『シークレットレンズ』:1982、アメリカ
パトリック・ヘイルは世界中を飛びまわる人気キャスター。ある時、彼はアワド国王を取材するため、北アフリカのハグレブに向かった。そこは放浪のベドウィンが住む砂漠だけの国だったが、石油が発掘されたことで状況は一変した。
取材の途中、グローブ紙のサリー・ブレイク記者が同行することになった。2人は現地人に囲まれて立ち往生していた兵器商人アンガーを助け出し、彼を目的地まで送り届けた。アンガーが持っていたスーツケースに、サリーは注目していた。
CIAのスパイだったサリーはスーツケースの中身が原子爆弾だということに気付くが、テロ集団“ガザの目”のメンバーに爆殺される。ヘイルはアワド国王に面会し、「運命の日である明日、神のお告げを実行する」という言葉を聞く。
アメリカ合衆国のロックウッド大統領は、“ガザの目”が原爆を入手しようとしていること、首領ラフィークとアワド国王が密かに繋がっていること、アワド国王が原爆を使おうとしていることを知る。大統領はCIAに対して、アワドの殺害を指示する。
アワド国王は遺言テープを残して死亡し、自殺として処理された。しかし、ヘイルは納得せずに調査を開始し、CIAによる謀殺だったことを知る。ロックウッド大統領はヘイルの番組で事実を公表するが、支持率が低下する。
ロックウッド大統領は、アワドが原爆を使おうとしていた事実を証明して支持率を上げようと考え、原爆の入手を指示する。一方、対立候補のマルロイも原爆を入手しようとしていた。だが、原爆はラフィークの手に渡ってしまう…。監督&脚本&製作はリチャード・ブルックス、原作はチャールズ・マッカリー、製作総指揮はアンドリュー・フォゲルソン、撮影はフレッド・コーネカンプ、編集&製作協力はジョージ・グレンヴィル、美術はエドワード・カーファグノ、衣装はレイ・サマーズ、音楽はアーティ・ケイン。
主演はショーン・コネリー、ジョージ・グリザード、ロバート・コンラッド、キャサリン・ロス、G・D・スプラドリン、ジョン・サクソン、ヘンリー・シルヴァ、レスリー・ニールセン、ロバート・ウェッバー、ロザリンド・キャッシュ、ハーディ・クルーガー、ディーン・ストックウェル、ロン・ムーディ、チャーリー・ミッチャン、トニー・マーチ、マリリン・マークス他。
チャールズ・マッカリーの小説を映画化したポリティカル・サスペンス。ヘイルをショーン・コネリー、ロックウッドをジョージ・グリザード、サリーをキャサリン・ロス、ラフィークをヘンリー・シルヴァ、マルロイをレスリー・ニールセンが演じている。
ヘイルは主人公というより、「たまたま物語の中で出演時間が長い」、という程度の扱いになっている。
彼を中心にしてストーリーが進行していくような形にはなっていない。
そもそも、この作品の中心軸がどこにあるのかが分からない。冒頭、短いシーンが立て続けに連続する。それはヘイルが世界中を飛び回り、戦争やスポーツなど様々な取材をしていることを表す映像だ。
意図は分かるのだが、どうも作品としての落ち着きの無さに繋がっている印象がある。
その目まぐるしく変わる映像の流れのままで、北アフリカのシーンに突入してしまうというのもいただけない。そこは一息ついて、それから北アフリカのシーンを始めた方が、「これから本格的に物語に入りますよ」ということが分かりやすい。とにかく展開が慌ただしい。
ちょっと余裕のあるダイジェストなのかと思うぐらい、物語はハイスピードで展開していく。
それは疾走感に満ちているというのではなく、やはり落ち着きが無いだけにしか思えない。大きな欠点は、説明が下手で何が何だか分かりにくいことだ。
人間関係も事件もかなり入り組んでいるのだが、説明が薄いために把握するのに苦労する。
肝心の骨子をボンヤリさせたままで枝葉を伸ばしていくので、だんだん話に入り込めなくなっていく。何を描きたいのかという焦点が絞り切れていない感じがする。
政治的な風刺も色々と入っているのだが、ゴチャゴチャしたストーリーの中でほとんど死んでいる。
気の抜けたようなバカバカしいエンディングを見ると、シニカルなコメディーとしての色を全面に打ち出した方が良かったようにも思えるのだが。