『デビル』:1997、アメリカ
北アイルランドに住む8才の少年フランシス・マグワイヤーは一家で食事中、武装集団の襲撃によってカトリックの父を殺された。十数年後、彼は“エンジェル”というコードネームを持つIRAの特殊工作員となっていた。
国際的テロリストとして数々のテロ活動を続けてきたフランシスだったが、情報漏洩でSI5(英国秘密検査局)に仲間の大半を殺され、活動拠点をニューヨークに移すことになった。彼はローリー・ディヴァニーという偽名を名乗り、フィッツシモンズ判事の紹介で警察官トム・オミーラの一家に身を寄せることになる。
優しいトムと家族に囲まれて、ローリーは彼らの温かさに触れる。だが、彼は英国軍へのミサイル攻撃を計画しており、マフィアのバークからスティンガーミサイルの大量購入することを決めていた。バークはミサイルを渡さずに金を奪おうと考え、ローリーの同志ショーンを人質にとって金を要求してきた。
その頃、ローリーに不審を抱いたトムは、自宅に隠してあった金と武器を発見、彼を逮捕する。だが、ローリーは連行中にトムの同僚ディアスを銃殺し、逃亡してしまった。SI5によってローリーの正体を知らされたトムは、彼を追い掛ける…。監督はアラン・J・パクラ、原案はケヴィン・ジャール、脚本はデヴィッド・アーロン・コーエン&ヴィンセント・パトリック&ケヴィン・ジャール、製作はローレンス・ゴードン&ロバート・F・コールズベリー、製作総指揮はロイド・レヴィン&ドナルド・レイヴェンサル、撮影はゴードン・ウィリス、編集はトム・ロルフ&デニス・ヴァークラー、美術はジェーン・マスキー、衣装はバーニー・ポラック&ジョーン・バーギン、音楽はジェームズ・ホーナー。
出演はハリソン・フォード、ブラッド・ピット、マーガレット・コリン、ルーベン・ブラデス、トリート・ウィリアムズ、ジョージ・ヘアン、ミッチェル・ライアン、ナターシャ・マッケルホーン、ポール・ローナン、サイモン・ジョーンズ、ジュリア・スティルス、アシュリー・カリン、ケリー・シンガー、デヴィッド・オハラ、デヴィッド・ウィルモット、アンソニー・ブロフィー、シェーン・ダン他。
IRAのテロリストと善良な警官との友情と対決を描いたサスペンス・アクション。トムをハリソン・フォード、ローリーをブラッド・ピット、トムの妻をマーガレット・コリン、ディアスをルーベン・ブラデス、バークをトリート・ウィリアムズが演じている。
本来ならば、この映画は「トムとローリーが心の交流を深め、擬似父子のような関係になっていく」という部分を前半で濃密に描写しておく必要がある。それによって対決せざるを得ない後半の心の葛藤が生きてくるはずだからだ。
しかし、前半でトムとローリーの心の交流が深く描かれことは無い。そのため、後半の対決がイマイチ盛り上がってくれない。ローリーと女性工作員との恋愛にしても、ほとんど添え物扱いであり、だったら最初から描かない方がマシだと思えたりもする。
ローリーは、「表では好青年だが、裏では冷酷なテロリスト」という極端な二面性を見せなければならないはずだが、前半はどう見たって単なる好青年にしか見えない。これも、クライマックスに向けての盛り上がりがイマイチだった原因の一つだろう。
全体的に人物描写が希薄なので、重厚で複雑なストーリーに負けてしまっている。噂に聞いた話だが、最初はキャストに入っていなかったハリソン・フォードが、途中から「警官の役がやりたい」と言って入ってきて、しかも脚本を変更しまくったらしい。それが裏目に出たのかな。というか、それが本当なら、そりゃ裏目に出るわな、普通。
第20回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい】部門
<*『デビル』『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の2作でのノミネート>