヤを救出する作戦を練る。ハッシュはドローンを飛ばし、赤外線カメラで内部の情報をブレスリンたちに送る。ジュニアが拘束したアビゲイルに固執していると、ラルフが「復讐したいのは分かるが、金が先だ。女は邪魔だから殺そう」と言われる。するとジュニアは苛立ち、「黙って従え」と要求した。ブレスリンに同行したジュールスは、下水道にトンネルがあることを突き止めた。ブレスリンはトンネルを使い、悪魔砦へ侵入することにした。
先にデローサが動いた後、ブレスリンはシェンとバオに待機を命じてトンネルに入った。すると敵は誰も現れず、シェンたちは看守塔にも人がいないことを伝える。ブレスリンは動きを読まれていると感じ、シェンはバオに「これは罠だ。ダヤは囮だ」と気付く。バオが指示を無視して突入しようとするので、シェンが慌てて制止する。すると庭に設置されていた爆弾が次々に起動し、2人は吹き飛ばされた。そこへシルヴァたちが駆け付け、シェンとバオをジュニアの元へ連行した。
ジュニアはシェンたちの前にアビゲイルとダヤを連れて来させると、銃を構えて脅しを掛けた。彼はシェンの通信機を奪ってブレスリンに呼び掛け、「楽しみを逃すな」と告げる。ジュニアは他の面々を移動させるが、アビゲイルだけを残した。そしてブレスリンに携帯を使うよう指示し、アビゲイルの殺害を見せ付けた。ブレスリンは襲って来る敵を倒しながら、奥へ進む。シェンは牢獄へ連行される時、ダヤに協力してもらって一味のスタンガンを盗み取った。独房に収監された彼は、スタンガンで火を起こして拘束を切った。デローサは誰にも邪魔されず、堂々と悪魔砦へ乗り込んだ…。監督はジョン・ハーツフェルド、脚本はマイルズ・チャップマン&ジョン・ハーツフェルド、製作はランドール・エメット&ジョージ・ファーラ&スー・シン&チウ・ジエ&マーク・キャントン&ザック・シラー&ロビー・ブレナー、製作総指揮はテッド・ファーンズワース&ミッチ・ロウ&ウェイン・マーク・ゴッドフリー&ロバート・ジョーンズ&チャールズ・オーティー&マーティン・ブレンコウ&バリー・ブルッカー&スタン・ワートリーブ&アリアンヌ・フレイザー&デルフィーヌ・ペリエ&ヘンリー・ウィンタースターン&ジョナサン・マイスナー&アレクサンダー・ボーズ&テッド・フォックス&ウィリアム・B・スティークリー&ショーン・アルバートソン&ヴァンス・オーウェン&マーク・スチュワート&メドウ・ウィリアムズ&スウェン・テメル&セルジオ・リズット&ブランドン・ホーガン、共同製作はティモシー・サリヴァン&アレックス・エッカート&アンソニー・コーリー&シーザー・リッチボウ&デヴィッド・ホップウッド&マイルズ・チャップマン&マイケル・J・ウラン&アラナ・クロウ、製作協力はブライアン・ララソン&アルノー・ラニック&ババク・エフテクハリ&アラステア・バーリンガム&ジャスミン・モリソン&ハーミット・フル、共同製作総指揮はライアン・ブラック&ジョナサン・ヘルマス、撮影はジャック・ジューフレ、美術はジェリー・アルバートソン、編集はショーン・アルバートソン、衣装はロジャー・J・フォーカー、音楽はヴィクター・レイエス、音楽監修はアシュリー・ウォルドロン。
出演はシルヴェスター・スタローン、マックス・チャン、デイヴ・バウティスタ、カーティス・ジャクソン、デヴォン・サワ、ジェイミー・キング、マリース・ジョー、ハリー・シャムJr.、ラッセル・ウォン、リディア・ハル、ダニエル・バーンハード、ジェフ・チェイス、シェー・バックナー、タイラー・ジョン・オルソン、ロブ・デ・グルート、ボイヤン・ヤン、シェリー・ロバートソン、リッチ・ミラー、ホランド・ハーツフェルド、トニー・デミル、ジャスティン・ユー、ジェイ・オールレッド、ハイディ・レワンドウスキー、ダニー・ワン、セルジオ・リズット、ジョシュ・アルトマン、マット・アルトマン他。
シリーズ第3作。監督は『ボビーZ』『ゲットバッカーズ』のジョン・ハーツフェルド。
脚本は1作目から全て担当しているマイルズ・チャップマンと、ジョン・ハーツフェルド監督による共同。
ブレスリン役のシルヴェスター・スタローンと、ハッシュ役のカーティス・ジャクソンは、1作目からのレギュラー。デローサ役のデイヴ・バウティスタとアビゲイル役のジェイミー・キングは、前作からの続投。
シェンをマックス・チャン、ジュニアをデヴォン・サワ、ダヤをマリース・ジョー、バオをハリー・シャムJr.、ウーをラッセル・ウォン、ジュールスをリディア・ハル、シルヴァをダニエル・バーンハードが演じている。前作のラストで、ブレスリンはハデスの黒幕に向かって「どこにいようと絶対に見つけ出す」と怒りの宣言をした。なので、その続きだと思いきや、なんと全く関係が無い。前作の話は、完全に「無かったこと」にされている。
ちなみに前作はスタローンが「酷い」と認めたようなポンコツ映画だったが、「だから3作目で修正した」というわけではない。この3作目は2作目の公開前から、撮影がスタートしている。
だったら、なおのこと繋がりを持たせることは出来たはず。それが何の関連性も無いってことは、最初から2作目と3作目は切り離す企画だったわけだ。
それで良くOKが出たな。前作は中国資本の主導で製作されており、実質的な主演はホアン・シャオミンだった。シルヴェスター・スタローンは15分ぐらいしか出番が無く、デイヴ・バウティスタはもっと出演シーンが少なかった。
今回も中国資本が入っているが、主演はホアン・シャオミンではない。
2作目が無かったことにされているだけでなく、彼が演じたシューというキャラクター自体が完全に無視されている。台詞の中で言及するようなことも無い。
しかし、代わりに今度はマックス・チャンが大きな役割を与えられている。オープニングで3分ほど、マンスフィールドの風景や人々の様子が映し出される。
だが、そこには何の意味も無い。マンスフィールドに住む人々の暮らしを描くドラマでもなければ、その町に関わる問題を取り上げる作品でもないからだ。
信用不良者向けローンの貼り紙とか、パートタイム空軍予備役の看板を見ている男の姿を描いたりするが、これも全く後に繋がらない。
「会社や工場が潰れて人々が経済的に困窮している」ってのをアピールしたかったのかもしれないが、それも含めて話に全く関係が無いし。ダヤの護衛はバオだけで、他は1人もいない。
そんなバオは格納庫にいた連中を襲うが、何を根拠に「こいつらは敵」と確信したのかは全く分からない。
彼が戦っていると、いつの間にか敵の1人が銃を構えてダヤたちを脅している。でも、それならバオに脅しを掛けて動きを制すれば良かったんじゃないのか。しばらく戦いを傍観している意味が全く無いだろ。
どうも彼に疑いが掛かるように仕向けたかったみたいだけど、その狙いも良く分からないし。ジュニアはブレスリンへの復讐心を燃やして動いているはずだが、だったらダヤの誘拐は何の関係も無い。
一方、ジャンへの復讐心による行動ってことなら、今度はブレスリンを巻き込む必要は無い。
「どっちの復讐も果たしたい」ってことなのかもしれないけど、だからって「ダヤを誘拐し、バオにブレスリンの名前を書いたUSBを残す」という行動は違和感しか無いわ。
まるで関連性の無い2つの計画を、強引に結び付けようとして失敗しているようにしか感じないわ。そもそも、その計画って「バオがUSBを持ってブレスリンの元を訪れる」という行動が無かったら成立しないのよね。
仮にバオが刑事から尋問を受けた時にUSBを渡したり、あるいはジャンに見せたりしていたら、そのブレスリンが中身を確認してメッセージを見ることも無いわけで。
そうなると、その中でブレスリンに宣戦布告しているのは、すんげえマヌケになっちゃうでしょ。
そういう不確定要素に頼った計画を立てている時点で、ボンクラな奴にしか思えんよ。ブレスリンは映像を見て「東欧の監獄」と場所を推定するが、デローサも特定は出来ていない。「最も有力なのは悪魔砦」というトコまでしか絞り込めていない。
ところがブレスリンは、なぜか「悪魔砦」と断定して行動を起こすのだ。
たまたま正解だったから良かったけど、悪魔砦に限定する根拠なんて何も無かったでしょ。そこを確定させないまま行動を起こすのは不用意極まりないし、プロとして甘すぎる。
っていうか、どうせジュニアはブレスリンをおびき寄せるつもりなんだから、場所を教えりゃ良かっただろ。アビゲイルは拉致された時、アメリカにいる。そこから次に搭乗すると悪魔砦にいるのだが、「アメリカからラトビア」という遠い距離感が全く伝わって来ない。すぐ近くにあるように感じるのだ。
ブレスリンたちがベラルーシへ向かう時には、もう悪魔砦に連行されているし。
っていうか実際、この映画って東欧では撮影しておらず、ロケ地は全てマンスフィールドなのよね。
だったら、もうマンスフィールドに悪魔砦がある設定でも良くないか。少なくとも、東欧に設定している意味は全く感じないぞ。2作目から連続で観賞すると、とても同じ世界観とは思えない。
前作はAIが制御してロボット医師が働くハイテク監獄が舞台だったが、今回は古い廃墟みたいな刑務所が舞台だ。
そんな悪魔砦について、デローサは「まるで迷宮だ。この世の地獄だ」と評する。だけど実際にブレスリンたちが悪魔砦に入ると、その説明とは全く合致しない。ブレスリンたちが簡単に潜入できているのは「ジュニアの罠」という設定だけど、そもそも看守もいなきゃ警備システムも全く設置されていない様子だからね。
なので、「侵入させてから対処する」という方法しか取れないのよ。粗筋にも書いたように、デローサは誰にも邪魔されることなく堂々と悪魔砦に乗り込んでいる。
だったらブレスリンたちも、その方法で良かったじゃねえか。わざわざ下水道のトンネルから侵入する意味なんて無かったじゃねえか。無駄に手間と時間を掛けただけになってるでしょ。
デローサがドラゴンブレス弾を撃ちまくるシーンは楽しいし、マックス・チャンがダニエル・バーンハードと戦うシーンも「B級格闘アクション映画」のファンなら喜べるだろう。
でも、その程度で満足できる人は、決して多くないはずだ。(観賞日:2021年3月1日)