『スーパーマン4/最強の敵』:1987、アメリカ&イギリス

クラーク・ケントはスモールヴィルへ戻り、養父母ジョナサンとマーサ夫妻の住んでいた農場に赴いた。売りに出している農場の納屋に入った彼は、床下に隠しておいたエネルギー・モジュール(グリーン・クリスタル)の最後の1本を確認する。実の母であるラーナの「それを使えるのは一度きり。良く考えて役立てなさい」という言葉を胸に刻み込み、クラークはグリーン・クリスタルを手に取った。養父母の友人だったホーンズビーが来たので、クラークは「この家はショッピンク・センターにはしません。そのまま住んでくれる人に売るつもりです」と告げる。
囚人のレックス・ルーサーが採石場で働いていると、甥のレニーがスポーツ・カーでやって来た。彼はカーステレオに興味を示した監視役の警官たちを車に乗せると、リモコンで操作して閉じ込め、クラッシュさせた。レックスはレニーから「外国へ高飛びする?」と問われ、「刑務所に入ってから考えていたのは、スーパーマンへの復讐だけだ」と述べた。一方、クラークがメトロポリスに戻ると、デイリー・プラネット社は三流新聞王のデヴィッド・ウォーフィールドに乗っ取られていた。デヴィッドも、ペリーに代わって編集長に就任した娘のレイシーも、とにかく収益の出る新聞を作ることが重要という考えの持ち主だった。
テレビ会見を行った大統領は、核軍縮に関するサミットが物別れに終わったことを語った。それを教室で見ていた女性教師は生徒たちに、「深刻な国際危機です」と言い、議員たちに手紙を書くよう提案する。生徒たちが「無駄だよ」と口にする中、男子生徒のジェレミーは「手紙からスーパーマンに書けばいい」と告げた。脱走したレックスはレニーを伴い、スーパーマンの髪の毛が寄贈された博物館を訪れた。レックスはレニーに、「スーパーマンの髪の毛から細胞の構造が分かる。私の頭脳と核エネルギーで細胞を合成し、スーパーマンより強い人造人間を作る」と語る。彼は展示ケースを破壊し、髪の毛を入手した。
レイシーはクラークに興味を示し、夜のメトロポリスという特集記事を担当するよう指示する。「僕は不適任です」と困惑するクラークに、レイシーは「私に任せて。私は色んなクラブの会員だから。今夜はまず、メトロ・クラブへ行きましょう」とデートに誘う。そこへ記者のロイスが来て、スーパーマン宛ての手紙が届いたことを告げる。写真が欲しいという手紙は良く届いていたが、それは違っており、「世界から核兵器を追放して下さい」と依頼するジェレミーからの手紙だった。
レイシーは「派手に取り上げれば読者は飛び付くわ。この子を有名人にするの。スーパーマン返事を貰うのよ」と口にする。レイシーとデヴィッドは記者団を集め、ジェレミーに会見を開かせた。翌日の一面には、『スーパーマンは子供に対して「くたばれ」と言っている』という記事が掲載された。北極へ飛んだスーパーマンは、長老たちに呼び掛けた。「このままでは地球はクリプトン星の二の舞です」と彼が言うと、長老たちからは「地球は野蛮な星だ。戦争を過去の遺物とした。別の惑星へ行くがいい」「地球の運命を一人が左右すべきではない」と核兵器追放への介入に反対する意見が出た。
翌日、カメラマンのジミーがジェレミーを外へ連れ出して写真を撮影しているところへ、スーパーマンが現れた。彼はジェレミーを連れて国連の会議場へ赴き、議長と参加国代表団に発言の許可を貰う。壇上に立った彼は、この地球から全ての核兵器を追放すると宣言した。各国が核ミサイルを発射し、それをスーパーマンが巨大なネットで集め、太陽に投げ込んで破壊していく。一方、レックスはシンクタンクの核戦略専門家であるハリー・ファウラー、核兵器業者のジャン・デュボア、ロシアのロモフ将軍を集結させる。レックスは核軍備の拡大を望む3人に対し、「スーパーマンを滅ぼす」と宣言した。
レックスは3人に、「ここに私の作り出したレシピがある。これを諸君のミサイルに積み込むのだ。そうすれば、スーパーマンを滅ぼすニュークリア・マンが誕生する」と語る。レックスの培養した遺伝子を積んだミサイルがメイソン基地から発射され、スーパーマンは何も知らずに太陽へ投げ込んだ。これによって誕生したニュークリア・マンは、レックスのアジトにやって来た。だが、レックスに従うはずのニュークリア・マンは、生意気な態度を取った。そこでレックスが日陰に誘い込むと、ニュークリア・マンは動かなくなった。レックスはジミーに、「エネルギー源の太陽が無いと、彼は全くの無力だ」と説明した。
レイシーはクラークをスポーツジムへ連れ出すが、嫌な態度を取るトレーナーを見て、「私も嫌な女だったのね。良く分かったわ」と反省した。彼女はクラークに、「ロイスがスーパーマンにインタビューするのよ。良かったら私の部屋で、4人でお茶しない?」と持ち掛けた。ロイスとレイシーが部屋で待っていると、クラークがやって来た。彼は「タクシー代を払って来る」と言って部屋を出て行き、直後にスーパーマンとして窓から登場した。
クラークがロイスとレイシーに気付かれないように一人二役をこなしていると、「シャバに戻ったぜ。この声が聞こえるのはお前だけだ」というレックスの声が聞こえてきた。レックスが「爆弾でビルを破壊する」と口にしたので、クラークはスーパーマンに変身して彼のアジトへ乗り込んだ。レックスは「爆弾はお前をおびき寄せるための嘘だ。紹介したい男がいる」と言い、ニュークリア・マンと会わせる。ニュークリア・マンと戦ったスーパーマンは、大きなダメージを負わされる…。

監督はシドニー・J・フューリー、原作はジェリー・シーゲル&ジョー・シャスター、原案はクリストファー・リーヴ&ローレンス・コナー&マーク・ローゼンタール、脚本はローレンス・コナー&マーク・ローゼンタール、製作はメナヘム・ゴーラン&ヨーラン・グローバス、製作協力はグレアム・イーストン、製作総指揮はマイケル・J・ケイガン、撮影はアーネスト・デイ、編集はジョン・シャーリー、美術はジョン・グレイスマーク、衣装はジョン・ブルームフィールド、視覚効果監修はハリソン・エレンショー、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はクリストファー・リーヴ、ジーン・ハックマン、マーゴット・キダー、マリエル・ヘミングウェイ、ジャッキー・クーパー、マーク・マクルーア、ジョン・クライヤー、サム・ワナメイカー、マーク・ピロー、ダミアン・マクローホーン、ウィリアム・フートキンズ、ジム・ブロードベント、スタンリー・レボー、ドン・フェローズ、ロバート・ビーティー、ブラッドリー・ラヴェル、マック・マクドナルド、チェズロー・グロコルスキー、スティーヴ・プライタス、ジョン・ホーリス、ボブ・シャーマン他。


ジェリー・シーゲル(作)&ジョー・シャスター(画)のコミックを基にしたシリーズ第4作にして最終作。
監督は『エンティティー/霊体』『アイアン・イーグル』のシドニー・J・フューリー。
クラーク役のクリストファー・リーヴ、ロイス役のマーゴット・キダー、ペリー役のジャッキー・クーパー、ジミー役のマーク・マクルーアは、1作目からのレギュラー出演者。レックス役のジーン・ハックマンは、1&2作目に続いての登場。
レイシーをマリエル・ヘミングウェイ、レニーをジョン・クライヤー、デヴィッドをサム・ワナメイカー、ニュークリア・マンをマーク・ピローが演じている。
マーク・ピローは、この1本だけで俳優業を引退している。ちなみに彼、セリフは一言も喋らせてもらっていない。ニュークリア・マンの発する言葉は、ジーン・ハックマンの声を加工したものだ。

これまでの3作を製作したアレクサンダーとイリヤ・サルキンド親子が映画化権を手放し、今回はメナヘム・ゴーラン&ヨーラン・グローバスのキャノン・フィルムズが製作している。
ゴーラン&グローバスは、最初に予定されていた3600万ドルという予算を半額以下の1700万ドルにまで減額。これにより、VFXは前3作に比べて大幅に質を下げざるを得なくなっている。
また、ゴーラン&グローバスは、完成した134分のフィルムを90分にカットしている。
彼らはカットした映像を利用して、5作目を作ろうと目論んでいたらしい。
しかし本作品が酷評を浴びせて大コケしたため、シリーズは打ち止めとなった。

スーパーマン役を降りたがっていたクラーク・ケントは、自身が企画した映画『NYストリート・スマート』(1987年公開)にキャノン・フィルムズが出資すること&原案を担当させることを条件に続投を決めた。
で、そんなリーヴが本作品に持ち込んだのは、「核兵器反対」「世界の恒久的な平和という社会派のメッセージ。
これがシリーズの世界観に全くハマっておらず、その声高な主張は説教臭いだけで、「うるせえよ」と言いたくなる。

この地球から全ての核兵器を追放するとスーパーマンが宣言し、各国の代表が揃って拍手するってのは、心底からバカバカしい。
んなわけねえじゃん。
それが誰か1人の発言で実現できるようなことであれば、もっと早くに達成されているっての。
各国の思惑があって、核兵器を減らしたくない、手放したくないという事情があるから、核軍縮というのは遅々として進まないわけで。
そういう世界情勢、外交問題を完全に無視して、「スーパーマンが核兵器を追放すると決めたら、全ての国々が賛同し、積極的に協力し、すぐに全実現できる」という非現実的なコトにしちゃってんのよね。

いや、もちろんアメコミ物だし、スーパーマンという存在からして、非現実的ではあるのよ。
ただ、「世界征服を企む悪い奴と戦う」とか、「宇宙から来たスーパーパワーの持ち主と戦う」とか、そういう話をやっていれば、スーパーマンの世界観の中にマッチしているから、「荒唐無稽な作品」として成立するのよ。
だけど「核軍縮」という、あまりにも現実的すぎる問題を持ち込んじゃうと、スーパーマンの世界観に馴染まない。
だから、それを容易に解決できちゃうという筋書きには、ツッコミを入れたくなってしまう。
ラストでスーパーマンが世界平和について演説する様子も、バカバカしいとしか写らない。

1作目からコメディーの匂いが強い仕上がりだったが、今回もコメディーの色が強い。
あと、1作目からそうだけど、たぶん意図していないであろう部分でも、滑稽なシーン、滑稽な描写になってしまっているというケースがしばしばみられる。
例えば、レックスが働いている採石場は監視が2人しかおらず、レニーは簡単に車で侵入できている。
レニーはバカな警官2人を車に閉じ込めてクラッシュさせているけど、そんな作戦を使わなくても、たった2人しか監視がいないんだから、レックスは楽に脱走できると思うぞ。

スーパーマンが博物館に髪の毛を寄贈しているのは、なぜなのか良く分からん。
で、ツアー客が去った後は誰もおらず、警備員の姿も無く、レックスは簡単に髪の毛を手に入れている。
で、それまでのミサイルはスーパーマンがネットに集めて一気に投げ込んでいたのに、遺伝子を積んだミサイルの時は、その一発だけを太陽に投げ込むという御都合主義。
っていうか、そもそもレックスが米軍基地に易々と入り込み、ミサイル発射を実現させている時点でメチャクチャなんだけどさ。

核兵器のことで苦悩していたクラークは、ロイスが来てパーティーに誘うので「悪いが今夜は考えたいことがあるんだ」と断る。
だが、ロイスが「どうしたの?力になるわ」と言うと、「僕と一緒に、いい空気を吸おう」と言ってバルコニーから一緒に落下し、目を閉じたロイスの前にスーパーマンとして現れ、一緒に空中旅行へ飛び立つ。
いやいや、お前は悩んでいたんじゃなかったのかよ。
気分転換がしたかっただけなら、普通にパーティーへ行けよ。

スーパーマンを倒すため、それより遥かに強いニュークリア・マンをレックスは作ったはずなのに、誕生した途端、「これが彼の弱点だ。エネルギー源の太陽が無いと、全くの無力だ」と弱点を説明しちゃう。
後で分かるんじゃなくて、誕生した途端、もう弱点が明らかにされちゃうのね。
あと、そんな分かりやすい弱点を持つ下僕を誕生させておいて、「私は天才だ」とか得意げに言うなよ。
太陽が無いと動けないって、かなり大きな弱点だと思うぞ。スーパーマンを倒すのが目的なのに、昼間しか動けないし、相手が日陰に入っちゃったら手出し不能になるし。

しかも、ニュークリア・マンってレックスの頭脳をそのまま移したはずなのに、すげえバカなのよね。
で、「スーパーマンを殺す」と言っているのに、襲い掛かったと思ったら、すぐに飛び去っている。そんで、世界中を飛び回りながら、竜巻を起こしたり、万里の長城を破壊したり、イタリアの火山を爆発させたり、ニューヨークの自由の女神像を空から投げ落としたりしている。
いやいや、何がしたいんだよ。
確かに、「殺す前に楽しむぞ」とは言っていたけど、目的がブレブレになっているとしか思えんぞ。
スーパーマンを殺すために作られた奴なのに、なんで無関係な破壊活動に時間を費やすのか。

そこには、シナリオとしての裏事情が透けて見える。
というのも、単純に「スーパーマンとニュークリア・マンの戦い」というだけでは、「スーパーマンは正義の味方であり、困っている人々を助けるのが仕事」という部分を描くことが出来ない。
一応、序盤に人助けのシーンが挿入されているものの、それだけでは全く足りていないし、中盤以降のスーパーマンが人助けを何もしないってのは、都合がよろしくない。
そこで、「ニュークリア・マンが大暴れして、巻き込まれて危機に陥った人々をスーパーマンが助ける」という展開にしてあるのだろう。
ただし、「だったら最初から、ニュークリア・マンの目的を人類滅亡だったり世界の破壊だったりということにしておけよ」とは思うけどね。

「スーパーマンを殺すためにニュークリア・マンが生み出される」という筋書きの中で、「スーパーマンが人助けをする様子を描く」というノルマを達成するってのは、どう考えても無理がある。
それでも、上手く処理できないことはない。
例えば「ニュークリア・マンが宇宙の特殊な空間に人々を閉じ込め、助けたければ命を投げ出すようスーパーマンに要求する」とか、そういうことであれば、「スーパーマンとニュークリア・マンの戦い」と「スーパーマンが人々を救う」ということは両立させられるだろう。
しかし残念ながら、ニュークリア・マンはそんな頭脳的な作戦を使う奴ではなくて、かなりオツムの弱い奴なんだよな。

終盤、新聞に掲載されたレイシーの写真を見たニュークリア・マンは、彼女を宇宙へ連れ出す。
「なんでやねん」とツッコミを入れたくなる意味不明な行動なのだが、これはカットされたシーンが関係しているらしい。
実は、劇中に登場するニュークリア・マンは二代目で、初代のニュークリア・マンがレイシーに夢中で、新聞記事を見た二代目にもその 記憶が引き継がれていて、だから彼女に執心し、宇宙へ連れ出すという展開になっているらしい。

終盤、スーパーマンはレイシーに執心するニュークリア・マンを騙してエレベーターに閉じ込め、日陰で力を失った彼を月へ運ぶ。
で、月面に立てられているアメリカ国旗をノンビリと直していると、太陽が昇って力を取り戻したニュークリア・マンが背後から襲い掛かる。
そりゃあ、そうなるだろ。
なぜスーパーマンは、ニュークリア・マンが二度と力を発揮できないようにせず、エレベーターごと月へ運んだだけで「これで一件落着」みたいな態度だったのか。
サッパリ分からんぞ。

力を取り戻したニュークリア・マンはスーパーマンを圧倒し、釘のように頭をゴンゴンと叩いて地中に埋める。彼は地球へ戻り、レイシーを連れ去る。
地中から這い出したスーパーマン、最初に何をやるかというと、倒れたアメリカ国旗を元に戻す。
余裕だな、おい。
一方、レイシーはニュークリア・マンによって宇宙へ連れ去られるが、なぜか普通に生きていられる。
スーパーマンは月を移動させ、太陽を隠してしまう。
戦い終わった後、月を元の場所に戻した様子も無いんだが、いいのか、それで。

(観賞日:2013年6月2日)


第8回ゴールデン・ラズベリー賞(1987年)

ノミネート:最低助演女優賞[マリエル・ヘミングウェイ]
ノミネート:最低特殊視覚効果賞

 

*ポンコツ映画愛護協会