『ザ・ファントム』:1996、アメリカ&オーストラリア

1938年、キット・ウォーカーはベンガラのジャングルで暮らしていた。彼の家系は400年の昔から、ツガンダ族からのリングを身に着け、“ファントム”としてジャングルを守ってきた。以前はニューヨークで暮らしていたキットも、殺された父の後を継いだのだ。
ある日、実業家ザンダー・ドラックスの部下クイル達がジャングルに現れ、銀のドクロを盗み出した。キットはドクロを奪い返そうとするが、クイルに逃げられてしまう。文献を調べたキットは、ツガンダの3つのドクロを集めれば強大なパワーを得られることを知る。
ニューヨークのロングアイランドでは、大新聞の社長デイヴ・パーマーがドラックスについて調べていた。デイヴは調査のためにベンガラのジャングルへ向かおうとするが、彼の姪ダイアナが代わりに行くことを申し出る。それを知ったドラックスは部下のリサに命じて、船でジャングルに向かっていたダイアナを誘拐させる。
キットにとってダイアナは大学時代の同級生であり、今も心惹かれる相手であった。キットはダイアナを救出し、ドラックスのいるニューヨークへと向かう。キットはダイアナと共に2つ目のドクロがある世界史博物館に向かうが、ドラックスが現れてドクロを奪う。
ドラックスは2つのドクロの力によって、3つ目のドクロがある場所を知った。彼はダイアナを連れて、3つ目のドクロがあるシン一族の島へと向かう。キットはシン一族の長カバイ・シンを倒すが、ドラックスが3つ目のドクロを手に入れてしまう…。

監督はサイモン・ウィンサー、原作はリー・フォーク、脚本はジェフリー・ボーム、製作はロバート・エヴァンス&アラン・ラッドJr.、製作総指揮はジョー・ダンテ&グラハム・バーク&グレッグ・クート&ブルース・シャーロック&ピーター・ショークィスト&ディック・ヴェイン、撮影はデヴィッド・バー、編集はO・ニコラス・ブラウン&ブライアン・H・キャロル、美術はポール・ピータース、衣装はマーリン・スチュワート、音楽はデヴィッド・ニューマン。
主演はビリー・ゼイン、共演はクリスティ・スワンソン、トリート・ウィリアムズ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ジョン・テニー、サマンサ・エッガー、パトリック・マッグーハン、ジェームズ・レマー、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、ビル・スミトロヴィッチ、ケイシー・シーマツコ、デヴィッド・プローヴァル、ジョセフ・ラグノ、ロバート・コールビー、アル・ルシオ、レオン・ルッソム他。


アメリカン・コミックを映画化した作品。『ザ・ファントム/闇の帝王』という別タイトルもある。マリオ・ヴァン・ピープルズ主演の同名映画とは無関係。チャック・ノリス主演の『ザ・ファントム/地獄のヒーロー4』とも、もちろん無関係。
キットをビリー・ゼイン、ダイアナをクリスティ・スワンソン、ドラックスをトリート・ウィリアムズ、リサをキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、キットの父をパトリック・マッグーハン、クイルをジェームズ・レマー、カバイ・シンをケイリー=ヒロユキ・タガワが演じている。

序盤、クイル達は現地の子供を使い、今にも落ちそうな吊り橋をトラックで渡らせる。
でも、行きが大丈夫でも、その重みで吊り橋が落ちたら帰れないんだから、無理しない方がいいと思うぞ。
しかも、その直後にはトラックを降りて歩き始めるし。
だったら、無理してトラックを吊り橋のこちら側に渡らせる必要なんて無かったし。
で、後で分かるんだけど、「ファントムが吊り橋から落ちそうになるトラックから子供を助け出す」というアクションのために、トラックを移動させる必要があったのね。
つまり、アクションのためには明らかにマヌケな行動も仕方が無いという考え方なのね。

で、颯爽と登場するファントム先生、コスチュームは紫色のピチピチの全身タイツ。
ヒーローというより、ただの全身タイツ男。
で、武器として銃を持っているんだけど、ジャングルの奥地に住んでいるのに、銃弾の補充はどうしてるんだろうか。
あと、ファントムは当たり前のように白馬に乗ってるんだけど、基本的にジャングルってキチッとした道は少ないはずだし、馬での疾走って困難じゃないかな。
ま、劇中では馬が都合良く走れるような場所が一杯なので、そういう特殊なジャングルなんだろうけど。

それと、ファントムって特殊なパワーを持ったヒーローじゃなくて、どうやら普通の人間なのね。
でも、それだったら妙なコスチュームを着る必要ってあるのかな。
別に衣装を着替えて強くなるわけでもないんだし。
少なくとも、ニューヨークでは普通の格好の方がいいと思うぞ。
ファントムのコスチュームでウロウロすると、完全に変質者だから。

ファントムって、最初は海賊のシン一族への復讐を目的として誕生した存在のような説明があるんだけど、いつの間にかジャングルを守るのが仕事になってて、途中ではジャングルと無関係にダイアナの救出に向かう。
それってファントムの仕事なのかな。
たぶん、時代の移り変わりの中で、特定の目的のために動くのではなく、何でも屋の正義のヒーローへと変わっていったんだろうね。
そんな説明は劇中では無いけど。

一方、愉快な悪者ドラックスは、覗く部分に刃を仕掛けた顕微鏡で男の目を貫くという、「アンタ、それだけのために武器を仕込んだ顕微鏡を作ったのか」と言いたくなるバカバカしい悪者っぷりを見せてくれる。
というか、普通に殺した方が早いし、ラクだし。

3つのドクロの秘密を知ったキットは、父親の亡霊に(この亡霊に関する説明が何も無くて、当たり前のように出てくる辺りは別の意味でスゴイ)ドクロ探しを阻止しろと言われるのだが、そんなことは放っておいて物語はダイアナの救出劇へと向かう。
ダイアナのいる船に潜入したファントム、銃を構えて部屋に突入するが、そこは女性だらけのシャワー室。
えっと、そこは笑う場面なのかな。
その後もリサに誘惑されるとか、ダイアナと夫婦漫才みたいな掛け合いをするとか、妙にコミカルなんだけど。

いやね、明るくてウィットに富んだヒーローという位置付けなら、別に問題は無いと思うのね。ただ、ファントムって明るいというより、ただのバカにしか見えないのよね。
で、一応は「ファントムがダイアナを助け出す」ということになっているんだけど、ダイアナも一緒になって敵と戦っているし、逃亡する時に水上飛行機を運転するのはダイアナだし(ファントムはダイアナより先に、そそくさと後部座席に乗り込んでしまう)、同じぐらいのアクションをダイアナに要求してるので、どうも助けたという感じは弱い。

一応は正義のファントムと悪のドラックスの戦いというのが主軸なんだろうけど、なかなか対決ムードが盛りあがってくれないのね。
終盤に入っても、ファントムはドラックスとカバイ・シンのやり取りを傍観してるし。
しかもカバイ・シンが登場したことによって、悪いグループが2つに分散してるし。
シン一族って、出さない方が良かったのでは。
で、ファントムはカバイ・シンに戦いを挑むのだが、形としてはシン一族に殺されそうになっていたドラックスを助けるということになってるし。
そんで、いつの間にかリサは味方になってるし。
そんな腰砕けにしてまでリサを寝返らせる意味が分からんよ。

せめてアクションが得意な俳優をファントム役に起用すれば、格闘アクションの場面だけは質がアップしたのかもしれないけど、演じているのはビリー・ゼインだからねえ。
やっぱり予想通り、モッチャリした格闘アクションしか見せてくれませんでした。


第19回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:創設者賞

 

*ポンコツ映画愛護協会