『13ゴースト』:2001、アメリカ&カナダ

サイラス・クリティコスは最新の設備を整えたゴースト捕獲チームを集め、廃車置き場に赴いた。サイラスに同行した霊能力者のデニス・ラフキンは、「今夜は危険だ。今すぐ逃げるべきだ」と怯えた様子で進言する。しかしサイラスは聞く耳を貸さず、「破壊者」の異名を持つ連続殺人鬼、ホレス・マホーニーのゴーストの居場所を教えるよう要求した。デニスは霊視によって、その居場所を知った。
ゴーストの捕獲に反対するデイモンとカリーナは、サイラスの手下たちに捕まった。「成功するものか。それには13番目のゴーストが必要になる」と言うデイモンたちを、サイラスは手下たちに命じて追い払った。「13番目って何のことだ?今日で終わりじゃなかったのか」とデニスが抗議すると、サイラスは軽く受け流した。サイラスはゴーストを誘い出す餌として、トレーラーで運んだ血を現場に散布させる。彼はゴーストを目視できる特殊眼鏡を掛け、捕獲用キューブのスイッチを入れさせた。出現したマホーニーは次々にチームのメンバーたちを抹殺するが、サイラスは構わずに封印した。デイモンはマホーニーの攻撃で重傷を負い、サイラスは命を落とした。
サイラスの甥であるアーサーは、火事で妻のジーンを亡くしていた。経済的に苦しくなったアーサーは、娘のキャシー、息子のボビー、メイドのマギーと共に、以前の住まいより遥かに狭いアパートで暮らしていた。ある日、弁護士のベンジャミン・モスが彼らの元を訪れ、サイラスの死を伝えた。サイラスは一族の財産を使い果たして酷く疎まれていたため、アーサーは幼い頃に会ったきりだった。
サイラスは生前、死んだ時にはアーサーたちに見せてほしいとモスに依頼し、メッセージを語る映像を残していた。映像のサイラスは、アーサーに自分の建てた豪邸を贈与すると語っていた。モスはサイラスから豪邸の鍵を預かっていた。アーサーたちが郊外の豪邸に赴くと、見たことも無い斬新な建築だった。デニスは電力会社の職員に変装して待ち受けており、「この家のせいで街の大半が停電している。中を調べたい」と要求した。モスは「明日にしてくれ」と追い払おうとするが、アーサーは了承した。
ガラス張りの壁にはラテン言が書かれており、屋内には様々な装飾品が飾られていた。大聖堂まで設置されており、アーサーたちは興奮した。デニスはモスに地下室の場所を尋ね、アーサーたちと離れて別行動を取った。アーサーはモスから書類へのサインを求められ、3人を大聖堂に待機させて書斎へ向かった。しかしキャシーたちはアーサーの指示に従わず、彼がいなくなると大聖堂から移動した。
サイラスに大金を貸していたデニスは、地下室で彼の隠し財産を見つけようとするが、目に見えない何かに頭を殴られる。特殊眼鏡を掛けた彼は、複数のゴーストが地下室に封印されているのを目にした。デニスは書類にサインしようとしていたアーサーの元へ舞い戻り、正体を明かす。彼は慌てた様子で、サイラスがゴーストを捕獲していたこと、地下室に隔離用キューブが幾つも並んでいたことを話す。デニスはアーサーに、「俺は逃げる。アンタも子供を連れて逃げろ」と告げた。
デニスは強烈な頭痛で倒れ込み、心配したアーサーが彼に駆け寄った。アーサーが背中に触れたので、彼の記憶がデニスの中に飛び込んで来た。その間にモスは地下室へ向かい、特殊眼鏡を装着した。彼は大金の入ったアタッシェケースを持ち出そうとするが、豪邸の装置が起動してしまう。キューブの扉が開いてゴーストが外に出てしまう。慌てて後ずさった彼は、自動ドアに体を切断されて死亡した。
アーサーは装置の起動を受けて今すぐに立ち去るべきだと考え、デニスと共に大聖堂へ戻った。しかしキャシーたちは屋内を探索し、自由に行動していた。アーサーとデニスは、別れて捜索することにした。洗面所の鏡を見ていたキャシーの背後にゴーストが迫るが、彼女は気付かなかった。アーサーはキャシーとマギーを見つけ出し、ボビーを捜す。特殊眼鏡を掛けて屋内を走り回っていたボビーは、「一緒に遊びましょ」という女の声と「行っちゃ駄目よ」と制止する女の声を聞いた。
アーサーはキャシーとマギーに「ボビーは私が捜す。車で待ってろ」と告げるが、玄関の扉は封鎖されていた。彼は椅子を投げてガラスを割ろうとするが、びくともしなかった。デニスは観念した様子で、「完全に閉じ込められた」と口にした。一行はボビーを捜すことにした。デニスがゴーストのことを話しても、アーサーたちは全く信じなかった。地下室に入ったボビーはゴーストと遭遇し、慌てて逃げ出した。しかし壁に激突し、意識を失った。
アーサーが地下室へ行こうとするので、デニスは「俺は行かないぞ」と拒絶した。アーサーは「君がサイラスに貸した金を私が支払う」と持ち掛け、協力を要請した。目を覚ましたボビーは、「地下室にいては駄目よ、上に行きなさい」という声を耳にした。特殊眼鏡を掛けたボビーは、大火傷を負って病院服を着ているジーンを目にした。しかし振り向いたボビーの前に、死んだはずのサイラスが現れた。
アーサーは「離れるべきではない」と考えるデニスを説得し、手分けして捜索することにした。彼はキャシーと、デニスはマギーと組んでボビーを捜す。マギーはデニスに渡された特殊眼鏡を装着し、ゴーストを目視して驚愕した。アーサーとキャシーは、ボビーの特殊眼鏡とレコーダーを発見した。特殊眼鏡を掛けたキャシーは、ゴーストに襲撃された。そこにカリーナが駆け付け、ゴーストに発炎筒を投げてキャシーを助けた。カリーナの指示で特殊眼鏡を掛けたアーサーも、ようやくゴーストの存在を信じた。
カリーナはアーサーたちに、サイラスが捕獲したゴーストを解放する目的で屋敷に来たことを話す。彼女はスライドするドアの隙間から邸宅に侵入したが、もう閉じたので出られないという。カリーナはアーサーたちに秘伝の書を見せ、そこに未来を見通す装置の作り方が掲載されていること、それをサイラスが作ってしまったことを語る。その装置は死者が動かす装置だった。アーサーが「そんな話など聞きたくない。私は家族を逃がしたいだけだ」と鋭く告げると、彼女は「出たかったら、まずは私を手伝って」と要求した。
いつの間にかキャシーは姿を消しており、アーサーとカリーナは別のゴーストを目撃した。デニスはゴーストに襲われて怪我を負うが、何とか逃げ出した。アーサーとカリーナは行く手を遮られながらも、呪文に守られている部屋を目指すことにした。2人はデニスたちと合流し、目的の部屋へ向かう。ゴーストがアーサーを襲って怪我を負わせ、デニスが発煙筒で追い払った。書斎に逃げ込んだ後、カリーナとデニスは激しく口論する。アーサーが仲裁に入ると、カリーナは4番目のゴーストがジーンだと明かす…。

監督はスティーヴ・ベック、原案はロブ・ホワイト、脚本はニール・マーシャル・スティーヴンス&リチャード・ドヴィディオ、製作はギルバート・アドラー&ジョエル・シルヴァー&ロバート・ゼメキス、共同製作はテリー・キャッスル&リチャード・ミリシュ、製作総指揮はダン・クラッチオロ&スティーヴ・リチャーズ、撮影はゲイル・タッターサル、編集はデレク・G・ブレチン&エドワード・A・ワーシルカ、美術はショーン・ハーグリーヴス、衣装はジェンニ・ギュレット、特殊メイクアップ効果はハワード・バーガー&グレゴリー・ニコテロ&ロバート・カーツマン、視覚効果監修はダン・グラス、音楽はジョン・フリッゼル。
出演はトニー・シャルーブ、エンベス・デイヴィッツ、マシュー・リラード、F・マーレイ・エイブラハム、ラー・ディッガ、シャノン・エリザベス、アレック・ロバーツ、JR・ボーン、マシュー・ハリソン、ジェイコブ・ラップ、マイク・クレスティーユ、オーブリー・リー・カルプ、チャールズ・アンドレ、ミハエル・スピーデル、ダニエル・ウェズリー、ローラ・メネル、キャスリン・アンダーソン、クレイグ・オレジニク、ショーナ・ロイヤー、ザンサ・ラドリー、C・エルンスト・ハース、ローリー・ソーパー、ハーバート・ダンカンソン、シェイン・ワイラー、ジョン・デ・サンティス他。


ロバート・ゼメキスとジョエル・シルバーが設立したホラー映画専門の製作会社「ダークキャッスル・エンタテインメント」の第2回作品。
アーサーをトニー・シャルーブ、カリーナをエンベス・デイヴィッツ、デニスをマシュー・リラード、サイラスをF・マーレイ・エイブラハム、マギーをラー・ディッガ、キャシーをシャノン・エリザベス、ボビーをアレック・ロバーツ、モスをJR・ボーン、デイモンをマシュー・ハリソン、ジーンをキャスリン・アンダーソンが演じている。
ダークキャッスル・エンタテインメントは1作目の『TATARI タタリ』に続き、今回も会社名の由来であるウィリアム・キャッスルの作品をリメイクしている。今回は1960年の同名映画のリメイクだ。
『TATARI タタリ』に引き続き、ウィリアム・キャッスルの娘であるテリー・キャッスルが共同製作に携わっている。監督のスティーヴ・ベックはCMディレクターで、これが映画監督としてのデビュー作。

ウィリアム・キャッスルは「ギミック映画の帝王」と呼ばれるB級ホラー界のビッグ・ネームで、『TATARI タタリ』のオリジナル版である『地獄へつゞく部屋』、『ティングラー/背すじに潜む恐怖』、オリジナル版『13ゴースト』など仕掛けを施した映画を何本も製作している。
ちなみに『地獄へつゞく部屋』ではワイヤーで吊るした人形の骸骨を映画館にいる観客の頭上に登場させ、『ティングラー/背すじに潜む恐怖』では客席に仕込んだ電線を使って観客に軽い電気ショックを与えた。
オリジナル版『13ゴースト』で使用されたのは、「Illiusion-O」と称されるギミックだ。観客は赤と青に色分けされた3D眼鏡を渡され、画面の指示に従って装着すると、スクリーン上に幽霊が浮かび上がるのだ。怖いのが嫌なら、青色の眼鏡を装着すれば幽霊が見えないという親切設計も用意されていた。

仕掛けは簡単で、画面が青色、幽霊の映像が赤色に着色されており、だから赤い眼鏡を装着すれば幽霊が見えて、青い眼鏡を使えば幽霊が消えるのだ。
「では、もしも3D眼鏡を掛けなかったら?」と思った人もいるかもしれない。
3D映画の仕組みを知っていれば何となく予想が付くかもしれないが、3D眼鏡を掛けなくても幽霊は見えてしまうのだ。
そういうマヌケな欠点があるのは、ウィリアム・キャッスルのギミックでは当たり前のことであり(『地獄へつゞく部屋』の人形も観客を全く怖がらせることが出来ず、むしろ笑われた)、そういうことも含めて「アトラクションとして楽しみましょう」ってことなんだろう。

このリメイク版でもオリジナル版と同じく、クリティコス家の面々はサイラスの遺品として「幽霊を見ることの出来る眼鏡」を渡される。
オリジナル版であれば、イリュージョン−Oのギミックがあったので、「観客が彼らと同じように眼鏡を掛ける」というところに大きな意味があった。
しかしリメイク版ではギミックが用意されていないので、そこに重要性が感じられない。
ギミック無しでも彼らが特殊な眼鏡を掛けることに大きな意味を持たせるための改変が行われているのかというと、そんなのは見当たらない。

ウィリアム・キャッスルはオリジナル版『13ゴースト』を公開する際、13人の子供たちを幽霊に扮装させ、プロモーション活動に起用した。
ぶっちゃけ、オリジナル版は前述のギミックと、そういったプロモーション活動も含めて、一種のイベント的な楽しみ方をするような類の映画だったのではないかと思うのだ。
だから、同様のギミックもプロモーション活動も用意していないリメイク版で、同じような中身の映画だけを作って勝負しようとしても、それは厳しいモノがある。

そこで製作サイドが何をやったのかというと、「残酷描写を増やして、マジに怖がらせよう」ということだった。
オリジナル版は軽妙な描写の多いファミリー向けホラー・コメディーというテイストだったのが、この作品ではコミカルな要素をバッサリと排除して、徹底して怖い作品に仕上げようとしている。
「急にゴーストが現れて襲って来る」というショッカー描写と、「特殊メイクでグロテスクな容貌になっている幽霊」というゴア描写に重きを置いている。

しかし、それが正しい判断だったとは到底思えない。
と言うのも、大まかな内容をオリジナル版から変えていない本作品は、「愉快なお化け屋敷映画」の骨格になっているからだ。
キューブに閉じ込められたゴーストが「際立った個性も無く、十把一絡げ扱い」ということならともかく、それぞれに個性的なキャラクター設定が用意されているのだから、そこを何よりも重視すべきだと思うのだ。そして、そこを重視しようとするならば、コメディー寄りのアプローチをするのが適していると思うのだ。

12体のゴーストは見た目こそ分かりやすい違いがあるものの、中身の差別化は全く出来ていない。キャラとしてはペラペラなので、どのゴーストがどこで襲って来ようと、その配置を入れ替えようと、まるで影響も無い。
「キャラクターの魅力で引っ張る」という作り方をしていれば、12体の幽霊の中身がペラペラという問題も解消されたかもしれない。
幽霊が12体も登場するのに、そのキャラクターを掘り下げようというのではなく、ゴア描写に厚みを持たせることを重視するのは解せない。
12体の幽霊の詳しい設定を公式サイトやDVDの特典映像で説明しても、そんなのは意味が無い。ひょっとして、それを製作サイドが「イベント的なアプローチ」として考えたのだとしたら、明らかに間違っている。

「限定された閉鎖空間で次々にモンスターや幽霊が登場したり、怪奇現象が起きたりする」といったアトラクション的なホラー映画、お化け屋敷チックな映画であっても、もちろんマジで怖がらせる方向で味付けしたら絶対にダメというわけではない。実際のお化け屋敷ってのは大抵の場合、本気で怖がらせようとしているわけだしね。
ただ、前述のように、これは「愉快な」という形容詞を付けたくなるお化け屋敷映画の骨格を持っているのだ。
それと、豪邸に施されている様々な仕掛けは、古い時代の罠ではなくサイラスが設計した最新の物であり、それは「幽霊が襲って来る」という部分をストレートに恐怖として扱う場合、上手く馴染まない。
「時間によって扉が閉じたり開いたりする」というゲーム感覚の仕掛けは、それだけを使えば純然たるスリラー映画として成立するだろうが、そこに「ゴースト」という要素が絡むと、マッチングが良くない。
コメディーの要素を盛り込めば、それを潤滑油にすることも出来ただろう。

そもそも、「ある家族が幽霊騒動に巻き込まれる」という話で子供たちが主要キャラとして登場するにも関わらず、暴力描写やゴア描写が強すぎてMPAA(アメリカ映画協会)のレーティングでR指定(17歳以下の観賞は保護者の同伴が必要)を食らっているというのは、どう考えたってマズいでしょ。
子供と言ってもシャノン・エリザベスは当時28歳だし、幼く見えるわけでもない。
だから、もはや大人なんだけど、弟の方はどう見ても小学生なので、随分と年の離れた姉弟になっている。
ここは姉貴の方の年齢設定を下げるべきだよ(ちなみにオリジナル版の姉を演じたジョー・モロウは当時21歳)。

ボビーを前半で退場させ、ほとんどストーリー進行に絡まないようにするってのは、賛同しかねる改変だ。
キャシーにアラサー女優を起用しているってことは、最初から観客として高めの年齢層を狙っていたのかもしれないけど、ティーンズやファミリー層の観客をターゲットから除外するのであれば、根本的に内容を変更しないと。
っていうか、そこまで変更するぐらいなら『13ゴースト』をリメイクする必要も無いわけで。
やっぱり、「ギミックを使わない中で、いかにホラー・コメディーとして充実した中身を構築するか」という方向で考えるべきだったんじゃないかと思うんだけどね。

根本的なことを書いちゃうと、ロバート・ゼメキスとジョエル・シルバーって、ウィリアム・キャッスルの映画をリメイクするってのが目的でダークキャッスル・エンタテインメントを設立したんでしょ。そのキャッスルの作品の面白さってのは、何よりもギミックにあったはずで。
それなのにギミックを使わないリメイク映画ばかりを作るってのは、どういうつもりなのかと思ってしまうんだよな。
キャッスル作品からギミックを抜いたら、それは炭酸の抜けたコーラみたいなモンだぞ。
そんな物を好んでくれる酔狂な人は、そう多くはないと思うんだけどね。
どうしてイベント映画として作らなかったのか、マジな恐怖映画として作ったのか、心底から理解に苦しむ。

(観賞日:2014年2月6日)


第24回スティンカーズ最悪映画賞(2001年)

ノミネート:【最悪の助演女優】部門[シャノン・エリザベス・ラッセル]
<*『アメリカン・サマー・ストーリー』『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』『13ゴースト』『トムキャッツ 恋のハメハメ猛レース』の4作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会