『ズーランダー』:2001、アメリカ&ドイツ&オーストラリア

マレーシアで誕生した新しい首相は国民に対し、子供たちが低賃金で過酷な労働を強いられている状況を改革することを約束する。これを 受けて、ファッション産業の国際組織が緊急会議を開いた。彼らとしては、労働者の最低賃金が引き上げられ、それによって生産コストが 上がることは阻止せねばならない。そこで組織はアメリカの大物ファッションデザイナーであるムガトゥーを呼び寄せ、マレーシア首相の 暗殺を命じた。彼らはムガトゥーに対し、首相が訪米する2週間後までに、中身が空っぽで軽薄なモデルを暗殺者として選ぶよう指示した 。暗殺が終われば、そのモデルは始末する予定だ。
スーパーモデルのデレク・ズーランダーは、タイム誌の記者であるマチルダ・ジェフリーズの取材を受けていた。ズーランダーは幾つかの キメ顔を持っていたが、今はマグナムと名付けた新しいキメ顔を完成させようとしていた。ズーランダーは最優秀男性モデル賞を3年連続 で受賞しており、今年も授賞式に参加した。客席では、ムガトゥーとズーランダーのエージェントであるモーリーが、暗殺の件について 相談する。ズーランダーは自信満々だったが、その年の最優秀男性モデル賞は新人のハンセル・マクドナルドが受賞した。
翌日、落ち込んでいたズーランダーはモデル仲間のルーファス、ブリント、ミークスに誘われ、車で遊びに出掛けた。ルーファスたちが ガソリンスタンドではしゃぐ中、ズーランダーはゴミ箱に捨てられたタイム誌を見つける。それを拾い上げたズーランダーは、自分がバカ なモデルとして取り上げられていることを知った。直後、ルーファスたちはガソリンにライターの火が引火して爆死してしまった。
ズーランダーはルーファスたちの葬儀に参列し、「もっと意義のあることをやりたいのでモデルを引退する」と発表した。ムガトゥーが マレーシアで労働者から過剰に搾取しているという疑惑を調べているマチルダは、ズーランダーからも情報を聞き出そうとする。しかし ズーランダーはムガトゥーと仕事をしたことが無く、タイム誌の内容にショックを受けていることもあって、何も喋らなかった。
モーリーはズーランダーを説得しようとして、「ムガトゥーから新作発表に使いたいという話が来ている」と明かす。しかしズーランダー は「字の読めない子供のための学校を作りたい」と言い、モデル事務所を去った。彼は故郷であるニュージャージー南部に戻り、炭坑夫と して働く父のラリー、兄のルーク、弟のスクラッピーと再会した。ズーランダーは「俺も炭坑で働く」と言うが、父と兄弟は冷たい態度を 取った。ラリーは「お前は死んだも同じだ」とズーランダーを突き放した。
ズーランダーはモーリーからの電話で「ムガトゥーがお前を使いたいと言っている」と告げられ、ニューヨークへ戻った。ムガトゥーは彼 のために、字の読めない子供を教育する施設の模型を用意していた。ムガトゥーの秘書であるカティンカは、ズーランダーをトレーニング するために12番埠頭の倉庫へ案内した。一方、マチルダは謎の男からの電話で、「追及の手を緩めるな。12番埠頭へ行けば面白い物が 見られる」と言われる。マチルダが倉庫へ行くと、ズーランダーがいた。ズーランダーは、カムバックすることを彼女に言う。カティンカ が手下と共に現れ、マチルダを倉庫から追い出した。
ムガトゥーはズーランダーを洗脳し、ある合図でマレーシア首相を暗殺する暗示を掛けた。ズーランダーは何も気付かず、1週間後に アパートへ戻っていた。一方、マチルダはムガトゥーのショーに出た若い男性モデルが不可解な事故で次々に死んでいることを知った。 その現場には、必ずカティンカの姿があった。マチルダは、ズーランダーが危険だと確信する。ズーランダーはクラブでハンセルと遭遇し 、決闘することになった。デヴィッド・ボウイが審判を引き受け、ズーランダーとハンセルは様々な競技で対決する。しかしズーランダー は反則を犯し、ハンセルに敗れた。
決闘の場にカティンカと手下たちが来たのを目にしたマチルダは、ズーランダーが殺されると思い込み、彼を車に乗せて逃走する。そこへ 謎の男から電話が入り、「答えが欲しければセント・アドニス墓地に来い」と告げられる。マチルダがスーランダーを連れて墓地へ行くと 、男が待っていた。その男は2人に、「ファッション業界は過去200年に渡って大物政治家の暗殺に影で関わって来た。男性モデルを使い 、リンカーンやケネディーを暗殺した」と語った。その男の手を見たズーランダーは、かつて世界最高のハンドモデルだったJ.P. プルーイットだと気付いた。
プルーイットはズーランダーとマチルダに、「ムガトゥーは国際的組織の下っ端に過ぎない。ズーランダーは何かを合図にしてマレーシア 首相を殺すように洗脳されている」と述べた。そこへカティンカと手下たちが現れ、発砲してきた。撃たれたプルーイットは、「モーリー のコンピュータを調べろ。ファイルが見つかるはずだ」と教える。逃走したズーランダーとマチルダは身を隠すため、ハンセルを頼ること にした。ハンセルはズーに憧れていることを打ち明け、ズーはハンセルに謝罪し、2人はすっかり仲良くなった。ズーランダーとハンセル は清掃員に化け、モーリーのオフィスに潜入する。しかしショーの時間が近付いたため、ズーランダーは会場へ向かう…。

監督はベン・スティラー、原案はドレイク・セイザー&ベン・スティラー、脚本はドレイク・セイザー&ベン・スティラー&ジョン・ ハンバーグ、製作はスコット・ルーディン&ベン・スティラー&スチュアート・コーンフェルド、共同製作はセリア・コスタス、製作協力 はモニカ・レヴィンソン、製作総指揮はジョエル・ガレン&アダム・シュローダー&ローレン・ザラズニック、撮影はバリー・ ピーターソン、編集はグレッグ・ヘイデン、美術はロビン・スタンデファー、衣装はデヴィッド・C・ロビンソン、音楽はデヴィッド・ アーノルド、音楽監修はランドール・ポスター&ジョージ・ドレイコリアス。
出演はベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、ウィル・フェレル、クリスティーン・テイラー、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ジョン・ ヴォイト、ジェリー・スティラー、アシオ・ハイスミス、アレクサンダー・マニング、アレクサンダー・スカルスガルド、 デヴィッド・ドゥカヴニー、ジュダ・フリードランダー、ネイサン・リー・グレアム、ドナルド・トランプ、クリスチャン・スレイター、 トム・フォード、キューバ・グッディングJr.、スティーヴ・クメトゥコ、トミー・ヒルフィガー、ナタリー・ポートマン、ファビオ、 レニー・クラヴィッツ、グウェン・ステファニー、ハイジ・クルム他。


『リアリティ・バイツ』『ケーブル・ガイ』のベン・スティラーがメガホンを執った3本目の長編映画。
ズーランダーをベン・スティラー、ハンセルをオーウェン・ウィルソン、ムガトゥーをウィル・フェレル、マチルダをクリスティーン・テイラー、カティンカをミラ・ ジョヴォヴィッチ、ラリーをジョン・ヴォイト、モーリーをベン・スティラーの父ジェリー、ルーファスをアシオ・ハイスミス、ブリント をアレクサンダー・マニング、ミークスをアレクサンダー・スカルスガルド、プルーイットをデヴィッド・ドゥカヴニー、スクラッピーを ジュダ・フリードランダーが演じている。

この映画のセールスポイントの1つは(一番の売りと言ってもいいかもしれない)、有名人が本人役でカメオ出演していることだ。
それも1人や2人ではなく、かなり大勢の有名人がチョイ役で顔を見せている。
日本では無名の人もいるので、主な有名人だけを列挙して行こう。
まず俳優陣から行くと、名前が表記されるのはクリスチャン・スレイター、キューバ・グッディングJr.、ナタリー・ポートマン、 ルーカス・ハース。アンクレジットでの登場がスティーヴン・ドーフ、ウィノナ・ライダー、ビリー・ゼイン。
他に、ミュージシャンのレニー・クラヴィッツとデヴィッド・ボウイ。ファッションデザイナーのトム・フォードとトミー・ヒルフィガー 。
スーパーモデルのハイディ・クルム、タイソン・ベックフォード、クローディア・シファー、ヴェロニカ・ウェブ、カルマン・キャス、 フランキー・レイダー。
コメディアンのギャリー・シャンドリング、実業家のドナルド・トランプ、TV番組リポーターのスティーヴ・クメトゥコ、ファッション モデルのパリス・ヒルトン、モデルのファビオ。

さらに、歌手のグウェン・ステファニー、DJで音楽プロデューサーのマーク・ロンソン、ラップコアバンド「リンプ・ビズキット」の フレッド・ダースト、イン・シンクのランス・バス、ラッパーのリル・キム。
本人役ではないが、俳優のジャスティン・セローが倉庫のDJ役、コメディアンのアンディー・ディックが倉庫にいるマッサージ師役、 女優のジェニファー・クーリッジがアメリカ人デザイナー役、俳優のジェームズ・マースデンがリンカーン大統領を暗殺したジョン・ ウィルクス・ブース役、コメディアンのパットン・オズワルトが写真家の役でチラッとだけ登場する。
上述した俳優を除くアンクレジット組では、元スパイス・ガールズのヴィクトリア・ベッカムとエマ・バントン、コメディアンのサンドラ ・バーンハード、ファッションデザイナーのカール・ラガーフェルド、ロックバンド「ブッシュ」のギャヴィン・ロスデイル、当時は ドナルド・トランプの恋人(後に妻となる)だったモデルのメラニア・クナウスが本人役で登場。
また、ヴィンス・ヴォーンがルーク役で出演している。

そんな風に、とにかくカメオ出演が豪華な映画である。
で、以上で批評を終わらせたいところだが、そういうわけにもいかないか。
ただ、ぶっちゃけ、カメオ出演以外の中身に関しては、あんまり言うことが無い。
「男性モデルはクルクルパー」というネタを中心に据えたコメディーだが、ともかく、ゆってぃじゃないけど、ちっちゃいことは気に しないで観賞すべき映画だ。何も考えず、頭をカラッポにして見るべき映画だ。
見終わった時に「ああ面白かった」と思って、少し経ってから「何がどう面白かったのかは良く分からない」ということでも構わない。
それでもOKな映画だから。

お笑い芸人のネタを見ていて、最初は「くだらない」と感じ、まるで笑えなかったとしよう。
でも、ずっとネタを見続けている内に、その「くだらないネタ」のしつこさに、だんだん面白くなってくる、ということは無いだろうか。
例を挙げるなら、ハリウッドザコシショウが「ハンマーカンマー」と言い続ける古畑任三郎漫談とか(そんなマニアックなネタ、分かる人 の方が少ないだろ)。
この映画も似たようなもので、くだらないことを徹底的にやり続けることで、その力技に観客が根負け状態で「くだらねえ」と笑い出すと いうような作品だ。
それで笑えるかどうかは、個人差が大きいだろうけどね。
「お前はどうだったのか」と問われたら、まあ、その、アレだよ。
いや、でも、ハリウッドザコシショウのネタは好きだよ。

ある一つの職業をネタにしておバカなことを徹底的にやりまくるってのも、その笑いのテイストも、どことなくマイク・マイヤーズの 『オースティン・パワーズ』シリーズを連想させるものがある。
それと、Frankie Goes To Hollywoodの『Relax』を始め、Wham!の『Wake Me Up Before You Go-Go』、Herbie Hancockの『Rockit』、 Michael Jacksonの『Beat It』といった1980年代の音楽を使っている辺りで、アダム・サンドラーの『ウェディング・シンガー』を思い 浮かべた。
まあベン・スティラーとアダム・サンドラーが同年代なので(それぞれ1965年と1966年の生まれ)、単純に「青春時代に好きだった音楽に 対する思い入れが強い」ってことなんだろうけど。

(観賞日:2013年2月22日)


第24回スティンカーズ最悪映画賞(2001年)

ノミネート:【最悪のヘアスタイル】部門[オーウェン・ウィルソン]

 

*ポンコツ映画愛護協会