『デイ・オブ・ザ・デッド』:2008、アメリカ

コロラド州レッドヴィル。トレヴァーと恋人のニーナ、友人のカイルとガールフレンドは、森の中の閉鎖された基地へ遊びに来ていた。カイルはガールフレンドと激しく抱き合いながら、急に咳き込んだ。トレヴァーはニーナに誘われ、建物の探索に出掛けた。同じ頃、町を出る道路は24時間の検疫隔離演習という理由で封鎖されていた。息子のコーディーを総合病院へ連れて行きたいコーディー夫妻は責任者のローズ大尉に事情を説明するが、地元の病院へ行くよう指示された。
腹を立てたコーディーは強引に封鎖を突破しようという態度を見せるが、顔見知りであるサラ・クロス伍長が「軍から医療チームも派遣されているし、町の病院へ行って」と説得した。コーディー夫妻が去った後、サラはローズに「嘘をついてしまいました」と言う。ローズは「君の任務は故郷の町を隔離することだ」と告げた。トレヴァーたちが帰ろうとすると、カイルが鼻血を出した。胸に鼻血を垂らされたガールフレンドは、途端に不機嫌になった。
DJのポールは兵士に要求され、明晩の7時半まで道路が封鎖されることをラジオで伝える。だが、彼は演習の理由が嘘だと睨んでいた。カイルはガーレフレンドが「歩いて帰る」と言い出したので、彼女を置いてトレヴァーとニーナの車に乗り込んだ。ガーレフレンドは森を歩いている途中、何者かに襲われた。サラの分隊に配属されたサラザールは、舐めた態度を取った。サラはサラザールと相棒に、その場所での警備を命じた。
サラはレーダー研究をしていたという新兵のバドを伴い、ハンヴィーで実家へ向かう。サラが家に入ると、ソファーでセックスを始めようとしていた弟のトレヴァーとニーナが狼狽した。母のフランシーンについてサラが尋ねると、トレヴァーは朝から風邪で寝込んでいることを話す。サラが2階の寝室へ行くと、フランシーンがベッドにいた。具合が悪そうな母を見て、サラは病院へ連れて行くことにした。
サラはカイルが鼻血を出していたことを聞き、トレヴァーに「母を着替えさせて。私はカイルの様子を見に行く」と言う。彼女がバドと共にトレヴァーの家へ行くと彼の姿は無く、カーテンの裏に2つの死体があった。固定電話も携帯電話も通じなかったため、サラは車の無線でローズに連絡を入れる。するとローズは、「住民が落ち着くまで、電話は不通にした」と説明した。サラは家に戻り、トレヴァーと母、ニーナを車に乗せて病院へ向かう。その途中、フランシーンは鼻血を出した。
サラたちがパインヴァレー病院に到着すると、町民の半数が病気になって殺到していた。サラがフランシーンに付き添って順番を待っている間に、トレヴァーはニーナから「両親がいたわ」と言われて立ち去ってしまった。サラザールを目撃したサラが声を掛けると、彼はローズの命令で来たことを説明した。ローズはサラに、疫病センターの医師が死体のことで話を聞きたがっていることを告げた。
サラが去った後、バドはフランシーンに付き添った。しかし周囲の患者が急に動きを止め、フランシーンも氷のように冷たくなったので、慌てて彼はサラを呼びに行く。疫病センターのローガン医師は、空気感染して血液中で変異するウイルスを発見していた。サラが出向くと、ローガンは「死体に噛まれた跡はあったか」と質問した。ニーナはトレヴァーを連れて、父が入院している病室に来ていた。父は急に動かなくなり、体内でウイルスが変異した。その途端、彼はゾンビに変貌して妻に襲い掛かった。
バドはサラとローガンの元へ行き、待合室の患者たちに異変が起きていることを伝えた。町では多くのゾンビが出現しており、発電所でも女性が襲われた。その影響で発電所の設備が損傷し、ポールのラジオ局は停電になった。悲鳴を耳にしたポールと兵士は窓の外を覗き、何か異変が起きていることを悟った。カイルの家を捜索した刑事たちは、死体が2つではなく3つあるのを目にした。しかし、増えたのは死体ではなく、死体を装ったカイルだった。ゾンビ化しているカイルは立ち上がり、刑事たちに襲い掛かった。
兵士は2人の男が人間を路地裏へ連れ込む様子を目撃し、後を追った。しかし突如としてゾンビたちが現れ、兵士は餌食となった。ゾンビが勢いよく走って来るのを目にしたポールは慌ててラジオ局に戻り、ドアの鍵を閉めた。ゾンビの群れを目にしたトレヴァーとニーナは、病院の外へ逃げた。ローズはゾンビだらけになっている待合室のドアを封鎖し、やって来たサラたちと共に隠れようとする。しかし別のドアからゾンビたちが現れ、ローズを襲った。ローズが食い殺される中、サラ、バド、ローガンは保管室へ避難した。
トレヴァーとニーナは森を抜けて町に出ようとするが、そこにもゾンビたちの姿があった。ラジオ局の2階に灯りが付いており、人影があるのを発見したトレヴァーは、そこへ向かうことにした。サラは拳銃を携帯しているが弾丸は入っておらず、バドはハンヴィーの鍵を無くしていた。それを知ったローガンは、悪態をついた。病院まで来た方法を問われた彼は、「タクシーを使った」と答えた。サラは駐車場にローズのハンヴィーが停まっているのを確認し、鍵を入手するために死体のある場所まで戻ることにした。
トレヴァーとニーナはラジオ局までダッシュするが、ゾンビに気付かれた。2人は必死でドアを叩き、ポールにラジオ局へ入れてもらった。そこにはライトナー夫妻も避難していたが、コーディーの姿は無かった。コーディーのことを訊かれたライトナーは、「サラのせいで死んだ」と恨めしそうに答えた。サラとバドは換気口を使い、ローズの死体がある場所まで移動した。すると、ロッカーに隠れていたサラザールが姿を見せた。サラが鍵を見つけ出し、サラザールはローズの拳銃を手に入れた。3人が換気口に入ると、ゾンビ化したローズが追って来た。3人は保管室まで辿り着くが、バドがローズに手を噛まれた。サラザールは「噛まれたら化け物になる」と射殺しようとするが、サラは「消毒したわ。私が責任を持つ。その時が来たら私が射殺する」と説得した。
トレヴァーはラジオの電波を使って助けを求め、病院は危険だから近付くなと警告した。その放送を、ゾンビ化したフランシーンが聴いていた。サラたちは窓から飛び出し、次々に襲って来るゾンビの群れと戦う。戦いに参加しなかったローガンは、駐車場に停めてあった自分の車で逃走した。サラたちはハンヴィーに乗り込み、病院から脱出した。ニーナはゴミ箱に捨ててある血の付着した鼻紙に気付き、そのことをトレヴァーに教えた。ニーナはナイフを握り、ポールたちに「鼻血を出したのは誰?」と詰め寄った。誰も認めようとしないので、トレヴァーは「誰かが感染してる。いずれ襲われる」と告げた。
サラとサラザールはバドの両腕を車に拘束し、銃砲店に入って武器を調達する。車で待機していたバドは、鼻血を出した。ラジオ局ではポールがゾンビ化するが、すぐにニーナが脳天を突き刺して始末した。サラとサラザールが車に戻ると、バドがゾンビ化していた。即座に射殺しようとするサラザールだが、サラが「ダメよ、拘束してある」と制止した。サラはカーラジオでトレヴァーの声を聴き、ラジオ局へ向かう。トレヴァーは外を歩くフランシーンを見つけ、外に出た。しかしゾンビ化しているフランシーンは、トレヴァーに襲い掛かろうとする。そこへサラのハンヴィーが駆け付け、フランシーンをひき殺した。
ニーナはサラの指示を受け、スタジオに残っているライトナー夫妻を呼びに行く。するとライトナー氏が死んでおり、ゾンビ化した夫人が襲撃して来た。ニーナは必死に反撃し、駆け付けたトレヴァーも加勢する。2人は夫人を窓から外へ就き落とし、サラザールが銃殺した。サラたちはハンヴィーに乗り込み、町から逃げ出すことにした。
バドの様子を見たサラザールが「なぜ俺たちを襲って来ない?」と疑問を口にすると、サラハ「ベジタリアンだから」と説明した。一行は検問所に到着するが、警備の兵隊が全てゾンビ化していた。ゾンビ兵士が発砲して来たため、一行は急いで退却した。サラはトレヴァーに指摘され、ボールダーに抜ける林道の存在を思い出す。林に入った直後、車はゾンビ化したカイルの急襲を受けた。カイルは始末したが、車は木に激突して故障した。サラたちは古い基地に避難し、朝を待つことにした…。

監督はスティーヴ・マイナー、原作はジョージ・A・ロメロ、脚本はジェフリー・レディック、製作はボアズ・デヴィッドソン&ジェームズ・デューデルソン&ランドール・エメット&ジョージ・ファーラ、製作総指揮はアヴィ・ラーナー&ダニー・ディムボート&トレヴァー・ショート&デヴィッド・ヴァロッド&ポール・メイソン&ジョーダン・ラッシュ&ロバート・デューデルソン、撮影はパトリック・ケイディー、編集はネイサン・イースターリング、美術はカルロス・ダ・シルヴァ、衣装監修はエリツァ・タセヴァ、音楽はタイラー・ベイツ。
出演はミーナ・スヴァーリ、ヴィング・レイムス、ニック・キャノン、マイケル・ウェルチ、アナリン・マコード、スターク・サンズ、マット・リッピー、パット・キルベイン、テイラー・フーヴァー、クリスタ・キャンベル、イアン・マクニース、ロバート・ライス、マイケル・マッコイ、ローラ・ゴイシュ・マーコフ、ヴァネッサ・ジョハンソン、マーク・クーリッジ・ジョンソン、デヴィッド・ピネダ、セルジオ・ブエンロストロ、ミロスラフ・エミロフ、アレックス・ブラウン他。


1985年に公開されたジョージ・A・ロメロ御大によるゾンビ3部作の第3作『死霊のえじき』をリメイクした作品。
脚本は『ファイナル・デスティネーション』のジェフリー・レディック、監督は『U.M.A レイク・プラシッド』『テキサス・レンジャーズ』のスティーヴ・マイナー。
サラをミーナ・スヴァーリ、ローズをヴィング・レイムス、サラザールをニック・キャノン、トレヴァーをマイケル・ウェルチ、ニーナをアナリン・マコード、バドをスターク・サンズ、ローガンをマット・リッピーが演じている。

冒頭、古い基地で遊んでいるトレヴァーたちの様子が写り、しばらくすると道路封鎖しているサラたちの様子が描かれる。その後、また基地の様子に戻り、ラジオ局の様子を挟んで再びトレヴァーたちの行動を捉える。
その導入部は、構成としてキャッチーとは言えない。
どうせ『Day of the Dead』なんだから、ゾンビが出て来ることは誰でも分かっている。町にゾンビが出現していることも、それが道路封鎖の原因であることも容易に想像が付く。
だから、そこを隠したまま進めても大して意味が無いし、トレヴァーたちのシーンは、せめて最初の段階でゾンビ出現の予兆を示すべき。
カイルが咳き込んでいるけど、それはゾンビ出現の予兆としては脆弱すぎる。

バドが疫病センターへ行って待合室の異変をサラとローガンに知らせた後、すぐに「3人が待合室へ戻るとゾンビの群れが」という展開へ移らず、「多くのゾンビが町に出現している様子」「発電所で女性が襲われる様子」「ラジオ局の様子」「カイルが刑事たちを襲う様子」「兵士がゾンビに襲われ、ポールがラジオ局へ避難する様子」「トレヴァーとニーナが病院から逃げ出す様子」を挟んで、ローズの元へ戻ってくるサラ&バド&ローガンの様子が写し出される。
それは幾ら何でも、他のシーンを挟み過ぎだろ。
さっさとサラたちを待合室に戻せよ。
「待合室と疫病センターって、そんなに距離が離れているのか」と言いたくなっちゃうぞ。

そこに限らず、「町でゾンビが暴れています」ってのを示すシーンが何度も挿入されるのだが、それが流れを妨害して話を散らかしているだけになっている。
シーンとシーンを繋ぐ接着剤や捨てゴマのような役割も、そんなに上手く果たせているとは感じない。様々な場所に視線を向けているけど、それでスケールの大きさが出るわけでもない。
どうせ「町全体がゾンビだらけになっている」というのは伝わってくるし、逆に言えば「町レベルのスケール」ってのも分かってるわけだから。
それに、後でサラたちが町へ出る展開があるんだから、そこで「町のあちこちでゾンビが出現している」ってのを見せても決して遅くはないしね。
っていうか、「病院だけかと思ったら、町全体にゾンビ化現象が蔓延していた」という順番で見せた方がいいんじゃないかと思ったりもするぞ。

ミーナ・スヴァーリがサラを演じていることに対して、「そのキャスティングは違うだろ」と言いたくなる。
彼女が伍長という立場で部隊を率いているってのは、どう見ても合わない。サラザールが舐めた態度を取っているように「上官として見てもらえないような女性兵士」という役柄ではあるけど、そもそも兵士という時点でミスキャストでしょ。それに、ゾンビが暴れ出すとサラは勇ましく行動するのだから、やはりタフな女兵士というイメージに合う女優を据えるべきだ。
「とても軍人には見えない小柄な若い女性が、伍長の立場で問題に対処する」というところに重要な意味を持たせているわけでもない。
なんで彼女をキャスティングしたのかと。
どうしてもミーナ・スヴァーリを起用したいのなら、兵士じゃなくて別の職業設定にすべきだわ。ニーナ的なポジションの方がよっぽどお似合いだぞ。

しかもミーナ・スヴァーリがミスキャストというだけでなく、サラのキャラクター造形にも大いに問題がある。
まず引っ掛かるのは、バドを車に乗せた彼女が「2人の時はサラと呼んで」と告げること。
なんだ、その尻軽ねーちゃんみたいなセリフは。バドに惚れて、誘惑でもしているのか。
ところが、それ以降、バドに惚れていることを示すような描写は全く見られない。そのくせ、なぜかバドを殺すことには徹底して反対する。
バドだけを特別扱いするのは、「ベジタリアンで襲って来ないから」というだけでは腑に落ちないぞ。

サラは拳銃に弾丸を入れていないことを序盤でバドに明かしており、その理由については「話せば長くなる」と告げる。後半に「実はこういう理由で」という種明かしが用意されているのかというと、理由は明かされないままだ。
ただ、ともかく弾を入れていないってことは発砲したくない理由があるはずで、それなのにサラザールが拳銃を二丁持っていると「貴方が死んだら二丁とも失う」と告げて一丁を自分に渡させる。撃たないのに持っていても無意味だろうと思っていたら、病院の窓から飛び出した途端、襲って来るゾンビの群れを容赦なく銃撃する。
何だったんだよ、「弾は入れていない」という設定は。全く意味が無いじゃねえか。
「今までは平和主義者であり、相手が誰であれ銃殺することには否定的だったが、追い込まれていく状況の中で考えが変化した」という風に解釈しようとしても、そういう変化の様子が全く描かれていないので、ただ単に「サラというキャラをデタラメに動かしている」としか思えないぞ。
ちゃんと活用できないのなら、「銃に弾を入れていない」なんて設定はバッサリと削ぎ落としてしまった方がいいぞ。

で、そこでゾンビの群れを容赦なくブチ殺しまくったくせに、サラは病院から脱出した後、町を徘徊しているゾンビを避けて車を走らせる。サラザールに「なぜ避けるのか」と質問されると、「一応は人間よ」と答える。
いやいや、その直前までテメエは「一応は人間」だったゾンビの群れを殺しまくっていたじゃねえか。
なんで今さら中途半端なヒューマニズムをアピールしているんだよ。キャラがグラグラとブレまくりじゃねえか。
そんでバドは殺さないくせに、フランシーンは「もう人間じゃない」と容赦なく殺しているし、どういうことかと。なんで出会ったばかりのバドを殺すことには断固として反対し、母親であるフランシーンは平気で殺させるのか。

世の中に『なんちゃら・ザ・デッド』と付けられた映画は山のように存在するが、これは正式なロメロ映画のリメイク作品だ。しかし、その中身は大雑把に言ってしまえば、他の『なんちゃら・ザ・デッド』と変わらない。
何しろ、『死霊のえじき』とは似ても似つかない内容に仕上がっているからだ。
そりゃあ丸っきり同じことをやるだけならリメイクの意味なんて無いけど、まるで別物ってのもダメだろ。この作品は、ただ単にロメロ映画のタイトルを訴求力目当てで借りただけのインチキなリメイクにしか見えんぞ。
ミレニアム・フィルムズの製作だから最初から期待は薄かったけど、それにしてもだぞ。

この映画に出てくるゾンビは、全力で走り回るわ、2階の窓を突き破って地上へ飛び降りるわ、勢いよく跳躍するわ、マシンガンを撃ちまくるわ、天井をカサカサと這いずり回るわで、ロメロ的なゾンビの名残りが全くと言っていいほど感じられない。
機敏に動き回るだけでなく、知恵もある。
「特別に知恵のあるゾンビが1人だけいる」ということではなく、「過去の記憶が少し残る」という設定なのだ。
で、そんな連中が襲って来るのをサラたちが銃や槍で殺しまくるのだが、その光景は、ほぼアクション映画っていうか、アクションゲームのノリだ。『バイオハザード』の亜流というか、『バイオハザード』の何匹目かのドジョウを狙いに行っているように見える。

「具合の悪くなった患者が鼻血を出し、しばらくすると急に動きが緩慢になり、体内のウイルスが突然変異して急にゾンビへと変貌する」ってのも、ロメロ的ゾンビとは大きく異なる。
それは「一度死んでから復活してゾンビになる」ということじゃないもんな。
もはやゾンビというより、別の種類のモンスターを見ているかのような感覚に陥る。
私はジョージ・A・ロメロの熱烈なファンじゃないし、ゾンビ原理主義者だという意識も無いけど、コレジャナイ感は強いなあ。

(観賞日:2014年9月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会