『S.W.A.T.』:2003、アメリカ
ロサンザルスの銀行で、強盗グループが人質を取って立て篭もる事件が発生した。SWATのジム・ストリートは相棒のブライアン・ギャンブルと共に、天井の排気口から銀行へと潜入した。犯人グループと交渉をする間、ストリートとギャンブルは待機を命じられた。しかしギャンブルは命令に背いて犯人を狙う。彼は人質の女性を負傷させた後、犯人を射殺した。
ストリートとギャンブルはフーラー警部に呼び出され、人質の女性から訴えられたことを聞かされる。ストリートたちは、SWATから外れて銃器保管庫へ異動するよう命じられた。ヴェラスケス警部補の嘆願でSWATへ復帰する道は残されたが、ギャンブルは納得しない。異動を受け入れると言うストリートを裏切り者と罵り、ギャンブルは警察を辞めた。
半年後、長く現場を離れていたホンドー・ハレルソン巡査部長が、署長の要請を受けてロサンゼルス市警に復帰した。SWAT隊長となった彼は、かつて一緒に仕事をしたことのあるT.J.とボクサーの他に、3人の新人を隊員として選ぶよう指示を受けた。ホンドーは、同僚のガスにSWAT用の発明品を説明しているストリートに目を付けた。
ホンドーはストリートに運転手役を命じ、街へ出た。ホンドーは容疑者を追っていた警官ディーク・ケイに声を掛け、SWATスクールに来るよう勧誘した。次にホンドーは、過去に3度もフーラーから入隊を拒否されている腕っ節の強い女性警官クリス・サンチェスをスカウトした。そして最後に、ホンドーはストリートを誘った。ホンドーはフーラーに会い、何かあれば自分が責任を取ると告げてメンバー選考を承諾させた。
フランスから入国したアレックス・モンテルは、叔父貴分マーティン・ガスコインの元を訪れた。モンテルはガスコインに、組織の親分である父を引退させたことを告げた。そして彼は、組織は自分が仕切ると宣言し、組織の金を横領していたガスコインを刺した。その場を車で去ったモンテルだが、テールランプの故障で警官に止められ、交通違反で逮捕された。
ホンドーの下に5人の隊員が集まり、訓練を開始した。ハイジャック事件を想定した訓練でも、5人はミッションを無事に終わらせた。サンチェスと共に酒場へ繰り出したストリートは、ギャンブルと彼の仲間トラヴィスに絡まれた。一方、モンテルは他の囚人と共に護送されることになるが、その時になって初めて警察は彼が凶悪な国際指名手配犯だと知った。
ホンドーたちは郡警察から本署までモンテルを護送する任務を命じられ、移動中の護送車へ向かう。同じ頃、警官に成り済ましたモンテルの仲間が護送車を襲撃し、運転手を射殺した。モンテルは逃亡しようとするが、駆け付けたホンドーたちに取り押さえられた。連行されるモンテルは殺到したマスコミの前で、「俺を逃がしてくれた奴には1億ドルを払う」と口にする・・・。監督はクラーク・ジョンソン、キャラクター創作はロバート・ハムナー、原案はロン・ミタ&ジム・マクレイン、脚本はデヴィッド・エアー&デヴィッド・マッケンナ、製作はニール・H・モリッツ&ダン・ハルステッド&クリス・リー、共同製作はジョージ・ホアン、製作協力はアマンダ・コーエン、製作総指揮はルイス・デスポジート、共同製作総指揮はトッド・ブラック、撮影はガブリエル・ベリスタイン、編集はマイケル・トロニック、美術はメイン・バーク、衣装はクリストファー・ローレンス、音楽はエリオット・ゴールデンサール。
出演はサミュエル・L・ジャクソン、コリン・ファレル、ミシェル・ロドリゲス、LL・クール・J、ジョシュ・チャールズ、ブライアン・ヴァン・ホルト、ジェレミー・レナー、オリヴィエ・マルティネス、レジナルド・E・キャセイ、ラリー・ポインデクスター、ペイジ・ケネディー、ドメニク・ロンバルドッツィー、ジェームズ・デュモント、デニス・アーント、リンゼイ・ジンター、ルシンダ・ジェニー、E・ロジャー・ミッチェル他。
1975年〜1976年にアメリカで放送されたTVシリーズ『特別狙撃隊S.W.A.T.』の劇場版リメイク。
番組を見たことが無くても、テーマ曲はどこかで聞いたことがある人が多いと思う。リズム・ヘリテイジがアレンジした『反逆のテーマ』が、日本のTV番組『水曜スペシャル』の川口浩探検隊シリーズで使用されていたからだ。
メガホンを執ったクラーク・ジョンソンはTVシリーズ『ホミサイド/殺人捜査課』などに出演していた俳優で、TVドラマでは演出経験が豊富だが、劇場映画の監督は初めて。ホンドーをサミュエル・L・ジャクソン、ストリートをコリン・ファレル、サンチェスをミシェル・ロドリゲス、ディークをLL・クール・J、T.J.をジョシュ・チャールズ、ギャンブルをブライアン・ヴァン・ホルト、ボクサーをジェレミー・レナー、モンテルをオリヴィエ・マルティネスが演じている。
他に、ヴェラスケスをレジナルド・E・キャセイ、フーラーをラリー・ポインデクスターが演じている。さらに、SWATのトラック運転手役でTVシリーズのホンドー役だったスティーヴ・フォレスト、ディークの相棒役でクラーク・ジョンソン監督、デスクワークの警官役でマックス・セイヤー、ディークの父親役でTVシリーズのディーク役だったロッド・ペリーが出演している。これをTVシリーズのパイロット版、もしくは2時間のスペシャル版でお送りする第1話と捉えれば、納得しやすい。
話は完全に前編と後編に分かれており、まず前編ではメンバー集めとレギュラー紹介、そしてSWATのトレーニング風景を見せる。
そして後編では彼らが関わる最初の事件を描写し、これからのシリーズに繋げていくという次第だ。
しかしながら、これは単体で成立すべき劇場映画である。
それを考えると、この構成はダメすぎる。前半で悪党が捕まっているのに、そこにSWATが関わるのが後半に入ってからというのは、遅すぎるだろう。
訓練のシーンはもっと削ってもいいだろうし(無くてもいい)、前半の内からSWATを実際の事件に関わらせるべきだ。モンテルは叔父貴を容赦無く刺して悪党としての凄みを垣間見せたかと思うと、次の瞬間にはテールランプの故障で警察に捕まるという情けない所をさらけ出す。
仮にも「凶悪な国際指名手配犯」という設定なんだから、もうちょっとマシな逮捕劇を用意しておけよ。
っていうか、そんなマヌケな捕まり方をするぐらいなら、いきなり逮捕された状態で初登場してもいいぐらいだぞ。
モンテル(というよりオリヴィエ・マルティネス)が、ちっとも大物に見えないのも厳しい。巨大組織のボスにも見えないし。
まあ何しろテールランプの故障で逮捕されるようなバカだもんな。
あと、そんなに金持ちにも見えないので、「自分を逃がした奴には1億ドルを払う」と言われても、ピンと来ない。そこは、もうちょっと工夫が必要ではなかったか。SWATの訓練は、ハイジャックのシミュレーションまではダイジェストでサラッと流していくだけ。ハイジャックの訓練にしても、粛々と処理されており、その中で緊張感を出そうという意識は感じない。
例えば「事前に計画を立てて手順を踏んで行くが、想定外の事態が発生したので、現場で機敏に対処して事無きを得る」といった盛り上げ方は無い。
トレーニング場面を利用してメンバーの特技や弱点などを見せ、キャラを立たせようという意識も無い。
というか、最後まで見ても、ホンドー&ストリート&サンチェス以外のメンバーは単なる数合わせに近いものがある。初顔合わせでストリートがT.J.&ボクサーと揉めていたが、その後は何も無かったかのように普通に接しており、その対立を使おうとはしないし。モンテルがTVカメラの前で「自分を逃がした奴には1億ドルを払う」と宣言することは、「護送するSWATはロサンゼルス市民全員を敵かもしれないと疑わねばならない」という四面楚歌&疑心暗鬼のサスペンスに繋がらなければいけないはずだ。
ところが、偽の護送車を数名のワルが襲撃した後は、すぐに「SWATとギャンブル率いる集団との戦い」に限定されてしまう。
そうなると、前述した「助けた奴に1億ドルを払う」という宣言は、仕掛けとしては何の意味も無いと言い切ってしまってもいい。
まあ使おうとしても、始動が遅いもんだから、時間が短いしね。
というか、「ロス市民全員が敵かも」という要素が成立しないのであれば、最初からモンテルの仲間が助けに来るということにしておけばいいのよ。金に転んで裏切るT.J.(そう簡単に金に転ぶ理由が良く分からないんだが)が、最初からビビりモードなのはイカンだろう。どうせ裏切るのなら、徹底して卑怯で最低な奴に成り切れよ。ただでさえモンテルが大物感ゼロなのに、ますます悪党グループがショボくなるじゃないか。
おまけにホンドーたちに駆逐されるのではなく勝手に自殺するって、何をやっているのかと。
あと、SWATを主役にするのであれば、クライマックスは立て篭もった犯人グループとの戦いにすべきじゃないのか。冒頭で立て篭もりを使っているから重複を嫌ったのかもしれないが、そこは「冒頭の立て篭もり事件で伏線を張っておき、終盤に同じ状況が生じる」という展開にすれば、「ストリートがどう行動するのか」というトコロで重複を生かせるんじゃないかね。っていうかさ、前述したように、これってホントにTVシリーズのパイロット版みたいなんだよな。
だったらさ、ホントに劇場映画じゃなくて、配役を落としてTVシリーズとして作れば、もう少し何とかなったんじゃないの。
配役は例えば、ホンドー役がヴォンディー・カーティス=ホール、ストリート役がジョン・セダ辺りで。