『チャーリーと14人のキッズ』:2003、アメリカ

食品会社の自然食品部門で働くチャーリーは、妻のキムと幼い息子ベンの3人で暮らしている。仕事で忙しいチャーリーは、チャップマン ・アカデミーの保育園見学の予定を完全に忘れていた。キムから確認された彼は、「大丈夫、遅れないから」と言う。その日は大切な 試食会があるので、チャーリーは頭が一杯になっていた。野菜を使った子供向けシリアル「ベジー・オーズ」の試食会だ。
会社に到着したチャーリーは、同僚のフィルから試食会の準備が出来ていないことを知らされる。ブロッコリーのキグルミに入る予定 だったタレントが、別のCMが入ってドタキャンしたのだという。仕方なくチャーリーは、オタクの郵便係マーヴィンに代役を頼んだ。 集められた子供たちがベジー・オーズを食べる様子を、チャーリーは別室から監察した。すると子供たちは口に入れた途端に「マズい」と 吐き出し、暴れ出してしまった。
キムとベンがチャップマン・アカデミーの前で待っていると、チャーリーが到着した。3人が中に入ると、園児たちはドイツ語を学んで いる。そこへ現れたハリダン園長は、「この保育園では語学に力を入れているんです」と説明した。キムはハリダンに、弁護士の仕事に 復帰する予定があることを語る。チャーリーは緊急連絡を受け、会社へ戻ることになった。キムはハリダンの助手ジェニーから、保育園の カリキュラム説明と学費一覧を渡される。授業内容は高度だったが、学費の方も高額だった。
会社に戻ったチャーリーは、フィルの息子マックスもチャップマン・アカデミーに通っていることを知る。フィルは「あそこ以外、この町 にマトモな保育園は無い」と口にした。そこへ別部門の同僚ブルースがやって来た。彼は担当したチョコ・シリアルがヒットしており、 自慢げな態度を取った。ブルースはチャーリーとフィルを見下し、「ベジー・オーズは製作中止になるんだろ」と言う。チャーリーたちは 上司のジムから、ベジー・オーズの中止を言い渡される。それどころか、自然食品部門の廃止と解雇を通告された。
帰宅したチャーリーはキムに解雇されたことを告げ、「すぐに仕事は見つかるさ」と軽く言う。だが、6週間が経過しても、彼は無職の ままだった。お金の余裕が無いので、チャーリーはベンをチャップマン・アカデミーへ入学させるのは諦めることにした。キムに「じゃあ 誰が面倒を見るの」と問われ、彼は「もっと安い保育園を探そう」と言う。2人は町にある保育園を回るが、場所がトレーラー・パーク だったり、地下だったりと、マトモな施設は一つも無かった。
チャーリーは仕方なく、キムが働きに出ている間、家でベンの面倒を見ることになった。チャーリーは公園へ出掛け、同じく息子の面倒を 見ているフィルと会った。そこへ、同じくリストラされた同僚の妻ペギーが、息子のニッキーを連れてやって来た。ニッキーは意味不明な 言語を話すので、チャップマン・アカデミーを落ちていた。ペギーの「誰かがちゃんとした保育園を開いたら大儲けできるわよ」という 言葉を聞いたチャーリーは、フィルに「一緒に保育園をやろう」と持ち掛けた。
キムが帰宅すると、もうチャーリーは保育園“ダディー・デイ・ケア”の準備を始めている。フィルの家では狭すぎるので、チャーリーの 家を保育園として使うことにしたのだ。既に許可申請は受諾されている。呆れるキムだが、チャーリーに「ずっとやろうとは思ってないが 、このままだと腐ってしまう」と言われて、協力することにした。チャーリーとフィルは、様々な場所で宣伝のチラシを配った。
チャーリーたちは庭で入園の受付を始めるが、集まって来た保護者たちは、男2人が保育士だと知って次々に立ち去った。ジェイミーの 母親とショーンの母親も、やはり渋い顔をして立ち去ろうとする。そこにペギーが現れ、ニッキーの入園手続きを手早く済ませた。彼女が 「私が保証するわ」と言うと、ジェイミーの母親とショーンの母親も子供を入園させることに決めた。他にも、お金にがめついディラン、 アレルギーの多いメガネ少女ベッカ、暴力的なクリスピン、フラッシュのコスチュームを脱がないトニーという4人の園児が入園した。 ベンとマックスを含めて最初の園児は9人となった。
チャーリーとフィルはは子供たちを部屋に集め、学園規約を読もうとする。しかし全く言うことを聞かずに暴れ出すので、大変な仕事だと 痛感する。一方、チャップマン・アカデミーでは、4人の園児が無断欠席していた。チャーリーは抱え上げる遊びを園児たちから次々に せがまれ、腰が痛くなった。フィルがギターを弾きながら歌うと、子供たちは盛り上がった。ランチタイムにはお菓子ばかりを与えたので 、子供たちは満足する。しかし食べ終わると全員が好き勝手に行動し、まるで言うことを聞かなかった。
子供たちは色んな物を破壊するが、ようやく疲れて眠り込んだ。迎えに来たジェイミーの母親とショーンの母親は、静かに寝ている子供を 見て安心した。その夜、チャーリーはベンに、他の子供たちの面倒を見るために放っておいたことを謝った。そして彼は息子のために、本 を読んであげた。翌日、新しい園児が2人増えた。チャーリーは裏庭でフットボールを使ったゲームをやらせて、体力を奪おうと考える。 子供たちはチャーリーの計画など知らずに楽しく遊ぶが、ベンは座り込んだままで参加しなかった。
チャーリーはマックスの様子がおかしいことに気付き、フィルに質問した。するとフィルは、「ここ1週間、便秘だった。ウンコが出そう になっているんだ」と言う。しかしチャーリーがトイレへ連れて行くよう促しても、フィルは「出来ない」と頑なに拒む。仕方なく、 チャーリーがマックスをトイレに連れて行った。外で待っていると、排便して出て来たマックスは「失敗した」と言う。チャーリーが トイレに入ると、ウンコが壁や天井に飛び散っていた。
チャーリーが裏庭に戻ると、子供たちが色んな物を壊しまくっていた。一方、チャップマン・アカデミーでは、6名が欠席していた。 ダディー・デイ・ケアの影響だと確信したハリダンは、ジェニーに「行動に出ますか」と言う。チャーリーとフィルは野菜のキグルミを 着て対決し、それを子供たちに見せて喜ばせる。そこへ児童福祉局の職員ダン・キュービッツが現れ、「苦情があったので立ち入り検査を 実施します」と告げる。軽く検査を済ませたキュービッツは改善項目を提示し、必要書類を差し出した。キュービッツは「明日の9時まで に全ての基準を満たせば、保育園は続けられますよ」と言う。
チャーリーとフィルは深夜まで掛かり、書類を書いたり家に安全柵を取り付けたりする。しかし翌朝、キッチンに置いてあった書類は、 子供たちによってボロボロにされてしまった。そこへマーヴィンが現れ、チャーリーとフィルに最後の給料を手渡した。マーヴィンが着て いる『スター・トレック』の服を見たニッキーは、彼に話し掛けた。するとマーヴィンは、同じ言語で応対した。ニッキーが喋っていた 言語は、『スター・トレック』で使われているクリンゴン語だったのだ。
キュービッツが来たので、チャーリーとフィルはマーヴィンに「裏庭で子供たちの面倒を見ておいてくれ」と頼んだ。ボロボロになった 書類をチャーリーが差し出しても、キュービッツは平然と受け取った。キュービッツは屋内をチェックして「問題は無い」と言うが、 「ただし園児の数は11名となっていますが、福祉規定では園児5名に対して保育士1人が必要です。つまり、あと1人が必要です」と説明 した。するとチャーリーは咄嗟に、「もうマーヴィンを雇いました」と告げた。
キュービッツが裏庭へ行くと、マーヴィンはすっかり子供たちの心を掴んで手懐けていた。驚いたチャーリーとフィルが「どうやった?」 と尋ねると、マーヴィンは「スポック博士の育児の本を読んだんです。『スター・トレック』のスポック博士じゃないですよ」と答えた。 ハリダンが苦情を申し立てたことを知ったチャーリーとフィルは、チャップマン・アカデミーに乗り込んだ。チャーリーが「ライバルが 出来たのが怖いんだろ」と言うと、ハリダンはバカにしたように「ウチとは格が違います」と告げた。
チャーリーはハリダンの態度に腹を立てるが、ダディー・デイ・ケアの水準を高めるべきだとも考える。彼はマーヴィンに、自分たちと 一緒に働くよう依頼する。しかしマーヴィンは「僕のイメージするキャリアとは違う」と難色を示した。そこへディランの母親である シングルマザーのケリーが、学費の支払いにやって来た。ケリーに一目惚れしたマーヴィンは、保育園で働くことを決めた。
チャーリーたちはマーヴィンに、どうやって子供たちを扱えばいいのか尋ねる。マーヴィンは「ビジネスと同様に、マーケット・リサーチ をしてはどうですか」と提案した。そこでチャーリーたちは、子供たちに「ここで何がしたい?」と問い掛けた。子供たちの意見を参考に して、チャーリーたちは裏庭で戦いごっこをやったり、一緒に絵を描いたり、家からペットを持って来てもらったりした。
チャーリーとフィルがパターゴルフをしていると、ブルースが現れて嫌味を言う。そこへクリスピンが母親と共に現れ、チャーリーたちは 彼の父親がブルースだと知った。チャーリーたちが保育園をやっていると知ったブルースは、「負け犬だな」とバカにして笑う。そこで チャーリーは「その負け犬に金を払ってるのは誰だ」とニヤニヤしながら言いかえした。ベンはいつの間にか、ママよりもパパに懐くよう になっていた。内向的だったベンだが、クリスピンとさえ遊ぶようになった。
チャーリーはキムの前で、子供たちのことを楽しそうに話す。キムに「そんなに活き活きした顔、ずっと見ていなかった」と言われ、彼は 「そうだな、完璧にハマッたよ。子供たちが可愛いんだ」と笑う。ハリダンはジェニーから、3名の園児がダディー・デイ・ケアに移った ことを知らされる。ハリダンは「甘く見ていたわ。保育園に関する法規集を持って来て」と命じた。ハリダンの苦情申し立てを受け、また キュービッツがチャーリーたちの元を訪れた。
キュービッツがチャーリーに何かを話そうとしていると、そこへフィルとマーヴィンが現れた。彼らはチャーリーを連れ出し、トニーが いなくなったことを報告した。チャーリーたちはキュービッツに子供たちの世話を頼み、慌てて捜索する。警察に電話しようとしていると 、フラッシュのコスチュームを脱いだトニーの姿があった。チャーリーたちが驚いていると、彼は「もうフラッシュになりたくない。僕は トニーになりたいんだ」と言う。チャーリーたちは頬を緩ませた。
チャーリーたちが裏庭に戻ると、キュービッツがノリノリで人形劇をやっていた。彼はチャーリーたちに、園児が14名に増えたことで新た な問題が生じたことを告げる。州の法律では、家で保育するには12名が限度なのだ。チャーリーはフィルとマーヴィンに、「園児の誰かを 辞めさせることは出来ない。もっと広い場所へ引っ越そう」と告げる。するとマーヴィンは、“ファイナル・フロンティア”という閉鎖 したコミック・ショップがあることを告げた。ただし、そこを保育園として使うには、改装資金が必要だ。
チャーリーたちは資金を集めるため、お祭りを開くことにした。そのチラシを見たハリダンは、「もしもダディー・デイ・ケアが広い場所 に移れば、ウチは勝てない」と焦りを覚えた。彼女はジェニーに、「どんな手段を使っても、あそこは潰さないと」と言う。チャーリーは お祭りを開催し、チープ・トリックを呼んでライブをしてもらう。ハリダンとジェニーは変装して紛れ込み、動物を柵から出したり、パイ の器に虫を混ぜたりと様々な妨害を行った。そのせいで、売り上げは全く伸びなかった。
そんな中、チャーリーはジムからの電話で、会社への復帰を持ち掛けられる。ファックスで送られてきた条件は、かなり良いものだった。 チャーリーが考えた綿飴シリアル販売のリーダーとしての復帰で、しかも給料は以前の倍額だ。そこへハリダンが訪れ、「貴方は一生を 保育に捧げて後悔はしない?ビジネスマンに戻れば、お金も地位も手に入る」と口にした。チャーリーが訪問の要件を尋ねると、彼女は 「ここを閉鎖してくれれば、こちらの園児は同じ金額で引き受けるわ」と告げた。
チャーリーとフィルは会社に復帰することを決め、マーヴィンに告げる。ショックを受けるマーヴィンに、チャーリーは「君も会社に復帰 してくれ。今度は同じチームとして」と持ち掛ける。マーヴィンは「僕はここで一緒にチームとしてやっていきたいんですよ」と熱く語る 。しかしチャーリーは「これはビジネスだ。限界がある。僕もフィルも家族があるし」と言い、考えを変えようとはしなかった…。

監督はスティーヴ・カー、脚本はジェフ・ロドキー、製作はジョン・デイヴィス&マット・ベレンソン&ウィック・ゴッドフリー、 共同製作はジャック・ブロドスキー、製作協力はルーファス・ギフォード、製作総指揮はジョー・ロス&ダン・コルスラッド&ハイディ・ サンテリ、撮影はスティーヴン・ポスター、編集はクリストファー・グリーンバリー、美術はギャレス・ストーヴァー、衣装はルース・ カーター、音楽はデヴィッド・ニューマン、音楽監修はスプリング・アスパーズ。
主演はエディー・マーフィー、共演はジェフ・ガーリン、スティーヴ・ザーン、アンジェリカ・ヒューストン、レジーナ・キング、 ケヴィン・ニーロン、ジョナサン・カッツ、シオバン・ファロン・ホーガン、リサ・エデルスタイン、レイシー・シャベール、ローラ・ カイトリンガー、レイラ・アルシーリ、 カーマニ・グリフィン、マックス・バークホルダー、アーサー・ヤング、エル・ファニング、シーザー・フローレス、ヘイリー・ ジョンソン、フェリックス・アキル、シェーン・バウメル、ジミー・ベネット、コナー・カーモディー、ケネディー・マッカラフ、 アリッサ・シェーファー、ブリジット・ホー他。


『ドクター・ドリトル2』のスティーヴ・カーが監督を務めた作品。
チャーリーをエディー・マーフィー、フィルをジェフ・ガーリン、 スティーヴ・ザーン、ハリダンをアンジェリカ・ヒューストン、キムをレジーナ・キング、ブルースをケヴィン・ニーロン、キュービッツ をジョナサン・カッツ、ペギーをシオバン・ファロン・ホーガン、クリスピンの母をリサ・エデルスタイン、ジェニーをレイシー・ シャベール、ケリーをレイラ・アルシーリが演じている。

試食会のシーンで、キグルミに入る予定だった男がドタキャンしたり、張り切っているキグルミの男が空回りしていたり、マーヴィンが メモを落としたりバランスが悪くてコケまくったりしている。
そういうのを見せてしまうと「プレゼンが悪かった」ということになってしまうけど、実際はベビー・オーズがゲロマズなわけだから、 どれだけプレゼンが良かったとしても製品開発は中止になっていただろう。
だから、キグルミの連中の失態を描いて、製作中止の原因を散漫な印象にすべきではない。全てはチャーリーの責任ということにしておく べきだ。
っていうか、ドタキャンした奴の代役をチャーリーがやればいいでしょ。

チャップマン・アカデミーの見学と試食会は、手順を逆にした方がいい。先に見学して、チャーリーはあまり興味が沸かないし高額だとも 思うけど、キムが望むのでベンの入園を承諾して、その後で試食会の失敗を描き、その流れで開発中止に至るべきだ。
試食会の後、見学を挟んで、電話を受けたチャーリーが会社へ戻るというのは、構成として上手くない。試食会の失敗から開発中止までは 、そのままの流れで行くべきだ。
しかもチャーリーは緊急連絡で戻ったはずなのに、ノンビリとフィルと話しているし。
じゃあ緊急連絡って何だったんだよ。
会社に戻ったら、すぐに開発中止やリストラを宣告されるシーンへ行くべきでしょ。

あと、安い保育園を探す展開も、「チャップマン・アカデミーが高いから他を探そう」ということで、試食会より先に描いた方がいいん じゃないかな。
チャーリーが解雇されたら、幼稚園探しよりも仕事探しの方が重要なはずでしょ。でも、解雇された後で安い保育園を探す手順を入れると 、そこがボンヤリしてしまう。
「仕事を探すけど、なかなか見つからない」ということに対して、もっとチャーリーが焦ったり苛立ったりすべきじゃないのかと 思うし。
そういうのを描くには、保育園探しの手順を入れるのは邪魔でしょ。それに「誰が面倒を見るの?」とキムに問われて、すぐにチャーリー がベンの面倒を見る展開に移った方がテンポがいいとも思うし。

チャーリーが保育園を始めようと思い付くまでの展開が、早すぎると感じる。
まず「色々と仕事を探すけど全く見つからない」という手順が全く描かれていない。わざと省略しているんだろうけど、少なくとも「色々 と探したけど見つからないので焦る」という描写は欲しい。
それと、まだチャーリーがベンの世話をする様子が全く描かれていないんだよね。
子供の世話が上手いのか下手なのか、好きなのか嫌いなのか、保育園を始めようとする前に、その辺りはキッチリと見せておいた方が いいんじゃないか。

ベタではあるが、「最初は失敗ばかりだし、子供たちもなかなか言うことを聞かずに苦労するが、次第にチャーリーは保育士としての仕事 を覚えていき、子供たちも少しずつ懐いて行く」という流れを描くのかと思ったら、保育園を始めた初日、フィルがギターを弾きながら 歌うと子供たちは指示に従い、ランチもおとなしく食べる。
ところが、その後、また好きに暴れて全く言うことを聞かないというシーンになる。
だったら、言うことを聞く手順は入れたらダメでしょ。

っていうか、次の日も子供たちは、ゲームは楽しくやって、でも色んな物を破壊して、その後のキグルミ対決は喜んで見物している。
言うことを聞いて楽しむシーンと、言うことを聞かずに暴れるシーンが、入り混じっているんだよな。
そういうのは、中途半端だなあと感じる。
マーヴィンが簡単に手懐ける展開があるが、だったら、そこまではチャーリーもフィルも全く子供たちに言うことを聞いてもらえずに 苦労して、マーヴィンの助言を取り込むことで一気に子供たちの扱いが向上するという流れにした方がいいんじゃないの。

チャーリーたちはキュービッツから改善項目を指示されるので、「翌朝までに何とか改善しなきゃ」というところでドタバタを描けるはず だが、あっさりと省略されている。
子供との関係がメインだから、そこを省略した分、子供たちを活用してドタバタを盛り上げるのかと思ったら、そういうわけでもない。
入園の時に子供たちのキャラ設定が軽く紹介されるが、その特徴はほとんど活用されないし。

ハリダンの元へ殴り込みへ行く手順なんて要らないから、もっとチャーリーが子供たちに振り回されるとか、世話をしているつもりが逆に 子供たちから教えられるとか、とにかく「チャーリーと子供たち」の関係を使って、もっと物語を盛り上げてほしい。
子供たちの扱いが弱くて、名前さえ出て来ないような奴もいるのよね。
っていうかクロージング・クレジットをチェックしても、園児役の俳優が13名しか見つからない。
だから残り1名に関しては、ホントに名前も分からない。

キュービッツが2度目に訪問して新たに生じた問題について話そうとした時、チャーリーをフィルたちが呼びに来て、トニーがいなく なったことを知らせる。
どうしてキュービッツとの会話の途中で、別の問題を用意してしまうのか。順番に処理すればいいだけでしょ。会話の途中にトニー失踪と いう出来事を挟むことで、何の狙いがあるのか。
しかも捜索を開始した途端、フラッシュのコスチュームを脱いだトニーが家の中を歩いている様子が、バッチリと写るんだよね。だから、 まるで大きなサスペンス・コメディーに繋がらない。実際、すぐに見つかるし。
園児がいなくなるのなら、それはクライマックスにしてもいいぐらいデカい騒動にすべきじゃないのか。

ベタかもしれないけど、これって「最初は当面の金儲けというつもりで始めたチャーリーだが、次第に子供たちと一緒にいることが楽しく なり、やりがいも感じるようになっていく」という流れにしておくべきじゃないの。
っていうか、そう感じていることを示唆するセリフも、キムの前では口にしているのよね。
だけど一方で、ベンから「またお仕事行きたい?」と訊かれて、「ああ、行きたいね」と迷いなく答えている。
それは違和感が強いなあ。

そんでジムから復帰を持ち掛けられたチャーリーとフィルは、何の迷いも無く会社へ戻ることを決めている。
これが例えば「今のままだと園児たちの世話をちゃんと見てあげられないから、仕方なく幼稚園を閉鎖する」とか、あるいは「まとまった 金が必要な事情が出来たので、保育園を閉鎖して会社に復帰する」とか、そういうことなら、まあ分からないではないよ。
だけど、こいつらは「会社の方が保育園の仕事よりいいから」という理由で、復帰を決めているのだ。
「本当は幼稚園を続けたいけど、続けられない事情が出来たから、仕方なく会社復帰を選ぶ」ということではないのだ。

そんなわけだから、チャーリーとフィルには、保育園や園児たちに対する思い入れが全く感じられない。
それはヒドいだろ。
大体さ、そこまでの展開の中で、チャーリーが会社時代を「あの頃は良かった」と思い返したり、会社で働いている元同僚にジェラシーを 感じたり、そういう様子は皆無だったでしょうに。
ほとんど黒字が出なかったことをキムに話すシーンはあるけど、そんなに本気で愚痴っている感じじゃないし、その流れで「完璧に ハマッたよ。子供たちが可愛いんだ」と楽しそうに言っていたじゃねえか。

もちろん最終的にチャーリーが会社ではなく保育園を選ぶという展開に行き着くことぐらいは容易に予想できるし、その通りになる。
でも、会社復帰を決める場面の描写があまりにも無神経なので、そこで背負った負債を取り戻すことは出来ていない。復帰してすぐに、 会社を辞めて幼稚園を続けることを決めるが、それさえも身勝手に見えてしまう。
あと、チャーリーは保育園の存続を決めた後、ハリダンが保護者たちに話しているところへ乗り込んで「子供にはそれぞれの意思がある。
アンタのやり方は間違いだ」などと批判しているが、その行動も賛同できない。
そりゃあハリダンだって卑劣な手で妨害したけど、だからってチャーリーが彼女の妨害をしてどうすんのよ。

(観賞日:2012年5月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会