『サバイバル・オブ・ザ・デッド』:2009、アメリカ&カナダ

デラウェア沖のプラム島。死者が蘇ってから6日後、パトリック・オフリンは一族の仲間であるジェームズやトードリーたちを率いて、蘇った死者たちを始末していた。娘のジャネットは「厳しすぎる」と批判的な態度を取るが、パトリックの考えは変わらなかった。彼らはマシュー・マルドゥーンの子供たちが事故に遭ったという情報を聞き付け、彼の家に乗り込んだ。パトリックたちが子供たちを見せるよう要求すると、マシューは拒否した。
パトリックたちが子供部屋のある2階へ上がろうとすると、妻のベスが猟銃を構える。パトリックたちはベスを射殺した。マシューは拳銃を借り受け、泣きながらベスの頭を撃ち抜いた後、自らも命を絶った。パトリックたちが2階へ行くと、マシューの息子と娘は生きる死者に変貌し、鎖でベッドに繋がれていた。パトリックが射殺することにためらっていると、マルドゥーン一族の長であるシェイマスが仲間を率いて現れた。シェイマスは猟銃を構えて威嚇発砲し、出て行くよう要求した。パトリックは4人の仲間を引き連れ、ボートで島を出た。ジャネットはパトリックに従わず、島に留まることを選んだ。
3週間後、ペンシルヴァニア州のフィラデルフィア。元州兵のサージは、仲間のトムボーイ、シスコ、ケニーと共に強盗を繰り返していた。ある夜、彼らは森にいた男たちに襲い掛かった。男たちが銃を向けようとしたので、サージたちは銃弾を浴びせた。そこへ一人の青年が現れ、「僕は仲間じゃない。車に乗せてもらっただけだ」と弁明した。青年は「乗せてって欲しい」と持ち掛ける。サージは油断のならない男だと感じつつも、青年を連れて行くことにした。
サージは男たちのトラックを見つけ、ジープを捨てて乗り換えることにした。青年はトラックの金庫に入っていた100万ドルの紙幣を彼らに見せた。サージが北へ向かおうとすると、青年はネットで安全な島のCMが流れていることを教える。それはパトリックが画面に登場し、「ミルフォードからスロータービーチへ。安全な島だ」とプラム島を宣伝しているCMだった。サージは「俺は誰にも従わない」と暴れるが、ケニーになだめられ、スロータービーチへ向かうことにした。
サージたちがスロータービーチに到着すると、小屋にいたパトリックは「ボートを出してほしかったら有り金を全て出せ」と要求した。サージが拒否すると、パトリックと仲間たちは脅しを掛けて来た。死者の群れが現れる中、サージはフェリーを見つけて「あれを使おう」と口にした。シスコは海に飛び込み、フェリーを目指して泳いだ。オフリン一族がシスコを狙って発砲したので、サージたちも銃撃した。シスコは海にいた死者に襲われるが、何とかフェリーまで辿り着いた。
フェリーに入ったシスコはゾンビに襲われるが、トムボーイが助けに駆け付けた。シスコがフェリーを操縦し、着岸させた。サージは手榴弾で小屋の壁を破壊し、そちらへ死者の群れが行くように仕向けた。オフリン一族がゾンビ退治に意識を向けている間に、サージたちはトラックをフェリーに乗り入れた。パトリックは仲間たちが全て死者に襲われると、ダイナマイトで小屋を爆破した。パトリックは離岸するフェリーへ飛び乗ろうとする。彼は海へ落ちそうになるが、トムボーイが腕を掴んで引っ張り上げた。
サージはパトリックと共闘することに決め、彼らはフェリー内を調べ回り、死者を見つけて始末する。死者に襲われた際に噛み付いていたシスコは、気分が悪くなっていた。サージたちは小型ボートに乗り換え、プラム島に上陸する。パトリックは「ここ数週間、私が売った船で多くの余所者が島に来ているはずだ」と語る。青年が「なぜ人集めを?」と訊くと、彼は「支配者気取りの奴に一泡吹かし、安全な場所を人々に提供するためだ」と答えた。
パトリックはサージたちを連れて、自分の所有する牧場へ向かう。牧場に到着すると、鎖で足を繋がれた死者たちが、郵便ポストに手紙を投函したり、牧草地を手入れしたりと、同じ行動を繰り返していた。パトリックは「奴の望みは、こんなことなのか」と怒りを示した。物陰に隠れていたマルドゥーン一族の男が発砲し、サージが肩に怪我を負って、ケニーが死んだ。サージたちは男を始末し、パトリックはケニーの頭に銃弾を浴びせた。
馬に乗った女性の死者が、サージたちの前を走り去った。パトリックは「私の娘だ」と口にした。周囲を調べると、パトリックが船で島に送り込んだ人々が殺されていた。マルドゥーン一族の仕業だった。パトリックはシェイマスへの憎しみを吐露し、殺しに行こうとする。サージが「そいつは俺が殺す」と言うと、パトリックは「仲間を集めて来る。この先の古い公会堂で待っていてくれ。夜には行く」と告げ、その場から立ち去った。
シェイマスは仲間のレムから「チャックが問題有りと言ってる」と聞かされ、農場へ向かった。厩舎では死者が鎖に繋がれていたが、暴れて手に負えない者が現れると、そこを任されているチャックは始末していた。シェイマスが来た時にも暴れ出す死者がいて、彼が冷徹に頭を撃ち抜いた。外の囲いには鎖で繋がれた1人の死者がおり、そこには豚が放り込まれていた。だが、死者は豚に全く興味を示さない。チャックが「下手すりゃ、すぐ食われる」と不平をこぼすと、シェイマスは「無法者のお前を拾ってやったんだ。お前は雇われの身だ」と告げる。彼は「今度は女にしよう。オフリンの娘を連れて来い。人間を食わないように躾けるんだ」とチャックに指示した。
サージたちは空き家に移動するが、シスコが姿を消したので、トムボーイは捜しに出た。シスコは自分が生きる死者に変貌することを認識し、トムボーイに自分を始末するよう頼んだ。トムボーイはシスコの頭を撃ち抜いた直後、チャックに捕まった。サージは肩の傷が悪化し、意識を失った。島に残っていた仲間のジェームズたちと合流したパトリックは、チャックが馬でトムボーイを拉致する姿を目撃した。シェイマスは連れて来られたトムボーイに対し、「私の望みは死んだ者を残しておくことだ。手伝ってくれ」と述べた。
サージが目を覚ますと、ジャネットが手当てしてくれていた。彼女はサージに、馬に乗っていた死者が双子の妹ジェーンであることを話す。それから彼女は、「父は嘘つきよ。自分の考えが絶対で、他の意見に耳を傾けようとしない。貴方たちを連れて戻り、戦争を始めようとしている」と手厳しく批判した。そこへパトリックが仲間と共に戻り、「お前は見ていればいい。私たちの戦争だ」と口にした。
サージやパトリックたちはマルドゥーン一族の土地へ行くため、橋を渡ろうとした。すると橋の向こう側ではシェイマスたちが待ち受けていた。彼らはトムボーイを磔にして、ゾンビに襲わせようとしていた。サージは青年に「船へ戻り、100万ドルを持って逃げろ」と促す。シェイマスは「銃を捨てて橋を渡れ」とサージたちを脅す。一行はトムボーイを助けるため、要求を受け入れた。マルドゥーン一族はサージたちを農場へ連れて行き、囲いに入れられているジェーンの姿を見せた。
シェイマスは囲いに馬を入れ、「娘が馬を食べたら、私が正しかったと認めてもらう。そうすれば全員を無事に帰してやる」とパトリックに告げる。パトリックは「そうは行かない。まだお前を殺していない」と要求を拒絶した。ジャネットと青年が農場に駆け付け、サージやパトリックたちに銃を渡した。チャックは「辞める時だ」と言って囲いに近付こうとするが、シェイマスに脚を撃たれて倒れた。
ジェーンが囲いの柵に歩み寄ったので、ジャネットは「私を求めてるのよ。分かるのよ」と嬉しそうに言う。しかしジャネットが囲いに駆け寄ると、ジェーンは手に噛み付いた。ジャネットは「ふざけんじゃないわよ」と吐き捨て、ジェーンに発砲しようとする。しかし馬が暴れて発砲を妨害し、そのまま囲いを飛び越えて走り去った。パトリックは「マルドゥーンのせいだ」と発砲し、激しい銃撃戦が始まった。チャックは厩舎の柵を撃って破壊し、死者たちを解放して「こっちへ来い」と誘う。しかしシェイマスに撃たれ、死者たちに食われた。パトリックとシェイマスは死者たちを気にしながら、互いに撃ち合う…。

脚本&監督はジョージ・A・ロメロ、製作はポーラ・デヴォンシャイア、製作総指揮はジョージ・A・ロメロ&ピーター・グルンウォルド&ダン・ファイアマン&アート・スピーゲル&アラ・カッツ&パトリス・セロー&D・J・カーソン&マイケル・ドハーティー、共同製作総指揮はジェフ・グリックマン&ジェシー・アイクマン、撮影はアダム・スウィカ、編集はマイケル・ドハーティー、美術はアーヴ・グレイウォル、衣装はアレックス・カヴァナー、視覚効果監修コリン・デイヴィース、音楽はロバート・カーリ。
出演はアラン・ヴァン・スプラング、ケネス・ウェルシュ、キャスリーン・マンロー、デヴォン・ボスティック、リチャード・フィッツパトリック、アテナ・カーカニス、ステファーノ・ディマッテオ、ジョリス・ジャースキー、エリック・ウールフ、ジュリアン・リッチングス、ウェイン・ロブソン、マット・バーマン、ジョン・ヒーリー、フィリッパ・ドムヴィル、ハーディー・T・リネアム、マイケル・ローズ、ブライアン・フランク、ホー・チョウ、ジョシュ・ピース、ヘザー・オーリン他。


『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』の続編。
監督&脚本は、巷に溢れる「なんちゃら・オブ・ザ・デッド」の本家本元であるジョージ・A・ロメロ。
サージをアラン・ヴァン・スプラング、パトリックをケネス・ウェルシュ、ジャネット&ジェーンをキャスリーン・マンロー、青年をデヴォン・ボスティック、シェイマスをリチャード・フィッツパトリック、トムボーイをアテナ・カーカニス、シスコをステファーノ・ディマッテオ、チャックをジョリス・ジャースキー、ケニーをエリック・ウールフ、ジェームズをジュリアン・リッチングス、トードリーをウェイン・ロブソンが演じている。

前作でヒロインであるデブラたちに銃を突き付け、物資を全て略奪した強盗のリーダーがサージだった。
ご丁寧なことに、今回の冒頭で前作の強盗シーンを写し出し、前作を見ていない観客にまで、サージがクズ野郎であることを教えてしまう。
そんなクズ野郎を主人公に据えてまで、前作とリンクさせる必要性が本当にあったのか。
リンクさせるにしても、「前作でデブラがネットにアップした映像を主人公が見ている」とか、その程度でもいいんじゃないか。
っていうか、前作との繋がりが無くても、特に支障は無いし。

序盤、ケニーがパソコンでテレビのショー番組を見ている様子が描かれる。
だけど、前作でテレビが全く写らなくなり、「主要な放送網は崩壊した」と説明していたのに、もう普通にテレビ番組が作られるような状況になっているのか。
しかし、作られるにしても、お笑いの要素が強い番組を流すかね。
まだゾンビの大量発生から、そんなに月日が経過しているわけじゃないのに。
もうニュースだけじゃなくて、そんな番組を作る余裕まであるのか。

サージはトラックの100万ドルを見つけると、パトリックから有り金を全て渡せと要求されても、大金を持っていることを隠そうとする。
でも、どうせ全国的に都市機能は崩壊し、通貨システムも通用しない状況になっているんだから、どれだけ金を持っていても役に立たないと思うんだが。
だから、パトリックがCMで人々を騙し、金を奪い取っているのも理解不能。
金じゃなくて、物資を要求しろよ。
前作で「金なんて役に立たない」というセリフもあったのに、なんで今回の連中は金に執心しているのよ。
それが「金なんて役に立たないのに、まだ金にこだわる愚かしさ」という皮肉として描かれているなら分からんでもないが、そういう感じでもないし。

パトリックが馬を走らせるゾンビ娘を見て「私の娘だ」と言うシーンがあるので、島に留まったジャネットがゾンビになったのだと、大半の観客は思うだろう。
で、後半に入り、「ゾンビ化したパトリックの娘は双子のジェーンで、ジャネットは生きている」という種明かしがある。
でも、そこをミステリーにされても、「だから何なのか」と言いたくなる。
サージが「パトリックの娘は既にゾンビ化している」という前提で何か行動を起こしたり作戦を立てたりしていて、「実は双子の片割れが生きている」ということが分かって計画が変更になるとか、そういうわけでもないんだし。

サージが主人公と前述したが、実際は狂言回しのような存在だ。
ただ、序盤の間に、「プラム島にはオフリン一族とマルドゥーン一族だけが住んでおり、ゾンビの扱いを巡って意見対立があり、パトリックが追放された」ということが丁寧に描かれている。
だから青年がCMのことを言い出しても、本当は島が安全じゃないことも、パトリックがマルドゥーンへの逆襲を目論んでいることも、観客には分かっている。
そうなると、島の状況を観客に対して説明するために、狂言回しとしてサージを投入する意味が薄くなってしまう。
そういうことも手伝って、サージは狂言回しというか、「別に要らなくねえか?」と思っちゃうような存在と化している。

『大いなる西部』から着想を得た今回の話では、ゾンビがほとんど背景のような存在になっている。
「本当に恐ろしいのは人間」というテーマがあるんだろうとは思うけど、だからって「ゾンビなんて要らなくねえか」と思わせるような内容になっちゃったら、本末転倒でしょ。
『フランケンシュタインの怪物』だって「本当に恐ろしいのは人間」というテーマが伝わって来る作品だったけど、それでもフランケンシュタインの怪物がちゃんと主役になっていたぞ。
ゾンビ映画なのにゾンビの必要性が薄いって、どうしようもないでしょ。
あと、サージたちがゾンビを全く怖がらず、冷静に対処するので、ホラーとしてのテイストも薄いし。終盤、チャックが厩舎のゾンビたちを解放したところで、ようやくシェイマスの仲間たちがビビる様子が描かれるけど。

シェイマスはゾンビを生かしておこうと決めたのに、厩舎で暴れ出した奴は容赦なく始末している。
「100年後には治療薬が作られるかもしれない」と言っていたが、そういう意識でゾンビを生かしているようには見えない。「殺してばかりだ」とチャックが文句を言うと、「私を失望させるからだ」と口にしているし。
「自分の思い通りにならないゾンビは冷徹に始末する」ってのと、「100年後には治療薬が作られるかもしれないから生かしておく」ってのは、同じ人物の中で整合性が取れている考え方とは思えない。
パトリックが送り込んだ連中は「余所者だから」ということで射殺するが、一方で身内が変貌したゾンビたちが暴れ出すと、それはそれで容赦なく始末しちゃうし(何の迷いも苦悩も無い)、狂信者としてもブレブレに感じられる。

なぜシェイマスが、そこまでしてゾンビを生かしておこうとするのか、そこの動機がハッキリしないんだよな。
数名のゾンビは鎖で繋いで同じ作業を繰り返させているけど、全てのゾンビに生きていた時と同じことをやらせているわけではなく、大半は厩舎に閉じ込めている。何がしたいんだか良く分からない。
「私は神の言葉に従って生きて来た」というセリフがあり、信仰心が動機として提示されるけど、そのせいで余計にボンヤリしちゃってるんじゃないか。
例えば、これが「ゾンビを奴隷として服従させようと目論んでいる」とか、そういうことなら分かりやすいんだけど。
っていうか、シェイマスは「私が正しかったと認めろ。それが私の望みだ」と言うけど、パトリックにしろ彼にしろ、ゾンビの扱いを巡って激しく対立しているのは、昔から反りが合わなかった(そのようにパトリックが語っている)2人のいがみ合いに過ぎないんじゃないかと思ってしまう。
宗教的な価値観や、人間の尊厳に関する互いの考えを深く掘り下げていくようなことは全く無いし。

(観賞日:2013年5月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会