『チャイルド・プレイ』:2019、カナダ&アメリカ

ヘンリー・カスランが社長を務めるカスラン社は、「バディー」と名付けたAI搭載の人形を売り出した。ヘンリー自らがCMに出演し、機能について詳しく説明している。バディーは持ち主と会話を交わし、カスラン社の全ての商品やスマート家電を操作する能力が備わっている。自動学習能力があり、持ち主を喜ばせる方法を見つけ出す。カスラン・サービスを利用すると、さらに便利なライフスタイルを手に入れることも可能になる。カスラン・カーを呼ぶことも出来るし、最新型の高性能AI安全装置で幼い子供も守ってくれる。
その夜、ベトナムにあるカスラン社の工場では、いつものように大勢の従業員がバディーの組み立て作業に従事していた。チェンという男が手を止めてボーッとしていると、工場長が平手打ちを浴びせて叱責した。工場長が去った後、チェンはプログラミングを変更して人形の安全装置を全て解除した。彼は人形を組み立てて箱に入れた後、飛び降りて自殺した。アメリカのZマートでは、購入したバディー人形が赤毛であることに1人の男性客がレジに来て店員のカレン・バークレーに怒鳴り散らした。「欲しいのは金髪だ」と彼が言うと、カレンは「あれは発売前のバディー2で、こちらはバディー1です」と説明した。男は「予約して3週間も待ったのに」と納得しなかったが、腹を立てたままバディーの箱を抱えて立ち去った。
アパートに戻ったカレンは、挨拶する管理人のゲイブを無視してエレベーターに乗り込んだ。カレンは息子のアンディーと2人暮らしで、まだ彼が引っ越しの荷物を開けていないことに気付いて注意した。アンディーは慌てて言い訳するが、スマホに没頭してネコの餌やりも忘れたことをカレンは分かっていた。アンディーは新しいスマホを買って欲しいと頼むが、カレンは即座に却下した。アンディーは難聴で、補聴器を買い替えるためにカレンは残業していた。カレンは引っ越しで新しい生活をスタートさせようと決意しており、アンディーは友達を見つけるよう促した。
別の日、カレンがZマートで働いていると、女性客が来て「バディー1の電源を入れたら目が赤くなった」と返品を希望した。返品された人形の箱を返品センターに運んだカレンは、従業員のウェスに「故障で返品された商品はどうなるの?」と尋ねる。カスラン社に返して廃棄処分になると聞いたカレンは、子供の誕生日プレゼントにするため引き取りたいと頼む。カレンが不倫の事実を指摘したため、ウェスは仕方なくOKした。
ある日、アンディーが学校から帰宅すると、カレンがシェーンを連れ込んでセックスを始めようとしていた。カレンは慌ててシェーンから離れ、その場を取り繕った。状況を理解したアンディーは、「この階に住んでる子たちと遊んで来るから」と冷たく告げて部屋を出て行く。彼が廊下でスマホを触っていると、アパートに住む警察官のマイクが話し掛けた。マイクはアンディーが独りぼっちでいる現場を何度も目撃しており、母との夕食に誘う。そこカレンが来ると、マイクは挨拶して部屋に入った。
カレンはアンディーを部屋に連れ帰り、バディー人形をプレゼントした。アンディーはため息をつき、「これは小さい子供用だよ」と口にした。それでも彼は母に促され、バディーにスマホを繋いだ。エラーが出たのでスマホの画面を何度も叩くと、接続が完了して形が動き出した。「僕の名前は?」と訊かれたアンディーは「ハン・ソロ」と名付けるが、人形は「チャッキー」と認識した。「何がしたい?」と訊かれたアンディーが「テレビを付けて」と指示すると、チャッキーは「テレビって何?コマンド処理できない」と返した。
説明書を読んでいたカレンは、カスラン製品に接続する前に知識基盤をクラウドに同期させる必要があると告げる。しかしアンディーがクラウドに繋いでも、チャッキーは「学習できない」と言うだけで反応しなかった。カレンが「返してくるわ」と告げると、アンディーは慌てて「いや、気に入ってるよ」と嘘をついた。チャッキーを自室へ連れて行ったアンディーは、自分の下品な言葉を真似したので規制が解除されていることを知る。アンディーは就寝するが、夜中に目が覚めるとチャッキーが近くに立っていた。「遊ぶ時間だよ」と言われたアンディーは、寝る時間だと告げる。彼が目を閉じるよう頼むと、チャッキーは「君は親友だよ」と言う。チャッキーが歌い始めたので、アンディーは頭から布団を被った。
翌朝、アンディーがトーストを切る姿を観察したチャッキーは、ナイフの使い方を覚えた。アンディーは玄関前にいるようチャッキーに指示し、学校へ向かう。彼が帰宅するとチャッキーは同じ場所に立っており、「プレゼントを作った」と告げて折れたアイスの棒にリボンを結んだ物を差し出した。部屋にはシェーンが来ており、静かにするようアンディーに要求した。チャッキーを連れて外へ出たアンディーは、「シェーンはロクデナシだ。最後には僕たちを捨てる」と口にした。
「僕は捨てない」とチャッキーは言い、アンディーは彼と楽しく遊んだ。アンディーが飼い猫のルーニーに右手を引っ掻かれて出血すると、チャッキーは強い興味を示した。「あの猫にはウンザリだ」とアンディーが漏らすと、チャッキーはルーニーを殺そうとする。慌ててアンディーが止めると、チャッキーは「人を傷付けちゃいけない」と注意した。彼は「シェーンは例外だ」と付け加え、廊下に出て不気味な表情をチャッキーに練習させた。
そこへアパートに住む子供のパグとファリンが愛犬を連れて通り掛かり、チャッキーが下品な言葉を使うのを聞いて驚く。パグとファリンは興味を抱き、アンディーはチャッキーに母の恋人を脅かすよう仕込んでいたと教える。面白がったパグが協力を申し出て、その夜の内に実行することになった。アンディーたちはチャッキーが怖い形相でシェーンを脅かす様子をスマホで観察し、大いに楽しんだ。この出来事をきっかけに、アンディーは2人と親しくなった。
アンディーたちはチャッキーに指示し、ゲイブの隙を見て管理人室のお菓子を盗み出させた。3人は部屋に戻り、テレビでホラー映画を観賞した。チャッキーから「遊ぼう」と誘われたアンディーは、「後で」と告げた。アンディーたちが殺人シーンに笑うと、チャッキーは黙って観察した。彼はキッチンからナイフを持ち出し、映画の真似をして襲い掛かる。慌ててアンディーが取り押さえると、チャッキーは「君が喜ぶと思って」と説明した。
シェーンがカレンと一緒にいると、チャッキーが来てアンディーの「シェーンはロクデナシ」という音声を再生した。カレンはアンディーを説教し、チャッキーをクローゼットに閉じ込めた。チャッキーは深夜の内に、クローゼットのガラスを破壊して脱出した。次の朝、下校したアンディーはルーニーが惨殺されているのを発見した。驚愕するアンディーに、チャッキーは「あの猫にはウンザリだ」という彼の声を再生して「猫は君を不幸にする。また遊べるよ」と告げた。アンディーはルーニーの亡骸を段ボール箱に入れて廃棄し、カレンには何も言わなかった。
別の日、シェーンが小便しているとチャッキーが現れ、「シェーンはロクデナシ」というアンディーの音声を再生する。憤慨したシェーンはアンディーの部屋に乗り込み、「文句があるなら自分で言え」と怒鳴る。威嚇されたアンディーが黙り込んでいると、シェーンは嘲りの笑みで去った。アンディーは悔しがり、「あいつに消えてほしい」と吐き捨てた。シェーンが車で自宅へ戻る時、チャッキーは密かに忍び込んだ。シェーンが妻子の待つ家に戻った後、チャッキーはクリスマスの飾り付けをするため屋根に上がった彼を梯子から転落させる。シェーンは足首を骨折して動けなくなり、チャッキーは草刈り機とナイフを使って殺害した。
翌朝、マイクは現場検証に訪れ、顔の皮が剥された無残な遺体を確認した。目を覚ましたアンディーは、シェーンの顔の皮を被せたスイカがプレゼントとして置かれているのを目にする。チャッキーが「また一緒に遊べるよ。親友のためなら何でもする」と話すと、アンディーは慌ててクローゼットに閉じ込めた。彼はパグとファリンを呼び、事情を説明した。アンディーは警察に話すべきだと言うが、ファリンは信じてもらえないだろうと反対する。
ファリンは証拠を隠そうと提案し、3人でシェーンの皮を包装紙に入れて捨てに行こうとする。カレンに見つかったのでアンディーたちは慌てて誤魔化すが、成り行きでマイクの母のドリーンにプレゼントする羽目になった。アンディーは咄嗟に嘘を捻り出し、ドリーンは来週まで棚に飾っておくことを承諾した。アンディーはパグ&ファリンと協力し、チャッキーを取り押さえてAI装置を取り外した。3人はチャッキーをアパートのゴミ箱に捨てるが、回収に来たゲイブが「お宝だ」と持ち帰った。彼は転売すれば金になると考え、チャッキーの修理に取り掛かった。
アンディーが帰宅すると、カレンはシェーンの事件でマイクの事情聴取を受けていた。彼は母との夕食に付き合うと言い、マイクの部屋に入れてもらった。アンディーはドリーンに頼まれ、カスラン・カーを呼び出すアプリの使い方を教えた。チャッキーは監視カメラの映像で、その様子を眺めた。ドリーンが「アンディーは私の親友よ」と喜んだので、彼女はチャッキーの標的になった。アンディーは隙を見て包装紙に包んだシェーンの頭皮を持ち出し、アパートのゴミ箱に捨てた。
修理を受けたチャッキーは監視カメラを乗っ取り、ゲイブを始末した。チャッキーは箱に入ると、オマールという少年が住む玄関前に移動した。アンディーはアパートの住人であるクリスから、「オマールの玄関前に面白い物が置いてあった」と知らされる。オマールが仲間に「チョード」と名付けたバディーを紹介する姿を見たアンディーだが、それがチャッキーとは気付かなかった。その場に居合わせたパグとファリンも、まるで気付いていなかった。
アンディーがZマートを訪れると、バディー2の販売に向けた準備が進められていた。そこへチャッキーが来て声を掛けると、アンディーは「あっちへ行け」と冷たく告げる。チャッキーは「それが友達に言う言葉かい」と述べ、テレビをハッキングした。チャッキーだと確信したアンディーは掴み掛かるが、オマールが来て突き飛ばした。彼はオマールだけでなく、駆け付けたパグやファリンたちにも「それはチャッキーだ」と訴える。しかしチャッキーが証拠を隠したので、誰も信じてくれなかった。その夜、アンディーはドリーンの危機を察知して止めようとするが、彼女はカスラン・カーで出掛ける。車に忍び込んでいたチャッキーは車を操り、ドリーンを殺害した…。

監督はラース・クレヴバーグ、脚本はタイラー・バートン・スミス、製作はデヴィッド・カッツェンバーグ&セス・グレアム=スミス、製作総指揮はアーロン・シュミット&クリス・ファーガソン&アーロン・L・ギルバート&ジェイソン・クロス、撮影はブレンダン・ウエガマ、美術はダン・ハーマンセン、編集はトム・エルキンズ、衣装はジョリー・ウッドマン、音楽はビアー・マクリアリー、音楽監修はルビー・チュン&ジョナサン・クリスチャンセン。
出演はオーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ティム・マシスン、タイ・コンシーリョ、ベアトリス・キットソス、デヴィッド・ルイス、カーリース・バーク、トレント・レデコップ、マーロン・カザディー、アナント・アネジャ、アムロ・マジズーブ、エディー・フレイク、フェニックス・ライ、ジョンソン・ファン、ミア・ベラ、ベン・アンドルスコ=ダオン、ザーラ・アンダーソン、サージ・シャスワル、アリアナ・ニカ、クリスティン・ヨーク、アンバー・テイラー、エミリー・テイラー、ニコール・アンソニー他。
声の出演はマーク・ハミル。


1988年に公開された同名映画のリブート。
監督は『ポラロイド』のラース・クレヴバーグ。脚本のタイラー・バートン・スミスは、これが初長編。
カレンをオーブリー・プラザ、アンディーをガブリエル・ベイトマン、マイクをブライアン・タイリー・ヘンリー、ヘンリーをティム・マシスン、パグをタイ・コンシーリョ、ファリンをベアトリス・キットソスが演じている。
チャッキーの声を、マーク・ハミルが担当している。

映画の権利を保有しているメトロ・ゴールドウィン・メイヤーは、2017年の『チャイルド・プレイ 〜チャッキーの狂気病棟〜』まで7本が作られたオリジナルシリーズとは切り離したリブート版を企画した。
オリジナル版の生みの親であるドン・マンシーニやプロデューサーのデヴィッド・カーシュナーは、この企画には呼ばれなかった。事後承諾で「原案」のような形での表記を提案されたドン・マンシーニは、それを拒否した。
チャッキーを使ったオリジナルシリーズを続けようと考えていたドン・マンシーニは、その企画に納得していなかったからだ。そこで彼はデヴィッド・カーシュナーと組み、2021年から放送されるTVシリーズを製作した。
こちらではチャッキーの声優として、ブラッド・ドゥーリフも続投している。

冒頭でヘンリーがバディーを宣伝し、ラストでも彼の映像が出て来る。
でもヘンリーって「カスラン社の社長」というだけで、今回の件で何の非も無いんだよね。チャッキーの安全装置を解除したのはチェンだし、そのチェンとヘンリーはたぶん会ったことも無いだろうし。
もちろんチェンの行動に、ヘンリーの存在は何ら関係していない。チャッキーが暴走したのも、バディー人形の欠陥をヘンリーが隠していたわけではない。
なので、ヘンリーの存在意義が全く無いんだよね。

冒頭で引っ掛かるのは、「なぜチェンはボーッとしていたのか」ってことだ。ここに同情すべき理由でもあればともかく、何も無いのよね。
ただボーッとしていただけなので、「そりゃあ叱責されても仕方がないだろ」と思ってしまう。それでプログラミングを変更するのは、分かりやすいぐらいの逆恨みだ。
っていうか、逆恨みでもないよな。ただの八つ当たりだよな。そんなことをしても、工場長への復讐にはならないんだから。
しかも全ての人形じゃなくて、1体だけ解除しているし。なので、「お前は何がしたかったのか」と言いたくなるわ。
細かいことかもしれないけどさ、バディーが凶暴化する大事なスタート地点なんだから、もうちょっとスムーズに引き付ける力がほしいわ。あまりにも雑で適当だわ。

もっと引っ掛かるのが、「下請け工場で組み立て作業を担当しているような下っ端の人間が、プログラムを勝手に改変することなんて可能なのか」ってことだ。
組み立ての作業とプログラミングの作業って、普通に考えれば別の場所で担当しそうなモノだよな。必要とされる能力が全く違うんだからさ。
全ての作業を同じ場所でやっているような会社ならともかく、そうじゃないんでしょ。デカい会社だからこそ、組み立て作業はベトナムの工場でやらせているんでしょ。
AIの部分は、そっちの専門家がやるのが普通じゃないのか。

これはオリジナル版のグッド・ガイ人形に対しても感じたことなんだけど、今回のバディー人形も可愛くないんだよね。
本来であれば、「可愛いはずの人形が恐ろしい殺人鬼に変貌する」という変化が恐怖を醸し出す上で大きな要素になるべきなのよ。でも、そもそも可愛さが無いし、それどころか薄気味悪さも感じるぐらいなのよね。
最初から可愛げの無い人形が殺人鬼になっても、そんなに衝撃は大きくないでしょ。
まあバディーを可愛くないと感じるのは、日本人とアメリカ人の感覚の違いがあるのかもしれないけどさ。

序盤、仕事を終えてアパートに戻ったカレンは、ゲイブの挨拶を無視してエレベーターに乗り込む。
こう書くとカレンが失礼な奴に感じるかもしれないが、実際に映画を見れば「無視しても仕方がないかな」と思うだろう。なぜなら、ゲイブが不気味な奴だからだ。
でも、そこで不気味さを放つキャラクターなんか出しちゃうのは、どう考えてもマズいでしょ。この映画で不気味さを放つのは、バディーに限定しておいた方が絶対にいいでしょうに。
なんでバディーより先に、恐怖の発信場所を用意してんのよ。

それどころか、カレンが帰宅するシーンって、BGMも含めて、やたらと不安を煽るような雰囲気になっているのよね。まだバディーが自宅に届いてもいない内から、「今にも何か恐ろしいことが起きそうな予感」ってのを煽っているのだ。
それは早すぎるなあ。状況と比較して、演出が先走っているぞ。
その演出だと、バディーじゃなくてゲイブが恐ろしい奴で、カレンとアンディーに危害を加えそうな予感がしちゃうのよね。
ミスリードってわけでもなくて、ただ演出を間違えているだけだぞ。

カレンが愛すべき母親じゃないってのも、設定を失敗しているとしか思えない。
最終的にはカレンがアンディーを守るために戦う展開へと向かっていくわけで、それを考えると「昼間からシェーンを連れ込み、ドアも施錠せずにセックスを始めようとしている母親」ってのは、どういうセンスで持ち込んだ描写なのか。
カレンは16歳でアンディーを産んだ設定だけど、「彼女に非があってシングルになったのでは」と思っちゃうぞ。
偏見だと批判されることを覚悟して書くけど、アバズレに見えちゃうのよね。

カレンは育児放棄しているわけじゃなくて、ちゃんと息子のことは考えている。ただ、アンディーにバディーをプレゼントするってのは、どうなのかなあ。
それは返品された人形を勝手に持ち出してプレゼントに回す行為を咎めようってことじゃなくて、「それがプレゼントでホントにいいのか」ってことよ。
アンディーは新しいスマホを欲しがっていたけど、それが高いなら諦めるのは別にいいよ。ただ、彼がバディーを欲しがっていたことなんて全く描かれていないわけで。「友達の代わり」ってことなら、余計に虚しいし。
これが「アンディーが引き篭もり」ってことならともかく、ちゃんと外には出られているわけだから。

実際、アンディーは全く喜んでいないのだが、たぶん「カレンは何も分かっちゃいない母親」ってことを示したいんだろう。
だけど、それだけに留まらず、チャッキーが来てからのカレンは息子への愛を感じさせる行動を見せないようになる。
そもそもシェーンと付き合っている時点で愚かしい母親ではあるのだが、同情の余地も皆無だしね。
どうせカレンが死なないことは分かり切っているけど、「こいつがチャッキーに殺されてもいいぐらいだな」とまで思ってしまうわ。

バディー人形はアンディーがハン・ソロと名付けたのに、なぜか「チャッキー」としか認識しない。オリジナル版がチャッキーだったから、それに合わせているわけだ。
名前はオリジナル版から変更されていても構わないけど、同じなら同じで、それに対する不満は無い。ただ、それならアンディーがチャッキーと名付ける設定にしておけばいいでしょ。
なんでハン・ソロと呼んでもチゃッキーとしか認識しない設定にしたのよ。
そんな面倒な形にするなら、ちゃんと「人形が自分をチャッキーと認識する理由」を用意すべきだわ。

オリジナル版とリブート版では、チャッキーの設定が大きく変更されている。
オリジナル版は、「連続殺人犯の魂がブードゥーの呪文によってチャッキー人形に入り込む」という設定だった。このリブート版では、「規制の解除されたAIが学習して暴走する」という設定になっている。
リブート版だから何から何までオリジナル版と同じことを繰り返す必要は無いし、むしろ改変する部分があった方が望ましい。
AIを搭載した人形が暴走するってのも、時代の変化に合わせた設定と言っていいだろう。もはや多くの映画で使われている要素だから目新しさは皆無だが、そこは置いておくとしてね。それに、オリジナル版の「追い込まれた連続殺人犯が急にブードゥーの呪文を唱える」ってのは、かなり不自然だったし。

ただ、AIの暴走という設定に変更したことで、チャッキーのキャラクターが全く別物になっている。
オリジナル版の場合、「動くはずの無い人形が喋ったり動いたりする」という部分が肝だった。つまり、まだ殺人を犯していない段階でも、既にチャッキーは「異様な存在」だったのだ。
しかしリブート版だとAIが搭載され、喋ったり動いたりする仕様となっている。しかも安全装置は外されている上に故障している商品という扱いなので、しばらくは「それが不思議ではない存在」だ。
ここは大きなマイナスになっている。

ただ、「それが不思議ではない存在」ではあるのだが、ちゃんと不気味なことは不気味だ。
でも、こっちの方は、むしろ最初は不気味じゃない方が得策なんだよね。何しろ、チャッキーはアンディーを「僕の友達」と認識しているからだ。
だったら最初の内は「可愛くて利口な友達」として行動し、次第に狂気や薄気味悪さが見えて来る展開にした方が怖いでしょ。
この映画だと起動した日から既に不気味なので、ちっとも「アンディーの友達」には見えないのよ。

そうなると、「そんな迷惑な人形を、なぜアンディーはずっと傍らに置いて起動させておくのか」という部分が引っ掛かってしまう。
初日の夜から不気味さ満開で寝るのも苦労したのなら、その時点でチャッキーの電源をオフにしちゃえばいいでしょうに。
っていうか後で装置を取り外すシーンがあるってことは、まさか電源のオンオフは出来なかったりするのか。
シェーンへの不満をアンディーが吐露したトコからは「チャッキーを友達と捉えて仲良く遊ぶ」という様子が描かれるけど、これも強引さしか感じない。

チャッキーをゴミ箱に捨てた後、パグとファリンは「チョードの正体はチャッキーだ」というアンディーの説明を全く信じようとしない。
でも2人はチャッキーと対峙して、普通じゃないことも分かっているはず。
それにしては、まるで疑いを持たないのは変でしょ。そもそも「オマールの玄関前に、なぜかバディー人形の箱が置かれていた」というトコからして不自然なんだしさ。
2人を「チャッキーの秘密を知るアンディーの仲間」にするなら、そのままアンディーを信じる数少ない仲間にしておけばいいんじゃないの。カレンが終盤までは全く息子を信じず、ずっと敵のままなんだからさ。

ずっとチャッキーはアンディーを「僕の友達」と言っているけど、それにしてはゴミ箱に捨てられてからアンディーを脅したり挑発したりするようになる。
じゃあ「可愛さ余って憎さ百倍」に変化したのかというと、「チャッキーは自分だけの友達だから」ってことでドリーンを殺したりカレンを狙ったりする。最後はアンディーも殺そうとする。
その辺りは、キャラの動かし方として半端に感じるぞ。
最後まで「アンディーの友達を全て殺す」という目的で動かすか、捨てられてアンディーを憎むか、どっちかに徹底した方がいい。

チャッキーは学習しないことも多いのに、ナイフの使い方や血には最初から興味を示す。その理由はサッパリ分からない。
チャッキーは安全装置が解除されているだけであって、別に「危険なこと、凶暴なことを優先的に学習する」とプログラミングされているわけじゃないでしょ。「安全装置を解除された人形が凶暴化する」というプロットに対して、それを成立させるための設定が粗いんだよな。
それなら、いっそオリジナル版のオカルト風味の方が、極端に言えば「何でも有り」でも行けちゃうわけで。
どうせ最初から科学的な考証には期待しちゃいないし、そういう類の映画でもないとは思っているのよ。ただ、SF的な要素を持ち込んでおきながら、やってることは基本的にオカルトなんだよね。
なので、そこの改変によるプラスの効果ってのが全く見えて来ないのよね。

(観賞日:2021年1月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会