『ザ・フォーリナー／復讐者』：2017、イギリス＆中国＆アメリカ
ロンドン。クァン・ノク・ミンは娘のファンを車に乗せ、パーティードレスを買う店まで送り届けた。その直後、イギリスの銀行を狙った北アイルランドの武装組織UDIによる爆破テロが発生し、ファンを含む12名が犠牲になった。記者のイアン・ウッドは現場へ駆け付け、娘を抱えて泣いているクァンの姿を写真に収めた。実行犯のパトリック・オライリーたちはテレビのニュースで被害者に関する情報を確認し、しばらくロンドンで潜伏することにした。
北アイルランド首都、ベルファスト。北アイルランドの副首相を務めるリアム・ヘネシーは、愛人のマギーと浮気していた。彼はメールを確認し、テロ事件の発生を知った。妻のメアリーから着信があったので彼は電話を入れ、会議中だと嘘をついた。ヘネシーはイギリス政府閣僚のキャサリン・デイヴィスとから電話で情報提供を求められ、和平維持のために逃亡犯に恩赦を出すよう要求した。彼はUDIの幹部を集め、和平合意の維持が必要だと訴える。彼は国内外の武器庫を全て調べ、関わりのある人間を見つけるよう命じた。
クァンはロンドン警視庁のテロ対策司令部を何度も訪れて犯人の逮捕を要求し、リチャード・ブロムリー警視長に迷惑がられた。クァンは中国の少数民族であること、シンガポールから脱出する時に２人の娘と妻をタイの海賊に殺されていることを語った。彼にとってファンは、残された唯一の家族だったのだ。犯人が一向に特定されないため、クァンは独自で調べようとする。ヘネシーが元UDIの兵士だと知った彼は、事務所に電話を掛けた。クァンは犯人に関する情報提供を求めるが、相手にされなかった。
クァンはヘネシーの事務所に押し掛け、犯人を知らないのなら捜してくれと要求する。ヘネシーが「何も知らない」と拒否すると、クァンは「考えが変わりますよ」と言い残して去る。彼は事務所のトイレに小型爆弾を仕掛けて起動し、ヘネシーに電話して「気が変わった？」と問い掛けた。ヘネシーは激怒して「我々を甘く見るな」と言い放つが、クァンは協力する気が無いと知って電話を切った。ヘネシーはUDIのジム・カヴァナーやビル・マクマホンに対し、全ての宿を当たってクァンを見つけるよう命じた。さらに彼は、ニューヨークにいる甥のショーン・モリソンに連絡して戻るよう要請した。
クァンはリアムの車に発火装置を仕掛け、カヴァナーたちを脅した。ヘネシーはクァンがいる民宿を突き止め、４人の兵隊を差し向けた。クァンはカヴァナーたちに襲われるが、反撃して逃走した。ショーンが家に来ると、ヘネシーは「中国人はカヴァナーに任せる。お前はロンドンに行け」と言う。彼はショーンに、「ブロムリーと会え。我々の爆弾と異なることを理解させ、味方に付けろ。我々に手を貸すよう仕向け、裏切り者を捜し出す」と述べた。。
クァンはヘネシーがマギーと店で密会する現場をスマホで撮影し、写真を送り付けて「犯人を教えろ」とメッセージを添えた。ショーンはブロムリーに会い、犯人は脱党者だと告げる。協力を要請されたブロムリーは、「すぐに犯人の名前を教えろ。こっちで片付ける」と条件を付けた。ヘネシーは妻を連れて農場へ非難するが、クァンは納屋を爆破して脅しを掛けた。オライリーたちは、次のテロ計画について準備を進めていた。イアンがバーで飲んでいると、マギーが接触した。
次の朝、農場では遠隔操作によって車が爆破され、ヘネシーの部下が重傷を負った。ヘネシーは部下のミックに、メアリーをホテルへ避難させるよう命じた。クァンは森に罠を仕掛けており、やって来たヘネシーの部下たちは次々に負傷する。カヴァナーの発砲を受けたため、クァンは逃亡して身を隠した。カヴァナーは「森で有利に動ける者を使いましょう」とヘネシーに言い、ショーンを呼ぶよう要請した。ショーンはメアリーの部屋を訪れ、関係を持った。２人は以前から不倫関係にあり、メアリーは弟が殺害された時に復讐を要求したのにヘネシーが逮捕だけで済ませたことへの恨みを吐露した。
ヘネシーはショーンに連絡し、クァンの始末を依頼した。彼はクァンに関するの情報をキャサリンから受け取り、ベトコンの破壊工作員だったことを知った。彼は同志であるヒュー・マクグラスの訪問を受け、「君の武器庫から爆弾が消えてる」と指摘する。マクグラスが「主導権争いには絶好の機会だ。私が中国人を捕まえてやる」と言うので、ヘネシーは「知ってるのか？」と訊く。マクグラスが「前線に戻って兵士を鼓舞しろ」と要求すると、彼は「金融機関を狙えとは言ったが、犠牲者を出さないのが条件だったはずだ」と怒りを向ける。マクグラスは「戦いの大義を忘れたか。君は変わった」と批判し、その場を去った。
ヘネシーが書斎に行くと、クァンが銃を持って待ち受けていた。「犯人は誰だ？」と詰問されたヘネシーは、「爆弾を使った奴らに罠を仕掛けた。犯行声明を出すためのコード名を入れると、管理者名が届くようにしてある」と説明する。クァンは「猶予は１人だ」と通告し、書斎を去った。マギーはバスを爆破し、現場を去った。警察には犯行声明が届くが、コード名は出なかった。キャサリンはヘネシーに電話を入れ、「48時間以内に落下傘部隊が街へ行く」と告げた。
ミックはヘネシーに、ショーンがメアリーの部屋を訪れたこと、ロビーに来たメアリーがマクグラスと会っていたことを報告した。警察はオライリーが実行犯であること、マクグラスとパブで会っていたことを突き止め、ブロムリーがヘネシーに情報を伝えた。ブロムリーはキャサリンが同席する中、軍用ヘリコプターが農場へ向かっていることをヘネシーに教えた。彼はマクグラスから犯人全員の名前とアジトを聞き出すよう要求し、「そうすればアンタは助かる」と告げた。
ヘネシーはマクグラスに銃を突き付け、犯人全員の名前とアジトを白状させる。５人の犯人グループにマギーも含まれていることを知った彼に、マクグラスは「万が一の時の保険だ。連中が捕まれば、お前の名前を吐く」と言い放った。ヘネシーがメアリーとの関係を尋ねると、マクグラスは「弟のことでお前を恨んでいて、相談を受けた」と互いに協力関係にあったことを話した。ヘネシーはマクグラスを射殺し、ショーンに連絡してクァンの殺害を命じた…。監督はマーティン・キャンベル、原作はスティーブン・レザー、脚本はデヴィッド・マルコーニ、製作はジャッキー・チェン＆ウェイン・マーク・ゴッドフリー＆アーサー・サーキシアン＆スコット・ランプキン＆ジェイミー・マーシャル＆クレア・カプチャク＆キャシー・シュルマン＆Zhao Leiチャオ・レイ＆チャン・デフ、製作総指揮はデヴィッド・マルコーニ＆フィリップ・バトン＆ペニー・チャン＆アダム・フォーゲルソン＆オーレン・アヴィヴ＆ジョー・タム＆ケアリー・チェン＆ジョン・ツェン＆ケイ・キンハン＆ジャッキー・チェン＆ロバート・シモンズ、製作協力はサニー・サン＆デイヴ・リー、共同製作総指揮はリウ・シンシュアン＆カール・リー、撮影はデヴィッド・タッターサル、美術はアレックス・キャメロン、編集はアンジェラ・Ｍ・カタンザーロ、衣装はアレックス・ボヴェイルド、音楽はクリフ・マルティネス、音楽監修はジェイソン・マーキー。
出演はジャッキー・チェン、ピアース・ブロスナン、リウ・タオ、オーラ・ブラディー、ダーモット・クロウリー、レイ・フィアロン、ロリー・フレック・バーンズ、マイケル・マケルハットン、チャーリー・マーフィー、リア・ウィリアムズ、カオラン・バーン、ジョン・クローニン、スティーヴン・ホーガン、ルーファス・ジョーンズ、ケイティー・ルング、ナイアル・マクナミー、アーロン・モナハン、デヴィッド・ピアース、サイモン・クンツ、スコット・スパロウ、ピッパ・ベネット＝ワーナー、ショーン・カンピオン、ショーン・グリーソン、マーク・タンディー、ジェーン・ソーン他。
スティーブン・レザーの小説『チャイナマン』を基にした作品。
監督は『復讐捜査線』『グリーン・ランタン』のマーティン・キャンベル。
脚本は『エネミー・オブ・アメリカ』『インターセクション』のデヴィッド・マルコーニ。
クァンをジャッキー・チェン、ヘネシーをピアース・ブロスナン、メアリーをオーラ・ブラディー、マクグラスをダーモット・クロウリー、ブロムリーをレイ・フィアロン、ショーンをロリー・フレック・バーンズ、カヴァナーをマイケル・マケルハットン、マギーをチャーリー・マーフィー、キャサリンをリア・ウィリアムズが演じている。クァンは事務所のトイレに小型爆弾を仕掛ける時も、車に発火装置を仕掛ける時も、ヘネシーたちの予想を超える行動で混乱させている。
そこで意外な能力の高さを見せているんだから、ヘネシーが民宿を突き止めた時も「カヴァナーたちが乗り込むと既に逃げた後」とか、「何かメッセージが残されている」みたいな形にしておいた方が良くないか。
そりゃあアクションシーンを用意したかったのは分かるけど、「敵が来たのでクァンは慌てて逃げようとするが、襲われてピンチに陥る」ってのは、キャラとしての魅力を減退させている。
「ただの冴えない老人かと思ったら高い戦闘能力の持ち主」という趣向なんだから、そこは徹底した方がいいんじゃないかと。ジャッキー・チェンの主演作だと、基本はコミカルな要素が付き物だ。しかし本作品は冒頭で主人公が娘を殺されており、そこからは殺伐として雰囲気の中で復讐劇が描かれる。
なので、コミカルな要素の入り込む余地が無い。
完全に「他人の映画に主演として招かれた」という立場なのかと思ったら、ジャッキーは製作に関わっているんだけどね。
まあ『ポリス・ストーリー／レジェンド』のような作品もあるし、ジャッキーとしても「いつもコミカルってわけじゃないよ」ということなのかもしれない。
ともかく、「ジャッキーならコミカルな作品がいい」と思っている人には向いていない。ただ、なんでジャッキーの主演なのかね。「ジャッキーだけどシリアス一辺倒」という意外性を狙っているのかな。
原作は未読だが、本来の主人公は中国系ベトナム人の設定らしい。そういう主人公がベトナム戦争絡みで辛い過去を持っており、そんな人間が北アイルランド問題に関与するという部分に意味を持たせているんだろうと思うんだよね。
でも映画だと中国人の設定だし、ベトナム戦争には関わっていたようだけど詳細は分からない。
なので、中国人という設定の必要性も感じないんだよね。爆破テロを起こしたのはオライリーたちであり、そのことを本当にヘネシーは知らない。むしろヘネシーからすると彼らは和平合意を邪魔する裏切り者であり、何とか見つけ出したいと思っている。
なので、クァンがヘネシーを執拗に脅し、何度も爆破事件を起こすのは、完全にズレた行動だ。そのせいでヘネシーはクァンを始末しようと動き出すんだから、むしろ面倒を増やしているようなモノだ。
そんなことをしなくてもヘネシーは犯人を見つけようとしているんだから、それを邪魔していると言ってもいいぐらいだ。
そして肝心なオライリーたちの動きは、カヤの外に置かれる時間が長くなっている。クァンは森に来た連中を罠に掛ける時、１人に駆け寄って「犯人は誰だ？」と問い詰める。
だけど、そんな下っ端の兵隊が、テロの犯人について情報を知っているはずがないでしょ。
そんな奴に不用意に近付いて尋問していたせいでカヴァナーに撃たれて怪我を負うってのが、あまりにもボンクラすぎる行動にしか思えないぞ。
「娘を殺されて冷静な判断力を欠いている」ってことなのかもしれないけど、一方で敵を追い込む作戦は冷静に遂行しているからね。後半に入ってから、オライリーたちの動きが活発になる。バスを爆破し、次の計画も進める。
マギーが一味だと判明したり、マクグラスの関与が判明したりと、人間関係も明らかになっていく。
もちろん彼らはヘネシーと密接な関係にあるわけで、そうなると「クァンなんて、いなくても良くね？」と思ってしまう。
「ヘネシーが和平維持のために組織の裏切り者を排除しようとする」という動きと、「クァンが娘の復讐に燃える」という動きが、ずっと平行線のままになっているんだよね。あと、この映画の殺伐としていて痛々しい雰囲気の中で、ジャッキー・チェンが普段通りのスタイルの格闘アクションを披露するんだよね。
それって、全く噛み合っていないんだよね。
ベトコンの破壊工作員というクァンの経歴を考えると、細かい打撃を何発も当てるんじゃなくて、一撃で敵を仕留めるような戦い方をしなきゃ筋が通らないはずだし。
だから、そもそも企画とジャッキー・チェンがミスマッチだとしか思えないのよね。（観賞日：2022年10月23日）