『チェンジ・アップ/オレはどっちで、アイツもどっち!?』:2011、アメリカ

デイヴ・ロックウッドは夜中に赤ん坊の泣き声で起こされ、妻の「貴方の番よ」とジェイミーに言われる。子供部屋に行った彼は、生後間もないピーターとサラの世話をする。オムツを替えようとした彼は、ウンチを顔に浴びせられる。翌朝、彼はSKM法律事務所へ出勤する。優秀な弁護士である彼は、ボスのスティールから共同経営者の座を約束されている。デイヴは企業合併の案件を抱えているが、それが片付いた後には共同経営者審議が待ち受けている。
同僚のサブリナから資料を受け取った後、デイヴのオフィスには親友のミッチから電話が掛かって来る。ミッチは朝から大麻を吸っており、汚い言葉を楽しそうに並べ立てる。彼はデイヴに、昨晩にホームレスと毛布を取り合ったことを話す。野球観戦の約束を確認されたデイヴは、完全に忘れていたが、覚えていたフリをした。ミッチの元を父親が訪ね、「高校を中退して役者の道へ進むとは、いい決断だ。CMに出ていたな。ソーセージの演技が良かった」と嫌味っぽく言う。彼はミッチに、「また再婚するので結婚式に来てくれ。次の土曜だ。妻のパメラがお前の祝辞を望んでる」と述べた。しかしミッチは「次の再婚で」と言い、出席を断った。
夜、デイヴは双子の赤ん坊を入浴させ、長女であるカーラと会話を交わす。ジェイミーから「今日の会話ナイトは?」と訊かれたデイヴは、別の予定があることを明かして謝った。カウンセラーの勧めを受け、週に1度、1時間は話し合うという約束を夫婦で交わしているが、もう3ヶ月も守られていない。ジェイミーは延期を承諾し、訪ねて来たミッチを笑顔で迎える。ミッチはジェイミーやカーラの前でも、平気で汚い言葉や下ネタを口にした。
スポーツバーへ行く車内で、ミッチはデイヴに映画で初めての主役が決まったと話した。2人はスポーツバーで野球を見ながら酒を飲み、大いに楽しむ。デイヴから女性関係について質問されたミッチは、タティアナという女の写真を見せた。デイヴが苗字を訊くと、ミッチは「夜中の3時に電話してくる女だぞ。ファックするのに苗字は要らない」と述べた。デイヴは「少しサブリナに似てる」と言い、「新しい同僚で、雑誌から飛び出してきたような美女だ」と説明した。
デイヴはサブリナに対する欲情を明かし、ミッチがタティアナとの激しいセックスについて語ると羨んだ。デイヴは「俺はセックスやドラッグを全て避けて、生き急いできた。いい大学、いいロースクール、いい法律事務所。ジェイミーと結婚して子供が出来て。もう若い頃は取り戻せない」と嘆く。「いい人生じゃないか。ホットな奥さんがいて、いい家がある。たくさんの家具に子供、貯金もある。孤独とは無縁だ。他に何があるんだ」とミッチが言うと、デイヴは「幾らでもある。例えば、お前の生活だ。違う女とのセックスも。お前が羨ましい。仕事は年に1週間だろ」と愚痴をこぼした。
デイヴとミッチは公園の泉に向かって並び、一緒に立ち小便をした。泉の女神像を見上げた2人は、「人生を交換したい」と口を揃えた。その直後、街が突如として停電になり、すぐに復旧した。翌朝、目を覚ましたミッチは、ベッドの隣でジェイミーが授乳しているのを見て驚いた。鏡を見た彼は、自分がデイヴの姿になっていることに気付いて狼狽する。ミッチは自分の部屋へ行き、眠っているデイヴを叩き起こした。デイヴは目を覚まし、自分がミッチの姿になっていることを知った。
2人は公園へ行き、また泉に小便をして元に戻ろうと考える。しかし彼らが公園へ行くと工事中で、泉は撤去されていた。2人は役所へ駆け込むが、泉のことは記録に無いので分からないと冷たく告げられる。朝から会議の予定があるデイヴが焦ると、ミッチは「俺が行く。ちゃんと弁護士を演じてやる」と告げる。他に手が無いので、デイヴは仕方なく「会社に着いたらサブリナから書類を貰え。会議では黙って書類を渡せ」と指示した。ミッチはデイヴに、「お前は俺の部屋で資料を見ろ。現場でメイクし、セリフを覚えろ。この映画で俺はブレイクするんだからな」と告げた。デイヴはカーラを迎えに4時にバレエ教室に行くよう頼み、ミッチと別れた。
弁護士事務所に到着したミッチは大量に並んでいるパンを浮かれて頬張り、サブリナが来ると軽い調子で挨拶する。しかし会議室へ行くと、その神妙な様子に黙り込んだ。会議室ではノートンの会社とキンカベの会社が、合併について最終的な話し合いを行っていた。ミッチはデイヴから指示された通り、余計なことは喋らず資料を渡そうとする。だが、合併に関しての疑問点を顧客であるキンカベ社長が提示したため、意見を求められた。
全く知らない専門用語を並べられたミッチは、軽い口調で「さっさと署名して乾杯しようぜ。ビビルなよ」などと言う。そのせいで場の雰囲気は一気に悪化し、ノートンとキンカベが言い争って合併解消が決まった。スティールから責められたミッチは全く悪びれず、「これは秘密の計画だ」と言う。「この契約に我が社の存続が懸かってるんだ」とスティールが告げると、彼は「俺を信じろよ」と述べた。
デイヴはミッチに成り切り、映画の撮影現場へと赴いた。メイクを終えてスタジオに案内されたデイヴは、ライトポルノ映画の撮影だと知った。動揺した彼は、監督のヴァルタンに「ちょっと手違いがあって」と言う。しかしヴァルタンは女優のモナを呼び、デイヴに演技を指示した。下手な演技で指示通りにこなしたデイヴだが、モナのアナルに指を突っ込めという要求は拒んだ。しかしヴァルタンから「拳をお前の穴に入れるぞ」と凄まれ、指示に従う。するとモナの夫役の男優が現れ、ヴァルタンはデイヴに彼とのキスを指示した。
カーラを迎えにバレエ教室へ赴いたミッチは、ニコレットという少女が足を引っ掛けて彼女を倒すのを目撃した。帰りの車中で、ミッチはカーラがニコレットから目の敵にされていることを聞く。「なぜ仕返ししない?」とミッチが怒りを示すと、カーラは「パパがダメだって。言葉で解決する努力をしろって」と言う。するとミッチは「言葉での解決なんてクソだ。あの女を押さえ付けてナイフで突き刺せ。何事も暴力で解決するんだ」と述べた。
夜、デイヴと会って会議の結果を問われたミッチは、何食わぬ顔で「裁判になった」と説明した。ミッチから映画について訊かれたデイヴは、「正気か?ポルノだったぞ」と声を荒らげる。するとミッチは、「ライトポルノだ。下半身は出さなかっただろ」と告げる。彼は激しく苛立ち、「ジェイミーに事実を話す」と告げて自宅へ向かう。ミッチも彼に歩調を合わせ、2人はジェイミーに事実を説明した。しかし当然のことながら、ジェイミーは全く信じようとしなかった。
そこでデイヴは、「デイヴしか知らない質問をしてくれ」と彼女に促した。しかしデイヴはジェイミーの誕生日を間違え、ミッチが正解を答えた。そこでデイヴは、3年前にジェイミーがバイブレーターで感電したという秘密を話す。ジェイミーはデイヴがミッチに秘密を暴露したと誤解し、怒り狂った。ミッチはデイヴと2人になり、「ジェイミーが求めてきたらどうする?」と問い掛ける。デイヴが「セックスは許さない」と言うと、彼は「襲われたらどうする?彼女に分からせよう」と告げる。デイヴは火曜日だと知ると、「それなら安心だ」と口にした。
夕食の時、カーラが学校で書いた詩の話をするが、ミッチは無視して食べ始めようとする。ジェイミーに「話を聞いてあげて」と言われたミッチが適当に答えると、カーラは傷付いた。ジェイミーから注意されても彼は全く反省せず、それどころかカーラの名前を間違えて読んだ。デイヴはタティアナからの電話で「ファックしたいわ」と求められ、慌ててミッチに連絡を入れた。するとミッチは、「抱いてやれ、今後のためだ」と告げる。「それは浮気にならない」と説得されたデイヴは、ドアを開けてタティアナを迎え入れた。タティアナが妊婦だったのでデイヴは驚くが、彼女はセックスを迫る。ベッドに押し倒されたデイヴが「友達でいよう」と言うと、彼女は「ラマーズ教室でナンパしたくせに」と腹を立てた。
深夜、双子が泣き出したので、ジェイミーはミッチに「貴方の番よ、ミルクをあげて」と頼む。ミッチは「気分じゃない。君がやれ」と拒否し、ジェイミーを怒らせた。ジェイミーに蹴り飛ばされたミッチは、渋々ながら子供たちの部屋へ行く。ミッチはトイレでオナニー中だったデイヴに電話を掛け、不満を吐露した。デイヴはミッチに、双子にミルクを与える方法を説明した。ミッチはイライラした様子で、「俺が仕事をしている間に、お前がダウンタウンで泉を見つけろ」と告げた。
翌朝、デイヴは役所へ行き、記録係のヴィクターと会って泉の場所を尋ねた。ヴィクターは情報要求書に署名するよう指示し、州の承認が必要であること、それには3日掛かることを説明した。デイウが自宅へ行くと、ミッチはシャワー中だった。沈んだ様子のジェイミーに「どうしたの?」と問い掛けると、彼女は「デイヴの態度が変なの。シャワーサンダルで仕事へ行ったり、双子のお迎えを忘れたり。昨夜なんて魅力を感じないと言われたわ」と泣き出す。デイヴが「君たちは一時的に荒れているだけだよ」と告げると、ジェイミーは「何年も前からよ」と口にした。
ジェイミーはデイヴに、「彼を愛してるわ。でも彼は育った環境のせいで、人を羨んだ。いい生活を望み、必死に頑張った。でも今の彼は全てを手に入れ、歯止めが利かなくなってる。だから、もっと良い生活のために働き続けるし、私に関心を示さない。昔みたいに抱き締めてほしいし、キスしてほしいのに」と漏らす。そして彼女は、「デイヴが共同経営者になったら、立ち止まって幸せを見つめ直してほしい。幸せを感じない人とは、結婚生活を続けられないから」と語った。
ミッチはデイヴと2人になると、「もう限界だ。俺は出て行くぞ」と言い出した。デイヴは彼に掴み掛かり、「家族が僕の全てなんだ。最後まで代役をやり遂げろ」と告げる。「やり方が分からない」とミッチが言うと、「学ぶんだ」とデイヴは述べた。彼はミッチに自分の服装を教え、家庭生活で大事なことをレクチャーした。それから一緒に会社へ行き、サブリナに視線を送るミッチに「お前は既婚者だ。女を見るな。性的魅力は捨てろ」と指示した。
サブリナはミッチに、キンカベが2日後の仲裁調停に合意したことを報告した。同席していたデイヴは、ミッチとしてサブリナに挨拶した。その様子を見ていたミッチは、「君たち、デートしろよ」と言う。彼は饒舌に捲し立て、強引にデートの約束を取り付けた。サブリナを部屋から立ち去らせた後、ミッチは腹を立てるデイヴに「これで彼女を抱けるぞ。最高じゃないか。俺たちに起きたことはクレイジーだ。使わない手は無い」と述べた。
デイヴがオフィスを去った後、ミッチの元に父親から電話が掛かって来た。もちろん彼は、ミッチではなく相手がデイヴだと思って連絡して来たのだ。「会って話せないか」と訊かれたミッチは断ろうとするが、「30分でいい。ミッチの件で話したいんだ」と言われて会うことにした。ミッチの父は、「パメラという女と結婚する。私の招待客はゼロで、唯一の親族がミッチだ。2日前、パメラが祝辞を望んでいると伝えたが、本当は私からの願いだ」と語った。
「息子を参列させて、俺を馬鹿にしてるくせにと言わせたいのか」とミッチが言うと、父は「それは誤解だ。あいつには見所があるし、問題もある」と述べる。「どんな問題が?」とミッチが尋ねると、彼は「友人なら知ってるだろ。負け犬で、何でも簡単に投げ出す。夢中なのは最初の5分だけで、根性が無い」と話す。「息子とは仲良くしたい」と彼が言うと、ミッチは「失礼だが、ミッチを分かってない。それに彼はジェダイの騎士だ。今度会ったら進化を遂げてる」と語った。怒りを覚えた彼は、子供たちの世話や仕事に対して真剣に取り組むようになった…。

監督はデヴィッド・ドブキン、脚本はジョン・ルーカス&スコット・ムーア、製作はデヴィッド・ドブキン&ニール・H・モリッツ、製作総指揮はジョー・カラッシオロJr.&オリ・マーマー&ジェフ・クリーマン&ジョナサン・コーマック・マーティン、撮影はエリック・エドワーズ、編集はリー・ヘイキソール&グレッグ・ヘイデン、美術はバリー・ロビンソン、衣装はベッツィー・ハイマン、音楽はジョン・デブニー。
出演はライアン・レイノルズ、ジェイソン・ベイトマン、レスリー・マン、オリヴィア・ワイルド、アラン・アーキン、クレイグ・ビアーコ、グレゴリー・イッツェン、シドニー・ルヴィエール、マーセア・モンロー、ネッド・シュミッケ、ミン・ロー、ダックス・グリフィン、アンドレア・ムーア、マシュー・コーンウェル、ターフェ・オコンネル、フレッド・ストーラー、フェイス・アルハデフ、ルーク・ベイン、ローレン・ベイン、ジェイミー・レネル、ケニー・アルフォンソ他。


『シャンハイ・ナイト』『ブラザーサンタ』のデヴィッド・ドブキンが監督を務めた作品。
脚本は『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』のジョン・ルーカス&スコット・ムーア。
ミッチをライアン・レイノルズ、デイヴをジェイソン・ベイトマン、ジェイミーをレスリー・マン、サブリナをオリヴィア・ワイルド、ミッチの父をアラン・アーキン、ヴァルタンをクレイグ・ビアーコ、スティールをグレゴリー・イッツェン、カーラをシドニー・ルヴィエール、タティアナをマーセア・モンローが演じている。

「隣の芝生は青い」と感じる人物が全く異なる生活を送る相手と人生を交換する話は、『王様と乞食』など数多くの作品で使われてきた。
また、「何かの弾みで2人の中身が入れ替わってしまう」という話も、山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』など数多くの作品で使われてきた。
この2つの要素を合体させて使ったのが、この映画である。
だからアイデアとしては使い古されているし、二番煎じどころではないぐらいだ。

とは言え、そこに斬新さが無くてベタベタなネタだからダメというわけではない。
良くあるネタ、昔から何度も使われてきたアイデアを用いた映画なんて、世の中には幾らでもある。そして、その全てが駄作というわけではない。むしろ、優れた出来栄えだと感じる映画もある。
斬新さで勝負する映画ではないので、「ベタで使い古されたネタを、いかに丁寧に飾り付けるか、いかに上手く膨らませるか」という部分が重要になって来るのだが、それ次第では面白くなる可能性が幾らでもある。
だから、この映画が駄作になってしまった原因は(もう早々と駄作って書いちゃったけど)、そこがダメだからだ。

まず、この映画は入り方からして間違えていると感じる。
冒頭、デイヴが夜中に赤ん坊の泣き声で起こされ、「貴方の番よ」とジェイミーに言われた彼が赤ん坊2人のオムツを替えようとして苦労し、ウンチを浴びせられる様子が描かれる。そしてタイトルが表記された後、弁護士として働いている様子が写し出される。
しかし見せ方としては、そこは逆であるべきだ。
最初に「一流弁護士として働き、私生活では美人妻がいて3人の子供に恵まれ、周囲から見ると幸せ一杯の人生」という様子を見せて、「でも実際は気苦労も多く、本人は周囲が羨むほど幸せを感じていない」という手順にしておくべきだろう。

ミッチの見せ方に関しても、やはり失敗していると感じる。
デイヴの元へ電話を掛ける形でミッチは初登場するのだが、大麻を吸っていることや高校を中退して役者の仕事をしていることは会話の中で提示されるものの、やはり「売れない役者である」ってことのアピールが弱い。
彼に関して最初に見せるべきは、役者の仕事をしている様子だと思うのだ。
父親が台詞で語る「CMのソーセージ役」なんて、その仕事をやっているシーンを実際に見せた方がいい。そして、「役者としての仕事は皆無に等しく、たまに入る小さな仕事をやるだけ」という状況を描いた方がいい。
それを台詞だけで処理し、先に父親との関係不和をアピールするのは手順が逆だと思うのだ。

ミッチの家を父親が訪問するシーンの後、今度はデイヴが双子の赤ん坊を入浴させている様子が写るが、ここで双子の姉であるカーラが登場する。
それはキャラの出し入れとして失敗している。
冒頭で双子の赤ん坊が登場したので、てっきり子供は2人だけだと思っていたよ。
そりゃあ、すぐにカーラが登場するから、誤解している時間帯は短い。だけど、やはり双子の赤ん坊を登場させるなら、同じタイミングでカーラも登場させるべきだ。
カラだけ後回しにしているのは、メリットは何も無いし、不格好だ。

その後の展開を考えると、「デイヴもミッチも今の生活に満足しておらず、隣の芝生は青いと考える」という状況が必要なはずだ。しかし、そういう変身前の状況設定が弱すぎる。
まずデイヴに関しては、「夫婦がカウンセリングを受け、会話ナイトの約束をしないと会話の時間も満足に取れていない」という状況が会話で説明されるだけってのは弱い。
また、「子供の面倒を見るのが大変」ってのも冒頭シーンだけ。だから、「家庭生活に疲れている」という印象が弱い。
一方、サブリナへの好意に関しても、彼女の初登場シーンで気にする素振りをチラッと見せるだけ。これまた弱い。

一方のミッチは、まず「役者だけど全く売れてない」という状況に対しては、焦りや苛立ちを感じている様子が全く無い。朝から大麻を吸って陽気に暮らしており、それなりに人生を謳歌しているように見える。
また、女性関係に関しては、台詞で「何人もの女と会ってる」と言うだけであり、実際に「女にモテモテで不自由していない」ということがドラマとしては描かれていない。タティアナに関しても、バーで話す時に写真を見せるだけだし、その写真さえ観客には見せてくれない。
だから、「デイヴが羨む」という部分で説得力が弱くなる。
そもそも女性関係に関してはともかく、ドラッグをやることに対して羨ましく思うってのは全く理解できないし。

また、「自由気ままに生きて遊びまくり、女とのセックスも楽しんでいるミッチをデイヴが羨ましく思う」ってのは分かるけど、ミッチがデイヴを羨ましく思うという部分に関しては、動機の弱さを感じる。
そもそも前述したように、彼は売れない役者の暮らしに閉塞感や辛さなど何も感じていない。自由を楽しみ、女遊びも満喫している。
「家族がいるから孤独じゃないという部分を羨ましく思う」という設定にしてあるんだけど、その1本で「立場を交換したい」とするのは弱すぎる。
そもそも父親との関係描写についても薄っぺらいもんだから、ミッチがデイヴを羨ましく思う気持ちは全く本気に思えない。

中身が入れ替わった後も、やはり映画は面白くならない。
まずミッチの方は、デイヴと中身が入れ替わっても、「何とかデイヴに成り切ろう、ボロが出ないように頑張ろう」という意識が全く無い。会議室に入った時は少しだけ神妙にしているが、すぐに元通りになって、軽い調子で振る舞う。その軽さのせいで大事な仕事が失敗に終わっても、まるで悪びれる様子が無いし、落ち着き払っている。
ミッチは「デイヴを演じようとするけど上手く行かず、つい普段の軽さが出てしまう」ということではなくて、最初からデイヴっぽく振る舞おうという気が無い。
その時点でアプローチとしては「違うなあ」と感じるが、それでも「いつもと違うデイヴに周囲が困惑したり、振り回されたりする」というトコに面白さがあればいいのだが、ちっとも面白くない。むしろ、いつもと違う軽さのせいで仕事が失敗に終わったのに平然としているので、ちょっと不快感さえ覚える。

デイヴの方は、まず最初は「ミッチっぽく振る舞おう」としているので、その入りは悪くない。しかし、その後がいけない。
ライトポルノだと知ったデイヴが困惑した後、女優のモナが登場する。ハッキリ言って、モナは美人とは程遠いオバサンだ。
しかし、「女優が若い美人じゃない」という設定を活かそうとすれば、「ポルノだと知って美女とセックスできると喜んでいたら妖怪みたいなオバサンだった」という落とし方をした方がいい。
既に「ライトポルノ」という時点でデイヴが嫌がっているのなら、「女優が妖怪みたいなオバサン」という設定は、あまり効果的ではないのだ。
逆に、「ライトポルノで嫌がっていたけど、女優が美女なので気持ちが変化する」という展開にした方が面白味が出ただろう。

いかにも「ハングオーバー」シリーズの脚本家コンビらしく、多くの下ネタが詰め込まれているんだけど、それが不愉快な下ネタだらけになっているというのが頂けない。
例えば、ミッチがデイヴに「ジェイミーが求めてきたらどうする?」「襲われたらどうする?彼女に分からせよう」と問い掛けるシーン。
つまり、こいつは親友に対して、「お前の奥さんとセックスするぞ」と言っているわけだ。
これがジョークならともかくマジなので、まるで笑えないのよ。

赤ん坊の世話を拒絶し、ジェイミーに蹴り飛ばされて渋々ながら従うシーンは、下ネタではないが、やはりミッチの動かし方を間違えていると感じる。
彼は赤ん坊の首根っこを掴み、逆さまにしたりして、荷物のように乱暴に扱っているのだ。
しかも目を離して酒を飲んだりしているもんだから、赤ん坊がミキサーで手を切断しそうになったり、包丁を振り回して怪我を負いそうになったり、コンセントに触って感電しそうになったりしている。そしてミルクに関しても、赤ん坊の頭からドバドバと浴びせて終わらせている。
そういうのを笑えるほど、能天気になるのは難しい。

そういうアプローチじゃなくて、例えば「頑張って赤ん坊の世話をしようとするが、慣れていないのでオロオロする」という見せ方にでもしておけば、ちゃんと笑えたかもしれない。
それ以外にもミッチの言動は色々と問題が多く、ただ単に不愉快な奴になっている。
「ハングオーバー」シリーズでも、笑いを取りに行った主要キャラの言動が単なる不愉快な野郎になっているというケースがあったが、ここでも同じ失敗を繰り返しているのだ。
まあ『ハングオーバー!』がヒットしたから、それが失敗だとは思っていないんだろうけどさ。

「相手の生活が羨ましいと思っていたのに、実際に入れ替わったら大変だった」という作りのはずなのだが、そもそも入れ替わった直後から、デイヴもミッチも「本気で入れ替わりたいなんて思っていなかった」と言っている。
つまり、「羨ましいってのは口先だけであり、本気で羨ましいとは思っていなかった」ということになるわけで。それはダメでしょうに。
最初は「入れ替わった生活に期待感が高まる」というところから入り、最初は「入れ替わった生活の楽しさを満喫し、充実感や幸せを感じる」という手順があって、それから「色々と大変なことが降り掛かり、元に戻りたいと考える」という展開へ移るべきでしょ。
そりゃあ、ベタっちゃあベタな展開だよ。だけどベタなネタを使っているんだし、そういう筋道はベタでいいのよ。
ベタを嫌って捻りを加え、それが上手く行けばいいけど、失敗したら目も当てられない。しかも本作品の場合、捻りを加えようとしているわけじゃなくて、ただ単に雑なだけにしか思えないし。

後半、父親から酷評されたミッチが見返してやりたいという気持ちになり、子供たちの世話や仕事に対して真面目に取り組むようになるという展開が用意されている。
しかし、そうなると「ミッチの物語」になってしまい、「親友2人の中身が入れ替わる」という話である意味が無くなってしまうのだ。そういう展開にしたいのなら、そもそも入れ替わる必要さえ無いし。
あと、ミッチが真剣に子供の世話をするようになった後、「カーラがニコレットを投げ飛ばし、それをミッチが称賛し、ジェイミーも笑う」という描写があり、暴力による解決が全面的に肯定されているのは、ちょっと引っ掛かるなあ。
そこは全く変わっちゃいないんだよな。

で、そのままだとホントに「ミッチの物語」になってしまうから、デイヴ側のエピソードも用意されている。その前にサブリナとのデートが決定しているので、そのイベントを片付ける展開がある。
だけど、その前にデイヴはジェイミーから夫婦関係の問題を吐露され、涙で「昔のように出してほしい、キスしてほしい」と訴えられているのよ。そして、それを受けてミッチに「俺には家族が全てだ」と言っているのよ。
それなのに、その後でサブリナへの浮気心を膨らませ、デートを楽しんでいるんだから、そりゃ無いだろうと。
セックスの直前になって思い直しているけど、それだと遅すぎるのよ。
そこで「やっぱり家族が大切」という展開にするのなら、ジェイミーから涙の訴えを聞くシーンは、入れちゃダメでしょうに。
その後でサブリナとの浮気に走って浮かれたら、「ジェイミーの涙の訴えは何も心に響いていなかったのか。もしくは、あっさりと忘れてしまったのか」ってことになるでしょうに。

(観賞日:2015年4月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会