『チャーリーズ・エンジェル』:2000、アメリカ
ナタリー・クック、ディラン・サンダース、アレックス・マンデイの3人は、大富豪チャーリー・タウンゼントの事務所に所属する探偵だ。3人は上司ボスレーから連絡を受け、声しか知らないチャーリーからの指令を果たすために世界中を飛び回る。
今回、ナタリー達が指示された仕事は、誘拐されたノックス・テクノロジー社の創立者であるエリック・ノックスを救出し、奪われた音声追跡ソフトを奪還することだ。仕事を依頼したのはノックス・テクノロジー社の社長、ヴィヴィアン・ウッドだ。
ナタリー達は、ノックス・テクノロジー社のライバル会社レッド・スター社の社長、ロジャー・コーウィンに疑惑の目を向けた。3人はコーウィンのパーティーで見掛けた殺し屋を追跡し、監禁されていたノックスを救出した。だが、実は事件の黒幕はノックスだった…。
監督はマックG、脚本はライアン・ロウ&エド・ソロモン&ジョン・オーガスト、製作はレナード・ゴールドバーグ&ドリュー・バリモア &ナンシー・ジュヴォネン、製作協力はアマンダ・ゴールドバーグ、製作総指揮はベティー・トーマス&ジェンノ・トッピング&ジョセフ・M・カラッシオロ、撮影はラッセル・ カーペンター、編集はウェイン・ワーマン&ピーター・テッシュナー、美術はJ・マイケル・リヴァ、衣装はジョセフ・G・オーリシ、 音楽はエドワード・シェアマー、音楽監修はジョン・フーリアン。
出演はキャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、ビル・マーレイ、サム・ロックウェル、ティム・カリー、ケリー ・リンチ、クリスピン・グローヴァー、 ルーク・ウィルソン、マット・ルブランク、トム・グリーン、LL・クール・J、ショーン・ウェイレン、ティム・ダナウェイ、 アレックス・トレバック、ラリー・ウィルソン、マーク・ライアン、ボビー・オーレ、ガイ・オゼアリー、ジョー・デュア、マシュー・ フラウマン、レジー・ヘイズ、メリッサ・マッカーシー他。
1970年代の人気TVシリーズをリメイクした映画。
ナタリーをキャメロン・ディアス、ディランをドリュー・バリモア、アレックスをルーシー・リュー、ボスレーをビル・マーレイ、ノックスをサム・ロックウェル、ヴィヴィアンをケリー・リンチ、コーウィンをティム・カリーが演じている。また、チャーリーの声をジョン・フォーサイスが担当している。ものすご〜く金を使って、ものすご〜く手間を掛けて、ものすご〜く頑張った、ごっこ遊び。それが、この映画である。タイトルは『チャーリーズ・エンジェルズ』だが、実際は『チャーリーズ・エンジェルズごっこ』と表現した方がふさわしいかもしれない。
一応は「3人ともチャーリーの聡明な部下」ということらしいが、実際は3人ともバカ。そして、そのオツムの弱さを隠そうともせず、大々的にアピールしようとする。やたら変装が多い仕事っぷりは、ひたすらバカだし、仕事を離れても、やっぱりバカだ。かなりコミカルなテイストが強く、アクション・コメディーという感じだ。エージェントが活躍する映画を茶化しているかのような、つまり『オースティン・パワーズ』に似たノリも感じる。あと、ネーチャンのお色気とアクションが売りという辺りから、“ピカソ・トリガー”シリーズをヴァージョン・アップさせたような作品、といった感じもしたりして。
パロディー、下ネタ、視覚に頼った笑い、言葉の笑いと、様々な種類の笑いが散りばめられているが、共通点は「ユル〜イ笑い」だということだ。作品そのものがユル〜イ感じなので、おのずと笑いの質も、それに合わせてユル〜イ感じになるわけだ。まあ笑いの基準は人それぞれだが、少なくとも徹夜明けのハイテンションなら、たぶん笑えるだろう。ワイヤーワークを多用した香港映画風味のアクションシーンがたっぷりとあるが、いちいち派手な決めポーズを取ったり、そこでも笑いを取りに行っているようなノリがある。迫力とか動きのキレとかより、「バカだなあ」と思ってしまった。いや、いい意味でね。
珍妙なシーンが大量にあって、例えばビル・マーレイとティム・カリーが肉襦袢を着て相撲を取るシーンなど、見事に意味も無い。しかし、この映画は基本的に、薄っぺらい内容をバカ丸出しのシーンとアクションシーンによって肉付けしている状態なので、おそらく本当に意味のあるシーンを探す方が大変だろうと思われる。
「そんな行動を取る必要があるのか?」とか、「そんな場面を見せる必要があるのか?」と考え始めたら、この映画はどうしようも無くなってしまう。無駄に金や技術を使って、無駄で無意味なモノを堂々と見せることで、この映画は成立しているのだから。この映画の凄い所は、完全に開き直っていることだ。「質の高いアクション映画を作ろうとしても、密度の濃い映画を作ろうとしても、そんなのは無理」と最初から諦めて、「3人のハリウッド女優を使ったビッグ・バジェットのバカ映画」と割り切って作っているのだ。
「有名女優が、コスプレショーで皆さんの御機嫌を伺い、もちろんセクシーショットのサービスもして、アクションまでやっちゃうわよ。有名女優が、ここまでやりました。どうです、楽しいでしょ」とアピールされたら、そりゃあもう、楽しいですと答えるしかないのだ。
この作品は、スケールの大きなハリウッド製お楽しみ会と考えてもいいかもしれない。こういう種類の映画に莫大な予算が注ぎ込まれ、有名俳優が嬉々としてバカな役を演じるというのが、ハリウッドの凄い所だと思うのだ。
いや、マジでマジで。
第23回スティンカーズ最悪映画賞
受賞:【最悪の助演男優】部門[トム・グリーン]
<*『チャーリーズ・エンジェル』『ロード・トリップ』の2作での受賞>
受賞:【最も笑えないコメディー・リリーフ】部門[あらゆる映画でのトム・グリーン(今年の場合は『チャーリーズ・エンジェル』と『ロード・トリップ』)]ノミネート:【最悪なTV番組の映画化】部門
ノミネート:【最悪のグループ】部門[エンジェルズ]
ノミネート:【最悪の歌曲・歌唱】部門「Independent Women, Part 1」(デスティニーズ・チャイルド)