『ザ・プレデター』:2018、アメリカ&カナダ

宇宙空間で、1隻の宇宙船が別の宇宙船に追跡されていた。攻撃されてダメージを受けた宇宙船は、ワープして地球に飛来した。操縦していたフュージティブ・プレデターは、母船を捨てて救命ポッドで脱出した。深夜のメキシコ。アメリカ軍特殊部隊のクイン・マッケナが物陰から監視していると、麻薬カルテルの一味が両手を縛られた人質2名を車で連行してきた。クインがライフルを構えていると、上空から宇宙船が落ちて来た。崖を滑落して意識を失った彼は目を覚ますが、仲間とは連絡が取れなかった。
不時着した宇宙船に近付いたクインは、フュージティブ・プレデターのヘルメットを発見した。そこへ仲間のデュプリーが現れ、クインがもう1人のヘインズについて訊くと「さあ。無線は繋がらない」という答えだった。クインはデュプリーのリュックにヘルメットを入れ、ガントレットに気付いて左腕に装着してみた。周囲を見回したクインとデュプリーは、逆さ吊りにされたヘインズの遺体を確認する。そこにフュージティブ・プレデターが出現したので彼らは攻撃するが、激しく吹き飛ばされた。
ガントレットからは勝手に武器が発射され、ヘインズの体を真っ二つに切断した。クインはガントレットから飛び出した謎の金属球を掴み、その場から逃走する。近くに着陸した米軍ヘリコプターから降りたトレーガーという男は、部隊に「奴らは大きくて素早い。旅の思い出に君たちをズタズタにする」と告げる。彼は側近のサピアに、「乗組員を探せ。よそから来た者を確保しろ」と命じた。翌朝、村に着いたクインは酒場に入り、店主にリュックの中身を郵送するよう頼んだ。
アメリカの中学校では、少年のローリーがチェスの勝負を見物していた。悪ガキ2人組が火災報知器を鳴らして騒ぎを起こしたので、生徒たちは教室を出て行った。ローリーが両耳を押さえて苦しんでいると、悪ガキたちがやって来た。からかおうとした2人だが、ローリーがうずくまっているのを見て「壊れたな」と吐き捨てる。彼らはチェスの駒を乱暴に床へ落とし、教室を後にした。ローリーは立ち上がり、チェスの駒を全て元の状態に戻した。
ローリーが帰宅すると、母はメモを残して外出中だった。そこへ宅配業者が訪れ、「ここはクイン・マッケナさんの家?私書箱の料金が支払われてなかったんだ」と言う。「国防総省の仕事をしてる?」と問われたローリーは、軍の特殊コードを教えて「人を殺すんだよ」と告げた。メリーランド州のジョンズ・ホプキンス大学。進化生物学者のケイシー・ブラケットはチャーチという男たちに声を掛けられ、一緒に来るようよう要求された。
ケイシーが車に乗り込むと、チャーチはプレデターに関する政府の極秘資料を見せる。彼は1987年と1997年にプレデターが地球へ来ていることを語り、「最近は来る回数が増えている」と述べた。ローリーの母であるエミリーは帰宅し、購入したハロウィンの仮装用マスクを見せた。しかしローリーは全く興味を示さず、「そんなんじゃ僕だってことを隠せない」と告げた。クインは退役軍人省に連行されて尋問を受け、嘘発見器に掛けられた。クインは尋問官に、「本心は分かってる。メキシコの件で目撃者がいたらマズいんだろ。精神鑑定が目的じゃなくて、病んでるって決め付けたいんだろ」と指摘した。
届いた荷物を開封したローリーは、プレデターのヘルメットとガントレットを見て興奮した。彼がガントレットに付いている部品を外すと、ホログラムが浮かび上がった。クインは精神病院へ向かう護送バスに乗せられ、ネブラスカ、コイル、バクスリー、リンチ、ネトルズという5名と会った。ケイシーはスターゲイザー計画の秘密施設に案内され、研究者のキースから挨拶される。ラボにはプレデターが持ち込んだ武器やヘルメットが展示されており、ケイシーは驚いた。
キースはケイシーに、フュージティブ・プレデターが拘束されている研究室を見せた。トレーガーはケイシーを歓迎し、「脱出ポッドをメキシコで見つけた。船は捜索中だ。鎮静剤で眠らせている」と語った。「検査の結果が妙なんだ。ゲノム解析を何度も行ったが、人間の遺伝子が含まれている」というトレーガーの説明を聞いてデータを見たケイシーは、人間と交配した可能性があるのだと理解した。最初にフュージティブ・プレデターと接触したのがクインだと知った彼女は、是非とも会いたいとトレーガーに告げる。「彼は精神鑑定を受けて病院に送られた」と聞いたケイシーは、「廃人に追い込む前に幾つか質問させて」と要求した。
ネブラスカから護送バスに乗せられた理由を問われたクインは、「異星人に遭遇した。政府は隠したがってる」と話す。しかし誰もクインの説明を信じようとせず、全員が馬鹿にして笑った。その頃、ローリーがホログラムを作動させていたため、フュージティブ・プレデターを追っていたアサシン・プレデターの宇宙船が地球に飛来した。その情報が研究室に届いた直後、フュージティブが目を覚ました。彼は取り押さえようとする研究員を次々に始末し、ヘルメットが無いことを知って憤慨する。フュージティブは除染室にいたケイシーを無視して展示されているヘルメットを被り、ローリーの部屋の場所を突き止めた。
護送バスは施設に到着するが、足止めを食らう。外へ出たフュージティブの姿を見たネブラスカたちに、クインは「奴に仲間を殺された」と告げた。彼が脱走を提案すると、ネブラスカたちは快諾した。彼らは騒ぎを起こして護衛の兵士たちを誘い込み、バスを乗っ取った。クインは運転席に座ったネブラスカに「寄り道してくれ」と頼み、フュージティブの殺害に向かう。麻酔銃を持ってフュージティブを追跡していたケイシーは、バスの屋根に飛び乗った。
クインはプレデターを狙撃するが、弾は当たらなかった。反撃を受けた彼はバスから落下し、ケイシーは誤って自分の足に麻酔弾を撃ち込んでしまった。戦闘機はアサシンの宇宙船を狙うが、あえなく撃墜された。狙撃手はケイシーに接近し、トレーガーから始末しろという指示を受ける。そこへクインたちが盗んだバイクで駆け付け、狙撃手を退治した。彼らはケイシーをバイクに乗せ、施設から逃亡した。クインたちはモーテルで休憩を取り、ケイシーが目覚めるのを待った。「プレデターは何かを探してた。装備や武器を」とケイシーが言うと、クインは「俺が手に入れた。奴の行き先が分かった」と述べた。
ハロウィンの仮装をした大勢の子供たちが外を歩き回る中、クインはエミリーとローリーの暮らす家へ赴いた。「もうここは貴方の家じゃない」とローリーは言うが、クインは無視して地下室へ向かう。荷物が家に届いていること、ローリーが外出していることを知った彼は、焦りの色を見せる。その頃、ローリーはプレデターのヘルメットとガントレットを装着して外出していた。クインはエミリーに、凶暴な怪物がローリーを追っていると知らせた。
クインはネブラスカたちに、ローリー捜索への協力を要請した。最初はネブラスカ以外の4人が難色を示すが、結局は全員が承諾した。クインはネブラスカに目立たない車を用意するよう頼み、ケイシーに「一緒に来い」と指示した。ローリーは悪ガキ2人組に嘲笑されるが、無視して一軒の家へやお菓子を貰いに行く。反応が無いのでローリーが去ろうとすると、住人が2階から「これでも食らえ」とリンゴをヘルメットに投げ付けた。するとヘルメットが作動してミサイルを発射し、住人が死んで家は爆発した。悪ガキたちは怯えて逃げ出し、ローリーはヘルメットを捨てて立ち去った。
ローリーは2頭のプレデター・ハウンドに見つかるが、クインやネブラスカたちが駆け付けた。彼らはケイシーにローリーを避難させるよう頼み、プレデター・ハウンドを撃退した。そこへフュージティブが現れたので、クインたちは近くの小学校へ逃げ込んだ。クインはフュージティブに捕まり、ガントレットに付いていた装置を差し出した。すると大柄のアサシンが出現し、フュージティブに襲い掛かった。2体が戦っている間に、クインたちは車で逃走した。アサシンは簡単にフュージティブを抹殺し、ヘルメットを剥ぎ取った。
クインはエイミーに連絡し、ローリーが無事だと伝える。自宅にトレーガーの部下たちが来ていたので、エイミーはスマホに水を浴びせて使えないようにした。フュージティブの遺体を回収したトレーガーは、彼が逃亡者で大柄のプレデターは追跡者だと推理した。トレーガーは部下からの連絡で、ローリーがOSの起動装置を持っていることを知る。彼はプレデターの船を手に入れるため、ローリーを捜索することにした。
農場に避難したケイシーは採取した脊髄液を分析し、プレデターが交配によるハイブリッド化を始めていると確信してクインに教えた。そこへ1頭のプレデター・ハウンドが現れるが、襲ってくる気配が無いのでケイシーは研究材料として使おうと考える。トレーガーの乗るヘリコプターが飛来すると、クインはネブラスカたちに「ヘリコプターと爆弾を調達してくれ」と頼む。ケイシーがプレデター・ハウンドを逃がした直後、トレーガーやサピアたちがヘリコプターから降り立った。トレーガーは起動装置を渡すよう要求し、協力を拒むクインを納屋に押し込んだ。
ケイシーはトレーガーに、「先に来たプレデター1号の目的は?」と尋ねる。トレーガーは彼女に、人間が絶滅寸前だと悟ったプレデターが、今の内に遺伝子を集めようとして来訪の頻度を増やしたのだと説明した。さらに彼は、「彼らは地球に移り住むかもしれない。死んだプレデターは、それを食い止める方法を持って来た」と口にした。アサシンはマッケナ家に乗り込んでトレーガーの手下たちを始末し、ローリーの居場所を突き止めた。
トレーガーは宇宙船を見つけ出すため、ローリーをヘリコプターで連行した。クインは自分を暴行していた連中に反撃し、銃を奪って始末した。ケイシーはトレーガーの手下に殺されそうになるが、プレデター・ハウンドが現れて手榴弾を渡す。ケイシーは反撃し、手榴弾を使ってトレーガーの手下を始末した。そこへクインがやって来ると、プレデター・ハウンドは走り去った。クインはコイルたちが調達したヘリコプターに搭乗し、ローリーの奪還に向かう…。

監督はシェーン・ブラック、キャラクター創作はジム・トーマス&ジョン・トーマス、脚本はフレッド・デッカー&シェーン・ブラック、製作はジョン・デイヴィス、製作総指揮はビル・バナーマン&イラ・ナポリエッロ、共同製作はブロンデル・アイドゥー、製作協力はザッカリー・ワナーマン、撮影はラリー・フォン、美術はマーティン・ホイスト、編集はハリー・B・ミラー三世&ビリー・ウェバー、衣装はティシュ・モナハン、視覚効果監修はマット・スローン&ジョナサン・ロスバート、音楽はヘンリー・ジャックマン、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&トリッジ・トーヴェン。
出演はボイド・ホルブルック、トレヴァンテ・ローズ、スターリング・K・ブラウン、ジェイコブ・トレンブレイ、キーガン=マイケル・キー、オリヴィア・マン、トーマス・ジェーン、アルフィー・アレン、アウグスト・アギレラ、ジェイク・ビューシー、イヴォンヌ・ストラホフスキー、ブライアン・プリンス、マイク・ドプド、ニオール・マター、ハヴィエル・ラクロワ、ゲイブ・ラベル、ニコラス・ドゥキッチ、RJ・フェザーストンハウ、ジェームズ・サリスバリー、ギャリー・チョーク、ダンカン・フレイザー、エミー・アネケ、ダリル・シーラー、フレイザー・エイチソン他。


「プレデター」シリーズの第4作。
監督は『アイアンマン3』『ナイスガイズ!』のシェーン・ブラック。彼は1作目の『プレデター』に通信兵のリック・ホーキンス役で出演していた。
脚本は『ドラキュリアン』『ロボコップ3』のフレッド・デッカーとシェーン・ブラック監督による共同。
クインをボイド・ホルブルック、ネブラスカをトレヴァンテ・ローズ、トレーガーをスターリング・K・ブラウン、ローリーをジェイコブ・トレンブレイ、コイルをキーガン=マイケル・キー、ケイシーをオリヴィア・マン、バクスリーをトーマス・ジェーン、リンチをアルフィー・アレンが演じている。

「プレデター」シリーズは、1987年にアーノルド・シュワルツェネッガーの第1作が公開され、1990年にはダニー・グローヴァーの主演で第2弾が作られた。
その後、『エイリアンVS. プレデター』『AVP2 エイリアンズVS. プレデター』という番外編の2作が製作され、2010年に入ってシリーズ第3作『プレデターズ』が作られた。
「ヒットすれば続編も」と想定していたようだが、コケたので潰れた。
しかし、どうやらプレデターってのは使いたくなるキャラクターのようで、8年ぶりにシリーズ4作目が公開される運びとなった。
だが、これも評価は芳しくなかったので、シリーズが続くとしても「また仕切り直し」という形になりそうだ。

序盤、プレデターから逃げて翌朝を迎えたクインは、村の酒場で店主に協力を要請する。店主が無視しようとすると、クインは金属球を使って透明化する。クインがリュックの中身を郵送するよう頼むと、店主は承諾する。
「透明化したことに怯えて指示に従う」ということなんだろう。拳銃を見せられても全く動じなかった奴が、透明化にはビビったわけだ。
ちょっと無理は感じるが、そんなことよりも「なぜクインは金属球の使い方を理解しているのか」ってのが気になるぞ。
もしかすると「意図したわけじゃなく、たまたま透明化しただけ」ということかもしれないけど、だとしたら分かりにくいぞ。
しかも、その後には金属球を酒に入れて飲み込むんだぜ。その行動は、全く理解できないよ。
そんなヤバそうな物を、なぜ平気で飲み込むかね。

ローリーの登場シーンは、「彼がアスペルガー症候群だが天才的な記憶能力を持っている」ってことを示す内容となっている。
ただ、それを表現するための出来事が「火災報知機の悪戯を仕掛けた悪ガキたちが散らかしたチェスの駒を全て元に戻す」という内容なのは、どうなのかと。
もちろん、それで「ローリーが自閉症だけど天才的な記憶能力を持っている」ってことは伝わるよ。ただ、あんまりカッコ良くないのよ。
あと、「悪ガキたちが去った直後、すぐにローリーが立ち上がってチェスの駒を戻す」という行動の御都合主義も気になるし。さらに言うと、「そこでチェスの駒を元に戻す必要性ってゼロだよね」と身も蓋も無いことを指摘したくなっちゃうし。
ついでに言うと、そこは誰かローリーの能力に驚くリアクション担当者を置いた方がいいと思うし。

クインがヘルメットやガントレットを持ち歩かず、郵送するのは理解できる。
ただ、私書箱の料金を払っていないんだから、自宅に届くところまで想定していなかったのかと。
自宅に届けば、それを受け取るのがローリーという可能性は充分に考えられる。そしてローリーが荷物の中身を見たら、それが何なのか分からず勝手に作動させてしまうことも容易に想像が付く。
「偶然が重なった」という形にはしてあるけど、クインのボンクラな行動が原因でローリーを危険に巻き込んでいるようにしか思えないんだよね。

っていうかさ、事情を知らないから仕方が無いんだろうけど、やたらとヘルメットやガントレットを使ってプレデターに情報を提供するローリーも、不愉快なクソガキにしか見えないんだよね。
しかも、こいつはアクシデントとは言え、人間を殺しているわけで。それなのに、まるで罪悪感を抱いている様子が無いんだよね。
そんな風に平気でガキに人殺しをさせるのは、ショーン・ブラックらしいセンスとは言えるのかもしれない。
ただ、その悪趣味すぎるセンスは、笑って看過できないぞ。

ブレデターの呼び名について、ケイシーの質問を受けたトレーガーは「単なる通称だ。データによると彼らは獲物を追い、弱点を突いて倒す。その過程を楽しんでる」という説明する。
それに対してケイシーが「だったらブレデターじゃなくてハンターよ。プレデターは生存するために獲物を倒す」と言うと、トレーガーは「プレデターの方がサマになる」と告げる。
ようするに、「プレデターって呼び名は生態に合ってないんじゃねえか」という観客からのツッコミに対し、先手を打って言い訳しているのだ。

プレデターがプレデターという名前に合った行動を取らず、ただのハンターでしかないってのは、その通りかもしれない。ただし、そんなことは、大して気にならない。
それよりも本作品で引っ掛かるのは、「プレデターから戦士としての矜持が完全に失われている」という事実だ。
プレデターは絶対的に「戦士であること」を守り、そこに誇りを持っていたはずだ。
ところが今回のプレデターは、たた地球の侵略に来ているだけの奴なのだ。
そっちの方が、遥かに「プレデター」にふさわしくないだろうに。

プレデターには体を透明化できる特殊能力があって、それが人間に恐怖を与える大きな特徴でもあった。
しかし今回のプレデターは、その能力をほとんど使っていない。申し訳程度に使うだけで、基本的には姿を見せて人間に襲い掛かる。
相手が雑魚だから、わざわざ姿を消す必要性も無いってことなのかもしれない。
ただ、「じゃあ透明化の能力が無意味になっちゃうよね」と言いたくなる。それはプレデターと他のモンスターの違いを示す重要なポイントなんだから、有効活用すべきじゃないのかと。
プレデターが透明化しないから、人間サイドが「どうやって相手の位置を割り出すか」と策を凝らすことも無いし。

クインはプレデターと接触した事実を隠蔽しようとするトレーガーたちの陰謀で、精神病院に送られる。
でもケイシーが主張するように、拘束したプレデターについて詳しく知ろうとすれば、クインの証言は重要になってくるはずで。なので、最終的には精神病院送りにするにしても、その前に色々と利用した方がスターゲイザー計画にとっても有益でしょうに。
いきなり精神病院送りにするのは、底抜けの阿呆にしか思えないぞ。
っていうか、だからストーリー進行に無理を感じるのよね。

ケイシーが倒れていると、狙撃手がトレーガーから「始末しろ」と命じられる。
だけど、その命令は変でしょ。
ケイシーはプレデターを調べるために、わざわざ招聘された人物のはずで。それに、プレデターが外へ出ないよう、必死に追い掛けていたわけで。そんな人間を、なぜ簡単に始末しようとするのか。
たぶん、そこは「プレデターが逃げた事実を隠すため」と解釈しなきゃいけないんだろうとは思うのよ。ただ、そう解釈したとしても、まるで納得できないからね。
逃げたプレデターを発見して連れ戻すためにも、ケイシーは必要になるんじゃないのかと言いたくなるぞ。

ケイシーが麻酔で眠り込むと、クインたちはモーテルでベッドに寝かせる。クインとネブラスカを除く面々は彼女が目覚めるまで待って、その反応を楽しむ。そこは完全に、おふざけモードに入っている。
でも、この映画に、そこまでの緩和が必要なのかと考えた時に、「絶対に要らない」と断言できちゃうんだよね。それどころか、徹底的にシリアスでもいいぐらいなのよ。
どうやらシェーン・ブラックは、自身が1作目で演じたリック・ホーキンスのキャラ造形を増大させ、ネブラスカたちに分配しているみたいなんだよね。
だけど、1作目から踏襲すべきポイントって、そこじゃないでしょ。
しかも踏襲するどころか、そこを大盛りにしてどうすんのよ。

クインは施設でバスを奪った時、すぐに逃亡するのではなくプレデターを始末しようとする。
一応は「仲間を殺されたから」という理由があるけど、彼を突き動かす動機としては薄弱だ。
しかも、プレデターを徹底的に捜索して始末しようとはせず、ケイシーを連れて逃亡する。その辺りの切り替えも、かなり都合がいい。
また、この時はコイルたちがクインに協力しているのに、ローリー捜索への協力は拒否する。これもまた、ものすごく都合がいい。
結局は承諾するが、これまた都合がいい。

そもそも、ネブラスカたちがプレデターと戦わなきゃいけない理由なんて何も無いからね。
そして、途中で彼らを突き動かす動機が生じるわけでもないからね。
最後まで「しょうがないから」という程度の動機しか無いので、プレデターとのバトルが「熱くさせてくれる戦い」にならないんだよね。
後半にはクインがコイルたちに向かって「俺たちは軍人だ」と言うシーンがあるけど、そんな軽い台詞だけで観客を熱くさせようとしても無理だよ。

さらに厄介なことに、人間もプレデターも内輪揉めしているんだよね。最初から対立しているから、厳密には内輪揉めじゃないんだけどさ。
それはともかく、その「同じ種族での戦い」が、物語を面白くすることには全く貢献していない。
終盤に入るとクインたちとトレーガーの一味は共闘するけど、それも所詮は「数を増やすため」でしかないし。
共闘したからって、それで物語が盛り上がることは無いし。数が増えても、プレデターにやられる奴が増えるだけのことだし。

中途半端な存在のまま退場するトレーガーだが、そもそも彼のスターゲイザー計画が何なのかもボンヤリしているんだよね。
彼の説明だと、フュージティブはアサシンの計画を阻止して人間を助けるための道具を持って来ているんだけど、そいつを拘束して研究材料にしようとする意味は何なのかと。人間の味方になろうとしていた奴を酷い目に遭わせてまで、何がしたかったのかと。
トレーガーはプレデターの船を手に入れたがっているけど、その狙いは何なのかと。
フュージティブが持って来た道具を手に入れるのが目的なら、彼を拘束しなけりゃ提供してもらっていたはずだしね。

(観賞日:2020年2月26日)

 

*ポンコツ映画愛護協会