『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』:1981、アメリカ

雨の夜。フランクは仲間のバリー&グロスマンと協力して金庫を破り、ダイヤモンドを盗んだ。翌日、彼は経営する中古車販売店へ赴き、従業員のブルースや事務員のポーラに指示を出す。彼はバリーに電話を入れ、陸運局へ許可証を取りに行くよう頼む。フランクは喫茶店で仲介人のジョー・ギャグスと会い、ダイヤモンドを見せた。ギャグスは買い手の紹介を引き受け、「少し投資する気は無いか?3ヶ月で2倍になる」と持ち掛ける。しかしフランクは儲け話に乗らず、「バリーが金を取りに行く」と告げる。彼はウェイトレスのジェシーに「今夜空いてる?」と声を掛け、「8時に迎えに来るよ」と口にした。
フランクは刑務所で親しくなったオークラからの手紙を読み、「シャバに出てから全て取り戻すよ。一度来てほしい」と書いてあるのを見る。フランクはバリーからの電話で、金を受け取る前にギャグスが何者かに殺されたと知らされる。バリーは警察署で働く友人から情報を入手し、フランクに知らせる。ギャグスはメッキ会社を営むアタッグリアに投資話を持ち掛け、預かった大金を自分の物にしていた。フランクは拳銃を用意してアタッグリアの元へ赴き、自分の金を返すよう要求した。アタッグリアはシラを切るが、フランクは彼が裏社会の人間であることを知っていた。アタッグリアは手下のカールたちを呼び、フランクを追い出そうとする。フランクは拳銃を突き付けて脅しを掛け、3時間以内に金を用意するよう要求して去った。
フランクは刑務所を訪れ、オークラと面会した。フランクはオークラの質問を受け、妻とはとっくに別れたこと、ジェシーという女性と付き合っていること、彼女は裏の仕事を知らないことを話した。彼が「何が欲しい?」と訊くと、オークラは「ここから出たい」と告げる。フランクが「10ヶ月の辛抱じゃないか」と言うと、彼は「俺は狭心症で、10ヶ月も持たないと医者に言われた。ここでは死にたくない」と述べた。フランクは困惑しながらも、「任せておけ」と約束した。
夜、フランクが指定の場所へ行くと、アタッグリアは組織のボスであるレオと一緒に来ていた。レオはフランクに金を渡し、仕事を持ち掛けようとする。フランクが「良く知らない奴と組む気は無い」と言うと、彼は「俺はお前と繋がりのある連中を良く知ってる。この町のことは全て知ってる」と述べる。フランクが「雇われるのは御免だ。人のためには働かない」と断ると、レオは「お前の勝手だが、契約したら仕事は幾らでも回してやる。面倒は全て引き受ける。欲しい物は何でも揃える」と話した。フランクは詳しく話を聞き、条件を提示する。レオは好条件を提示し、フランクが「返事は保留だ」と言うと「何度か仕事をしてから返事すればいい」と提案した。
フランクはバーへ行き、待っていたジェシーに遅刻を詫びた。「2時間も待ったのよ」とジェシーが怒ると、フランクは声を荒らげて強引に車へ乗せる。ジェシーに文句を言われた彼は、「車を売るだけで、こんな生活が出来るわけがないだろ。俺は泥棒だ」と苛立ちを言葉に込めて放つ。ジェシーが「だから何なのよ」と言うと、彼は「俺はやたらと女を口説くような奴じゃない。喧嘩は終わらせて真面目に愛し合うべきだ」と語った。
ジェシーは「それで口説いてるつもり?」と呆れ果てるが、フランクは構わずレストランへ連れて行く。彼は「好きになるのが怖いのか」とジェシーに言い、昔の恋人との話を聞く。ジェシーは恋人と色んな町を渡り歩いて別れたことを語り、「今は平凡だけど楽しいわ。安定してるから」と言う。フランクは「君はどこかへ行きたいのに、怖いから今の生活に満足してるフリをしてるんだ」と決め付け、「金は残ったのか?」と尋ねた。
ジェシーが「一銭も残らず、彼は死んだ」と言うと、フランクは「そういうバカは死んだ方がいいんだ」と告げる。「出会った頃は、いい人だった」というジェシーの言葉を、フランクは「完璧なバカだよ。それだけの街を渡り歩いたのは、ヤクでも売ってたんだろう」と切り捨てる。ジェシーは「彼に頼るしか無かったのよ」と言い、「次は貴方の番よ」と口にする。フランクは刑務所で11年暮らして4年前に出て来たこと、40ドルを盗んで刑期は2年だったが事件を起こして殺人未遂と傷害罪で刑期が増えたことを話した。
フランクは持ち歩いている切り抜きを見せ、「ここに君も入る」とジェシーに言う。彼は「オークラは大泥棒で、世話になった」と語った後、ジェシーにプロポーズする。ジェシーが戸惑いながら「貴方はいつ捕まるか、いつ殺されるか分からないじゃない」と言うと、彼は「俺には時間が無い。何もかも無くした。取り戻すためには早く走らなきゃいけない。だから泥棒という魔法を使った。君と一緒にやっていきたい」と語った。
「ダメよ。私、子供が出来ない体なの」とジェシーが言うと、フランクは「じゃあ養子を貰おう」と提案する。ジェシーが「でも無理よ」と告げると、彼は「そんなに素晴らしい人生を送ってるわけじゃないだろ。2人の方が素晴らしい人生を送れるよ」と誘う。ジェシーがOKすると、フランクはレオに電話を入れて「大きな仕事を1つか2つならやってもいい」と告げる。彼は白いビルを襲って金庫から宝石を盗み出す仕事を依頼され、詳細の説明を聞いて準備に取り掛かった。
フランクは弁護士を雇い、オークラのために人身保護法の適用を認める嘆願書を提出してもらう。弁護士は法廷で裁判長に訴え、オークラの釈放は許可された。バリーは警報機を調べ、フランクに報告した。フランクはバリーに、「この仕事が終わったら足を洗うつもりだ」と打ち明けた。フランクは養子を貰うために施設へ行くが、担当者から服役の過去を問題視される。フランクは苛立ち、「どんな子供だっていいんだぜ。黒人だった東洋系だっていいんだ」と声を荒らげる。彼が「俺に問題があるなら、これでどうだ」とダイヤの指輪を渡すと、「ここは宝石店ではありません」と担当者は告げる。フランクは担当者を激しく罵り、ジェシーが諌めても耳を貸さずに暴言を繰り返した警備員が来たので、フランクは憤慨しながら立ち去った。
フランクはリオの仕事を知った悪徳刑事のユリジーとボレスコから声を掛けられ、「俺たちが協力してやる。金を払えば見逃してやる」と言われる。フランクは「俺は車のセールスマンだ」とシラを切り、「汚いツラを引っ込めて家へ帰れ」と言い放って去った。自宅と車を警察に盗聴されていたと悟ったフランクは、ジェシーに知らせて謝罪した。彼はレオと会って「アンタと組んでから悪いことだらけだ」と怒りをぶつけ、ユリジーたちを何とかするよう要求した。レオは彼が養子を欲しがっていると知っており、「力を貸そう」と持ち掛けた。「大勢の女たちが子供を売りたがっている。マトモな方法じゃ子供は持てないぞ」と彼が言うと、フランクは斡旋してもらうことにした。彼は喜び、ジェシーに電話を入れた。
フランクはオークラが入院したと聞き、ジェシーを連れて会いに行く。しかしオークラの病状が悪化したため、すぐにフランクは病室から出された。弁護士は「釈放された時には手遅れだった」とフランクに教え、その直後にオークラは亡くなった。フランクはユリジーたちに軽微な罪を着せられ、警察署に連行される。彼は激しい暴行を受けるが、買収には応じなかった。フランクはバリーとグロスマンの3人で計画を実行し、無事に成功させる。しかしレオは少しの分け前しか渡さず、「残りはショッピングセンターに投資した。次の仕事をやってくれ」と告げる…。

監督はマイケル・マン、原作はフランク・ホヒマー、映画原案&脚本はマイケル・マン、製作はジェリー・ブラッカイマー&ロニー・カーン、製作総指揮はマイケル・マン、製作協力はリチャード・ブラムス、撮影はドナルド・ソーリン、美術はメル・ボーン、編集はドヴ・ホーニッグ、音楽はタンジェリン・ドリーム。
出演はジェームズ・カーン、チューズデイ・ウェルド、ウィリー・ネルソン、ロバート・プロスキー、ジェームズ・ベルーシ、トム・シニョレッリ、デニス・ファリーナ、ニック・ニッカース、W・R・ビル・ブラウン、ノーム・トビン、ジョン・サントゥッチ、ギャヴィン・マクファディン、チャック・アダムソン、サム・シローネ、スペロ・アナスト、ウォルター・スコット、サム・T・ルイス、ウィリアム・ラヴァレー、ローラ・スタンリー、ハル・フランク、デル・クローズ、ブルース・ヤング、ジョン・カペロス他。


宝石泥棒だった過去を持つフランク・ホヒマーの犯罪小説『The Home Invaders』 を基にした作品。
後に『ヒート』や『インサイダー』を手掛けるマイケル・マンの映画デビュー作。
フランクをジェームズ・カーン、ジェシーをチューズデイ・ウェルド、オークラをウィリー・ネルソン、レオをロバート・プロスキー、バリーをジェームズ・ベルーシ、アッタリアをトム・シニョレッリ、カールをデニス・ファリーナが演じている。

マイケル・マンは監督デビュー作から、「いかにもマイケル・マン」と感じさせる演出を見せている。この人の持ち味は、当時から全く変わっていない。
まず冒頭、フランクが金庫を破る様子を、丁寧なディティールで描いている。電気工具で金庫を破り、金槌とノミで中の仕掛けを破壊する。引き出しを次々に開けて乱暴に捨て、ダイヤモンドのありかを調べる。
「リアルな宝石強盗ってのは、こんな風に仕事をするんですよ」ってことを、5分ほど使って見せている。
ここでリアリティーを持たせるため、マイケル・マンは実際に宝石泥棒だったジョン・サントゥッチを技術顧問として招聘している(サントゥッチはユリジー役で出演もしている)。

フランクを「自分の流儀は貫き通す」「組織の下っ端として使われるのを嫌う」という男として造形し、「男の美学」を描こうとしている。
ただレオと初めて会うシーンにおける彼の言動は、どうにも中途半端だ。
レオが仕事をするよう誘うと、フランクは「良く知らない奴と組む気は無い」と断る。レオが色んなことを知っていることを具体的に語ると、「雇われるのは御免だ。人のために働かない」と断る。
ここまではいいのだが、レオが「面倒は引き受ける。欲しい物は全て揃える」と言うと、「俺の注文はうるさいぞ」「報酬は幾らだ?」「上手く行くかね?」「こっちにも条件がある」「相棒がいる」などと、明らかに前向きな態度を取るのだ。
でも、そこはゴチャゴチャと言わず、さっさと断ればいい。中途半端に乗り気な態度を見せると、キャラがブレて弱くなっちゃうよ。

フランクのジェシーに対する態度は、なかなかのオレ様っぷりだ。
自分が遅刻したのに、怒りをぶつけられると逆ギレする。彼女を批判し、自分の主張をぶつける。ジェシーの元カレを扱き下ろし、自分の泥棒稼業を正当化する。
ジェシーは呆れたり苛立ったりしながらも立ち去らずに付き合っているし、プロポーズも受け入れるので、「結局は惚れてる」ってことだ。
その辺りは男にとって都合の良すぎる描写だが、マイケル・マンの映画って、そういうモノだからね。1980年代に良く見られた「映画における男女関係の形」ではあるが、マイケル・マンに限っては「時代が云々」ってことじゃなくて本人の作家性だと捉えた方がいいだろう。

フランクがバーで待たせていたジェシーと会った後、しばらくは2人の会話が続く。ここが「長いなあ」と感じる。
車内やレストランに場所を移動しながら、トータルで10分ぐらい続くんだよね。
この「ダルいな」と感じさせる箇所は、他にも幾つかある。
「そういうことも含めてマイケル・マン作品」と言われれば、そういうことなのかもしれない。
でも、フランクが自分の主張をゴリ押しするだけだし、その会話劇に引き付ける力を感じないのよね。

フランクはジェシーとの結婚を決めると、レオの仕事を受けることにする。もちろん「結婚のために金が必要」ってことは分かるのだが、「中古車販売業だけじゃダメなのか」と思ってしまう。
どうやらフランクは「デカく稼いで足を洗おう」という考えのようだけど、「結婚するためには可及的速やかに金が必要」という状況でもないでしょ。単に「大金が欲しい」ってことでしょ。養子を貰うのに大金が必要というわけでもないし。
あと、自分の流儀を曲げてレオの仕事を受ける動機が「結婚するため」ってのも、どうなのかと。
そこでキャラとしての弱さを感じさせるが、その弱さの種類が「コレジャナイ感」なのよね。

そもそも、フランクが中古車販売業をやりながら宝石泥棒を繰り返しているのも、情状酌量の余地なんて何も無いでしょ。
彼は「何もかも無くした。取り戻すためには早く走らなきゃいけない。だから泥棒という魔法を使った」と言うけど、それで泥棒を正当化されてもねえ。それに、何もかも無くしたのも自分の責任だし。
決して「犯罪者は許すまじ」と言いたいわけじゃないのよ。映画の世界で犯罪者が主人公になることなんてザラにあるし、それを全て否定するほど頭の固い人間ではない。
ただ、自分を擁護して正当化するフランクの主張が、「なんかダサい」と思っちゃうのよね。

フランクは養子を貰おうとするが、もちろん服役した過去が問題視される。
それは当然なのだが、「それが無くても無理だろ」と言いたくなる。
何しろ彼は、担当者が決して見下すような態度を取ったわけでもなく、「子供にとって望ましい環境を与えられる人でないと」と落ち着いて説明しているだけなのに、すぐに苛立つ。そして「どんな子供だっていいんだぜ。黒人だって東洋系だっていいんだ」と差別的な言葉を平気で吐く。
もうさ、その段階で完全にアウトでしょ。

さらにフランクはダイヤの指輪で買収を企て、たしなめられると「アンタは人を見る目が無いだけじゃなくて頭も固い」と罵る。
だけど、フランクを断るのは、ちゃんと担当者に見る目があるってことだよ。
フランクは「子供が親を欲しがってるのに、親になりたい人間を追い出すのか」と怒るけど、親になる資格があるとは到底思えんよ。
担当者が独身女性だと知って「やっぱりな、ヒステリーが」と罵倒するけど、そんな奴に子供を預けたいなんて誰も思わんよ。

終盤、約束を守らないレオに腹を立てたフランクは金を払うよう要求するが、バリーを殺されて自身も暴行を受ける。レオに罵られた彼はジェシーと子供を遠ざけて家を燃やし、店を爆破する。そしてレオの屋敷へ乗り込み、彼の一味を全滅させる。
ここでマイケル・マンは、当時は最新だったコンバット・シューティングをフランクに披露させている。
ただの宝石泥棒が実戦的な射撃術を会得しているのは不可解だが、「多勢に無勢の中でフランクが勝利するには優れた射撃能力が必要」という部分の説得力を優先したらしい。不自然さは否めないが、それを超えるカッコ良さがあるので、そこは良しとしよう。
それに、この映画でポンコツ扱いされたのは、そこじゃなくてタンジェリン・ドリームの手掛けた伴奏音楽だからね。

(観賞日:2021年4月14日)


第2回ゴールデン・ラズベリー賞(1981年)

ノミネート:最低音楽賞

 

*ポンコツ映画愛護協会