『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』:2011、フランス&アメリカ&イギリス

17世紀初頭、フランス王国ではアンリ4世の暗殺に伴い、まだ若いルイ13世が王位を継承した。平和だったフランスは四方を国に囲まれ、 戦争状態となった。国内でもリシュリュー枢機卿が権力掌握のために暗躍していた。そんな中、三銃士のアトス、ポルトス、アラミス、 アトスの恋人ミレディーはヴェネチアへ赴き、3つの鍵を入手してダヴィンチの蔵に潜入した。彼らの目的は、ダヴィンチの残した設計図 を見つけることだった。
アトスたちは罠の仕掛けられた通路に辿り着き、ダヴィンチの設計図を入手した。奪還しようとするカリオストロ伯爵と部下たちが攻撃 してくるが、4人は無事に脱出した。4人は祝杯を挙げるが、ミレディーが本性を現した。彼女はイギリス宰相であるバッキンガム公爵の スパイであり、三銃士を裏切って杯に眠り薬を混ぜていた。三銃士は意識を失い、ミレディーはバッキンガムと共に逃亡した。
1年後、銃士に憧れを抱く田舎の青年ダルタニアンは、元従士の父と母に見送られてパリへと出発した。3日後、彼は立ち寄った小さな村 で、リシュリューの近衛隊長ロシュフォールと配下の兵士たちに遭遇する。ダルタニアンはロシュフォールに愛馬のバターカップを侮辱 され、謝罪を要求した。ロシュフォールが謝らないので、ダルタニアンは手袋を投げ付けて決闘を要求する。しかしロシュフォールは、 いきなりダルタニアンを銃で撃った。幸いにも銃身が曲がっていたため、ダルタニアンは軽傷で済んだ。ロシュフォールが彼を殺そうと すると、馬車でやって来たミレディーが「殺すには可愛すぎるわ」と制止した。ロシュフォールたちは、馬車で去った。
パリに到着したダルタニアンはロシュフォールの姿を見掛け、急いで後を追った。彼はアトスにぶつかり、彼の服を汚してしまう。急いで いるダルタニアンは金で解決しようとするが、その態度に不快感を抱いたアトスは「喧嘩を売ってるのか」と睨む。ダルタニアンが腹を 立てて「決闘か。いつ、どこで?」と言うと、アトスは「12時にサンジェルマンのクーパー広場だ」と指定した。その後、ダルタニアンは ロシュフォールを捜す過程でポルトス、アラミスとも揉めて、2人にクーパー広場での決闘を要求した。
ミレディーはリシュリューと会い、イギリスの新兵器が完成したことを知らせて報酬を受け取った。彼女は二重スパイだったのだ。一方、 ダルタニアンが広場で待っていると、アトスが介添人のポルトス、アラミスを伴って現れた。ダルタニアンが銃士になるためにパリヘ来た ことを知った3人は、「遅かったな」と告げ、任務失敗や予算削減、さらにリシュリューに嫌われたことが理由で銃士が解散している現状 を教えた。しかしダルタニアンはそれほど落ち込まず、「銃士になれないなら、銃士を倒すか」と強気に言い放った。
ダルタニアンとアトスが剣を交えようとすると、ロシュフォールの右腕であるジュザックが現れた。彼は「決闘は御法度だ」と言い、兵隊 に包囲させて三銃士を連行しようとする。馬で現場にやって来るロシュフォールの姿に気付いたダルタニアンは、目の前の兵士たちに攻撃 を仕掛けた。すぐに三銃士は、彼に加勢した。ロシュフォールはジュザックに「片付けろ」と冷徹な態度で命じ、その場を去った。
ダルタニアンと三銃士は衛兵たちを圧倒し、ジュザックは退散した。アンヌの侍女コンスタンスは現場を通り掛かり、戦いを見ていた。 彼女の姿に気付いたダルタニアンは、すぐさま軽い態度で声を掛けて口説いた。しかしコンスタンスは、そっけなく「貴方の口説き方は、 パリでは通用しないわ」と告げて立ち去った。三銃士はダルタニアンを気に入り、自分たちの住居で宿泊させることにした。
リシュリューは愚かなルイ13世を見下していたが、表向きは敬意を払っていた。リシュリューは三銃士が衛兵と争いを起こしたことを彼に 報告し、厳しい処分を求めた。ダルタニアンと三銃士は、リシュリューの命令で宮殿に呼び出された。ルイ13世は4人が40人を相手にして 勝利したと知り、大いに喜んだ。そこへアンヌが現れ、ルイ13世に「寛大な御処置を」と求めた。ルイ13世はダルタニアンと三銃士に対し 、「新しい衣装と一袋の金貨を与える」と告げた。
リシュリューはルイ13世とアンヌに対する苛立ちを募らせ、ミレディーに「行動を起こす時が来たようだ。バッキンガムの来訪を利用する 。滞在中に、彼が王妃との密会を目論んだと国王に暴露する。王妃の私物の中から、バッキンガムからの手紙が見つかるようにするのだ」 と語った。ミレディーが「手紙だけで、国王が王妃の不貞を信じるでしょうか」と言うと、リシュリューは「もっと決定的な事実を用意 しよう。王妃が公爵への愛の印として、自分の宝石を贈るのだ」と述べた。
アンヌの不貞が明らかになれば、ルイ13世は激怒して彼女を処刑する。フランスはイギリスと戦争する以外に無くなり、国民は強い指導者 を求める。そこでルイ13世に代わって国を支配するというのが、リシュリューの計略だった。バッキンガムが来訪する日、宮殿の面々は 準備を整えて出迎えた。しかしバッキンガムは新兵器の飛行船で登場し、ルイ13世やリシュリューに無礼な態度を取った。来訪の目的は 、表向きは和平交渉となっていた。だが、バッキンガムもリシュリューも、和平に持ち込むつもりなど無かった。
ミレディーはアンヌの部屋に侵入し、偽造したバッキンガムからの手紙を引き出しに忍ばせた。彼女は保管されていたアンヌの首飾りを 盗み出し、リシュリューに報告した。リシュリューは「首飾りを持って、バッキンガムの船でロンドンへ戻れ。そしてロンドン塔の宝物庫 に首飾りを入れろ」と彼女に指示した。ミレディーは自分を切り捨てないという確約を要求し、リシュリューに書状を用意させた。
バッキンガムやミレディーが去った後、ルイ13世は侍女からバッキンガムの手紙を見せられる。彼は狼狽し、リシュリューに相談した。 手紙には、アンヌがバッキンガムに首飾りを贈ったことも記されていた。リシュリューは「舞踏会を開いてはどうでしょう。そこで首飾り を着けるよう王妃様にご命じになるのです。もし首飾りを着けていれば、安心できるでしょう」と持ち掛けた。首飾りが無くなっていると いう報告を受けたアンヌは、すぐにリシュリューの策略だと確信した。彼女はコンスタンスの前で、悔し涙を見せた。
コンスタンスはダルタニアンと三銃士の住まいを訪れ、ロンドンへ行って首飾りを奪還するよう依頼した。リシュリューの命令を受けた ロシュフォールは兵隊を率いて住居を取り囲み、ダルタニアンと三銃士を連行しようとする。しかしダルタニアンと三銃士は、兵隊の隙を 突いて脱出した。リシュリューはロシュフォールに、港を見張って4人の首に賞金を懸けるよう命じた。コンスタンスはダルタニアンに 化け、兵隊の目を引き付けた。その間に、4人と三銃士の従者プランシェは船で出航した。
ミレディーはバッキンガムに、「アトスたちが来るわ。ヴェネチアの復讐をするためよ」と吹き込む。アトスは作戦会議を開き、「こちら の手の内は全て、ミレディーに読まれているだろう。だから予想外の手で行く。ダルタニアン、お前が切り札だ」と告げる。ロンドンに 到着した三銃士は、囮となって塔の護衛兵を引き付けた。その間にダルタニアンは衛兵に化け、塔に侵入する。だが、すぐに見つかって バッキンガムの元へ連行された。しかしダルタニアンは余裕の態度を崩さなかった。実は、本当の囮はダルタニアンだったのた。三銃士は 飛行船を奪い、バッキンガムの部屋を砲撃した。ダルタニアンも飛行船に乗り込み、一行は逃亡する。アトスは、ロンドン塔に首飾りが 無いこと、馬車で去ったミレディーが持っていることを見抜いていた…。

監督はポール・W・S・アンダーソン、原作はアレクサンドル・デュマ、脚本はアレックス・リトヴァク&アンドリュー・デイヴィス、 製作はポール・W・S・アンダーソン&ジェレミー・ボルト&ロバート・クルツァー、共同製作はクリストフ・フィッサー&ローリー・ ギルマーティン&チャーリー・ウォーケン、製作総指揮はマーティン・モスコウィック、撮影はグレン・マクファーソン、編集は アレクサンダー・バーナー、美術はポール・D・オースターベリー、衣装はピエール=イヴ・ゲロー、視覚効果監修はデニス・ ベラルディー、音楽はポール・ハスリンジャー。
ローガン・ラーマン、ミラ・ジョヴォヴィッチ、オーランド・ブルーム、クリストフ・ヴァルツ、マシュー・マクファディン、レイ・ スティーヴンソン、ルーク・エヴァンス、マッツ・ミケルセン、ガブリエラ・ワイルド、ジェームズ・コーデン、ジュノー・テンプル、 フレディー・フォックス、ティル・シュヴァイガー、カーステン・ノーガード、デクスター・フレッチャー、ジェーン・ペリー、ヘレン・ ジョージ、スザンヌ・ウォルフ、ベン・ムーア、クリスチャン・オリヴァー、マーカス・ブランドル、アンディー・ギャザーグッド他。


アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『三銃士』を基にした作品。
監督は『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン。
ダルタニアンをローガン・ラーマン、ミレディーをミラ・ジョヴォヴィッチ、バッキンガムをオーランド・ブルーム、リシュリューを クリストフ・ヴァルツ、アトスをマシュー・マクファディン、ポルトスをレイ・スティーヴンソン、アラミスをルーク・エヴァンス、 ロシュフォールをマッツ・ミケルセン、コンスタンスをガブリエラ・ワイルド、プランシェをジェームズ・コーデン、アンヌをジュノー・ テンプル、ルイ13世をフレディー・フォックスが演じている。

「銃士」なんだし、実際の銃士はマスケット銃を装備していたんだから、ガンアクションをやるってのも間違いではない。
しかし原作では主に剣による戦いが行われ、これまでの映像化作品でも剣劇として描かれていた。だから、やはり『三銃士』と言えば剣劇 のイメージが強いし、それを期待したくなる。
しかし本作品では、オープニングのアクションからして三銃士が銃を使う。その後、衛兵との戦いでは剣を使っているが、ロンドンへ乗り 込んで以降のアクションでは再びガンアクションがメインとなっている。
「『三銃士』と言えば剣劇」というイメージを覆したかったのか、単純に監督がガンアクションをやりたかっただけなのか、その辺りは 良く分からない。
まあポール・W・S・アンダーソンは良くも悪くもガキっぽいセンスの持ち主で、「何よりも見栄えのする映像を重視する。っていうか、 それ以外に興味が無い」という監督だから、派手なドンパチを見せたいってことだったのかもしれない。

ただ、オープニングのアクションは、やはり剣劇にしておくべきではなかったか。
というのも、そこから1年後に移り、銃士に憧れるダルタニアンが父親と剣の稽古をしているのだ。
つまり「銃士になるには剣の技術が必要」という風に思っているわけで、でも冒頭のシーンを見る限り、「剣の技術が無くても、銃が あるから問題ないぜ」という感じになってしまう。
実際にそういう展開になっていくならともかく、そうじゃないんだから、やはり冒頭シーンでは三銃士の剣の腕前を見せておく方が スムーズだろう。

ポール・W・S・アンダーソンに限らず、ミュージック・フィルム出身の監督って、「とにかく映像の面白さを重視」という傾向が強い ような印象がある。
で、本作品に映像面での魅力、ケレン味たっぷりの面白さを感じられるのかというと、正直に言って、あまり感じない。
その理由は簡単で、この作品がやっているような映像表現って、ポール・W・S・アンダーソンに限らず、色んな監督がやっているので、 もう新鮮味は無いんだよね。

ダルタニアンと三銃士が首飾りを奪還する任務を遂行することになると、アトスがロンドン塔の警備について説明する。
そして「こっちのの手の内は全て、ミレディーに読まれているだろう。だから予想外の手で行く。俺たちが囮になって衛兵を引き付ける。
ダルタニアン、お前が切り札だ」と語る。
ダルタニアンは簡単に捕まるが、実は彼が囮だったことが明らかにされる。
いやいや、作戦会議でのアトスの説明は嘘だったのかよ。

しかも、アトスはロンドン塔の警備について説明していたのに、ロンドン塔に潜入して宝物庫を目指すことは無く、三銃士は飛行船を 奪って逃亡する。
そりゃあ、ミレディーか首飾りを持っているんだから、正解ではあるんだよ。
だけど、そこはやっぱりロンドン塔に侵入してのアクションをやるべきなんじゃないのかと。
飛行船を使ってのアクションをやりたかったようだけど、だったら「三銃士は何とかして厳重な警備をかいくぐってロンドン塔へ侵入 しようとする」という展開が待ち受けているような、余計なミスリードを観客にしたらイカンのじゃないかと。

ポール・W・S・アンダーソンは映像オンリーといってもいいような人で、登場人物に厚みを持たせるとか、ドラマに深みを持たせるとか 、そういうことには興味が無い。
もしくは、興味はあるけど、センスが足りていないか、どちらかだ。
いずれにせよ、結果的には同じことになる。
もはや今さら言うようなことではないし、これまでにポール・W・S・アンダーソン監督の映画を何本か見ている人であれば、良く御存知 だろう。
この映画では、彼は脚本を担当していないが、他の人が執筆したシナリオであっても結果は同じだ。

主役であるダルタニアンは、主役としての魅力を全く感じさせないキャラとなっている。
三銃士は作品の題名になっているにも関わらず、今一つ個性を発揮できず、おのおのの人物を掘り下げるようなことは無い。
1人ずつに、ハイライトになるような見せ場も与えられていない。
バッキンガムは飛行船を奪われると、クライマックスの戦いを待たずして途中退場してしまう中途半端な扱い。

全般的にキャラが薄い中で、最も目立っているのはミレディーだろうか。
手紙を忍ばせて首飾りを奪うミッションを遂行する際には、なぜか下着姿になるというサービスまで用意されている。で、そのミッション 遂行が、中盤の見せ場になっている。
その間、三銃士とダルタニアンは、ほとんど何もしていない。せいぜいダルタニアンがコンスタンスを口説く程度。
どっちがメインなのか分からん状態だ。
さすがはポール・W・S・アンダーソン、自分のカミさんを一番の扱いにしているわけだね。
その辺りの分かりやすさは、そんなに嫌いじゃないぜ。

ただし、そんなミレディーでさえ、クライマックスを前にして退場してしまう。
で、クライマックスは、ロシュフォールが船長を務める飛行船が出現し、飛行船vs飛行船というアクションになる。
なるほど、本当の主役はダルタニアンでも三銃士でもなく、飛行船だったということなのか。
で、飛行船同士の砲撃戦になるので、当然のことながら、三銃士が剣劇で活躍し、個々の存在感をアピールすることは出来なくなって いる。さすがにダルタニアンだけは、タイマン対決が用意されているけどね。
で、全てが解決した後、バッキンガムとミレディーが再登場し、続編を匂わせるような形で終幕する。
アメリカではコケたけど、世界市場での興行成績では黒字が出ているので、第2作が作られる可能性もゼロではなさそうだ。

(観賞日:2012年11月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会