『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』:2021、アメリカ

アマンダ・ウォラーはベルレーブ刑務所に収監されているサヴァントと面会し、「任務に成功すれば10年の減刑。ただし、命令に逆らえばインプラント爆弾で頭が吹き飛ぶ」と説明して極秘任務への参加を要求した。彼はリック・フラッグ大佐が指揮するタスクフォースXの一員となり、メンバーのキャプテン・ブーメラン、ブラックガード、モンガル、ジャベリン、T.D.K.、ウィーゼル、ハーレイ・クインと会って輸送機に乗り込んだ。A.R.G.U.S.本部では、職員たちが生き残るメンバーについて賭けをしていた。
輸送機が島に近付くとハーレイたちは降下するが、泳げないウィーゼルは海に沈んで死亡した。上陸したブラックガードは「連絡した男だ。連れて来たぞ」と呼び掛け、待ち受けていた部隊の銃弾を浴びて死んだ。フラッグは「上陸作戦はバレていた」と撤退を要求するが、アマンダは「最重要任務よ」と続行を命じた。激しい戦いが続く中、タスクフォースXのメンバーは次々に命を落とす。サヴァントは怖くなって逃亡を図るが、アマンダが爆弾を起動させて始末した。
アマンダは反対側から上陸するブラッドスポートの第2部隊に、任務を任せることにした。3日前、囚人のブラッドスポートと面会したアマンダは、彼の娘であるタイラが万引きで捕まったことを脅迫の道具に使い、極秘任務への参加を強要した。ブラッドスポートは隊長に任命され、メンバーのピースメイカー、キング・シャーク、ラットキャッチャー2、ポルカドットマンと会った。アマンダは南米の小さな島国であるコルト・マルテーゼで1週間前にルナ将軍がスアレス長官と組んで軍事クーデターを起こしたこと、独裁政権だったエレラ家を公開処刑にしたことを彼らに説明した。
反米主義者のルナは、地球外生命体を研究する「スターフィッシュ計画」が行われていたヨトゥンヘイムの塔を手に入れた。アマンダはブラッドスポートたちに、ヨトゥンヘイムへ侵入してスターフィッシュ計画を消す任務を命じた。彼女は計画責任者のシンカーを使い、塔の中に入るよう指示した。第1部隊ではジャベリンの死を看取ったハーレイが部隊に包囲され、離れた場所を逃走していたフラッグも別の部隊に捕まった。
第2部隊が野営すると、シャークは眠っているラットキャッチャー2を食べようとする。気付いたブラッドスポートが発砲して阻止すると、ラットキャッチャー2はシャークと友達になることで彼を懐かせた。アマンダはフラッグの生存を知り、ブラッドスポートに「捨て駒だけど、まだ使える。捕まえた連中を皆殺しにして、大佐を奪還して」と指示した。第2部隊は集落に侵入し、部隊を全滅させる。だが、そこは反乱軍のアジトで、フラッグはリーダーのソル・ソリアに救われていた。ブラッドスポートはソリアを説得し、任務を成功させるための協力を要請した。
ルナはシンカーと会い、スターフィッシュ計画に関する情報を知る。「宇宙生物は宿主に入り込み、その意識を餌にして強大化する」と聞いたルナは、世界と渡り合う武器になると考えた。ハーレイが捕まったことを聞いたルナは、ドレスアップさせて屋敷に迎え入れた。彼はハーレイを絶賛し、結婚を申し込んだ。ルナはハーレイが反米の象徴だと言い、完璧な花嫁だと告げる。彼はヨトゥンヘイムについて、「化け物の実験場だ。私を非難したら、そいつも親も子供も恋人も塔に送って化け物の餌にする」と語る。ハーレイは子供も殺すという発言が許せずにルナを射殺するが、すぐに兵隊が駆け付けて捕縛された。
スアレスは大統領に就任し、ハーレイから仲間の情報を聞き出すよう部下に命じた。第2部隊は反乱軍のミルトンが運転するバスで移動し、アメリカ人を捜索する検問の兵隊を始末した。町に到着した彼らは民間人に変装し、シンカーが行き付けにしているナイトクラブへ行くことにした。シャークだけは変装しても無理なので、バスでの待機を指示された。ブラッドスポートは店でシンカーを見つけ、銃で脅して塔への案内を要求した。
アメリカ人を捜索する兵隊がナイトクラブに現れ、客に身分証の提示を要求した。ブラッドスポートはラットキャッチャー2に銃を渡し、ポルカドットマンと共にシンカーを連れて裏口から脱出するよう指示した。ラットキャッチャー2たちはシンカーをバスに乗せ、その場を離れた。ブラッドスポート、ピースメイカー、フラッグは兵隊に捕まり、護送車に乗せられた。護送の途中、彼らはハーレイが生きていることを知った。3人は兵隊を始末してラットキャッチャー2たちと合流し、ハーレイの救出に向かった。
ハーレイはスアレスの手下に拷問を受け、情報を吐くよう迫られていた。スアレスは手下に後を任せ、その場を後にした。彼女は何の情報も与えず、手下を倒して脱出した。救出に駆け付けたブラッドスポートたちは兵隊を始末し、脱出したハーレイと合流してヨトゥンヘイムに向かった。ラットキャッチャー2はネズミに監視カメラのコードを切断させ、塔に乗り込む準備を整えた。ハーレイたちは見張りの兵隊を蹴散らし、シンカーの網膜認証を使って塔へ乗り込んだ…。

脚本&監督はジェームズ・ガン、製作はチャールズ・ローヴェン&ピーター・サフラン、製作総指揮はザック・スナイダー&ウォルター・ハマダ&シャンタル・ノン・ヴォ&ニコラス・コーダ&リチャード・サックル、共同製作はサイモン・ハット&ラース・P・ウィンザー、撮影はヘンリー・ブラハム、美術はベス・ミックル、編集はフレッド・ラスキン&クリスチャン・ワグナー、衣装はジュディアナ・マコフスキー、視覚効果監修はケルヴィン・マキルウェイン、音楽はジョン・マーフィー。
出演はマーゴット・ロビー、イドリス・エルバ、ジョン・シナ、ジョエル・キナマン、ヴィオラ・デイヴィス、シルヴェスター・スタローン、デヴィッド・ダストマルチャン、ダニエラ・メルシオール、マイケル・ルーカー、ジェイ・コートニー、ピーター・カパルディー、アリシー・ブラガ、ピート・デヴィッドソン、ホアキン・コシオ、フアン・ディエゴ・ボト、ストーム・リード、ネイサン・フィリオン、タイカ・ワイティティー、スティーヴ・エイジー、ショーン・ガン、ジュリオ・セザール・ルイス、ジェニファー・ホランド、ティナシェ・カジェーゼ=ボールデン、フルーラ・ボルグ、メイリン・ン、ナターリア・サフラン、ジェレッド・リーランド・ゴア、ジョン・オストランダー他。


2016年の映画『スーサイド・スクワッド』の続編。
脚本&監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン。
ハーレイ役のマーゴット・ロビー、フラッグ役のジョエル・キナマン、アマンダ役のヴィオラ・デイヴィス、ブーメラン役のジェイ・コートニーは、前作からの続投。
ブラッドスポートをイドリス・エルバ、ピースメイカーをジョン・シナ、ポルカドットマンをデヴィッド・ダストマルチャン、ラットキャッチャー2をダニエラ・メルシオール、サヴァントをマイケル・ルーカー、シンカーをピーター・カパルディー、ソリアをアリシー・ブラガ、ブラックガードをピート・デヴィッドソンが演じている。
シャークの声をシルヴェスター・スタローンが担当している。

『スーサイド・スクワッド』の続編と書いたが、実は微妙なトコロがある。
前作で生き残ったデッドショットやキラー・クロックは何の説明も無く登場しないし、ジョーカーやカタナも姿を見せない。前作の内容が反映されているかどうかもボンヤリしている。
でもハーレイとフラッグとブーメランは既にスーサイド・スクワッドとして活動しているし、アマンダとの関係性も出来上がっている。
なのでリブートとして捉えるには、これまた微妙だ。
「前作の内容を頭に入れた上で、リブートみたいな感覚で見てね」ってことなのかね。

本来の「スーサイド・スクワッド」ってのは、アメコミの有名なヴィランを集結させた「豪華な人気のヴィラン連合」のはず。だけど前作と同じく、映画で初めて登場する連中ばかりだ。
なので、ちっとも「有名なヴィランが集結した」というワクワク感が無い。
さらに困ったことに、前作にも増して「悪党軍団」の印象は弱い。「ワルが利益のために手を組んで任務に挑む」という図式のはずなのに、「囚人」という表面的な設定で、ほぼ思考停止している。
お調子者のバカな連中が、ふざけながら暴れるだけになっている。

冒頭ではフラッグが率いるタスクフォースXのメンバーが、横並びで歩いて来る様子が画面に映し出される。見た目からしてクセの強い連中が揃っており、いかにも主人公のグループのようにアピールしている。
しかし粗筋でも触れたように、ハーレイとフラッグ以外は序盤で殺される。なので見事な出オチになっている。
ギャグとしてやっているのは分かるし、そういう悪ふざけが全面的にダメだとは言わない。
ただ、そういう遊びばかりに力を入れて、肝心なメインストーリーがパッとしないんだよね。

ウィーゼルが泳げなくて溺死するのも、ギャグとしてやっているのは分かる。ただ、彼が泳げないのも下調べせずに送り込むってのは、組織として怠慢が過ぎるだろ。
どうやら最初から第1部隊は捨て駒だったようだが、だったらフラッグを指揮官に据えるのは勿体無いだろ。他のメンバーも、無駄に能力がある奴を参加させているし。
いや、それも含めて、たぶん「出オチ」のギャグに使っているんだろうとは思うのよ。ただ、そのせいで「組織がアホすぎる」という印象が強くなるのは、問題があるんじゃないかと。
おまけに、フラッグの生存を知ったアマンダは、ブラッドスポートたちに奪還を命じるんだよね。そのせいで余計な仕事が増えてるじゃねえか。
なので、「やっぱりアホな計画だな」と言いたくなる。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』にも増して、ハーレイ・クインのキャラ設定からは「ジョーカーの恋人」という要素が完全に削ぎ落とされている。
その代わりに彼女の核となる要素が何かあればいいんだけど、特に何も見当たらない。それでも新登場キャラクターの魅力が乏しいから、前作からの続投でダントツの人気を誇るハーレイに頼らざるを得なくなっている。
しかも愚かしいことに、なかなかハーレイを新キャラと絡ませず、ずっと別行動のままで時間が経過していく。
ハーレイを積極的に絡ませれば、彼女の力を借りて新キャラを輝かせることが出来たかもしれないのに。

ヴィラン側のキャラクターに引き付ける力が何も無いってのも、大きな痛手だ。
ルナにしろスアレスにしろ、ものすごく凡庸で面白みに欠けている。
シンカーは彼らよりも見た目のクセが強いので、マッド・サイエンティストとしてヴィラン側の個性を一手に引き受けるのかと思いきや、こいつも完全に見掛け倒しで中身はスッカラカンだ。
スーサイド・スクワッドの個性を際立たせるために、あえてヴィラン側はキャラを抑えている部分もあるのかもしれない。
でも前述のように、こっちの魅力も弱いからね。

スーサイド・スクワッドの面々は、見た目でそれなりの個性は付けているし、特殊能力を持っている奴もいる。
だけど、「ほぼ出オチ」のキャラばかりになっている。大半のキャラは、銃かステゴロで戦うし。
途中で何人かは過去を語って回想シーンが挿入されるが、それもキャラの厚みには全く繋がっていないし。
頼みの綱であるハーレイにしても、シリーズ3度目の登場なので、『スーサイド・スクワッド』に比べるとマンパワーは落ちている。

終盤に入ると巨大ヒトデが暴れ出すが、その前に内輪揉めを始める誰得な展開でお茶を濁している。そもそもラスボスが巨大ヒトデって、まるで戦隊ヒーロー物みたいな展開でコレジャナイ感が強いぞ。
あと、「巨大ヒトデが町で暴れ、スーサイド・スクワッドは市民を救うために命令に背いて戦う」って、完全に正義のヒーローとしての行動でしょ。
それと、最終決戦でラットキャッチャー2をフィーチャーし、彼女の特殊能力でほぼ片付けているのに、トドメだけはハーレイに担当させるのは「なんだかなあ」と言いたくなるわ。
結局、ハーレイの立ち位置が最後まで定まっていないんだよね。
こいつをフラフラと漂わせずに上手く扱うには、ずっとコンビを組むパートナーを配置した方が良かったんじゃないの。

(観賞日:2023年6月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会