『スーパースター 爆笑スター誕生計画』:1999、アメリカ

少女時代、メアリー・キャサリン・ギャラガーはプールで遊んでいた時、肩に編な形のアザを持つ少年が溺れているのを見つけて救助した。メアリーは田舎町のベサメ・ハイツで最も見た目の悪い家に住んでいた。両親はメアリーが赤ん坊の頃に事故死し、親代わりのグランマも事故で足が不自由になっていた。グランマは「将来は実業家になりなさい」と口癖のように言っていたが、メアリーは映画のようなキスに憧れていた。そして彼女は、「映画のようなキスをするには、映画に出ているようなスーパースターにならなきゃ」と考えた。
メアリーは高校生になったが、その考えは変わらなかった。セント・モニカ高校に通う彼女は、スーパースターになるために役立ちそうなクラブ活動には片っ端から参加した。しかしバレエをやってもチアリーディングをやっても、失敗続きだった。チアリーダーのエヴィアンは学校で最も人気のある美少女で、メアリーは彼女のスタイルの良さを妬んだ。放課後になると、メアリーはビデオ店でテープを巻き戻すアルバイトをしながら、スターの研究に励んだ。スターになるための努力を続けるメアリーだが、それは裏目に出てばかりで、学校ではバカにされる存在と化していた。そんなある日、
ついにメアリーはキスをしたい相手を見つけた。ダンスが得意な同級生のスカイ・コリガンだ。スカイはエヴィアンの恋人だったが、メアリーは彼とキスをする妄想を膨らませた。奇行の目立つメアリーを、校長のリトリー神父は選抜クラスに編入させた。リトリーは「君は優秀だから」と説明したが、選抜クラスの実情は落ちこぼれクラスだった。メアリーが隣の席になった生徒は、バスケ部のエースで重戦車のような突進を見せるヘレンだった。
他には、自分はモテモテだと信じているハワード、極度の神経症で言葉を必ず5回繰り返すオーウェン、悪魔崇拝者のゴス少女マリア、薬物中毒のフリをしている腰抜け男のトーマス、ずっと黙っている危険そうなスレイターといった面々がクラスメイトだ。スレイターに関して、ヘレンはメアリーに「転入して来たばかりの危ない男よよ。両親を惨殺してから何も喋らないんだって」と話した。教師から返事を求められると、スレイターは筆談で応対した。
メアリーは、ティーン誌が主催する性病撲滅タレント・コンテストが学校で開かれ、優勝者にはハリウッド旅行と「清く正しい映画」へのエキストラ出演権が約束されることを知る。スカイと一緒に参加したいと考えるメアリーだが、彼はエヴィアンと出ることを決めていた。グランマからはコンテストへの出場を反対されるが、ヘレンは「内緒で出れば?」と勧める。放課後、メアリーがビデオ店でアルバイトをしていると、スカイがやって来た。その時までスカイは、メアリーが同じ学校の生徒だということさえ知らなかった。
翌日、メアリーは学校の食堂でスカイに声を掛けられ、妄想に浸った。その夜、メアリーが神にお祈りしてから眠りに就こうとすると、部屋にイエスが現れた。夢でメアリーがイメージした通りの外見なので、スカイと死んだ父親に似ていた。イエスは彼女に、「今は辛い時だが、クールに行け。耳を澄まして心の声を聴き、それに従うんだ。それから明日、予備選考会への応募を忘れずに」と助言した。
翌朝、登校したメアリーはエヴィアンの元へ行き、予備選考会への参加を申し込む。しかしエヴィアンは「性病撲滅委員長として言うけど、貴方は無理よ。ブスはお断り」とバカにする。メアリーが腹を立てると、エヴィアンは「貴方の両親が死んだのは、ドブスな娘に絶望したからよ」と言い放った。メアリーは負けずに言い返し、2人は取っ組み合いになった。2人はリトリーに呼ばれ、厳しく叱責された。しかし呼び出しを受けたグランマはメアリーを全面的に擁護し、「問題があるのは孫じゃなく学校の体質よ」と告げた。
改めてコンテストへの参加を懇願したメアリーだが、グランマは「ダメよ」と冷たく却下した。悲しむメアリーに、グランマは「両親が死んだ理由を教えてあげる」と言う。メアリーはグランマから、両親はサメの群れに殺されたと聞いていた。グランマは「真実を話すわ。17年前、お前の両親は街のダンス大会に出場した。オシェイ夫婦という強力なライバルが登場し、ママは闘志を燃やした。しかし踊っている最中、観客の腹がレコードプレイヤーに当たり、回転数が上がった。曲に合わせてステップを踏んだ両親は転倒し、他のダンサーの足が止まらずに2人を踏み殺した」と語った。
翌日、スカイは他の生徒たちが見ている前で、エヴィアンに別れを告げた。昨日のメアリーとの喧嘩を見て幻滅したのだ。メアリーはヘレンから「チャンスよ」と背中を押され、告白しようとする。しかし我を忘れて抱き付いてしまい、告白できずに終わった。だが、彼女はヘレンに「後は選考会で魅力的な姿を見せればキスは確実よ」と言われ、その気になった。エヴィアンはスカイとヨリを戻そうとするが冷たく拒絶され、メアリーに激しい憎しみを抱いた。
予備選考会に参加したメアリーは歌を披露し、満足感に包まれる。だが、エヴィアンがステージ裏に忍び込み、仕掛けておいた青いペンキをメアリーの頭から浴びせた。笑い者にされたメアリーは会場を飛び出し、外で待っていたスレイターのバイクにまたがった。スレイターはバイクを走らせてベサメ・ハイツを出ると、メアリをプールに案内する。「何か言って。黙っていたら分からない」とメアリーが口にすると、スレイターは肩にある変な形のアザを見せた。
スレイターはメアリーに、自分が喋らないのは口下手なだけだと打ち明けた。スレイターにまつわる危険な噂は嘘ばかりだったが、口下手を笑われるよりはマシだと考えていたのだという。彼の両親は、サメの群れに襲われて死んでいた。メアリーが「私って美人?時々、自分が嫌になるの」と言うと、スレイターは「君は美人だよ」と告げた。自信を取り戻して帰宅した彼女は、予備選考会に合格したことを知る。グランマも「やるなら応援するわ」と言うが、「色恋抜きで自分のために踊りなさい」と告げて猛練習を積ませる…。

監督はブルース・マックロック、キャラクター創作はモリー・シャノン、脚本はスティーヴン・ウェイン・コーレン、製作はローン・マイケルズ、共同製作はエリン・フレイザー&スティーヴン・ウェイン・コーレン、製作総指揮はロバート・K・ワイス&スーザン・キャヴァン、製作協力はアルバート・ボタ、撮影はウォルト・ロイド、編集はマルコム・キャンベル、美術はグレゴリー・キーン、衣装はイーディー・ケインズ=フロイド、音楽はマイケル・ゴア、音楽監修はエリオット・ルーリー。
主演はモリー・シャノン、共演はウィル・フェレル、エレイン・ヘンドリックス、ハーランド・ウィリアムズ、マーク・マッキニー、グリニス・ジョンズ、ジェイソン・ブリッカー、ジェリー・バマン、エミー・レイボーン、ジェニファー・アーウィン、ロブ・ステファニューク、ナタリー・ラドフォード、カリン・ドワイヤー、トム・グリーン、チャック・キャンベル、ジャック・ニューマン、ドナ・ハノーヴァー、ダン・レディカン、ジョアン・メサイア、ジーン・ハウエル、フランク・スコット他。


アメリカの人気コント番組『サタデー・ナイト・ライブ』から派生した作品。番組内でモリー・シャノンが演じていたキャラクター、メアリー・キャサリン・ギャラガーをヒロインに据えた映画。
脚本担当のスティーヴン・ウェイン・コーレンは『SNL』のライター出身。
監督のブルース・マックロックはカナダのコメディー集団「The Kids in the Hall」のメンバーで、1985〜1986シーズンには『SNL』のライターも務めていた。
メアリー役はもちろん『SNL』と同じくモリー・シャノンで、相手役であるスカイを演じるのも同番組のウィル・フェレル。エヴィアンをエレイン・ヘンドリックス、スレイターをハーランド・ウィリアムズ、リトリーをマーク・マッキニー、グランマをグリニス・ジョンズ、ハワードをジェイソン・ブリッカー、ジョン神父をジェリー・バマン、ヘレンをエミー・レイボーン、マリアをジェニファー・アーウィン、トーマスをロブ・ステファニュークが演じている。

モリー・シャノンは当時35歳であり、とてもじゃないが女子高生には見えない。しかし、コント番組の映画化なので、そこは何の問題も無い。
むしろ「女子高生に見えない」ってのも含めてのコメディーだ。
メアリーがやたらとパンチラするとか、不安な時には脇の匂いを嗅ぐとか、そういうのはコントでのお約束。
妄想を膨らませたり、演技に没頭して周囲が見えなくなったりするってのも(例えば校庭の庭に生えている木をスカイに見立てて熱烈なキスをするとか)、コントでのお約束。

映画やTVドラマを使ったネタが幾つも盛り込まれている。
メアリーが『キャリー』のシシー・スペイセクを真似して念力で人を殺す練習をしてみたり、『羊たちの沈黙』を見たばかりだというメアリーがコンテスト出場に関して「舞台で死体の皮を剥ぐパフォーマンスはどうかしら?」と言ってみたり。
テレビ映画『プラスチックの中の青春』が19番目に好きだということでメアリーとスカイが意気投合したり、イエスが『ジーザス・クライスト・スーパースター』を意識した言葉を口にしたり、シスターに「ケツをどけなきゃブチ込んでやるぜ」と暴言を吐いたことをリトリーから注意されたメアリーが「スパイク・リーのせいです」と釈明したりする。

メジャーな作品ばかりがネタとして使われているわけじゃないので、パロディー的な楽しみ方ってのは難しいかもしれない。
パロディーをやりたいのなら、『プラスチックの中の青春』とか『ピンナップ・ガール/裸の天使』のようなテレビ映画はネタにしないだろう。
たぶん製作サイドも、そういうことを狙っているわけじゃないと思う。
「マニアックなトコを突くなあ」という風に観客が感じたら、それが正解なんじゃないかな。

メアリーが妄想を膨らませて周囲が見えなくなるという展開が、何度かある。
例えば、コンテスト開催を知ったメアリーは、「清く正しい映画」に出演してレッドカーペットを歩き、取材を受けるという妄想を膨らませる。ヘレンから「選考会で魅力的な姿をスカイに見せればキスは確実よ」と言われたメアリーは、『アルマゲドン』のヒロインになって宇宙へ向かうスカイと抱き合う妄想を膨らませる。
ただ、その2つは自然な形で妄想に突入するので問題は無いのだが、ヘレンがメアリーに「落ち込んだ気持ちを解消するにはスーパーモデルごっこしか無いわ」と告げ、2人がスーパーモデルとして撮影されながらインタビューに応じるという妄想を膨らませるシーンは、ちょっとギクシャクしている。
また、食堂でスカイから「ロボット・ダンスはナイスな動きだった」と話し掛けられたメアリーが、彼に「やってみる?」と誘われ、他の生徒たちも一緒になってダンスを音楽に合わせて踊る妄想を膨らませるシーンも、これまた入り方がスムーズじゃない。

たぶん、そういう「妄想に浸って我を忘れる」という展開は、コントだったら大して気にならなかったんだろう。
ただ、映画では、そこが笑えないだけでなく、違和感を抱いてしまう形になっている。もうちょっと入り方に気を付けて、丁寧にやるべきだったんじゃないか。
でも考えてみれば、『SNL』の派生映画で当たったのって『ブルース・ブラザーズ』と『ウェインズ・ワールド』ぐらいじゃないかと思うんだよね。
コント番組の映画化ってのは、やっぱり難しいんだろうなあ。

コントなら一発ネタだけで済むけど、映画だと長編の物語が必要で。
それは当然のことながら同じ調子で淡々と進めるんじゃなくて抑揚を付けて構築していくべきなのだが、そこの作業で本作品なんかは失敗しているんだよな。
コントを串刺し式に並べるという構成も一つの選択肢としてはあると思うんだけど、本作品はそれをチョイスしていない。
でも中途半端に「ストーリーの流れよりもコントのネタ重視」と感じられる箇所もあったりして、どっち付かずでグダグダになっちゃってる。

「メアリーがテレビ映画に出ていた俳優の演技を模倣しながら喋る」という展開が用意されていて、それは笑いのポイントの1つになっている。
例えば懺悔室を訪れたメアリーはテレビのミニシリーズ『Sybil』の多重人格障害に悩む主人公のセリフで表現してみるが、激しく暴れて扉を壊してしまう。
エヴィアンとの喧嘩をリトリーに注意されたメアリーはテレビ映画『ピンナップ・ガール/裸の天使』のセリフで自分の意見を表現するが、また芝居をやり過ぎてオッパイを出そうとする。
「自己表現のために映像作品の女優を模倣し、芝居に熱が入り過ぎてしまう」というギャグなのだが、そこは素直に面白いと言える。

ただ、そこは「点」としては面白いんだけど、全体の面白さには繋がっていない。
テンポが悪くてダラダラしちゃってるし、メリハリも乏しい。スーッと進んで行き、盛り上がりが不足している。コメディーとしての爆発力も欠け落ちている。
選抜クラスの生徒たちを含めた脇役のメンツは、ヘレンとスレイターを除けば、あまり有効活用されていない。何より物語がつまらないし、中身も薄っぺらい。
最も厳しいのは、コンテストでメアリー&仲間たちが踊って喝采を浴びるのが物語のクライマックスなのに、そこの高揚感が弱いってこと。
スレイターとの恋愛劇も充実していないから、最後にメアリーと彼がキスしても全く盛り上がらない。

(観賞日:2014年3月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会