『D-WARS ディー・ウォーズ』:2007、韓国

ロサンゼルスのリゾート地区で大規模な陥没事故が発生し、TVリポーターのイーサン・ケンドリックは取材に赴いた。現場では老齢のホームレスが「お告げの通りだ、悪魔が目覚めた」と喚き、追い払われていた。イーサンはFBI捜査官のフランク・ピンスキーとジュダ・キャンベルに質問しようとするが、「何も話すことは無い」と冷たく告げられる。鑑識の人間が地中に埋まった何かを調べている様子を目にしたイーサンは、カメラで録画した。テレビ局に戻ったイーサンは、それが鱗だと確信し、自分に関係があると感じた。
15年前、イーサンは短剣を売却しようとする父親に連れられ、古美術店を訪れた。父が主人のジャックと話している間に店内を見回っていたイーサンは、箱の鍵が壊れて蓋が開くのを目撃した。箱の中には鱗が入っており、そこからイーサンに向けて閃光が放たれた。その現象が起きた途端、ジャックは胸を押さえた。彼はイーサンの父親に、薬局へ行くよう頼んだ。だが、それは人払いが目的で、ジャックはイーサンに「やっとお前を見つけた。箱の中身はイムギの鱗だ。あの光は天からの光」と告げた。
ジャックはイーサンに、「イムギという生物は、韓国の伝説ではドラゴンに変身する。遠い昔、修業を積むイムギという大蛇が多くの家来と共に天上で暮らしていた。500年ごとに1匹のイムギが、天を司るドラゴンになる機会を得る。そのためには天が与えるヨイジュという授かり物が必要だ。イムギはヨイジュのパワーでドラゴンに変身できる。だが、そこに邪悪なイムギ、ブラキが現れた。ブラキの野望を阻止するため、ヨイジュは地上に隠された」と語った。
さらにジャックは、物語を続ける。1507年の韓国にヨイジュは隠され、それを守るために天から最強の戦士も派遣された。ハラムと師匠のボチョンだ。しかしブラキはヨイジュの隠し場所を知っていた。ヨイジュは領主の妻に宿っており、彼女は女児を出産した。ヨイジュが力を発するのは、女児が20歳になった時だ。ボチョンは領主に会い、「御息女は天の意思によって、イムギに捧げられるべきだ。ブラキがヨイジュを横取りすれば村は大惨事に見舞われる」と告げる。領主は全く信じなかったが、ボチョンが娘の肩にドラゴンの痣があることを指摘するので驚いた。
それから20年、ボチョンは領主の娘であるナリンを育て、ハラムを戦士として鍛え上げた。いつしかハラムとナリンは、惹かれ合う関係になっていた。ハラムに全てを教えたボチョンは、彼を天に選ばれしイムギと会わせた。そして彼はハラムに「ヨイジュと一緒になって天に帰らねば、人類が生き残る道が断たれてしまう」と語り、イムギの守護者が持つべきペンダントを与えた。やがてブラキの軍隊が村を襲い、ヨイジュを宿す娘を捜し始めた。村に住む女は自分の娘を守るため、ナリンのことを教えた。
軍隊は領主を殺害し、ナリンを捕まえた。軍隊が村を出てナリンを連行していると、ハラムとボチョンが現れた。ボチョンが軍隊と戦っている間に、ハラムはナリンを救って逃げ出した。傷付いたボチョンは戦場から脱出し、放置されたペンダントを発見した。ハラムは定めに背き、ナリンを連れて逃亡を図ったのだ。しかしブラキに追い詰められ、2人は崖から海に身を投げて死亡した。ジャックはイーサンに、そんな物語を語った。
ジャックは物語を語り終えると、「ブラキはドラゴンになる次の機会を待っている」と告げる。彼はペンダントをイーサンに渡し、「私は500年前のボチョンだ。そして、お前はハラムだ。ヨイジュを守るために生まれ変わったのだ。ヨイジュを宿す娘を見つけ出せ。名前はサラ。20歳になった日、聖なる洞窟へ連れて行け」と述べた。そんな出来事を思い出したイーサンは、カメラマンのブルースに協力を要請した。イーサンは、サラがロサンゼルスにいると強く感じていた。
スポーツジムで汗を流していたサラ・ダニエルズは、テレビのニュース映像で鱗を目にした。途端に彼女は帰宅し、古い書物を開いた。FBIの科学者であるリンダ・ペレスはフランクたちに、陥没現場で採取された破片がハ虫類の鱗と似ていることを教えた。サラの家を親友のブランディーが訪ねると、彼女は壁に何枚ものお札を貼って不安そうな表情を浮かべていた。驚くブランディーに、サラは「何かが私に起きてる。身を守るには、こうするしかないの」と告げた。
ブランディーはサラを元気付けるため、バーへ連れ出した。しかしサラは「飲む気分じゃない」と言い、すぐに店を出た。するとチンピラ3人がサラに絡むが、そこにジャックが現れた。彼は特殊なパワーでチンピラたちを吹き飛ばし、その場を去った。シム動物園で夜警をしているベラフォンテは、ブラキが象を丸呑みするのを目撃した。サラは警察署を訪れ、年配の男がチンピラたちを退治したことを説明する。しかし全く信じてもらえず、カメラマンの男は「チンピラ3人を退治した若い女性」としてサラの写真を撮った。
ベラフォンテは巨大な蛇が象を丸呑みしたことを警察署で話すが、まるで信じてもらえなかった。カメラマンがテレビ局に戻ってサラのことを話したので、イーサンは彼女の情報を知った。悪夢で目を覚ましたサラは、救急サービスに連絡して病院に運ばれた。ブランディーはサラの家へ行き、入院のために彼女の荷物をまとめる。しかし恋人のクリスは「急がなくてもいい」と言い、キスを求める。そこへブラキが現れたので、2人は慌てて逃げようとする。ブラキの家来である将軍が立ちはだかり、「どこへ行くつもりだ」と剣を抜いた。ブランディーはブラキに襲われ、命を落とした。
翌朝、サラが病室を出ようとすると、ドアには鍵が掛けられていた。サラは外へ出すよう大声で訴えるが、特別病棟に隔離されてしまった。イーサンは昨晩の事件を知ってサラの家へ急行し、ブランディーの死体を目にした。隣人の情報で、イーサンはサラが病院にいることを知った。イーサンは病院へ行くが、面会謝絶だと言われてしまう。ベラフォンテは拘束衣を着せられ、精神分析医の診察を受けさせられた。イーサンは番組を見ているという医者から、サラと面会する承諾を貰った。病室に入った彼は、サラに「巨大な生物が君を狙っている。もう時間が無い」と告げた。
ブラキが病院に出現し、建物を激しく揺らした。面会の承諾をくれた医者は、イーサンとサラに「エレベーターで逃げろ」と促した。2人が去った後、その医者はジャックの姿に変わった。イーサンたちはブラキに追われ、ブルースの車で逃走する。道の真ん中に立っていた将軍を車ではねるが、イーサンは夢で見た相手だと気付いた。将軍はサラを連れ去ろうとするが、イーサンは別の車で弾き飛ばす。彼はサラとブルースを車に乗せ、その場から逃亡した。将軍はイムギの軍隊を復活させた。
イーサンとサラは、女性の車で送ってもらった。イーサンたちが去った後、女性はジャックの姿に変わった。FBIが会議を開いていると、国防長官がやって来た。フランクは国防長官に、未知の巨大生物が出現したこと、その生物がサラという女性を追っていることを告げ、「彼女を見つければ先手を打てる」と告げた。特殊部隊が洞窟へ差し向けられるが、ブラキと軍隊の攻撃を受けて軽く一掃された。
イーサンはサラを催眠療法士のクリニックへ連れて行き、彼女の記憶を調べてもらう。装置を付けられたサラは、前世の記憶を思い出した。ブラキが襲って来たので、イーサンとサラは逃げ出した。イーサンはブルースの協力でヘリコプターを用意してもらい、サラを安全な場所へ連れて行こうとする。そこへジャックが現れて「同じ過ちを犯すな。彼女を聖なる洞窟へ連れて行け」と諭すが、イーサンは「運命は自分で決める」と突っぱねた。
ブラキが現れたので、イーサンはサラを連れて逃げ出した。2人はヘリに乗るため、ブルースの車に乗り込んだ。ブラキの出現で、街の人々はパニックに陥った。イーサンとサラは車を諦め、走ってビルの屋上へ向かう。しかしブラキの襲撃で、ヘリは叩き落とされた。空軍のヘリ部隊がイムギを攻撃している間に、イーサンたちはビルから脱出した。ブラキだけでなく軍隊も現れ、米軍を攻撃する。フランクとジュダはイーサンたちの前に現れ。車に乗るよう促す。しかしフランクは事態を解決するため、サラを射殺しようとする…。

脚本&監督はシム・ヒョンレ、製作はチェ・ソンホ&ジェームズ・B・カン&チョン・テソン、製作総指揮はキム・ウテク&シム・ヒョンレ&キム・クァンジン&キム・ヨンジュン&キム・ハクフン&チョン・ウンジン、撮影はヒューバート・タクザノウスキー、編集はティム・アルヴァーソン、美術はキム・ヨンスク&シム・ジョンナム、衣装はニクラス・J・パーム、視覚効果監修はシム・キウク、CG監修はチャン・ホスク、音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー。
出演はジェイソン・ベア、アマンダ・ブルックス、ロバート・フォスター、クレイグ・ロビンソン、エリザベス・ペーニャ、クリス・マルケイ、エイミー・ガルシア、ジョン・アレス、ビリー・ガーデル、ホームズ・オズボーン、コーディー・アレンス、ロドニー・スコット、エロイ・カサドス、ニコール・ロビンソン、アート・オートン、ケヴィン・ブレスナハン、ジェフ・ピアソン、マイケル・シェーマス・ワイルズ、クレイグ・アントン、ロブ・ロイ・フィッツジェラルド、レッタ、ミン・ジーワン、バン・ヒョジン、ヒュン・ジン他。


怪獣映画が大好きな韓国人コメディアンのシム・ヒョンレが、『怪獣大決戦 ヤンガリー』に続いて手掛けた2本目の監督作品。
今回はアメリカ人キャストを多く起用し、北米の市場も見据えて製作している。
韓国では2007年の観客動員数1位を記録する大ヒットとなったが、北米では興行的に失敗しただけでなく酷評の嵐となった。
イーサンをジェイソン・ベア、サラをアマンダ・ブルックス、ジャックをロバート・フォスター、ブルースをクレイグ・ロビンソン、リンダをエリザベス・ペーニャ、フランクをクリス・マルケイ、ブランディーをエイミー・ガルシア、ジュダをジョン・アレス、ベラフォンテをビリー・ガーデルが演じている。

映画が始まるとイムギやヨイジュに関する伝説がナレーションで語られるが、どうせ後でジャックがイーサンに説明するので二度手間でしかない。で、本編が始まると、いきなりデカい穴が地面に開いているので、何が起きたのかは良く分からない。
そんで5分程度でイーサンの回想に入るのだが、それは慌ただしすぎるだろ。
しかも、その回想シーンで語られるイムギの伝説が、すんげえ長いんだよ。15分ぐらい回想シーンが続くんだぜ。
少年時代のイーサンが「何の話?」と言ってるけど、そんな長い話を一気に喋れても、たぶん理解できないぞ。そして、そんな長い伝説をダラダラと聞かされている観客も、すっかり退屈になってしまうぞ。

イムギやブラキに関する伝説だけでもお腹一杯なのに、そこからハラムやナリンが出て来る出来事が続いて、つまり「イーサンがジャックから話を聞いた時の回想」という中に「イムギの伝説」と「ハラムが登場する物語」の説明があるという構造になっている。
なので、ただ長いだけでなくゴチャゴチャしているんだよね。
そんなのを、なぜ一気に説明しちゃうかね。
そもそも、もっとコンパクトにまとめるべきだとは思うが、それを置いておくとしても、イーサンが思い出したり調べたりする形で、何度かに分けて説明すりゃいいだろ。少しずつ真相が明らかになっていくのを、ドラマと並行して見せていく形にすりゃいいだろ。

天はヨイジュをブラキから隠すために地上へ隠すのだが、なぜ隠さなきゃいけないのか。天にはヨイジュを守る力が無いのか。でも、守るために戦士を送り込んでいるよな。
で、どうせブラキにはヨイジュの隠し場所が簡単にバレるんだし、だったら天上でヨイジュを保管していても同じことでしょ。天上でブラキの軍隊と戦えばいいだけだ。
あと、相手は軍隊を率いて来るのに、なんで戦士が2人だけなのかと。
それと、20年が経過しないとヨイジュの力が発揮されないなら、それまでは戦士を送る必要も無いでしょ。その20年でボチョンハラムを鍛えているけど、鍛えなくても充分に戦えるぐらい優秀な戦士を差し向けておけよ。

ブラキの家来は蛇の軍団なのかと思いきや、鎧に身を包んだ人間タイプの戦士たち。そんで、大砲を積んだ幻獣に乗っている。
そいつらは『ロード・オブ・ザ・リング』のようなファンタジーのキャラクターになっており、世界観がグチャグチャだ。
たぶんシム・ヒョンレ監督は、ただ単に『ロード・オブ・ザ・リング』っぽいバトルのシーンをCGで表現したかっただけなんだろう。
そういう「特撮でやりたいこと」を最優先で考えて、整合性とか、世界観の統一とか、話のまとまりとか、そういうのは全て軽んじているんだよな。

ブラキはヨイジュの隠し場所を知っていたはずなのに、なぜか軍隊はヨイジュを宿した娘を捜し回り、若い女たちの痣をチェックする。
捜さなくても知っているはずで、村を襲撃する必要性も全く無いはずなのだが、シム・ヒョンレ監督は「バトルのシーンを描きたい」ということしか考えていなかったんだろう。
で、その襲撃の20年前にボチョンは、「御息女は天の意思によって、イムギに捧げられるべきだ。ブラキがヨイジュを横取りすれば村は大惨事に見舞われる」と言っている。
だけど、アンタの言う通りにしたのに、まだブラキにヨイジュを横取りされる前なのに、村は大惨事に見舞われているじゃねえか。

ハラムはボチョンから「ヨイジュと一緒になって天に帰らねば、人類が生き残る道が断たれてしまう」と言われているのに、テメエの恋愛感情を優先して女を連れて逃げてしまう。
どうやら、人類が滅亡しても別に構わないらしい。しかも、せっかくお守りとして渡されたペンダントを、なぜか置いていくというワケの分からなさ。
で、ハラムがナリンを連れて逃亡し、2人が死んだせいでイムギがヨイジュと一緒になって天に帰れなくなったのに、人類が生き残る道が断たれていないんだよな。デタラメだなあ。
あと、そもそも天上で暮らしているはずなのイムギが、なんで地上に来ているんだよ。

イーサンは15年前にジャックから「お前はハラムだ。ヨイジュを守るために生まれ変わったのだ。ヨイジュを宿す娘を見つけ出せ」などと言われているのに、すっかり忘れて今まで何もしていない。
そりゃあ、あれだけの長話を全て覚えるってのは無理だろうけど、かなり強烈な出来事なのに、ボンヤリとでも覚えていなかったのかよ。
若年性健忘症かよ。
そんで思い出す時は、そんなゴチャゴチャした長話を詳細に思い出せるのかよ。すげえな。

あと、なぜ今までジャックは、「早く見つけろ」とイーサンに要求せず放置しておいたんだよ。
ブラキにヨイジュを奪われたら大変なことになるんだから、もっと必死になってイーサンに行動を促すべきじゃないのかよ。
それと、韓国の伝説なのに、ハラムとナリンとボチョンの生まれ変わりが3人ともアメリカ人で、ロサンゼルスで話が展開するというのは相当に無理があるぞ。
そこを納得させるための設定は、もちろん本作品には用意されていない。

たぶん編集で色んなカットを切り落とした影響もあるんだろうけど、シーンの繋がりがギクシャクしていたり、説明が不足していたり、処理すべき事柄が投げ出されたままになったりしている箇所が幾つもある。
冒頭でイーサンが話し掛ける相手は刑事かと思ったら、かなり後になってからFBIだと判明する。
まだ陥没事故が起きただけなのにFBIが介入している時点で違和感があるし、怪獣が出現した段階でFBIの手に負える案件じゃなくなっていると思うんだけど、なぜか政府関係者で出て来るのは国防長官だけ。
もはや政府として対応すべき状態に発展しているはずだろうに。

サラは鱗の映像を見た途端に帰宅し、古い書物を開くのだが、それが何なのか、どこで手に入れたのかは分からない。
彼女はお札を大量に貼り付けて身を守ろうとするのだが、それにしてはブランディーから誘われるとバーへ出掛けてしまう。
サラが書物を開くシーンの後、将軍が古美術店に入って行く様子が写し出される。だが、店内でのシーンはカットされ、次のシーンに移ってしまう。
そもそも、将軍の目的はサラのはずだから、ジャックの元へ行く必要性が分からない。

ジャックはチンピラに絡まれたサラを救う時、本人の姿のままだ。ところが、それ以降は様々な姿に変身してイーサンとサラを助ける。
だが、なぜ変身する必要があるのか分からない。さっさと正体を明かして、ずっとイーサン&サラに同行すればいいでしょ。
っていうか、バーから出て来たサラを救うってことは、ジャックは彼女の居場所が分かっているんだろうに。だったら、さっさとイーサンに教えろよ。もしくは、テメエで洞窟へ連れて行けよ。
なんでイーサンが拒んでも彼に委ねるのか分からん。アンタもヨイジュを守るために派遣された戦士の生まれ変わりだろうに。
同じ過ちを繰り返したくないのなら、アンタがサラを洞窟へ連れて行く方が確実だろ。

ブラキが動物園で象を丸呑みするのは、まるで意味の無い行動だ。ブラキがブランディーを襲うのも同様。
しかもブランディーだけ殺してクリスは放置しているんだから、何がしたいのかと。クリスがどうなっったのかも分からんし。
まさか「ブランディーをサラと間違えた」という設定じゃあるまいな。そうだとしたらアホ丸出しだぞ。そうじゃなくても同様だけど。
そんでイーサンとサラが悪夢を見るのも、やはり意味が無い。「夢で先に将軍を見ている」という部分が無くなっても、物語の展開には大きな影響を与えない。

病院からイーサン&サラはブルースの車で逃亡し、将軍をはねる。立ち上がった将軍を、イーサンは別の車ではねる。
将軍、弱すぎるだろ。
そんでシーンが切り替わるとブルースが消えていて、イーサン&サラはジャックが変身した女性の車に乗っている。
たぶん間のシーンがカットされたんだろうけど、そのせいで繋がりがおかしくなっている。
で、FBIは特殊部隊を洞窟へ送るが、なぜ洞窟へ行かせたのかは全く分からない。そこも、理由を説明するためのシーンがカットされたんだろうか。

イーサンは唐突に「夢や潜在意識に詳しい人を知っている」と言い出し、催眠療法士の元へサラを連れて行く。
でも、催眠療法士はそこで初めて登場するから「誰だよ」という印象だし、そういう出し方をするからには主要キャラ使いされるのかと思ったら簡単に死ぬ。
しかも、そこでサラが前世の記憶を取り戻すことは、その後の展開に大した影響も与えない。どうせイーサンが説明したことの繰り返しでしかないし。
ひょっとすると、「サラが前世の記憶を見て自分がナリンの生まれ変わりだと確信した」ということを、「ヨイジュを宿す者として自己犠牲を支払う」と決意する理由に繋げたいのかもしれんけど、そんなにうまく繋がっちゃいない。

どの辺りから、どの程度の情報をFBIが掴んでいたのかは、ものすごくボンヤリしている。
そんで終盤に入ってサラを捕まえたフランクは、「超常現象の専門家から聞いた」ということでイムギやヨイジュの伝説を全て知っている。
しかも、それを全て知ったのはいいとして、すっかり信じちゃってるんだよな。
お前はホントにFBIの捜査官なのかよ。最終的に信じるのはいいとして、少しは疑えよ。
なんでオカルトの専門家から得た情報を丸呑みして、サラを殺そうとするんだよ。

500年前に続いて現世でも、ブラキが軍隊を街で大暴れさせる必要性は全く無い。今回も、やはり「CGで作った大規模バトルの映像を見せたい」という意識が先にあって、後付けの物語を上手く構築できていないのだ。
で、またイーサンは前世と同様に過ちを繰り返し、サラを連れて逃げ出す。あれだけの大惨事が起きても、サラを洞窟へ連れて行こうとはしない。こいつは主人公なのに、魅力が皆無だ。
サラを救おうとするにしても、せめて「サラを犠牲にせずにブラキを倒す方法を探ろうとする」とか、「ブラキに立ち向かう」という行動があればともかく、ひたすら逃げ回っているだけなのだ。
だから、「サラを守りたい」というトコに全く共感できない。イーサンがサラを連れて逃げれば逃げるほど犠牲は増えて行くんだから。

イーサンがサラを連れてメキシコまで逃げようとしたところで、ブラキの軍隊が2人を捕まえる。サラは生け贄に使うから捕まえるのは分かるけど、イーサンを生かしておく必要性が全く分からない。
で、さすがにサラが捕まっちゃったので、ようやくイーサンは彼女を救うために将軍と戦うんだけど、まるで役に立たない。
そんでイムギが現れてブラキと戦い始めるんだけど、お前は今まで何をやっていたのか、なんでブラキの軍が暴れまくるのを放置していたのかと。サラがブラキに奪われたらアンタだってマズいだろうに、なぜ今まで行動を起こさなかったのかと。っていうか、お前の家来たちはいないのかと。
たぶんクライマックスとして用意されているであろう大蛇2匹のバトルも大して盛り上がらないし、そりゃ北米でコケるのも当然の出来栄えだわ。
『怪獣大決戦 ヤンガリー』から8年が経過してVFXの技術は向上したけど、シム・ヒョンレ監督は何も向上していない。

(観賞日:2014年12月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会