『素晴らしきヒコーキ野郎』:1965、イギリス
1910年のイギリス。飛行機乗りのリチャードは、恋人パトリシアの父親で新聞社の社長であるロンスリー卿に、世界各国の飛行機を集合させることを提案。イギリスが世界の空を征服する道につながり、新聞社の宣伝にもなることだと言って勧める。
ロンスリー卿はドーバー海峡を横断してロンドンからパリまで向かう飛行機レースの開催を決定。世界中の飛行機乗りに招待状を送った。アメリカのオーヴィル・ニュートンやイタリアのエミリオ・ポンティチェリを始め、各国から多くの飛行機乗りがイギリスに集まった。
日本から有名な飛行機乗りのヤマモトが参加したことで、多くの参加者は勝ち目が無いと考える。しかし、どんな手を使ってでも優勝を狙おうとするイギリスのパーシー卿は、助手のコートニーに命じてヤマモトの飛行機に細工をする。レース当日、ヤマモトの飛行機は離陸直後に墜落してしまう。果たして、優勝の行方はどうなるのか…。監督はケン・アナキン、脚本はジャック・デイヴィス&ケン・アナキン、製作はスタン・マーグリーズ、製作協力はジャック・デイヴィス、撮影はクリストファー・チャリス、編集はアン・V・コーツ&ゴードン・ストーン、美術はトーマス・N・モラハン、衣装はオズベルト・ランカスター、音楽はロン・グッドウィン。
出演はスチュアート・ホイットマン、サラ・マイルズ、ジェームズ・フォックス、アルベルト・ソルディ、ロバート・モーリー、ゲルト・フロブ、ジャン=ピエール・カッセル、イリーナ・デミック、エリック・サイクス、テリー・トーマス、レッド・スケルトン、ユージロー・イシハラ(石原裕次郎)、ベニー・ヒル、フローラ・ロブソン、カール・マイケル・ヴォグラー、サム・ワナメイカー、トニー・ハンコック他。
世界中から飛行機乗りが集まってレースをするコメディー映画。オーヴィルをスチュアート・ホイットマン、パトリシアをサラ・マイルズ、リチャードをジェームズ・フォックス、エミリオをアルベルト・ソルディ、ヤマモトを石原裕次郎が演じている。
まず、導入部がゴチャゴチャしすぎているという問題が生じている。
序盤では、各国の主要な飛行機乗りを一人ずつ紹介するといった、登場キャラクターを説明するための、分かりやすい場面を作ってほしかった。
それぞれのキャラクターを知らしめるためのエピソードも弱い。
それぞれの国のステレオタイプをデフォルメしたギャグも不発に終わる。基本的にはドタバタ喜劇として作られているのだろうが、出来映えは非常にヌルい。
舞台が空だから仕方ない部分はあるのだろうが、レース中のエピソードは薄い。
レース途中で2度の着陸ポイントがあり、そのために流れを作りきれていない。悪役のはずのパーシー卿だが、悪さをする場面は非常に少ない。
トンマなトラブルもほとんど起こさない。
コートニーという助手がいるのだが、2人のコンビ芸も見られない。
リチャードやオーヴィルが、パーシー卿と戦うという図式も無い。
レースといっても競い合うような姿は無く、ただ各機が飛んでいるだけという有り様だ。ヤマモトを演じる石原裕次郎は、参加者の中で最後に登場する。
特別扱いの形になっているわけで、ある意味ではオイシイと言えるのかもしれない。
だが、いざレースが始まると、あっという間に出番は終了。
やっぱり、メインのキャラクターとまではいかなかったようで。で、ゴールまで辿り着くのはイギリス、アメリカ、イタリア、フランスの代表選手達。
その中でも、イギリスとアメリカがメインとしての扱い。
なるほどね、ものすごく分かりやすい答えだ。
ちなみに1975年の『華麗なるヒコーキ野郎』という作品があるが、全くの別物。こちらはジョージ・ロイ・ヒルが監督、主演はロバート・レッドフォード。