『ダークスカイズ』:2013、アメリカ

郊外の住宅地に、バレット一家は暮らしていた。夫のダニエルは失業中で。妻のレイシーが不動産のセールスで生計を立てていた。長男のジェシーは年上の友人であるケヴィン・ラトナーの家に入り浸っており、それをダニエルは快く思っていなかった。次男のサムは、自宅の庭で見つけたトカゲを箱に入れて飼っていた。バレット家は友人のジェソップ一家を招いて、庭で一緒に夕食を取った。ジェソップ家は夫のマイクと妻のカレンの間に、シェリーと、ボビーという子供がいる。ジェシーはダニエルから「ラトナーのどこがいいんだ?」と批判的に言われ、「もうガキじゃない」と反発した。
その夜遅く、ジェシーは月面基地にいる遊びをしている弟のサムから「なんでサンドマンは人間の目玉を取るの?」と無線機で質問され、「月の子供たちに食わせるんだ」と語る。カレンが目を覚ましてキッチンに行くと窓が開いており、室内は激しく荒らされていた。慌てて窓を閉めたカレンが庭を見回すが、誰もいなかった。翌朝、子供たちはダニエルから「今度は閉め忘れるな」と注意され、窓には触っていないと主張した。ベーコンは食べられていてレタスは残っており、ジェシーはサムに、「巨大なトカゲだ。子供を返してくれないから怒ってる」と告げた。
ダニエルは再就職のため、面接へ赴いた。彼は担当していた開発計画が資金難に陥ったため、チーム全員が解雇されていた。落とされたダニエルは、駐車場で激しい怒りを見せた。帰宅した彼はレイシーに結果を問われ、「上手く行った」と嘘をついた。その夜、レイシーは無線機で兄と話そうとするサムを注意し、早く寝るよう告げる。夜中に目を覚ました彼女がキッチンへ行くと、テーブルの上に様々な物が高く積み上げられていた。天井を見ると、謎の幾何学模様が光っていた。
そこへ「怖い夢を見たの」とサムが起きてきたので、彼女は「大丈夫よ」と優しく抱き締めた。カレンが「誰がやったか知ってるの?」と尋ねると、サムは「サンドマンだよ。僕の夢に出て来たの」と答えた。次の日、ダニエルは警官に連絡して来てもらうが、押し入った形跡は無いと言われる。確実に戸締まりはしていることをダニエルが説明すると、警官は「鍵を持っている人物か、夢遊病を患っている家族の誰かの仕業ではないか」と告げた。バレット家は取り付けた防犯装置を節約のために使っていなかったが、警官は「安全のために使った方がいい」と勧めた。
仕事に出掛けたレイシーは喘息を持つ娘に呼吸器を吸わせる母親を見て、「症状は軽くなる。上の子が小さい頃、病気がちだったんです。何にでもアレルギーを起こすみたいに。今は風邪もひかない」と語った。夜、ダニエルはレイシーに、「たぶん採用されない。面接は悪くなかったが激戦だったし」と話す。嘘をついたと悟ったレイシーは腹を立て、弁明しようとするダニエルと口論になった。喧嘩の声を耳にしたサムが「パパは出て行っちゃうの?」と訊くと、ジェシーは面倒そうに「パパは出て行かない」と告げた。
防犯装置のアラームが鳴り響いたので、ダニエルは警備会社に電話を掛けた。彼がアラームを止めると、担当者は「システムエラーによる誤作動です。全てのセンサーが反応しました。8ヶ所から侵入されてします」と説明する。ダニエルが困惑していると、担当者は明朝に点検係が訪問することを告げた。写真立てに視線をやったレイシーとダニエルは、全ての写真が無くなっていることに気付いた。次の日、家に来た警官は子供たちの悪戯だと決め付け、夫婦関係に問題があるのではないかと告げる。点検係はダニエルに、システムに異常は発見されなかったこと、侵入の形跡は無かったと報告した。
レイシーとダニエルは、「何か不満があるのか」と息子たちに質問する。ジェシーは不服そうに否定するが、サムは何か言いたそうに黙り込んだ。レイシーが「またサンドマンの夢を見たの?彼が写真を盗んだの?」と尋ねると、彼は「言っちゃいけないってサンドマンが」と告げた。ダニエルはサムが写真を盗んだと決め付けて子供部屋を捜索し、反対するレイシーと口論になった。写真は見つからず、ダニエルは「数日だけ待とう」と口にした。ダニエルは耳の後ろをずっと掻いていることを指摘され、「ただの虫刺されだ」と告げた。
ダニエルはサムを公園へ連れて行き、子供たちの遊びに加わるよう勧めた。サムは小便を漏らして子供たちから嘲笑されるが、まるで反応しなかった。ダニエルが歩み寄ると、彼は不意に絶叫した。家でサムの部屋を片付けていたレイシーは、息子が黒い影と手を繋いでいる絵を見つけた。その直後、窓に大量のムクドリが衝突し、次々に死亡した。連絡を受けた野生動物センターのジャニスが駆け付け、病原菌について調査することをダニエルに告げた。
サムは両親から公園で絶叫したことについて質問されるが、まるで覚えていなかった。何を覚えているのか訊かれた彼は、「芝生に友達がいた。僕が僕じゃなくなった」と語った。ダニエルはレイシーに、セラピストに診てもらおうと告げた。深夜、レイシーはサムが誰かと話している声を聞き、彼の部屋を覗いた。すると何者かが立っていたが、慌てて電気を付けると部屋は無人だった。レイシーは駆け付けたダニエルと共に、サムを捜索する、パンツ一枚のサムが庭から道路へ出ようとしていたので、ダニエルが慌てて捕まえた。ダニエルが呼び掛けるとサムは正気を取り戻し、何も覚えていなかった。
サムが外へ出た時に警報は鳴っておらず、レイシーはダニエルに「確かに誰かが部屋にいた」と主張する。しかしダニエルは認めようとせず、いつものように耳の後ろを掻いた。彼が鏡で見ると、耳の後ろに発疹が出来ていた。ジェシーがラトナーの家へ行くと、シェリーが友人と遊びに来た。いきなり胸を掴んで怒られたジェシーだが、シェリーは彼に初めてのキスを教えた。浮かれたジェシーが夜に自転車を走らせていると、街灯が次々に消えた。ダニエルは防犯カメラを設置し、侵入者を見つけようとする。ジェシーはサムから不安を聞かされ、「兄ちゃんが必ず守る」と告げた。
深夜までモニターを凝視していたダニエルだが、いつの間にか眠り込んでしまう。翌朝に目を覚ましたダニエルが映像を確認すると、全てのカメラで一時的に画面が乱れていた。レイシーは顧客に売り家を案内している最中、急に様子がおかしくなった。彼女は顧客から話し掛けられても無視し、窓ガラスに頭を何度も打ち付けた。慌てて飛び起きたレイシーは夢だと知って安堵するが、頭には傷があった。そこへ上司のピートから電話が入り、レイシーは「顧客から電話が入った。今朝、物件を見ている最中に君がおかしくなったと救急車を呼ぼうとしたら1人で帰ったと言っていた」と聞かされる。時間を確認したレイシーは、6時間も記憶が飛んでいることを知った。ピートは彼女に、しばらく休むよう指示した。
直後にジャニスから電話が掛かり、レイシーは「御主人には繋がらなかったので。鳥インフルエンザの結果は陰性でしたが、3つの群れが別々の方向から激突しています」と説明された。レイシーはネットで詳しい情報を集め、エドウィン・ポラードという研究者に辿り着いた。ダニエルは再就職先が決まり、帰宅してレイシーに報告した。レイシーは大喜びし、ダニエルと抱き合った。レイシーは昼間の出来事を話すつもりだったが、やめておいた。
その夜、ダニエルが突如として姿を消したため、レイシーは室内を捜索した。するとダニエルは庭に立っており、レイシーが歩み寄ると正気を失って口を大きく開けていた。ダニエルは鼻血を出してキッチンに戻り、正気に戻った。彼は自分の行動を何も覚えておらず、防犯カメラの映像を見て困惑した。レイシーは昼間の出来事を明かし、集めた資料を見せた。彼女は「地球の磁場が何かの影響で乱れている。地球外の存在が関与している可能性もある」と話すが、ダニエルは「エイリアンなんて有り得ない」と否定する。レイシーは自分たちと同様の体験談が多くあることを具体例を挙げて説明するが、やはりダニエルはエイリアンの存在を認めなかった。
数日後、サムをプールで遊ばせようとしたカレンとシェリーは、体中に無数の痣があるのを見て驚いた。カレンが「誰にやられたの?」と質問すると、サムはサンドマンにやられたと語った。ジェシーはラトナーとゴルフ場の林を歩いている最中、悪戯で空気銃の攻撃を受けた。逃げ出したジェシーは金属音が聞こえて両耳を塞ぎ、白目を剥いて失神した。病院に駆け付けたレイシーとダニエルは、医師から「神経系統の症状ではありません。精神的なショックが原因でしょう」と言われた。
医師は検査で異常な傷跡が見つかったと言い、体に複数の幾何学模様が焼き鏝で付けられていることを教えた。医師は写真を見せて「いつ付けられたのか本人は覚えていない。心当たりは?」と質問し、児童保護局に連絡することを通告した。ダニエルはジェソップ家へ乗り込んでラトナーに殴り掛かり、彼の父親に反撃された。レイシーはカレンからサムを引き渡されるが、すっかり犯罪者扱いされてしまった。レイシーはエイリアンを認めないダニエルに激怒し、「ラトナーに殴り掛かった貴方はヒーローだわ」と皮肉った。
悪夢で深夜に目覚めたダニエルは、防犯カメラの映像を改めて確認した。全てのモニターに黒い影が写り込んでいることを知った彼は驚愕し、レイシーの意見を受け入れることにした。次の日、夫婦はポラードに相談するため、彼のアパートを訪れた。ポラードは何匹もの猫を飼っており、「猫は奴らを気にしない。だから眠れる。もうグレイズとは戦わない」と告げる。夫婦に幾つかの質問をしたポラードは、異星人の仕業だと断定した。彼はエイリアンの標的となる人物に何の法則も無いことを教え、「世間は誤解している。エイリアンは地球を侵略するために大惨事を引き起こすと。だが事実は違う。もう侵略は始まってる」と述べた。
エイリアンの目的を問われたポラードは、「人間の研究。人間は実験材料だ。我々の恐怖心を利用する」と話す。彼は耳の後ろに移植手術を施して人間を操るのだと言い、ポラードのケースは埋め込みが甘いと告げる。除去できるかレイシーが訊くと、「無理だ。もう試した」とポラードは自分の移植跡を見せた。ポラードは今の現象は始まりじゃない。終わりを意味している。グレイズは最初に目を付けた者を連れ去る」と話し、サムが危険だと教える。彼は厄介な相手だと思わせればエイリアンが標的を変えることもあると言い、家族が団結して戦うよう説いた…。

脚本&監督はスコット・スチュワート、製作はジェイソン・ブラム、製作総指揮はスコット・スチュワート&チャールズ・レイトン&ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ&ジェフ・オーキン&ボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン、製作協力はリック・オーサコ&ベイリー・コンウェイ&フィリップ・ダウ、撮影はデヴィッド・ボイド、美術はジェフリー・ヒギンボーサム、編集はピーター・グヴォザス、衣装はケリー・カツゲラス、音楽はジョセフ・ビシャラ。
出演はケリー・ラッセル、ジョシュ・ハミルトン、J・K・シモンズ、ダコタ・ゴヨ、ケイダン・ロケット、ジョシュ・スタンバーグ、L・J・ベネット、リッチ・ハッチマン、ミンディー・クリスト、アニー・サーマン、ジェイク・ウォッシュバーン、ロン・オストロー、トム・コステロ、マリオン・カー、アリヴィア・アリン・リンド、ティファニー・ジェニーン、ブライアン・ステパニク、ジュディス・モアランド、アダム・シュナイダー、ジェシカ・ボーデン、ケネス・メセロール、トレヴァー・セント・ジョン、アンディー・アンバーガー、マイケル・パトリック・マッギル、ジョシュ・ウィンゲイト、アレクサンドラ・フルトン、スコット・アンソニー他。


『レギオン』『プリースト』のスコット・スチュワートが脚本&監督を務めた作品。
レイシーをケリー・ラッセル、ダニエルをジョシュ・ハミルトン、ポラードをJ・K・シモンズ、ジェシーをダコタ・ゴヨ、サムをケイダン・ロケット、警官をジョシュ・スタンバーグ、ケヴィンをL・J・ベネット、マイクをリッチ・ハッチマン、カレンをミンディー・クリスト、シェリーをアニー・サーマン、ボビーをジェイク・ウォッシュバーンが演じている。

序盤の内容だけを見ていると、「悪魔が怪奇現象を起こす」というホラーのパターンをなぞっているようにも思える。人間の仕業とは到底思えない怪奇現象が幾つも発生し、一家を怖がらせているからね。
ハリウッド映画において、一軒の家庭で次々に怪奇現象が起きる場合、それは悪魔の仕業である可能性がものすごく高い。
そういう導入部になっている作品が100本あったとして、たぶん99本は悪魔の仕業じゃないか。
残りの1本は、「悪魔の仕業と見せ掛けた何者かの策略」か「キチガイの仕業」って可能性が高いかな。

ただ、ここでポイントになるのは、最初にアーサー・C・クラークの言葉を表示していることだ。
アーサー・C・クラークは『2001年宇宙の旅』や『幼年期の終り』などで知られる、著名なSF小説家だ。
そんな人物の言葉を冒頭で提示することによって、「これはSF映画ですよ。だからSF的なモノが絡んできますよ」ってことを匂わせているわけだ。
もはや匂わせているっていうか、明確にアピールしていると言ってもいいかもしれないね。

でも、具体的に犯人が悪魔のケースと宇宙人のケースで何が違うのかと問われたら、「ほとんど変わらない。いや全く変わらないかも」という答えになっちゃうんだよね。
なので本作品は、「悪魔が怪奇現象を起こす」というパターンをなぞって、犯人の部分を宇宙人に変えただけと言っていいだろう。
宇宙人の部分を悪魔に変更しても、そんなに手を加えないで同じストーリーを進めることは可能だ。
幾何学模様を謎の紋章や古代文字に変えるなど、少しの改変で済む。

さて、では「悪魔の仕業」と「宇宙人の仕業」、どっちの方がバカバカしく感じるかっていうと、間違いなく後者だ。
これはたぶん内容が云々とか見せ方が云々ってことじゃなくて、「悪魔か宇宙人か」という選択の時点で確定してしまう事項だと思う。
その理由は、「宇宙から地球へ飛来するほどの科学力がある連中なのに、そんな無駄な手間を掛けたり無意味な行動を取ったりするかね」というトコで大いに疑問が湧くからだ。
もちろん悪魔でも似たようなことが言えるけど、より宇宙人の方が陳腐さが増す。

怪奇現象のバリエーションは多いが、特に新鮮味は無い。ホラー映画に多く触れている人なら、きっと「どこかで見たような」と感じる現象ばかりだろう。
新しいアイデアを思い付かなかったのか、最初から諦めていたのか、どういう狙いがそこにあったのかは分からない。
ものすごく好意的に解釈するなら、「意図的に」ってことが考えられる。それらの大半は「悪魔の仕業」というホラー映画で良く見られる怪奇現象なので、ミスリードを狙っていた可能性は考えられる。
ただ、そうやって好意的に捉えてミスリードと仮定したところで、その仕掛けが面白いのかっていうと全然なので、どっちにしろダメなんだけどね。

物を高く積み上げるのも、天井に幾何学模様を描くのも、写真を全て消すのも、「ただ観客を怖がらせるためだけの仕掛け」に過ぎない。
ポラードは「エイリアンは人間を研究する時、恐怖心を利用する。最初は子供じみた悪戯から始まる」とか「グレイズは長きに渡って家族を観察し、やがて姿を見せる」と話すが、そんな言葉は「そういう行動を宇宙人が取った理由」として何の説得力も持っていない。
っていうか、どんな説明があったとしても、それで納得することは絶対に無いと断言できる。

ホラー映画における理不尽や不条理ってのは、ある程度は許容されて然るべきだと思うのよ。
何よりも重要なのは、観客を怖がらせることだからね。
でも、「あれは何の意味がある行動だったのか」「目的に対して、無駄な手間と時間を掛けているんじゃないか」といった疑問が強く残るようだと、それは理不尽や不条理のバランス調整に失敗したってことになるんじゃないか。
しかも、それは終わってから感じることじゃない。「全ては宇宙人の仕業」と明かされた時点から、ずっと感じることだからね。

最後の最後になって、急に「実はエイリアンの仕業でした」と明かすようなトンデモ展開は無い。
ちゃんと中盤当たりでレイシーが「これは異星人の仕業ではないか」と疑い始め、ポラードを訪ねて「それで正解」という結論に辿り着いている。
でも犯人の正体が分かっても、それが作品の面白さに繋がることは微塵も無い。
「グレイズが狙っていたのはサムじゃなくてジェシーだった。ジェシーの幼少期から観察を続けていた」ってことがラスト直前に明かされるが、そんな捻りも効果は無い。ただの無駄なあがきに過ぎない。

(観賞日:2020年8月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会