『ダーティ・ダンシング』:1987、アメリカ

1963年の夏。17歳のベイビーは、医師の父ジェイク、母マージョリー、妹リサと共にケラーマン山荘へ出掛けた。山荘経営者マックスの孫ニールからダンスに誘われたベイビーは、ホールで激しいダンスを踊る山荘のダンス教師ジョニーとペニーを目撃する。
しばらくして、ベイビーはボーイのビリーに案内され、従業員だけのダンスホールに行った。そこでベイビーは、ジョニーと再会する。彼はビリーの従兄だった。ジョニーからダンスに誘われたベイビーは、ためらいながらも彼と抱き合い、体を動かした。
ある日、ペニーが妊娠していることが分かった。だが、相手のバイト従業員ロビーは、責任逃れをしようとする。ペニーは中絶手術を受けることになるが、巡回医の予約は木曜日しか取れない。その日は大事なショーの日と重なっていた。
ペニーやビリーの薦めで、ベイビーはショーの代役を務めることになった。猛特訓を受けたベイビーは、幾つか失敗しながらもペニーの代役を務め終えた。山荘に戻ってみると、潜りの医者による中絶手術を受けたペニーが苦しんでいた。
ベイビーは父に頼み、ペニーに応急処置をしてもらう。だが、ジェイクはペニーの相手がジョニーだと思い込み、ベイビーに彼らと付き合うなと告げる。そんな中、ジョニーが盗難事件の犯人として疑われる。ベイビーが一緒にいたことを話したため、ジョニーの嫌疑は晴れた。だが、それが原因で、ジョニーは山荘を去ることになってしまう…。

監督はエミール・アルドリーノ、脚本&共同製作はエレノア・バーグスタイン、製作はリンダ・ゴットリーブ、製作協力はドロー・バッハラッハ、製作総指揮はミッチェル・キャノルド&スティーヴン・ロイター、撮影はジェフ・ジャー、編集はピーター・C・フランク、美術はデヴィッド・チャップマン、衣装はヒラリー・ローゼンフェルド、振付はケニー・オルテガ、音楽はジョン・モリス、音楽監修はダニー・ゴールドバーグ&マイケル・ロイド。
出演はパトリック・スウェイジ、ジェニファー・グレイ、ジェリー・オーバック、シンシア・ローズ、ジャック・ウエストン、チャールズ・ホニ・コールズ、ケリー・ビショップ、ロニー・プライス、ジェーン・ブルッカー、マック・カンター、ポーラ・トゥルーマン、“カズン・ブルーシー”・モロウ、ニール・ジョーンズ、ウェイン・ナイト、アルヴィン・マイロヴィッチ、ミランダ・ギャリソン他。


ダンス演出家のエミール・アルドリーノがメガホンを執った作品。
ジョニーをパトリック・スウェイジ、ベイビーをジェニファー・グレイ、ジェイクをジェリー・オーバック、ペニーをシンシア・ローズ、マックスをジャック・ウエストンが演じている。他に、タップダンサーのチャールズ・ホニ・コールズ、ラジオDJの“カズン・ブルーシー”・モロウなどが出演している。

タイトルにある通り、劇中ではダンスのシーンが何度か登場する。ジョニー&ベイビー、ジョニー&ペニーが踊るのはラテン・ダンス。ただし、あくまでも社交ダンスのラテン。従業員用ホールの面々は、ランバダみたいなダンスもやっているが。
この映画のセールスポイントは、何と言ってもダンスと音楽だろう。ダンスシーンを見て、音楽を聞けば、それだけで充分だと言っても過言ではない。それ以外の部分で見所を探しても、少女の成長劇とか、恋愛劇とか、そういう所に大した面白さは無いし。

劇中で使用されている曲は、ザ・ロネッツの『Be My Baby』、フランキー・ヴァッリ&ザ・フォー・シーズンズ『Big Girls Don't Cry』、オーティス・レディング『Love Man』、ザ・ドリフターズ『Some Kind of Wonderful』、ザ・シュレルズの『Will You Love Me Tomorrow』などだ。
つまり、1960年代にヒットしたポップスが使用されているわけだ。
で、ラテン・ダンスを踊っているのに、なぜかBGMはロックンロールやポップスばかりなのである。ベイビーが練習するシーンでも、ずっとBGMはロックかポップス。
だから、ダンスとBGMが全く合っていない。
ラテンのダンスなら、音楽もラテンにすべきでしょ。

「ショーでマンボを踊る」ということでベイビーの特訓が始まるのに、なぜかBGMはマンボではなくザ・サファリーズの『ワイプアウト』。
ロックンロールとマンボでは、リズムが全く違うと思うのだが。
そんなにラテンに詳しいわけではないが、マンボなら2・3か3・2のクラーベのリズムが自然に入るはず。『ワイプアウト』でそれをやると、明らかに違和感がある。

序盤、ジョニーとペニーが激しいダンスを披露する。で、それ以降は、イマイチなダンスシーンしか出てこない。ようするに、ダンスに関してはクライマックスは序盤にある。ラストにはジョニーとベイビーのダンスシーンがあるが、そんなに面白いモノではない。
というか、そもそもダンスシーンがそんなに多いわけではない。後半に入ると、ダンスなんて無視してジョニーとベイビーの恋愛と自立の物語で進めていく。序盤にダンスシーン最大の見せ場があって、話が進むに従ってダンスが消えるってのは、違うでしょ。チンタラした恋愛劇なんて見せている暇があったら、ダンスシーンを見せなさいって。

後半は、恋愛劇だけではなく、“ジョニーとベイビーによる大人への反抗”という話も入ってくる。で、最後になって、ジョニーが「ベイビーは自由だ」と言って父親から奪い、他の連中がショーをやってる所に乱入するというメチャクチャな展開に。で、身勝手と自由を履き違えたジョニーの行為を、なぜか客が歓迎してしまうという呆れたエンディング。
そんでもって、そこはジョニーとベイビーによるダンスがあるのだが、やっぱり流れてくるのはマンボじゃないのよ。そこは、「中盤のショーで失敗したリフトを今度は成功させる」という流れがあるんだから、BGMはマンボじゃなきゃダメじゃないのか。

 

*ポンコツ映画愛護協会