『ザ・コア』:2003、アメリカ&イギリス

マサチューセッツ州ボストンで、心臓にペースメーカーを装着していた32人が同時に亡くなった。シカゴ大学の地球物理学教授ジョシュ・キーズは、米国空軍のトーマス・パーセル将軍の元に招聘された。その場所には、ジョシュの友人で高エネルギー武器専門学者のサージ・レヴェクも呼び出されていた。パーセルはジョシュとサージから、今回の事件が電磁パルスを使った武器によるものではないという返答を得ると、詳しい事情を説明せずに立ち去った。
ロンドンのトラファルガー広場では、無数の鳩が方向感覚を失い、あちこちに衝突するという現象が発生した。一方、地球へ帰還しようとしていたスペースシャトルのエンデヴァーは制御不能に陥り、ロサンゼルスのダウンタウンに墜落しそうになる危機を迎えていた。アイヴァーソン船長と副操縦士のレベッカ ・チャイルズ少佐は、何とか川に不時着させることに成功した。
独自に異常現象の調査を始めたジョシュは、地球のコアが回転を停止し、地球が滅亡する危機にあると推理する。コアの発電によって地球は電磁場を発生させ、それが宇宙の放射線を防いでいる。コアの回転が停止して磁場が不安定になったため、地球は太陽風を防ぐことが出来なくなり、このままでは燃え尽きてしまうというのがジョシュの出した調査結果だ。
ジョシュから自説を聞かされた地球物理学の第一人者コンラッド・ジムスキー博士は、自らの極秘ファイルをホワイトハウスへ持って行く。ジョシュはペンタゴンに呼び出され、パーセル将軍や政府の官僚達に自説を語った。コアに行って再始動させれば電磁場を修正し、地球の滅亡は回避できる。だが、そのためには強い圧力の掛かる地中を潜って進む必要がある。
ジョシュやジムスキー達は岩石を削る地中探査船を開発中のエド・ブラズルトン博士に会い、完成まで10年は掛かるところを3ヶ月に短縮してほしいと依頼した。コア再始動プロジェクトには、新たに天才ハッカーのラット・フィンチが加わった。彼に与えられた仕事は、人々をパニックに陥れないようインターネットを使って情報をコントロールすることだ。
レベッカとアイヴァーソンは、コア再始動プロジェクトへの参加を指示された。その2人にジョシュ、ジムスキー、サージ、エドを加えた6人が、完成した地中探査船ヴァージルの乗組員テラノートだ。6人はパーセルやNASAの飛行主任タルマ・スティックリー達が見守る中、マリアナ海溝から地底へと潜行した。
ヴァージルは様々な危機に襲われ、アイヴァーソンとサージが命を落とした。コアに近付いたジョシュ達は、再始動のための核爆弾を仕掛ける計算をする。だが、予想と大きく異なる状況のため、核爆発では計算通りの効果が得られないことが判明した。そんな中、ジムスキーとパーセルがデスティニー計画の存在を明らかにした。それは人工地震発生装置を使った計画のことで、その実験の影響でコアが停止していたのだった…。

監督はジョン・アミエル、脚本はクーパー・レイン&ジョン・ロジャース、製作はクーパー・レイン&デヴィッド・フォスター&ショーン・ベイリー、共同製作はデヴィッド・B・ハウスホルター、撮影はジョン・リンドレー、イタリアン・シークエンス撮影はフィル・メヒュー、編集はテリー・ローリングス、美術はフィリップ・ハリソン、衣装はダニエル・J・レスター、音楽はクリストファー・ヤング。
出演はアーロン・エッカート、ヒラリー・スワンク、スタンリー・トゥッチ、デルロイ・リンド、チェッキー・カリョ、リチャード・ジェンキンス、アルフレ・ウッダード、DJクオールズ、ブルース・グリーンウッド、ショーン・グリーン、クリストファー・シャイアー、レッカ・シャーマ、トム・ショルト、ディオン・ジョンストン、ロスガー・マシューズ、ナサニエル・デヴォー、ロバート・マニトファイズ、グレッグ・ベネット、マット・ウィンストン他。


『コピーキャット』『エントラップメント』のジョン・アミエルが監督したSFパニック映画。
ジョシュをアーロン・エッカート、レベッカをヒラリー・スワンク、ジムスキーをスタンリー・トゥッチ、エドをデルロイ・リンド、サージをチェッキー・カリョ、パーセルをリチャード・ジェンキンス、スティックリーをアルフレ・ウッダード、ラットをDJクオールズ、アイヴァーソンをブルース・グリーンウッドが演じている。

ずさん極まりない計画を立てて、欠陥だらけのマシンを使い、肝心な所で準備や予測が出来ていないボンクラな科学者連中が行動する。
とにかく何から何までデタラメな映画だ。
デタラメなトラブルを、デタラメな理論に基づいたデタラメな方法によって、デタラメな連中が解決するという、「ドキッ!デタラメだらけの大運動会」だ(ちょっと違うと思うぞ)。

しかし私は、デタラメだからといって、必ずしも酷評すべき駄作になるとは考えていない。
この映画の致命的な欠点は、デタラメだという部分ではなく、シナリオがデタラメなのに、監督が(もしくは製作サイドが)変にリアリティーを持たせようとしたことにある。
演出によってリアリティーを持たせようとしたところで土台がデタラメなので、どうしたって無理が生じてくる。
その結果、本格SFの重厚さも無く、バカ映画としての面白さも無く、単純に出来映えが悪いだけの作品になってしまった。

この映画を演出するに当たって必要なのは、デタラメをリアリティーのあるものに見せ掛けようとする無駄な努力ではなく、完全に開き直ってバカ映画としての道を突き進もうとする心意気だったのだ。
「パラオの海でバカになれ」というアントニオ猪木イズムこそが、何よりも大切だったのだ(それはちょっと違うような気もするぞ)。
そもそもパニックがアメリカとイタリアでしか起きていないという辺りからしてB級テイスト丸出しなんだし、もっとバカになりゃいいのに。

そういう意味では、ハッタリの利かないジョン・アミエルを監督に据えている段階で、もはや勝ち目が無かったと言い切ってしまってもいいかもしれない。
掴みになるべきオープニングの「ペースメーカー使用者が一斉に死亡する」というシーンからして、全く掴めていないんだよなあ。
バカ風味のコケ脅しが足りないのだ、そこには。

具体的に手を加える点を挙げるならば、例えばジムスキーには眼帯か片メガネを着けさせるべきだった。
レベッカには露出度の高い姿になるシーンを用意すべきだった(出来れば配役からしてヒラリー・スワンクよりもエロいネーチャンにすべき)。
コア再始動には核爆弾ではなく専用の特殊武器を作るべきだった(それにしてもアメリカは危機回避に核爆弾を安易に使うのが好きだなあ)。
ヴァージルにはドリルやキャタピラーのような分かりやすい飾りを付けるべきだった。ものすごく用途の限られた秘密兵器を幾つか搭載しておくべきだった。
乗組員の死亡シーンではケレン味たっぷりに描くか残虐性を強調するかすべきだった。
ヴァージルの乗組員には、不必要にデザインに凝った揃いのコスチュームを着用させるべきだった。

いっそのこと、「実はコア停止は地底人の仕業で、ヴァージルの乗組員の中には地底人のスパイが混じっていたが、仲間の誰かに惚れて人間の味方になる」という展開にすべきだった。
そうすれば、もっと面白くなったはずだ。
たぶん、面白くなったと思う。
もしかしたら面白くなったかもしれない。
いやダメかもしんない。
まあダメだろうな(ダメなのかよ)。

 

*ポンコツ映画愛護協会