『D2/マイティ・ダック』:1994、アメリカ

ゴードン・ボンベイはアイスホッケーのマイナー・リーグで活躍し、NHLでプレーすることも近いと目されていた。しかしタックルを受けて右膝に大怪我を負ったため、彼はミネアポリスに舞い戻った。ゴードンが故郷でバスを降りると、昔馴染みのヤン老人が迎えに来ていた。ヤンはゴードンに、兄のハンスが夏休みを取り、スポーツ店を自分に任せて帰郷したことを話した。スポーツ店では、ダックスのキャプテンだったチャーリーがヤンの助手として働いていた。
ゴードンはヤンから「コーチをやる気は無いのか」と問われ、「ダックスは楽しかったけど、地元ジュニア・チームのコーチじゃ食っていけないよ」と言う。するとヤンは、「世界ジュニア選手権に参加するアメリカ代表チームのコーチが決まってないそうだ」と告げる。ゴードンは軽い調子で、「じゃあ電話しておいてくれよ」と口にした。彼はヤンに、「一生、こんな小さな町で埋もれるのは嫌なんだ。もっとデカく生きたい。カッコ良く生きたい」と述べた。
ゴードンがヤンの店を手伝っていると、ホッケー用品を扱うヘンドリックス社の社長であるティブルスがやって来た。彼はゴードンに、ヘンドリックス社がスポンサーを務めるアメリカ代表チームのコーチを引き受けてほしいと依頼した。ヤンがゴードンを推薦する電話を掛けていたのだ。ゴードンはチャーリーの元へ行き、ダックスの復活を告げた。チャーリーはジェシー、エヴァーマン、コニー、ギー、ゴールドバーグ、バンクス、フルトンというダックスの仲間を集め、ゴードンの元へ戻った。
ティブルスはゴードンにコーチの契約書を差し出し、「コーチはチームのイメージそのものだ。私は君を売り、君はホッケーを売って金を儲ける。悪くないだろ?」と言う。ゴードンが「はした金のためにコーチを引き受けたんじゃない」と告げると、彼は「大金だよ」と口にする。契約書を確認したゴードンは大金が手に入ることを知り、喜んでサインした。
アメリカ代表チームにはダックスの他に、ポートマン、ドウェイン、メンドーサ、ジュリー、ケンという5人が参加した。ゴードンは結束力を高めるために、ロープで全員を括って氷上を滑らせた。ティブルスは子供たちの勉強を見てもらうために、教師のミシェル・マッケイを呼び寄せた。ティブルスは代表チームの写真を使ったシリアルを披露し、他にも多くの商品が作られることを告げた。
ティブルスは代表チームのユニフォームを作成し、ゴードンと選手たちに配った。他の面々が喜ぶ中、チャーリーはゴードンに「これはカッコイイけど、ヘンドリックス社のユニフォームだ。ダックスじゃない。USAダックスじゃダメなの?せめて色は昔のままで」と話す。ゴードンは「ビジネスだからな。気にするな」と軽く告げた。ゴードンはチームを引き連れてロサンゼルスへ行き、大会が開かれるメモリアル・コロシアムに足を踏み入れた。
アメリカ代表チームは初戦のトリニダード・トバゴ戦に大勝し、順調なスタートを切った。ティブルスが用意した大々的な記者会見で、ゴードンは優勝への自信を力強くコメントした。そこへ優勝候補であるアイスランド代表チームが現れ、コーチのスタントンが「アメリカは絶対に勝てない」と挑発的に告げた。スタントンは元NHL選手だが、相手の歯を次々に負ったために1年で追放されていた。
ティブルスはゴードンのために、マリブの豪邸やオープンカーを用意していた。ゴードンが豪邸で宿泊することにしたため、子供たちは自由に行動した。イタリアとの2試合目を迎える直前、ゴードンはアイスランド代表のトレーナーであるマリアと知り合った。2人が会話を交わしているとスタントンが来て、マリアに「余計なことは喋るな」と鋭く告げた。
アメリカ代表はイタリア戦も快勝し、ゴードンは広告写真の撮影に赴いた。ティブルスはゴードンをパーティーに連れて行き、「考え方を帰るべきだ。ロサンゼルスでは、誰もがビッグになろうとしている」と語った。ゴールドバーグの控えGKに甘んじているジュリーは、試合に出してほしいとゴードンに訴えた。ゴードンは「ゴールドバーグの調子がいいし。チームが勝っているので難しい。だが、いずれ必ず試合には使う」と彼女に約束した。フルトンとポートマンは、ゴードンがマリアとデートしている様子を目撃した。
アイスランドとの3戦目では、ポートマンが開始3秒で反則を取られて退場になる。その後もアメリカ代表は一方的にペースを握られ、ジュリーは交代直後に退場処分を受ける。バンクスはゴールを決めるが、アイスランドのサンダーソンに右手首をスティックで攻撃される。サンダーソンは2分間の退場を命じられるが試合の情勢に大きな影響はなく、アメリカ代表は惨敗を喫した。ゴードンはティブルスから、「このザマはなんだ。私の期待を裏切った。勝てないなら私は手を引く。君は田舎に帰ることになる」と告げられた。
ゴードンは選手たちをロッカールームに集合させ、「惨めな気持ちだ。お前らはホッケーをしに来たんだろ」と叱責した。すると子供たちは、「アンタはどうなんだ。向こうのコーチは対策を練って来たのに、アンタは俺たちを放り出してオープンカーを乗り回し、パーティーに出ていた」と反発した。さらにフルトンとポートマンは、ゴードンがマリアとデートしていたことを暴露した。ゴードンは「俺が何をしようと、お前らには関係ない」と声を荒らげた。
ゴードンは子供たちに、激しい練習を要求した。チャーリーが「たんなのは楽しくない」と言うと、彼は「誰が楽しめと言った?」と口にする。「ダックスのコーチをしていた時は、そう言った」とチャーリーが告げると、ゴードンは「もうダックスのコーチじゃない。現実を見ろ。次に負けたら、終わりなんだぞ」と述べる。子供ちが疲れ果てている様子を見たミシェルは、独断で練習を中止した。ゴードンが「優秀すれば大物になれるんだぞ」と抗議すると、ミシェルは「ホッケーは楽しむものだと言ってでしょ。忘れたの」と告げた。
代表に選ばれず、試合会場で文句ばかり言っていたラスが、チャーリーたちを挑発した。ラスは「ウチのチームには勝てない」と告げて、ローラーホッケーでの対決を要求した。チャーリーたちが試合を受けると、ラスと仲間たちは試合で勝つためのアドバイスを授けた。その試合は、アメリカ代表に勝ってもらうためにラスたちが仕組んものだったのだ。ラスたちはチャーリーたちに、エールを送った。
ヤンはゴードンの元へ行き、「俺がコーチに推薦したのは、お前がホッケーを愛しているからだ。お前なら子供たちに、勝敗よりも大切なことを教えてやれるはずだ。ミネソタで奇跡を起こした頃の自分を思い出せ」と説いた。ドイツとの第4戦にゴードンが現れないため、チャーリーはミシェルに頼んでコーチのフリをしてもらった。遅れて会場入りしたゴードンは、子供たちに「俺が間違っていた。もう一度、チャンスをくれ」と告げた。
ドイツ戦に勝利した後、ゴードンは子供たちの前で「今までの迷いは全て燃やすよ」と宣言した。アイスランドとの再戦を想定しながら、チームは練習に励んだ。バンクスが右手首に怪我を負っていると知ったゴードンは、欠場を指示した。バンクスは出場を志願するが、説得されて欠場を受け入れた。バンクスの穴埋めとして、チャーリーはナックルシュートという武器を持つラスを連れて来た。そんなラスの活躍もあり、チームはロシアとの試合に勝利した。決勝戦の相手は、やはりアイスランド代表だった…。

監督はサム・ワイズマン、キャラクター創作はスティーヴン・ブリル、脚本はスティーヴン・ブリル、製作はジョーダン・カーナー&ジョン・アヴネット、共同製作はスティーヴン・ブリル&サリー・ニューマン、製作総指揮はダグ・クレイボーン、撮影はマーク・アーウィン、編集はエリック・シアーズ&ジョン・F・リンク、美術はゲイリー・フラットコフ、衣装はグラニア・プレストン、音楽はJ・A・C・レッドフォード。
主演はエミリオ・エステヴェス、共演はマイケル・タッカー、ジャン・ルーブス、キャスリン・アーブ、ジョシュア・ジャクソン、エルデン・ライアン・ラトリフ、ショーン・ワイス、マット・ドハーティー、ブランドン・アダムス、ヴィンセント・A・ラルッソ、マーガリート・モロー、ガレット・ラトリフ・ヘンソン、アーロン・ローア、タイ・オニール、キーナン・トンプソン、マイク・ヴィタール、コロンブ・ジェイコブセン、ジャスティン・ウォン、カーステン・ノルガード、マリア・エリングセン、スコット・ワイト他。


1992年の映画『飛べないアヒル』の続編。ビデオ化の際は『D2 マイティ・ダック/飛べないアヒル2』という邦題になった。
脚本は前作に続いてスティーヴン・ブリルが担当。監督はTVシリーズ『ファミリー・タイズ』や『L.A. LAW/7人の弁護士』の演出を手掛けたサム・ワイズマンで、これが初の劇場映画。
ゴードン役のエミリオ・エステヴェス、チャーリー役のジョシュア・ジャクソン、フルトン役のエルデン・ライアン・ラトリフ、ゴールドバーグ役のショーン・ワイス、エヴァーマン役のマット・ドハーティー、ジェシー役のブランドン・アダムス、バンクス役のヴィンセント・A・ラルッソ、コニー役のマーガリート・モロー、ジャーメイン役のガレット・ラトリフ・ヘンソンは、前作からの続投。
他に、ティブルスをマイケル・タッカー、ヤンをジャン・ルーブス、ミシェルをキャスリン・アーブが演じている。また、元NBA選手のカリーム・アブドゥル=ジャバー、当時は現役NHL選手だったカム・ニーリー、当時は現役NHL選手だったクリス・チェリオス、当時は現役NHL選手だったリュック・ロビテイル、元飛び込み選手のグレッグ・ローガニス、元フィギュアスケート選手のクリスティー・ヤマグチ、当時は現役NHL選手だったウェイン・グレツキーが、本人役でゲスト出演している。

冒頭、ゴードンが怪我を負うシーンが描かれる。
そこは「試合中に起きた不幸なアクシデント」ということじゃなくて、ノーバートという選手が悪意を持って、大怪我を負わせてやろうという意識でタックルを食らわせているように見える。
そうなると、そこに「悪者」が存在することになるわけで。
にも関わらず、そんな悪者の存在が冒頭だけで忘れ去られ、「怪我を負わされたゴードンがプレーでやり返す」とか、「ノーバートが天罰を食らう」とか、そういうことが無いので、なんかスッキリしないモノがある。

前作でゴードンはシングル・マザーであるチャーリーの母親と恋人同士になったのだが、「再婚した」という台詞による簡単な説明だけで処理される。
彼女を登場させると昔の関係にも触れなきゃいけなくなるので、チャーリーは登場するのに母親は出て来ないという状態になっている。
チャーリーからすると、ゴードンは恩師というだけでなく、母親の交際相手だった男性でもあるわけだ。
だが、そのことに対する感情は全く表現されず、もはやゴードンと母親の交際は、ほぼ無かったことのようにされている。

前作でゴードンは昔から知っているスポーツ店経営者のハンスと再会し、少年時代の気持ちを思い出すという出来事があった。
だが、今回はハンスが登場せず、その弟であるヤンが登場する。
迎えに来たヤンを見たゴードンは、いかにも「昔から知っている」といった様子を示すが、ヤンは今回が初登場だ。
2作目になって急に「ハンスにはヤンという弟がいて、ゴードンとも昔から知り合いである」という設定を急に用意しているので、不自然極まりないことになっている。

前作はザックリ言うならば、「勝利至上主義で自分本位だったゴードンが、アイスホッケーに対する真摯な気持ちと情熱を取り戻し、子供たちを教える中で自らも人間的に成長する」というドラマだった。
そんな前作がヒットし、それを受けて続編を作ることが決まった時、製作サイドは同じフォーマットを使うことを選んだ。
続編が前作と同じパターンを使うのは良くあることだし、それは決して悪いことではない。
むしろ、ある程度は前作を引き継がないと、まるで別物にしてしまったら続編である意味が無くなる。

ただし、この映画は同じフォーマットを使ったことによって、大きな問題が起きている。
ゴードンは前作で人間的に成長し、すっかり心を入れ替えたはずなのだ。
ところが、「人間的に未熟な主人公が、子供たちと触れ合う中で成長する」というフォーマットを使うためには、ゴードンが人間的に良く出来たロール・モデルでは困る。
そのため、今回のゴードンは、前回の人間的成長を忘れてしまったかのように、ダメな奴に戻ってしまっているのだ。

今回のゴードンは「勝つためなら卑怯な方法も平気で使う」というトコまでは行かないから、完全に元に戻ってしまったわけではない。
また、コメディーの描写として、彼を「金や野心に目が眩むお調子者」というキャラにしてあるんだろうってことも分かる。
だが、かなり不愉快な奴になってしまっていることは確かだ。
それに、話を作る上で、ものすごく安易な方法を取っているという印象も受ける。

実は「人間的に未熟な主人公が、子供たちと触れ合う中で成長する」というフォーマットって、ゴードンをそんなキャラに造形しなくても使えるんだよね。
冒頭で「タックルで大怪我を負わされ、NHLの夢を断たれた」という出来事が描かれているんだから、そこを利用すればいいだけだ。つまり、「NHLに行けなかったことへの苛立ち、なかなか怪我が治らないことへの焦り」といった感情から子供たちに八つ当たりしてしまうとか、ヤケになってしまうとか、そういうトコロで未熟さを見せればいいのだ。
ところが、なぜか本作品では、「ゴードンが大怪我でNHLに行けなくなった」という要素を有効活用しない。彼が大怪我を負う出来事は、「地元に戻ってジュニアのアメリカ代表コーチを要請される」という展開を作るために使われるだけだ。
そうなると、そもそも大怪我を負ったという設定自体、まるで意味が無いモノに思えてしまう。
もちろん、怪我を負わせないと、「帰郷してコーチになる」という展開に出来ないのは分かる。だけど、怪我を負わせたのなら、その要素をキッチリと活用しないとダメだろ。

帰郷したゴードンが「一生、こんな小さな町で埋もれるのは嫌なんだ。もっとデカく生きたい。カッコ良く生きたい」と言うのも、なんか引っ掛かる。
その気持ちは分からんでもないけど、前作では、その小さな町でダックスを教えることで、充実感を味わったはず。その後にマイナー・リーグへ挑戦するという展開ではあったけど、「小さな町で埋もれるのは嫌なんだ」って言っちゃうと、なんかダックスを率いた出来事までも「所詮はステップ・アップのための踏み台」と言っているようにも感じられるんだよな。
しかも、ゴードンはダックスを導く中でアイスホッケーに対する情熱を取り戻したはずなのに、「デカく生きたい、カッコ良く生きたい」なんてことを言い出すと、前作で取り戻した気持ちを忘れちゃったのかと言いたくなってしまう。
そういうのって、「アイスホッケーへの情熱」とは別の野心になってるでしょ。
おまけに大金が貰えると知って契約書にサインしちゃうし。それも「アイスホッケーへの真摯な気持ち」が消えてるし。

アメリカ代表チームとしてダックスの面々を再結集させると、かなり動きが鈍ってチームとしてのレベルも落ちている。
ところが、そこからチームを強化する様子はほとんど描かれないまま、開始から20分も経過しない内に大会へと突入してしまう。
また、今回はダックスだけでなく新たなメンバーも加わっているのだが、その面々の紹介も淡白に済ませている。
最初に新メンバーとダックスの衝突が描かれているが、仲良くなるまでの経緯も淡白に処理される。

そもそも、今回はアメリカ代表のコーチなのに、なぜ「ダックス再集結」ということになるのか。
前作でダックスは奇跡の優勝を果たしたけど、それは「チームとしての一体感があった」というだけであって、「個々の選手が全て代表クラス」ということではないはずだろうに。
アメリカって広いんだから、有望な選手は大勢いるはずでしょ。
なんで「ダックスの8人はそのまま代表に選ばれて、補充メンバー的な5人が加わるだけ」という構成なんだよ。

アメリカ代表としてプレーしているにも関わらず、チャーリーが「ダックスの再結成」ってトコにこだわりを見せているのも、それを肯定的に描いちゃうのも違うでしょ。
繰り返しになるけど、今回はアメリカ代表チームであって、ダックスではないのよ。
「ダックスの再集結」というドラマにしたいのなら、最初から「代表チーム」の話にすべきではないのよ。
例えば、「ダックスが世界大会に出場することになって云々」という形にでもしておけばいいのよ。

予選リーグでのアイスランド戦は、何をどう描きたいのかがボンヤリしている。
その前にはフルトン&ポートマンがゴードンとマリアのデートを目撃しているが、仲間には話していない。
だから、「その影響でチームに不協和音が生じる」ということではない。
「みんな早く帰りたいのか。俺はゴメンだ」というゴードンの助言が全く助言になっていないという描写はあるが、「ゴードンがロスで浮かれポンチになっているせいで、全くチームに身が入っていない」ということで惨敗したという印象は受けない。

アイスランド代表はアメリカ代表を研究して対策を練って来ている様子だが、それだけで惨敗したわけでもない。アイスランド代表はラフプレーが多いが、それだけでなく審判が反則を取らないという様子も描かれる。また、アイスランド代表の挑発に乗ったポートマンやジュリーが、退場処分を食らう描写もある。
ようするに、惨敗した原因は1つじゃないのだ。
それは、色んな要素を盛り込み過ぎて、焦点が全く定まっていないと感じる。
それと、あれだけ試合出場を望んでいたジュリーが、交代で入った途端に挑発を受けて相手を突き飛ばし、全くプレーしないまま退場になるってのは、あまりにもアホすぎるよ。
それはジュリーがアホっていうことじゃなくて、そういう扱いにするシナリオがアホすぎるってことだよ。ジュリーを出場させるなら、ちゃんと活躍させなきゃダメだわ。そんな扱いにしてしまうなら、出場させるべきじゃない。

アイスランド戦に惨敗した後、子供たちにアドバイスして気持ちを奮い立たせる仕事は、本来はゴードンが担うべきだ。
ところが実際には、ラスと仲間たちが担当している。肝心のゴードンは、「これに負けたら終わり」という大切なドイツ戦に遅刻する始末だ。
そんで平気な顔をして現れ、「俺が間違っていた。もう一度、チャンスをくれ」と言うけど、まずは遅刻したことを謝罪しろよ。アンタのせいで、下手すりゃ失格になっていたんだぞ。
っていうか遅刻しておいて「もう一度、チャンスをくれ」と言われても、受け入れにくいわ。
しかも、じゃあゴードンの助言でチームがドイツ戦に勝つのかと言うと、何もしてないし。チームはフライングVという戦法で勝つけど、それは子供たちのアイデアだし。

マリアが策略としてゴードンに近付いたのか、そうじゃなくて純粋な気持ちだったのか、その辺りがハッキリしないのよね。
ゴードンはマリアに情報を漏らしたわけじゃないし、デートしたからってアメリカ代表が弱体化するわけでもない。
決勝戦の前にアイスランド代表が挑発に来る時には、マリアも鋭い眼光を飛ばしているので、ゴードンに対する純粋な好意は無かったのかもしれない。
でも、だとしたら彼女の目的は何だったのか、サッパリ分からんぞ。

スタントンの挑発を受けて、ゴードンがタイマンでホッケー対決をするという展開は、ただ邪魔なだけだ。
今のゴードンは選手じゃなくてコーチなんだから、そんなシーンは要らないのよ。
そんで「負けそうになったスタントンがスティックでゴードンの左膝を打ち付ける」という形で対決は終わるんだけど、何を見せたいのかと。
そんな様子を描かなくても、スタントンの悪役アピールは充分なんだし。

終盤に入って急にラスがメンバーとして加入するのは、展開としてデタラメすぎるわ。
予備登録メンバーにも入っていないし、チームで一緒に練習していたわけでもないんだぜ。そんで次の試合で起用されて活躍するって、なんだよ、そりゃ。
しかも、バンクスの穴埋めで加入しているんだけど、アイスランド戦では直前に「右腕が動く」ということでバンクスも復帰するんだぜ。その結果として、今度はチャーリーが登録から外れるのだ。
「ゴードンもコーチの方が向いていると言っていたし」と彼は話すけど、キャプテンであり、子供たちの中では最も目立つべきキャラが決勝戦で試合に出ないって、どういうシナリオだよ。

アイスランド戦では前半に子供たちが愚かな反則を繰り返し、ゴードンがハーフタイムに叱責する。
ジェシーが「勝てなくてもプライドだけは捨てたくない」と言うと、ゴードンが「それはプライドじゃない。俺たちはチンピラじゃない。怒りで我を忘れたら、大事な物を失う」と説く。
いやいや、その展開はダメだろ。
「欲と野心にまみれていたゴードンが謝罪して以前の気持ちを取り戻し、バラバラになっていたチームが一致団結する」という流れで決勝戦に辿り着いたのに、なんで「子供たちがバカなプレーを繰り返し、またチームがおかしくなる」という状況を作っちゃうんだよ。

そこは最初から、チームが全力でプレーする形にすべきだろ。全力で取り組んでもアイスランドが強くて劣勢を強いられたとしたら、その時にゴードンが演説して子供たちを奮い立たせ、適切な助言で形勢を逆転させるという展開にすればいいでしょうに。
なんで今までの流れを台無しにしちゃうのよ。そんなことをやってしまったら、まるで子供たちが成長&学習していないってことになるじゃないか。
あと、ケンがラスの仲間に教えてもらった「相手のユニフォームを脱がして頭から被せ、背中を叩く」ということをアイスランド戦の前半でやっているんだけど、それって反則行為なんだよね。
だから、そもそも「ラスの仲間たちが反則行為を教えて応援する」という段階で、描写として間違っているのよ。

ゴードンは決勝戦のハーフタイムで「敵から何をされても自分を見失うな。俺たちのアメリカの代表だ。力を合わせよう」と言うが、そこまではいい。
だが、「みんなダックスだ。アヒルは一緒に飛ぶ。ダックスとして全力を尽くそう」ってのは違うだろ。ヤンが「新しいダックスも」と言っているけど、ダックスじゃねえし。
なんで新メンバーも、「ダックスとして一丸となって」というノリを受け入れているんだよ。
おまけに後半は、ユニフォームまでダックス仕様になるんだぜ。アナウンサーが「ユニフォームを変えても違反じゃない」と説明しているけど、無理がありすぎるわ。
なぜか新メンバーの名前が入ったダックスのユニフォームもあるし、電光掲示板には「ゴー、ダックス、ゴー」と表示されちゃうし、メチャクチャだな。

(観賞日:2015年3月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会