『ダイ・ハード4.0』:2007、アメリカ&イギリス

ハッカーのマット・ファレルは依頼を受けてセキュリティーを破り、コードを送った。依頼した女、マイは、トーマス・ガブリエルという男 の部下だった。あるハッカーがパソコンのボタンを押した瞬間、トーマスの一味が仕掛けた爆弾が起動して家が爆発した。ワシントンの FBIサイバー犯罪部のコンピュータが数秒間だけ停止し、すぐに回復した。これを重く見たボウマン副局長は、ブラックリストに載って いるハッカーの一斉捜査を部下に命じた。
ニュージャージー州。ニューヨーク市警の警部補ジョン・マクレーンは、娘のルーシーが彼氏のジムと車内でキスをしているところへ 現れた。ジョンは離婚し、ルーシーは妻ホリーの元にいる。ジョンはいきなりジムを車から引っ張り出し、その行動にルーシーは怒りを 露にした。ジョンが話をしようとしてもルーシーは耳を貸さず、腹を立ててその場を立ち去った。
ジョンの元に上司スカルヴィーノからの電話が入り、ニュージャージー州内にハッカーのマット・ファレルをワシントンまで連行するよう 命じられた。ファレルのパソコンにも、一味はボタンを押すとアパートの部屋が爆発する仕掛けを施していた。何も知らずにボタンを 押そうとしたファレルだが、そこへジョンがやって来た。ファレルは別人に成り済まそうとするが、向かいに住んでいる友人が現れて名前 を呼んだため、すぐにバレてしまった。
ファレルがボタンを押さなかったため、外で待機していた一味のランドやデルたちはプランBを実行することにした。彼らは銃を手に取り、 部屋に向けて発砲した。ジョン反撃すると、一味が部屋に乗り込んできた。だが、たまたま人形が落ちてボタンに落ちたため、侵入した 連中は爆発に巻き込まれた。ジョンはファレルを車に乗せ、その場から逃走した。一味はランドとデルを除く3名が死亡した。ランドの 報告を受けたガブリエルは、「ヘリを出す」と告げた。
広いアジトで指揮を執っているガブリエルは、コンピュータを操作する部下トレイに「ステージ1だ」と指示を下した。トレイの操作に よって信号が全て青に変わり、交通システムは麻痺した。ジョンの車も渋滞に巻き込まれたため、彼はマットを連れて徒歩でボウマンの元 へ向かう。一味は、さらに鉄道やアムトラック、航空のシステムも全て麻痺状態に陥らせた。
ガブリエルはトレイに次の指示を出した。国家安全保障省では炭疽菌警報が鳴り響き、職員は全て外に退避した。メリーランド州の ウッドローンにある社会保障局でも警報が鳴り、職員が退避した。ウォール街の株取引システムでも障害が発生し、トレーダーはパニック に陥った。ジョンはFBIサイバー犯罪部にマットを連れて行くが、ボウマンはシステム障害に気を取られていた。
ジョンとマットは、この24時間でハッカー7人が殺害されていることを知った。一味は放送システムをハッキングし、全国のテレビに 「この国を恐怖のどん底に突き落とす。生活システムは我々の手にある」というメッセージを流した。マットが「ファイヤーセールだ」と 呟くと、ボウマンは「そんな話を大声でするな」と神経質になった。ファイヤーセールとは、段階を経ながら順番にライフラインを制圧し 、国家の機能を掌握するというテロの方法だった。
ボウマンは「ハッカーの取り調べは国家安全保障省(NSA)がやっている」と言い、部下のモリーナにジョンとマットを送るよう指示 した。ジョンとマットは、特別捜査官のジョンソンたちによってNSAへ移送されることになった。通信を傍受した一味は、マットの居場所 を突き止めた。マットはジョンの質問を受け、殺されたハッカーがライバルだったことを告げた。さらに彼は、ある会社から開発した 変動型暗号のアルゴリズムが解読されないか調べたいと言われ、セキュリティーにトライしたことを明かした。
警官に成り済ましたマイが通る道を無線で指示してくるが、マットは仕事を依頼した女性の声だと気付いた。嘘の指示を見破られた一味 だが、ヘリに乗ったランドとデルがジョンたちの車を銃撃する。ジョンは車を運転して逃走するが、敵は交通システムを操作して事故を誘発 する。事故を回避したジョンは、料金支払所を利用して無人のパトカーをジャンプさせ、ヘリを破壊した。
一味のエマーソンたちは炭疽菌処理班に成り済ましてウッドローンに乗り込み、職員を殺して情報管理局のデータベースを操作した。一方、 ボウマンの元にはNSAのジャック・パリーとチャック・サマーが現れ、大統領命令で来たことを告げた。彼らは手伝いを申し出るが、 ボウマンは露骨に煙たがった。ガブリエル一味はテレビをジャックして挑発的なメッセージを表示し、ホワイトハウスが崩壊する映像を 流した。ボウマンは慌てるが、それは偽の映像だった。
ジョンはマットに「協力しろ、お前が犯人ならどうする?」と問い掛けた。マットは「ファイヤーセールは、ある程度までセキュリティー を破壊できるが、残りは現場に行かないと出来ない」と述べた。あることに気付いた彼は、ジョンのPDAを借りて、ハッカーが良く使う 古い衛星システムにアクセスした。そして、「東部全体に電力を送れなくするためには、ウエストヴァージニア州にある東部のハブに行く 必要がある」と告げた。ジョンはマットを引き連れ、ウエストヴァージニア州へ向かう。
マットの推測通り、マイと仲間はFBIに化けて東部のハブに向かっていた。職員を射殺した一味は、コンピュータを操作してシステムを 乗っ取ろうとする。そこへジョンが現れ、一味を倒した。マットはコンピュータを操作して敵のアジトにメール爆弾を送り付け、マイに 通信してきたガブリエルの画像を保存した。ジョンはマイの無線を取り、ガブリエルに挑発的な言葉を浴びせた。
ジョンはボウマンに、ガブリエルの画像を送った。それを見たボウマンは驚き、ガブリエルが同僚だったことをジョンに告げた。一味が 天然ガスを送り込んだため、東部ハブは大爆発を起こしたが、ジョンとマットは何とか回避した。マットはジョンに、ワーロックという 友人のハッカーに会うしか望みは無い」と告げた。ジョンとマットはワーロックに会うため、ボルティモアへ向かう。来訪者に不快感を 示したワーロックだが、ジョンの脅しを受けてガブリエルに関する情報を語り始めた。
かつてガブリエルは、NSAの有能な保安担当プログラマーだった。しかし、サイバーテロに対する脆弱性を訴えるためにハッキングと いう行動に出たことで、クビになったという。一味はルーシーの居場所を掴み、彼女が乗っているエレベーターを停止させた。ガブリエル はワーロックの部屋と通信し、ジョンにルーシーの映像を見せて娘の身柄を握っていることを示す。ジョンはワーロックに指示して敵の 居場所を探らせ、ウッドローンだと突き止めた。ジョンは一味を倒して娘を救うため、ウッドローンへ向かう…。

監督はレン・ワイズマン、原案記事はジョン・カーリン、オリジナル・キャラクターは ロデリック・ソープ、原案はマーク・ボンバック&デヴィッド・マルコーニ、脚本はマーク・ボンバック、製作はマイケル・フォトレル、 共同製作はスティーヴン・ジェームズ・イーズ、製作総指揮はアーノルド・リフキン&ウィリアム・ウィッシャー、撮影はサイモン・ ダガン、編集はニコラス・デ・トス、美術はパトリック・タトポロス、衣装はデニス・ウィンゲイト、視覚効果監修はパトリック・ マックラング、音楽はマルコ・ベルトラミ。
主演はブルース・ウィリス、共演はジャスティン・ロング、ティモシー・オリファント、クリフ・カーティス、マギー・Q、メアリー・ エリザベス・ウィンステッド、ケヴィン・スミス、ヤンシー・アリアス、クリスティーナ・チャン、ヨーゴ・コンスタンティン、 アンドリュー・フリードマン、サン・カン、マット・オライリー、シリル・ラファエリ、ジョナサン・サドウスキー他。


12年ぶりに復活したシリーズ第4作。
ジャーナリストであるジョン・カーリンが1997年に「Wired magazine」で発表した記事をモチーフにしており、そもそもは『ダイ・ハード 』の続編として執筆されたシナリオではなかった。当初はシリーズ第3作の予定で企画が進んでいた『ティアーズ・オブ・ザ・サン』とは 逆のパターンだ。
シリーズを通して出演しているのはジョンを演じるブルース・ウィリスだけで、他の面々は全て初登場。ルーシーは、キャラクターとして は1作目にも登場しているが、演じる女優が違う。妻ホリーは、身分証の写真で顔が写るが、新たに撮影した映像ではないだろう。マット をジャスティン・ロング、ガブリエルをティモシー・オリファント、ボウマンをクリフ・カーティス、マイをマギー・Q、ルーシーを メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ワーロックをケヴィン・スミスが演じている。
監督は『ダイ・ハード』シリーズの熱烈なファンである『アンダーワールド』のレン・ワイズマンが担当している。

このシリーズは2作目で既に壊れちゃっており、3作目で完全に崩れたので、「『ダイ・ハード』は、こうあるべきだ」というルールが 消滅している。
ジョン・マクレーンさえ出ていれば、それだけで『ダイ・ハード』シリーズになってしまうのだ。
だから、「こういう条件を満たしていないから、こんなのは『ダイ・ハード』じゃない」という批判は成立しない。
ただ、「レン・ワイズマンって、ホントに『ダイ・ハード』の熱狂的なファンなのかな?」とは思うけどね。ファンだったら、原点回帰で 1作目を意識すると思うんだけど、この内容や演出は、明らかに3作目に近いモノがあるもんな。「大規模なテロ計画だと見せ掛けて、 本当の狙いは、パニックの隙に大金を頂戴すること」という展開なんて、3作目と全く同じだし。
これはコンピュータ・ゲーム感覚の『ダイ・ハード』だ。
ただし観客がコントローラーで自由に操作することは出来ないが。

ハイテクな機器を使ってデジタルな策略を仕掛ける若い連中に、中年のオッサンがアナログなスキルやアイテムを駆使し、知恵を使って 立ち向かうという図式になるのかと思いきや、そうじゃなかった。
ジョンはマットの協力を得て、敵と同じようにデジタルな方法を使って対抗する。
ジョン本人はデジタルな対抗策には関与していないが、ただ銃を撃ったり敵と格闘したりしながら真っ直ぐに突き進むだけの体力勝負で、 アナログなスキルや知恵は全くと言っていいほど使っていない。
事件が起きるのはクリスマス・シーズンではないし、舞台も一箇所に限定されていないし、ジョン・マクレーンは巻き込まれて仕方なく 戦うわけじゃないし、孤独な戦いを強いられるわけじゃ無いし、泥臭い粘りで局地戦に持ち込むこともないし、愚痴をこぼすことも少ない し、知恵を使って敵の裏をかくことも無いし、情けないぐらい痛がることも無いし、弱音を吐くことも無い。
そしてジョン・マクレーンは、絶体絶命の危機に陥ることも無い。
なぜなら、彼は無敵のスーパーヒーローになったからだ。

一味はハッカーがパソコンのボタンを押すと爆弾が起動するようにしているが、ってことは爆弾を仕掛ける作業が必要ってことだ。
家に行って爆弾を仕掛ける作業をするのであれば、わざわざパソコンのボタンで起動するようにしなくても、ドアが開くのと連動させても いい。
もう爆弾を仕掛けるために家まで出向いている時点で、パソコンを絡める意味が全く無くなっている。
しかも、その仕掛けは一応、「遠距離にいてもハッカーを始末できる」ということで、自分たちの仕業だと分からなくする意味があるのかも しれないけど、それが作動しなかった場合に備えて、すぐに近くにランドたちが待機しているんだよね。
で、爆弾が作動しなかったら、すぐにプランBとして銃撃している。
だったら、最初から銃撃してもいいでしょ。
何のための爆弾だったのかと。

サイバーテロってのは、その場所まで行かなくても遠くから被害を与えることが出来るというところに強みがあって、しかもシステムを 麻痺させたり破壊したりするものなのに、こいつらは銃火器や爆弾で直接的に人を殺そうとするんだよね。
サイバーテロで行くってことで、どこかの基地のミサイルを発射させるとか、防衛システムを狂わせるとか、そういう方法で人間を攻撃 するのなら分かるよ。だけど、思い切り実働部隊を出撃させちゃってるからね。
そんなに武装集団が派手に暴れまくっていると、サイバー仕立てにしている意味が薄くなってくる。システムを麻痺させるサイバーテロ だけでも充分な脅威を市民に与えているのに、暴れちゃうんだよね。
まあ、そうしないと、アクション映画にならないってのは分かる。ただ、それを考えると、そもそも本作品にサイバーテロはマッチして いたのかっていう疑問が生じるぞ。
あと、炭疽菌処理班に化けてウッドローンへ行ったエマーソンにしろ、FBIに化けて東部ハブへ行ったアイにしろ、到着してすぐに職員 を射殺するので、変装している意味が全く無いよな。

一味が後半に入ってルーシーを人質に取るのは、ムリヤリな展開だなあと感じる。
おまけに、それはジョンの行動を縛ったり、窮地に追い込んだりというスリルの仕掛けとしては全く機能していないんだよね。
ルーシーを人質に取られても、ジョンはお構い無しで一味を攻撃している。
ルーシーを拉致したことは、ただ単にジョンのジョークを消して、怒りに火を付けただけだ。

(観賞日:2010年1月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会