『スイッチバック 追跡者』:1997、アメリカ

ベビーシッターのミッシーが幼いアンディー少年の面倒を見ていると、訪問者がやって来た。ミッシーがドアの小窓を開けると男が立っており、「フランクかジーンは?」と問い掛けた。男はジーンの旧友だと言い、先週には連絡してあると話す。ミッシーがチェーンロックを付けたままドアを少しだけ開けると、男は「せめてアンディーの顔を見たい」と言う。ミッシーが「御両親が帰宅しないと」と告げると、男は了解した。ミッシーは男が立ち去る様子を確認し、アンディーの元へ戻ろうとする。だが、どこからか侵入した男はミッシーを殺害し、アンディーを誘拐した。
テキサス州アマリロでは、保安官のバック・オルムステッドがジャック・マクギニスの巨大な選挙用看板を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。警察署長のジャックは、次期保安官選挙に立候補しているのだ。モーテルで殺人事件が発生し、バックは助手のネイトと共に現場へ赴く。死体で発見されたのは男女2名で、外科で切開したような綺麗な傷が残されていた。男はビル・サザーランドという名前で、2人分の宿代を払っている。女は客ではなく、モーテルのメイドだった。死体の発見現場からは、ビルの財布も車のキーも無くなっていた。目撃者はおらず、防犯カメラの映像にも手掛かりは無かった。バックがモーテルを出るとジャックが現れ、「犯人を見つけても譲る気は無い」と対抗心を示した。
ヒッチハイクで旅をしているレイン・ディクソンは、家に寄って行くよう勧めた男に「もう少し先へ進みたい」と告げて車を降りた。彼が次の車を探していると、ボブ・グドールという黒人男性が停まってくれた。車内には女性のヌード写真が全面に貼り付けられていたので、レインは困惑した。レインがソルトレークへ向かうことを話すと、ボブは「俺もだ」と告げた。「この先のバーで降りたい」とレインが言うと、ボブは「やめときな。この辺は荒っぽい」と忠告する。しかしレインは「心配ない」と言い、降ろしてもらった。
レインがバーに入ると、リックという男が近付いて来た。リックは腕を骨折している仲間のベンに、「この男か?」と質問した。ベンは「間違いない」と言い、先週の金曜に襲って来た一味だと証言した。レインは「人違いだ」と否定するが、リックと仲間たちは信じようとしなかった。レインはリックたちに暴行されるが、ライフルを持ったボブが助けに駆け付けた。ボブはリックを脅し、レインを車に乗せてバーを去った。
バックはネイトに、FBI捜査官が来ることを知らせた。FBI捜査官のフランク・ラクロスはビルの遺体を確認し、「手口に見覚えがある」と口にした。彼はダイナーでバックとネイトに会い、「私のヤマと同じ犯人だ」と告げる。ただ犯人の特徴については、何も情報が分かっていなかった。バックは助手のオスカーから連絡を受け、フランクとネイトを伴って現場へ赴いた。犯人を追ってアパートに入ると発砲して来たので、ジャックが市警の狙撃チームを呼んだとオスカーは説明した。
フランクは立て籠もり犯が乗り捨てた車を調べ、ビルの財布と男の死体を発見した。彼はジャックの制止を無視してアパートに乗り込み、犯人と対峙した。犯人は住人を人質に取っていたが、フランクは構わず脚を撃った。人質を逃がしたフランクは、犯人に「車はどこで手に入れた?モーテルだろ」と質問した。犯人が「知らねえ。何時間か前に盗んだ」と答えた直後、警官隊が突入して彼を連行した。フランクはバックにビルの財布を渡し、車内にあったことを教える。「犯人逮捕だな」と言われたフランクは、「奴じゃない」と告げた。
翌日、立て籠もり犯はヘクター・サルデズという前科8犯の男だと判明する。殺人の前科もあったが、フランクは「今回は車の窃盗だけだ。恐らく財布や死体には気付いていなかった」と言う。ジャックは「僕の部下を撃った弾と、死体の弾は一致したぞ」と反発し、「検事の許可が出たら、連続殺人容疑で起訴する」と述べた。バックは保安官選挙で負けられないという思いから、フランクに「真犯人の情報をくれ。協力したい」と申し入れた。
ボブとレインはダイナーに立ち寄り、会話を交わす。ボブは「鉄道員やカウボーイをやっていたこともある。何でもやった」と言い、何をやっていたのかレインに質問した。レインは「今は失業中だ。以前は病院で何でも屋として働いていた」と話す。「ユタで職探しか?」とボブが訊くと、彼は「ただの旅行だ」と答える。客の男が苦しんで倒れると、レインは「僕は医者だ」と告げた。彼は迅速な処置で、喉に詰まった物を摘出した。ダイナーを出たボブが興奮して「たまげたな、医者か」と言うと、レインは「勢いで言っただけだ」と否定する。しかしボブは、「手術を見た。医者なのは間違いない」と述べた。
フランクはバックとネイトに、自分が追っている犯人について「快楽殺人だ。被害者には身寄りが無く、そのため発見が遅れる。被害者は18名。本人が知らせた。犯人が手紙を送って来る」と説明する。バックが「なぜ君に?」と尋ねると、彼は「特別捜査で奴を15ヶ月追っていた。特捜が出来てから、奴は大胆になった。殺人をゲームのように考え始めたんだ。報道を意識して、ミスを犯すようになった。だが、3ヶ月前に消息を絶った」と述べた。
レインはボブに、「研修医の時に辞めた。腕は良かったが、自信過剰だった。患者を死なせて、そのことが頭から離れなくなった」と話す。フランクは行方不明者が6名で所在不明のホームレスが5名いると聞かされ、「奴の狙いは車の所有者だ」と告げる。サルデズの弁護人を務めるホルヘが保安官事務所を訪れ、フランクに「貴方は依頼人の人権を侵害した。これで裁判は楽勝だ。民事でも訴えるつもりだ」と語った。フランクはネイトから、モーテルで発見された毛髪検査の結果が出たことを聞かされた。フランクが余裕の笑みを浮かべて「裁判で会おう」と言うと、ホルヘは途端に不安な様子を見せた。彼は取引を持ち掛けるが、フランクは「もう不要だ」と告げた。
ホルヘは殺人罪になる確率が高いと推測し、「サルデズは空港のC地区で車で盗んだ」と情報を提供した。するとフランクは情報提供に感謝するが、発見された毛髪はサルデズとは別人の物だった。色はブラウンで、20代前半の男性の毛髪だった。フランクは保安官助手に、食堂での聞き込みを指示した。ネイトは保安官選挙の投票に間に合うよう会見を開くべきだと主張するが、フランクは「犯人に我々の動きを知られる」と反対した。ネイトは「15年も働いて来たのに、マクギニスが当選したら失業だ」と言うが、バックは「署長も証拠不足でサルデズの逮捕を発表していない。時が来るまで静観しよう」と述べた。
バックはFBIのモンゴメリーからの電話を受け、「ラクロスを引き取りに行く」と告げられる。モンゴメリーはフランクが別の任務を放棄して失踪したこと、同じことを繰り返して保護観察中であることをバックに説明し、「捕まえてくれ」と要請した。「でも捜査は?」とバックが言うと、彼は「3ヶ月前に打ち切った」と述べた。「3人も殺されたのに、事件を知ってる捜査官を引き渡せと?説明を」とバックが要求すると、モンゴメリーは「その義務は無い。断れば連邦保安官を派遣する」と告げた。
バックはモンゴメリーから電話があったことをフランクに明かさず自宅に招いて昼食を用意した。するとフランクは察した様子で、「息子が誘拐された」と告白する。彼は「犯人の手掛かりを掴み、逮捕は目前だった。しかし寸前で逃げられ、息子を誘拐された。本部は誘拐を最優先で捜索し、指紋が一致した男の死体をモーテルで発見した。犯人しか知らない内容を示したメモが見つかったが、男は替え玉だ」と語り、現場に残されていた写真を見せる。そこには拘束されたアンディーの姿が写っており、裏には「2−18 見つけるには俺を殺し、信じろ」と記されていた。
ネイトはジェームズ・キャラハンという男が所有する77年型キャデラックが2日前に盗まれていることを知り、緊急手配を指示した。ボブは車を修理するため、旧知の仲であるショーティーの家に立ち寄った。ラジオのニュースでアマリロの事件が報じられると、ショーティーは「物騒だから持ち歩いてる」と拳銃を見せた。ボブは近くの雑貨店へ行き、1人で店番をしているベティーに話し掛けた。彼は他に客がいないことを確認し、密かにナイフを握った。
ショーティーの家に巡回警官のジョンが訪れ、修理中の77年型キャデラックに目を留めた。レインは「君のか?」と問われ、「友達のだ」と答えてボブを捜しに行く。ボブはベティーを追ってバックヤードへ行くが、そこへレインがやって来た。「修理が終わった」と言われたボブは、ベティーに別れを告げて店を去った。彼は車に乗り込むが、「忘れ物をした」とレインを残してショーティーの家へ戻る。ボブはショーティーに歩み寄ると、手にした包丁で殺害した。
ネイトはバックに連絡を入れ、手配車が発見されたこと、運転手は食堂の防犯カメラに写っていたのと同じ若い男であることを知らせる。彼が犯人と断定したのはレインだった。モンゴメリーが来ていることを知らされたバックは、フランクを車に乗せる。彼は事務所へ戻らず、ネイトにヘリコプターの手配を指示した。フランクはバックの用意してくれたヘリに乗り、手配車が発見されたマーティンスバーグへ向かう。一方、ボブはレインに「妻が死んで、妹が息子の面倒を見てくれている。俺に何かあったら息子の後見人になってくれ」と頼み、住所を教えた…。

脚本&監督はジェブ・スチュアート、製作はゲイル・アン・ハード、製作総指揮はキース・サンプルズ&メル・エフロス&ジェブ・スチュアート、撮影はオリヴァー・ウッド、美術はジェフ・ハワード、編集はコンラッド・バフ、衣装はベッツィー・ハイマン、音楽はベイジル・ポールドゥリス、音楽監修はラルフ・サル。
出演はデニス・クエイド、ダニー・グローヴァー、R・リー・アーメイ、ジャレッド・レトー、テッド・レヴィン、ウィリアム・フィクトナー、レオ・バームスター、ジュリオ・オスカー・メチョソ、ヴィン・クーニー、マール・ケネディー、オーヴィル・ストーバー、アリソン・スミス、グレゴリー・スコット・カミンズ、トミー・プエット、スチュアート・グラント、クローディア・ステーデリン、ウォルト・ゴギンズ、キース・ハッテン、ゲイリー・ギーム、マーク・カリー、マーティン・デヴィッド・ボイド、ケヴィン・バートレット他。


『ハリソン・フォード 逃亡者』『理由』などの脚本家であるジェブ・スチュアートが、初めて監督を務めた作品。
最初にビデオ化された時は『スイッチバック』という邦題だった。
フランクをデニス・クエイド、ボブをダニー・グローヴァー、バックをR・リー・アーメイ、レインをジャレッド・レトー、ネイトをテッド・レヴィン、ジャックをウィリアム・フィクトナー、ショーティーをレオ・バームスターが演じている。

冒頭のシーンには、かなりの疑問点がある。
そもそもミッシーが少しだけ開いていた窓を閉めた時点で「その不用心さは不自然だろ」と言いたくなるが、そこはスルーしてもいい。
だが、犯人がどこから侵入したのか、それがサッパリ分からない。少しだけ開いていた窓から侵入するのは不可能だしね。
そもそも、そこで侵入する男は、明らかに後から判明する連続殺人犯とは別人なのよね。
そうなると、整合性が取れなくなっちゃうでしょ。

フランクが追っている事件については、始まってから40分ぐらい経過しないと何の情報も提示されない。
どれだけの犠牲者が出ているのかも分からないのだ。
そういう状況の中で、「フランクはモーテルの犯人が自分の追っている相手と同一人物だと断定して捜査に乗り出す」という展開にしてあるので、ピンと来ないのよね。
「犯人像が全く絞り込めていない」という部分のミステリーには意味があるけど、事件の情報を全く明かさないのは無意味だわ。

フランクやバックが事件を捜査するパートと並行して、ボブとレインのパートが描かれている。そういう構成にすることによって、「ボブとレイン、どっちかが犯人なのね」ってことはバレバレになる。だからミステリーとしては、かなり弱くなってしまう。
どちらが犯人かと考えた時に、まあボブの方が可能性は高そうだなってのが最初の印象だ。途中からレインを犯人だと思わせるヒントをチラ付かせるが、そのことが余計に「ボブが犯人」という印象を強くさせる。
そんで完全ネタバレだけど、実際にボブが犯人なのよね。
裏の裏をかいているわけじゃなくて、「そのまんまやん」という答えになっている。

ひょっとすると、ダニー・グローヴァーをボブ役にキャスティングしたのは、役者のイメージを利用したミスリードを狙っていたのかもしれない。
彼は『リーサル・ウェポン』シリーズでも『プレデター2』でも、正義の味方を演じていたからね。
ただ、これまた他の映画のネタバレになっちゃうんだけど、その前には『刑事ジョン・ブック/目撃者』で殺人犯を演じているのよね。
それを知っていると、彼が連続殺人犯を演じることには、特に驚きが無いわけでね。

ボブとレインのどちらかが犯人ってのは早い段階でバレバレなので、オスカーがバックたちに「ホシを追っていたら云々」と説明している時も、「そいつはフランクの追っている犯人じゃないし」ってことが分かり切っている。
ボブとレインは離れた場所で行動しているだけに、構成としては難しい部分もあるだろう。
ただ、そっちに犯人がいることが最初から露見してしまっているというのが、ミステリーとしてもサスペンスとしても、かなりの痛手になっていることは確かだ。

フランクがバックとネイトに連続殺人犯のことを説明する時、資料として持参したミッシーの死体写真は見せない。ファイルに挟んだ写真を確認し、静かに閉じてしまう。
だけど、それをバックたちに隠している意味が全く無いんだよね。
ミッシーが殺される出来事は、冒頭で描いているわけで。つまりバックたちに隠しても、観客には知られているんだから。
しかも犯人が「フランクかジーンは?」と訊いているから、アンディーがフランクの息子なのもバレバレだし。
そこを内緒にしたまま引っ張りたいなら、犯人にフランクの名前を言わせるのは避けておくべきでしょ。

映画開始から1時間ほど経過すると、ボブの乗っている車が盗難車であることが明らかになる。雑貨店で一度は外した手袋を再び装着し、ベティーに気付かれないようナイフを握る行動もあるし、もうボブが犯人であることは実質的に確定する。
じゃあレインの存在は何なのかというと、ボブが罪を着せるために利用しよう目論む対象だ。
でもシナリオとしては、どっちが犯人かという観客を迷わせるために利用しているだけだ。
それだけの役割なのに、ずっとボブとの「旅は道連れ」が続くってのは、構成として不恰好だ。
どうせ犯人がボブなのは早い段階でバレバレなので、「ボブがヒッチハイクで次々に人を乗せて」みたいな内容にした方が良かったんじゃないの。

フランクは犯人について「特捜が出来てから殺人をゲームのように考え始めた」と説明するけど、なかなか都合のいい設定だ。 っていうか、それって実は無意味じゃないか。最初からゲーム感覚で殺人を繰り返している快楽殺人者という設定で良くないか。
それと、アンディーを誘拐して3ヶ月も失踪する意味が分からん。誘拐してフランクに脅しを掛けるならともかく、挑発しているし。しかも、そこは連続殺人から外れた行動だし。
ずっとアンディーを生かしたまま保護しているのも、色々と面倒だろうし意味不明。そんで今になって再び殺人を始めているけど、それも理由がサッパリ分からん。
なんでもかんでも「イカれた奴だから」ってことで済むわけではないのよ。
そもそも、「イカれた奴」ってことに強い力を持たせるには、そのアピールが全く足りていないし。

保安官選挙という要素を絡めているが、これが全く無意味になっている。
そんな要素が無くても、「バックはフランクを信じて協力する」ということにしておけばいい。
っていうか、バックは最初こそ「選挙で勝つために協力する」と言っているけど、実際は選挙なんて無関係でフランクに協力するんだし。
「途中で気持ちが変化し、選挙と無関係で協力したいと考えるようになった」ということかもしれんけど、どの辺りで、どういう理由で心境が変化したのかはサッパリ分からないし。

FBIのモンゴメリーがフランクを引き取りに来るという手順も、これまた全く無意味なモノになっている。
モンゴメリーが事情を説明しても、それでバックがフランクに疑念を抱いたり、探りを入れたりするわけではない。
モンゴメリが引き取りに来ても、犯人を追っているフランクが追われる身になることのサスペンスが生じるわけではないし、そのことで行動が制限されるわけでもない。
フランクがヘリで移動した後、モンゴメリーは全く追い掛けないし。っていうか居場所も分かってないし。

ボブがショーティーを殺害するシーンを描いた後、「レインが犯人」ということになってフランクが犯人逮捕に向かう展開が訪れる。
でも、今さら「警察がレインを犯人だと断定している」という形にするのは、何の意味も無いでしょ。
ボブがショーティーを殺した後、車ごと崖下に転落してレインに救われるとか、逆にレインが崖下へ落ちそうになるとボブが助けるという展開があるけど、これまた何の狙いでやっているのかサッパリ分からない。
もうボブが連続殺人犯なのは明らかにされているわけで、だったら以降は彼を「連続殺人犯」として動かしていくべきじゃないのか。

ボブはショーティーを殺害して「私が犯人ですよ」ってことを明らかにした後も、その本性を隠したままレインと話したり旧友と会ったりする。一方のフランクは、なかなか犯人に近付かない。
だから、いよいよストーリーが佳境に入ってもおかしくない辺りになっても、全く盛り上がらず、緊迫感も高まらず、ダラダラした時間帯が続く。
それが終わると、「フランクが雪道を車で疾走して事故を起こしそうになる」とか「走行中の列車で対決する」といったアクションが続く。
最後の列車アクションは、「きっと一番やりたかったのは、それなんだろうな」と感じさせる力の入り方だ。
でも、「いっそのことミステリー要素をザックリと排除して、アクションに特化した方が良かったかもね」と思ってしまうのよね。

(観賞日:2017年7月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会