『ザスーラ』:2005、アメリカ

土曜日の昼下がり。6歳のダニーと10歳の兄ウォルターは、パパとキャッチボールをしていた。しかし2人は仲が悪く、ウォルターは ダニーの邪魔をした。パパは離婚しており、ダニーとウォルターは両親の家を行ったり来たりしている。今日はパパの日ということだ。 パパは子供たちと遊んでやりたいのだが、仕事もあるため、いつまでも相手をするわけにはいかない。ダニーとウォルターは、仕事を始めた パパに遊びをせがみ、ケンカを始めた。ダニーは物を投げ、誤ってパパのデザイン画を濡らしてしまった。
仕事で外出することになったパパは、2階の自室で眠っている兄弟の姉リサを起こした。リサに弟2人の世話をするよう頼み、パパは 出掛けていった。だが、リサは面倒を見る気など全く無い。再びベッドに潜り込み、ヘッドホンで音楽を流して眠り込んだ。一方、下の リビングでは、ウォルターがテレビのチャンネルを変えてダニーに嫌がらせをする。ダニーは一緒に遊ぼうと誘うが、ウォルターは無視 した。怒ったダニーがボールをぶつけたため、ウォルターは弟を追い掛けて地下室に閉じ込めた。
地下室から抜け出そうとしたダニーは、「ザスーラ」と書かれたボード・ゲームの箱を発見した。ダニーはリビングに戻り、箱を開いた。 それは、ボタンを押して数字を出し、宇宙船の駒を動かすという、すごろくゲームだった。ダニーはウォルターをゲームに誘うが拒否 されたため、一人でやってみることにした。ゲームのルールも読まず、彼はボタンを押した。
数字が表示されると、宇宙船の駒は自動的に動き始めた。駒が停止し、チンという音と共に一枚のカードが飛び出した。その裏には、 「流星群。回避行動を取れ」と書かれていた。すると、天井を突き破ってリビングに隕石が降ってきた。ダニーとウォルターは、慌てて 暖炉の中に身を隠した。ウォルターが見ていたテレビも、隕石の落下で崩壊した。隕石の襲来が静まり、2人は玄関の扉を開けた。すると 家の外は、宇宙空間になっていた。
ダニーとウォルターは、リサの部屋へ赴いた。勝手に入ると怒られるが、緊急事態なので仕方が無い。2人はリサを起こし、不機嫌な彼女 に事情を説明する。2人は分かってもらうため、部屋にザスーラを持って来た。リサの眼前でゲームを進め、実際に体験してもらおうと 考えたのだ。だが、ウォルターが引いたカードには「船長に昇進する」と記されており、何の変化も生じなかった。
リサは2人を相手にせず、さっさとバスルームに入ってしまった。慌ててゲームを進めようとするが、ボタンが動かない。ダニーが押すと ボタンが作動した。2人でやっているので、順番でなければ動かないのだ。ダニーが引いたカードには、「乗組員が5回の間、冷凍睡眠室 に入る」とあった。するとバスルームから冷気が放出され、その中でリサは凍りついていた。
リビングに戻ったウォルターは、ザスーラの箱に書いてあるルールを読み、ゴールすれば駒はリセットされると知った。ダニーはゲームの 続行を嫌がるが、元の世界に戻るため、ウォルターはボタンを押した。彼が引いたのは、「君のロボットには欠陥がある」と記された カードだった。ブリキのロボットがリビングに出現し、それは大きくなってウォルターに襲い掛かった。
ウォルターは必死に逃げながら、ダニーにゲームを進めるよう指示した。怖がって動かなかったダニーだが、何とかボタンを押してカード を引いた。すると、ダニーとウォルターは同じ方向に強い力で引っ張られた。カードを見ると、「ソリース3号星に大接近。重力圏に突入」 とあった。リサの体は凍ったまま1階に転落し、ロボットは地下室に突撃して故障した。自分で修理を始めたため、ウォルターは慌てて 地下室のドアを閉めた。ダニーとウォルターは、リサの体を元の場所に戻した。
ウォルターはゲームに戻り、「艦隊の司令官に昇進」と書かれたカードを引いた。だが、ダニーは「もうやらない」と言い、チーズ マカロニを作るためにキッチンへ行って湯を沸かした。ウォルターがゲーム続行を要求すると、ダニーは「もう意地悪しない、無視しない」 という取引を要求した。ウォルターが応じたため、ダニーはゲームに戻った。
ダニーが引いたカードには、「ゾーガンの訪問がある」と書かれていた。すると家の横に宇宙船が接近し、いきなり発砲してきた。必死に 逃げ回りながら、ウォルターは次のカードを引く。「プログラムしなおせ」と書かれていたが、意味が分からず、何も起きない。ダニーに カードを引かせると、今度は「彷徨う宇宙飛行士を救え」とあった。すると、ドアから一人の宇宙飛行士が入って来た。
宇宙飛行士は兄弟に、「電化製品を切れ、ガスの火を消せ、ボイラーの口火も消せ」と命じた。彼によると、ゾーガン星人はガスを付けて いたから寄ってきたのだという。宇宙飛行士はソファーを燃やして宇宙空間に放り出し、それを囮にしてゾーガン星人を追い払った。 宇宙飛行士が食料を大量に摂取するため、ウォルターは退散してもらいたいと考えた。しかし彼によると、それを指示できるのはカードを 引いた者だけだという。ダニーは何か役に立ってくれるかもしれないと考え、彼を留まらせることにした。
ゲームに戻ろうとしたウォルターだが、先程と駒の位置が違っていることに気付いた。ダニーがズルをしたと確信し、ウォルターは激しく 非難する。宇宙飛行士が2人の言い争いを制止し、何とかゲームを続けさせる。ウォルターは駒の位置を戻し、カードを引いた。すると、 「ズルが発覚。強制退場処分」とあった。ウォルターが宇宙空間へ飛ばされそうになり、何とか宇宙飛行士が救出した。兄弟は険悪な 雰囲気の中、ゲームを続行する。同じ頃、リサが冷凍状態から復帰し、何も知らずにボイラーの火を付けてしまう…。

監督はジョン・ファヴロー、原作はクリス・ヴァン・オールズバーグ、脚本はデヴィッド・コープ&ジョン・カンプス、製作はマイケル・ デ・ルカ&スコット・クルーフ&ウィリアム・ティートラー、製作総指揮はルイス・デスポジート&テッド・フィールド、撮影はギレルモ ・ナヴァロ、編集はダン・レーベンタール、美術はJ・マイケル・リーヴァ、衣装はローラ・ジーン・シャノン、 視覚効果監修はジョー・バウアー、ミニチュア監修はマイケル・ジョイス、音楽はジョン・デブニー。
出演はジョナ・ボボ、ジョシュ・ハッチャーソン、ダックス・シェパード、クリステン・スチュワート、ティム・ロビンス、ジョン・ アレクサンダー、デレク・メアーズ、ダグラス・テイト、ジョー・ブカロ、ジェフ・ウルフ。
声の出演はフランク・オズ。


『ジュマンジ』の原作者クリス・ヴァン・オールズバーグの同名絵本を基にした作品。
原作では、『ザスーラ』は『ジュマンジ』の正式な続編となっている。
しかし映画版に関しては、特に『ジュマンジ』との関連性は用意されておらず、続編としての位置付けを強く主張している様子は無い。
ダニーをジョナ・ボボ、ウォルターをジョシュ・ハッチャーソン、宇宙飛行士をダックス・シェパード、リサをクリステン・スチュワート 、パパをティム・ロビンスが演じている。
ロボットの声はフランク・オズ。

元々、『ジュマンジ』の公開直後からコロムビア・ピクチャーズは続編を企画していた。
なかなか企画が進行しない中で、オールズバーグが『ザスーラ』を発表したため、今度はそれを続編として映画化する企画が持ち 上がった。
で、結局は続編と銘打つのではなく、姉妹編のような扱いとして映画化することになったという次第だ。
まあ、でも続編と考えても良さそうだけど。

なぜザスーラというボード・ゲームで遊ぶと宇宙空間に飛ばされてしまうのか、なぜそんなゲームが作られたのか、なぜダニーたちの家に あったのか、などといった疑問に対する答えは用意されていない。
何の説明も無く、どんどん話は進められる。
まず『ジュマンジ』ありきだから成立している部分は否めないものの、それを別にしても、その辺りの説明を放棄しているのは一向に 構わない。
説明しても、邪魔なだけになった可能性もあるし、そこのナンセンスは受け入れられる類のものだ。

「兄弟の絆を大切に」みたいなメッセージ性が盛り込まれているが、ヌルい道徳観を持ち込むのは、いかにも清く正しく健全であろうと するハリウッドの子供向け映画らしくて、ウンザリさせられるところもある。
ただ、それを受け入れるにしても、そんなことを謳うのなら、まず冒頭でウォルターが弟に嫌がらせをした時、パパが注意せず放置して いるのを何とかしろよ、と思ってしまうぞ。
ただ、兄弟の絆が云々ってのは、「子供向け映画であるならば、行儀の良いメッセージが必要でしょう」という、ハリウッドにはびこる 悪しき暗黙のルールに従っているに過ぎない(個人的には、そんなのはクソ食らえだと思うが)。
本音の部分で本作品が見せたいのは、様々なハプニングが兄弟を襲うというところでの、特殊視覚効果による映像なんだろう。

ゲームが始まってしばらくすると、「ウォルターがロボットに襲われながらも指示しているんだから、ダニーは早くゲームを進めろよ」 「カードを引いたなら、早くウォルターは指示を読めよ」などと、イライラさせられる兄弟の行動に遭遇する。
そのトドメが、ダニーがゲームを中断して「お腹が空いたからチーズマカロニを作る」と言い出す場面。
地下室に閉じ込めたとは言え、ロボットが修理を終えたら攻撃して来る危険性もある。
そんな状況で、何をチンタラしているのかと。

ダニーはゲームに戻るのに、兄に取引を要求する始末。
なんて小生意気なガキなのかと、腹立たしく思える。
滑り出しは兄がイジメっ子という感じだったが、ゲームが始まるとダニーがウザいったらありゃしない。
兄は意地悪だが、弟にも非はあるぞ。
っていうかトータルで見た場合には、ダニーにもウォルターにも、あまり魅力を感じないけどさ。
あと、リサの存在価値って薄いよな。ゲームが終わって帰還した時も、ダニーとウォルターだけでドラマを進行し、リサの存在は無視 されているぐらいだし。

ゲームに入った途端に宇宙へ飛ばされて、その段階で現実との接地面が無くなってしまう。
で、なんでもありの世界になる。
現実の世界に非現実が入り込む、という面白さは無くなる。
ダニーとウォルターは「様々なトラブルに見舞われる」という、全て受け身の状態だ。
例えば「宇宙飛行士を救え」というカードが出ても、救うために自分たちから行動を起こすことは無い。向こうが勝手に家の中へと入って くるだけだ。
ここも改善の余地はあったはず。

ダニーたちの家は宇宙空間に漂うことになるが、自分たちで操縦することは出来ない。
すごろくの駒を進めた時に、同時に家も移動しているというわけではない。
駒が停止してカードを引いた時に、向こうから何かがやって来るだけだ。
家が宇宙船になり、それを操縦して様々な危機を乗り越えて地球まで帰還するという面白さを味わえるわけではない。
どうせナンセンスな話なんだから、テレビ画面がモニターになって、リモコンが家の操縦桿になるぐらいの設定にしても良かったのに。

宇宙だからスケール感があるはずなのに、実際には、ものすごく狭い。行動範囲は家の中に制限されている。
前述したように、向こうから何かがやって来るだけで、室内そのものが別の別の場所に変化するわけではない。家の外に出て、宇宙空間を 探索することも出来ない。
ずっと同じ場所から移動しないことによって、ドキドキ・ワクワク・ハラハラというものが薄くなっている。
だからといって、閉鎖空間の恐ろしさを出すわけでもない。
っていうか、そういうサスペンスじゃないし。

カードを引くと様々なことが起きるが、「船長に昇進する」のカードでは何も起きない。
それはそれで、何か変化を生じさせてくれよ。
そんなに大きなハプニングを起こせとは言わない。例えばウォルターの頭に船長の帽子が出現するとか、その程度でもいいよ。
とにかくカードを引いた以上は、どんな指示であっても何か変化をもたらすという約束事は守った方がいい。

(観賞日:2008年8月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会