『遠すぎた橋』:1977、アメリカ&イギリス

1944年、欧州は独軍の支配下にあった。しかし6月6日のDデイで状況は一変した。アイゼンハワー大将の率いる連合軍はノルマンディーに上陸して7月には攻勢に転じ、8月にはパリが解放された。独軍は退却を始めたが、連合軍は補給線が延び切って物資が不足した。それだけでなく、パットン中将とモントゴメリー元帥がベルリン一番乗りを狙って激しい対立するという問題も抱えていた。9月、モントゴメリーはマーケット・ガーデン作戦を提案し、英国の圧力に負けたアイゼンハワーは承認した。この作戦によってクリスマスまでに終戦を迎え、兵は国に帰れるはずだった。
1944年9月、オランダのアーネム。レジスタンスのリーダーと妻子は、独軍の退却を知った。独軍西部戦線司令部のルントシュテット元帥は司令官に復帰し、ブルーメントリット少将たちと会った。彼は現状報告を求め、最低限の士気と戦力しか残っていないことを知らされた。イギリスのブラウニング中将は司令部にアメリカ軍第101空挺師団長のテイラー少将、イギリス軍第1空挺師団長のアーカート少将、アメリカ軍第82空挺師団長のギャヴィン准将、ポーランド第1独立落下傘旅団長のソサボフスキー准将を集め、モントゴメリーから聞いた作戦内容を伝えた。それは3万5千の兵をオランダに降下させる最大規模の空挺作戦だった。
作戦の目的は、イギリス軍のホロックス中将が率いる第2軍第30軍団が敵の前線を通れるように、橋を奇襲して奪うことにある。テイラーの第101空挺師団はアイントホーフェン、ギャヴィンの第82空挺師団はナイメーヘン周辺の橋、アーカートの第1空挺師団はアーネム橋の担当を指示された。ブラウニングはモントゴメリーから、第30軍団は2日で101キロを走破するという確約を貰っていた。ソサボフスキーはアーカートと共にアーネム橋を担当するよう指示され、ブラウニングは決行が7日後だと述べた。
ルントシュテットやB軍集団司令官のモーデル元帥は、連合軍の指揮官をパットンが務めるだろうと予測した。彼らはビットリッヒ中将の第2SS装甲軍団を休ませる必要があると考え、安全なアーネムへ退避させることにした。ギャヴィンは副官のハリー大尉に、降下が昼間であることへの懸念を話した。レジスタンスの少年は、モーデルがアーネムに来ていることを知って父に知らせた。その情報は、情報部のフラー少佐からブラウニングにも伝えられた。フラーは作戦への不安を抱き、低空偵察を志願した。
アーカートとソサボフスキーはイギリス空軍将校と会い、降下地点についての意見を聞く。将校が橋から12キロも離れた場所を提案すると、ソサボフスキーは「君はどっちの味方だ」と腹を立てた。しかしアーカートは将校の提案した地点を受け入れ、ブラウニングも了承した。ソサボフスキーはアーネムの独軍を軽く見ているブラウニングに反発し、全滅の可能性を口にした。無線担当のスティール少佐とは部下のコール中尉に、無線機が12キロ先と交信できるか怪しいことを話す。「湿気が高いし木も多い」と彼が言うと、コールはアーカートが夜までに橋へ着く予定であることを指摘した。「それなら無線機を使う必要も無いんじゃないですか」とコールが告げると、スティールは「わざわざ波風を立たせることもないか」とアーカートに伝えないことにした。
フラーは低空偵察で撮影した写真をブラウニングに見せて、独軍が戦車を隠していることを伝えた。しかしブラウニングは「慣例で隠しているだけだ」と軽く言い、今回の作戦は絶対に中止できないと告げた。ベルギーとオランダの国境にあるレオポルズブールで、ホロックスは部隊の面々を集めて作戦を語る。彼は明朝に出発して48時間以内に第1師団と合流する予定を説明し、先鋒にジョー・ヴァンドリア中佐の機甲師団を指名した。
アメリカ軍のグラース大尉は不安を誤魔化すために酒を煽り、部下のドーハン軍曹に「俺は死なないと言ってくれ」と頼む。フラーは軍医から、「多くの友人が心配している。休んだ方がいい」と告げられる。「私が目障りだから言うんですか」とフラーが訊くと、彼は「病気休暇を取ったらどうだ。我々は出撃する。止めることは無理だ」と述べた。アーカートは7日間で準備を整え、部下のハンコックたちと共に出撃した。ヴァンドリアはホロックスの指示を受け、戦車隊を率いて出発した。
目的地に着いたアーカートたちは、飛行機からパラシュートで降下した。ハルテンシュタイン・ホテルの司令部にいたモーデルは部下から、3キロ先に敵の空挺部隊が降下したことを知らされた。モーデルは敵の狙いが自分を捕虜にすることだと思い込み、車を呼んで逃げ出すことにした。敵の動きを聞いたビットリッヒは司令部に連絡しようとするが、電話が繋がらなかった。彼はマシアス軍曹に、ナイメーヘンに出向いて橋を死守するよう命じた。
アーカートはラスベリー准将から、グライダーの紛失によって多くのジープが届いていないこと、届いた分も待ち伏せに遭ったことを聞く。機甲師団は敵の抵抗を受けて交戦となり、犠牲者が増えていく。アーカートはスティールたちから無線が使えず司令部と連絡が取れないことを聞き、早く直すよう指示した。ビットリッヒは自分の元司令部を接収したモーデルを訪ね、必要なときはアーネムとナイメーヘンの橋を爆破する許可を求めた。しかしモーデルは許可せず、「反撃のために必要だ、司令官に話は通した。最優先で援軍を回してくれる」と言う。さらに彼は、「敵の狙いは橋ではないよ。それなら12キロも先に降下しない」と述べた。
イギリス軍のカーライル少佐たちは町に到着し、大歓迎を受けた。スタウト大佐の部隊はソン橋に近付くが、敵に爆破された。機甲師団は進軍を続け、アイントホーフェンまで10キロを切る地点まで到達した。ルートヴィヒ少将は連合軍の極秘計画書を入手し、モーデルに「橋に爆薬を仕掛けました。敵の作戦を阻止できます」と言う。するとモーデルは呆れた様子で、「爆破したがる部下ばかりだな。その計画書は偽物だ。わざと見つけさせたんだ」と述べた。
アーカートは攻撃を受け、近くの家へ避難することにした。アーネムに到着したフロストは、部下のコーニッシュに2件の家の接収を命令した。無線機が使えないため、他の部隊とは連絡が取れない状態だった。家を接収された老婦人は腹を立て、息子のハンスに「私の家よ。追い返して」と訴えた。フロストは橋を確保しようとするが、敵の激しい攻撃を受けて退避を余儀なくされた。彼は深夜を待って再び橋を狙うが、部下たちが誤って弾薬庫を爆発させてしまった。
翌朝、マシアスの部隊がアーネム橋を渡って攻撃してくるが、フロストたちが応戦して退却させた。フロストは負傷したコーニッシュに、「敵は橋の南を確保した。教会の塔も含め、町は独軍の手中だ」と告げた。アーカートは朝になっても敵が増える一方のため橋を渡れず、司令部へ行くことを決めた。ラスベリーと部下のクレミンソンは、途中まで護衛することにした。ラスベリーが銃弾を浴びて重傷を負うと、アーカートは老夫婦に看病を任せた。アーカートとクレミンソンは若夫婦に匿われるが、周囲を敵軍に囲まれた。
ソサボフスキーは自分の部隊だけ降下中止で足止めを食らったため、空軍将校に抗議した。空軍将校は彼に、霧が抜けるまで待つしかないことを説明した。アイントホーフェンに到着した機甲師団は、市民の歓迎を受けた。スタウトは仮橋を運ぶため、ヴァンドリアの元へ来た。ギャヴィンはハリー大尉から、敵が道を封鎖して橋の突破は難しいという情報を聞く。アメリカ軍のドーハン軍曹は重傷のグラース大尉を発見し、スパンダー医師の元へ運ぶ。彼はグラースを治療してもらうため、スパンダーを拳銃で脅した。
スタウトたちはソン橋で仮橋を組み立て、部隊を進軍させた。アーネム橋にドイツ戦車が来たのでフロストたちは攻撃するが、破壊できずに通過された。アーカートは駆け付けた部下たちがドイツ兵の部隊を一掃してくれたため、ジープで英第一空挺団司令部へ赴いた。彼は部下から、弾薬が足りていないこと、外部と交信できないことを聞いた。補給品は投下されるが、その地点は敵の支配下地域だった。1つだけ外れた場所に落ちた補給品を兵士のジンジャーが回収に向かうが、敵の銃撃を受けて死亡した。
ウィーヴァーはスパンダーの案内でケイト・テル・ホルスト夫人の屋敷を訪ね、協力を要請した。野戦病院の場所が足りないことを聞いたケイトは、屋敷の提供を快く引き受けた。アーネム橋にはビットリッヒの使者が白旗を掲げて現れ、フロストに降伏を持ち掛けた。しかしフロストは拒否し、徹底抗戦を通告した。ギャヴィンはクック少佐の元へ行き、ナイメーヘン橋を突破するため渡河作戦を指揮するよう指示した。クックは厳しい状況を知りながらも、部隊を率いて作戦を遂行する…。

監督はリチャード・アッテンボロー、原作はコーネリアス・ライアン、脚本はウィリアム・ゴールドマン、製作はジョセフ・E・レヴィン&リチャード・P・レヴィン、共同製作はジョン・パーマー、製作協力はマイケル・スタンレー=エヴァンス、撮影はジェフリー・アンスワース、美術はテレンス・マーシュ、編集はアントニー・ギブス、衣装はアンソニー・メンデルソン、音楽はジョン・アディソン。
出演はダーク・ボガード、ジェームズ・カーン、マイケル・ケイン、ショーン・コネリー、エドワード・フォックス、エリオット・グールド、ジーン・ハックマン、アンソニー・ホプキンス、ハーディー・クリューガー、ローレンス・オリヴィエ、ライアン・オニール、ロバート・レッドフォード、マクシミリアン・シェル、リヴ・ウルマン、デンホルム・エリオット、ピーター・フェイバー、クリストファー・グッド、フランク・グライムズ、ジェレミー・ケンプ、ウォルフガング・プライス、ニコラス・キャンベル、ドナルド・ダグラス、コリン・ファレル、ウォルター・コフート、スティーヴン・ムーア、ジェラルド・シム、ジョン・ストライド他。


第二次世界大戦で連合軍が展開したマーケット・ガーデン作戦を題材とするオールスター・キャストの大作映画。
『史上最大の作戦』に続いて、ジャーナリストのコーネリアス・ライアンによる著書を原作としている。
監督は『素晴らしき戦争』『戦争と冒険』のリチャード・アッテンボロー。
脚本は『明日に向って撃て!』『大統領の陰謀』のウィリアム・ゴールドマン。
ブラウニングをダーク・ボガード、ドーハンをジェームズ・カーン、ヴァンドルールをマイケル・ケイン、アーカートをショーン・コネリー、ホロックスをエドワード・フォックス、スタウトをエリオット・グールド、ソサボフスキーをジーン・ハックマン、フロストをアンソニー・ホプキンス、ルートヴィヒをハーディー・クリューガー、スパンダーをローレンス・オリヴィエ、ギャヴィンをライアン・オニール、クックをロバート・レッドフォード、ビットリッヒをマクシミリアン・シェル、ケイトをリヴ・ウルマンが演じている。

『史上最大の作戦』と同じく、オールスター・キャストで製作されている。
最初にアルファベット順で表記されるのは、『ベニスに死す』『愛の嵐』のダーク・ボガード、『ゴッドファーザー』『ファニー・レディ』のジェームズ・カーン。『アルフィー』『探偵スルース』のマイケル・ケイン、無名時代に『史上最大の作戦』にも出演していた初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリー。
『恋』『ジャッカルの日』のエドワード・フォックス、『M★A★S★H マッシュ』『ロング・グッドバイ』のエリオット・グールド。さらに『フレンチ・コネクション』『ポセイドン・アドベンチャー』のジーン・ハックマン、『冬のライオン』『人形の家』のアンソニー・ホプキンス。『シベールの日曜日』『バリー・リンドン』のハーディー・クリューガー、『ハムレット』『マラソンマン』のローレンス・オリヴィエ。
『ある愛の詩』『ペーパー・ムーン』のライアン・オニール、『明日に向って撃て!』『スティング』のロバート・レッドフォード。『ニュールンベルグ裁判』『オデッサ・ファイル』のマクシミリアン・シェル、『移民者たち』『失われた地平線』のリヴ・ウルマンといった顔触れだ。

マーケット・ガーデン作戦は連合軍にとって「史上最大規模の空挺作戦」であり、結果としては「史上最大規模の大失敗」に終わった作戦である。
そもそも提案された時点で無謀すぎることは誰の目にも明らかだったにも関わらず、ゴーサインを出してしまった。
その上、作戦が進められる中でも幾つもの愚かなミスが重なり、空挺部隊は多くの犠牲を出した。地上部隊も撤退に追い込まれ、無残な結果となった。
連合軍が第二次世界大戦に勝利したから良かったものの、敗戦していたら「これがきっかけ」と言われていただろう。

マーケット・ガーデン作戦について何の予備知識も持っていなくても、前半から何度も「この作戦は失敗するんじゃないかな」と匂わせるような台詞や情報が次々に示される。
ちゃんと「この作戦は失敗しますよ」というフラグを立てて、丁寧にルートを作っているのだ。
親切っちゃあ親切だが、作戦の失敗を予想させておいて「やっぱり失敗しました」って、そんなミリタリー・アクション映画を見せられて、何をどう楽しめばいいのかと。

ただ飛行機が飛んでいるだけとか、ただ飛行機の中にいる兵士たちを写しているだけとか、「それはホントに必要なのか」と言いたくなるようなトコでも、贅沢に時間を使っている。
上映時間は175分もあるので、そんなに急ぐ必要は無い。ただ、刈り込める箇所は、もう少し刈り込んでテンポ良く進めた方がいいんじゃないか。
あと、無駄にしか思えない場面転換も少なくないんだよね。ただ出発する準備をしているだけとか、物語の進行に全く影響を与えないようなトコもあるのよ。
そういうのをカットすれば、スッキリと整理されることは確実で。逆に、それを入れている意味やメリットを考えた時、特に何も思い付かない。

複数の部隊が異なる場所で別々の行動を取っているのだが、その交通整理が上手く出来ていない。そのため、何がどうなっているのかが、ものすごく分かりにくい。
予備知識ゼロで本作品を観賞した場合、全ての部隊の位置や状況をキッチリと把握するのは、たぶん不可能なんじゃないか。
場所によってはテロップが出ることもあるのだが、ほとんど助けにならない。
例えば「アーネム」とか「ナイメーヘン」と言われても、オランダの地理に詳しくないと、どこにあるのか、どのぐらいの距離なのかは分からないわけで。

連合軍は無謀な作戦を決行しただけでなく、愚かなミスを繰り返す。つまり独軍に作戦や戦力で負けたというよりも、ほぼ自滅に近いのだ。
それでも、まだ独軍の側に「敵の作戦を察知し、見事な作戦で迎え撃った」という動きがあれば、「連合軍の自滅」という印象は幾らか薄まったかもしれない。
しかし、独軍もモーデルが「敵の狙いは自分だ」と誤解して逃げ出したり、「敵の狙いは橋ではない」と軽く見て爆破許可を出さなかったりと、ボンクラぶりを露呈するのだ。
つまり、少なくとも本作品で描かれるマーケット・ガーデン作戦での戦いは、「バカ同士が互いにミスを重ねたレベルの低い戦闘」でしかないのだ。。

そもそも大失敗に終わった作戦を映画化している時点で、企画としてどうかしているとしか言いようがない。独軍サイドから「窮地に追い込まれていたが逆転勝利した」という風に描いているならともかく、惨敗した連合軍の話として作っているわけで。
それを175分もの長尺で描くんだぜ。ただ愚かしさゆえに惨敗するだけの作戦遂行を延々と見せられても、退屈なだけだよ。
それを「反戦のメッセージを訴えてくる映画」として好意的に捉える面々もいるようだけど、そんなことをプロデューサーは絶対に考えちゃいなかったと思うぞ。この映画に反戦のメッセージを感じ取れる人は、よっぽどのお人好しぐらいだろう。
それにオールスター・キャストの大作映画として撮っておいて、「戦争は多くの犠牲を出すだけだからやめましょう」と訴えられても、「うるせえよ」としか思えないでしょ。

(観賞日:2019年11月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会