『チャンス!』:1996、アメリカ

黒人女性ローレル・エアーズは、ウォール街の大手投資信託会社マンチェスター社に勤務している。ある時、ローレルはクライアントとの契約をまとめようとするが、コンビを組む後輩の白人男性フランクに上手く使われ、2人の手柄にされてしまう。
ローレルはフランクの秘書サリーから、「この世界は未だに女性差別が根強く残っている」と告げられる。そして彼女はサリーに連れられ、フランクがマンチェスター社長と2人で会っている様子を目撃する。ローレルは、今まで一度も社長と2人で会ったことは無かった。後日、ローレルはフランクが自分を差し置いて昇進したことを知る。
ローレルはフランクに怒りをぶつけ、会社を辞めて1人で投資信託会社を立ち上げた。しかし投資家達は相手が女性1人だと知ると、総じて冷たい態度を取った。そこへサリーが現れ、友人を通じて大物投資家ファロンと会う約束を取り付けてくれた。
ローレルはファロンに投資プランを見せようとするが、女性ということで相手にしてもらえない。そこでローレルはロバート・S・カティーという男性パートナーがいるとウソをつき、ファロンの信用を勝ち取った。ローレルは、サリーを秘書として雇うことにした。
ローレルはソフトウェア会社シントネックスの社長イソップがヒューレット・パッカード社への会社売却を予定していると知り、お喋りなファロンの秘書カミールに情報を流した。イソップから会社が破産寸前だと聞かされたローレルは、再建に乗り出すことにした。ローレルはイソップをファロンのパーティーに連れて行き、会社に投資させる。
カティーの名前はウォール街でも広まり、誰もが正体を知りたがった。ローレルはカティーとの面会を望む人が来る度に、何かと理由を付けて不在を装った。そんな中、経済コラムニストのシンディーが、カティーのゴシップ記事を執筆する。それに便乗したフランクが証券取引委員会のトンプキンスに連絡し、カティーにインサイダー取引の疑惑が掛けられる…。

監督はドナルド・ペトリ、脚本はニック・ティール、製作はフレデリック・ゴルチャン&パトリック・マーキー&アダム・リープツィグ、共同製作はレネ・ゲインヴィル&マイケル・A・ヘルファント、製作総指揮はテッド・フィールド&スコット・クルーフ&ロバート・W・コート&デヴィッド・マッデン、撮影はアレックス・ネポンニアシー、編集はボニー・コーラー、美術はアンドリュー・ジャックネス、衣装はエイプリル・フェリー、特殊視覚メイクアップ・クリエーターはグレッグ・キャノン、音楽はクリストファー・ティン。
主演はウーピー・ゴールドバーグ、共演はダイアン・ウィースト、イーライ・ウォラック、ティム・デイリー、ベベ・ニューワース、レイニー・カザン、オースティン・ペンドルトン、ジョージ・マーティン、ケニー・カー、リー・ウィルコフ、ヘレン・ハンフト、ジョージ・モーフォージェン、ゼリコ・イヴァネク、マイルス・チャピン、ジーン・デベア、ルイス・テュレン、ウィリアム・ヒル、コリーン・キャンプ・ウィルソン他。


1979年のフランス映画『L' Associe』のハリウッド版リメイク。
ローレルをウーピー・ゴールドバーグ、サリーをダイアン・ウィースト、ファロンをイーライ・ウォラック、フランクをティム・デイリー、カミールをベベ・ニューワース、シンディーをレイニー・カザン、イソップをオースティン・ペンドルトン、マンチェスターをジョージ・マーティンが演じている。

最初に登場した時のフランクの印象が、それほど悪いとは言い切れない。マンチェスターが言う通り、ローレルと名コンビに見える。登場した段階から、フランクがハッキリとダーティーな人間だということを、もっと観客にアピールした方がいいだろう。
登場から少し経ってローレルを騙すが、それも「これから騙します」ということを知らしめた方がいい。序盤で、ちょっとしたサプライズを用意しておく必要は無い。それよりも、分かりやすい善悪の色分けを、さっさと見せてしまった方がいいはずだ。

ローレルが会社を辞めるシーンに入る前に、もっとフランクがゴーマンでイヤな奴だということ、虎視眈々とローレルを出し抜いての昇進を狙っていること、実はローレルを煙たがっていること、サリーを扱き使っていること、いつもフランクの適当な仕事をローレルがフォローしていることを、もっとアピールしておくべきだろう。
それと、フランクがローレルの契約を完全に横取りする、というわけでもないのが中途半端だ。フランクは会議でも、「ローレルと契約をまとめた」と言っている。ローレルは「私の契約だ」と主張するが、そもそもクライアントとは2人で会っている。そこはハッキリと、「ローレルの契約をフランクが自分の手柄にする」という形にすべきだろう。

序盤のフランクを見ている限り、確かに性格的に問題が無いとは言えないが、卑怯で最低の男ということより、世渡りの上手な人間という印象を受けてしまう。たぶん、フランクを悪者にするよりも、「女性を差別する男性社会が悪い」というスタンスなのだろう。実際、フランクが何もしなくても、ローレルの昇進は無理だったわけだし。
しかし、そういう方針で話を進めて行くのであれば、序盤でフランクだけを悪者のポジションに配置して話を進めるのは違うだろう。企業のトップであるマンチェスター社長を、もっと女性を差別している組織のボスとして目立たせておく必要があったはずだ。そしてマンチェスターの考え方を、ローレルと観客に伝える必要があったはずだ。

ローレルにしろ、サリーにしろ(特にサリー)、会社を辞める前に、もっと女性差別にさらされる様子を描いておくべきだろう。そういう描写が薄いと、会社を辞めて自分達だけでやっていこうとする流れへの動機付けの部分が弱くなってしまう。
それなりに軽やかに描こうとはしているのだが、どこか「女性差別が云々」というメッセージ性の強さが鼻に付く。大体、ローレルは女性差別を非難しておきながら、都合のいい時だけ泣き落としで「涙」という女の武器を使うのだから、それはイカンだろう。

内容として、「女性が男性社会に立ち向かう」という話になのは構わない。しかし、あまり声高に「女性差別はいけない」と訴えるような形は、避けた方が良かったんじゃないだろうか。その部分が、コメディーとしての軽快さへの妨げになっているように感じる。
後半、ローレルは特殊メイクでカティーに変装してホテルに行くのだが、そこでフランクやシンディ達から逃げ回るという展開になるのは、ちょっと違和感がある。せっかく変装して外出したのなら、むしろ人々と会うという展開の方が良かったんじゃないだろうか。もちろん、正体がバレないように振る舞う、という笑いの取り方は必要だが。

終盤に入り、「ローレルとサリーが邪魔になった架空の男カティーを始末しようとする」という展開に入っていくが、ちょっと話として苦しいなあという気がする。ビジネスの話からズレるのだ。それより、その前の下り、つまりインサイダー取引の問題や、カティーに変装したローレルが人々と会う辺りで、話をまとめに行った方が良かったと思う。
最後に大団円でハッピーエンド、としたいのは分かるが、あの展開で、つまり自分達を皮肉る演説をされた白人男性達がローレルに拍手を送るってのは、いくらコメディーとはいえ、無理を感じる。それと、ローレルが女性差別に関してメッセージ性の強い演説をぶって終わるというのは、ハッキリ言って、「うっとおしいなあ」と思ってしまった。

 

*ポンコツ映画愛護協会