『ストーンウォール』:2015、アメリカ

1969年年6月28日、ストーンウォールで暴動が発生した。その3ヶ月前、白人青年のダニー・ウィンターズはスーツケース1つだけを持ち、グリニッジ・ヴィレッジのクリストファー・ストリートを訪れた。彼がダイナーでホットドッグを食べていると、クイーン・トゥーリーが口説いて来た。ダニーが困っていると、レイが助けてくれた。ダニーはインディアナ州の出身で、秋からコロンビア大学に行くことが決まっていた。レイに「自分を見つけたから、ここに来たんでしょ?」と言われた彼は、「家を追い出された」と告げる。するとレイは、「ここにいることが大事よ」と述べた。
レイはダニーに仲間のクイーン・コング、クワイエット・ポール、リーを紹介した。仲間のアニーがダニーを見て「ジャスティンに似てる。アンタも注意しな」と言うと、レイは「ジャスティンの話はやめて」と凄んだ。レイはダニーを食事に誘い、仲間のボブに彼の荷物を預かってもらった。コングがショーウィンドーを壊して帽子を盗むと、レイたちは拍手した。店主が出て来るとレイたちは逃亡し、ラインダンスで挑発した。警官が駆け付けたので、レイたちはダニーを連れて逃走した。
レイたちは缶詰を購入し、アパートの前に戻って食事を取った。そこへマーシャ・P・ジョンソンが通り掛かったので、レイはダニーに紹介した。馴染みの客が来たので、レイは彼の車で去った。他の面々も解散した後、ダニーは故郷にいた頃の出来事を回想する。彼の通う高校では、ゲイの異常性や危険性を警告する映画が上映された。ダニーは父がコーチを務めるアメフト部に所属していたが、レギュラーではなかった。レギュラーのジョー・アルトマンとダニーは、特に親しい間柄だった。
ダニーはクリストファー・ストリートから実家に電話して「奨学金の申請書類を送って」と頼むが、父は冷たく無視した。ダニーはレイを見つけて後を追い、路地裏で売春する姿を目撃して驚いた。そこへ警官隊が現れ、ダニーは呆然と立ち尽くす。逃げ遅れた彼は激しい暴行を受け、過去を回想する。夕食の時、妹のフィービが「今日、上級生だけが映画を見た。トルーマン・カポーティーも同性愛者なのに、何が悪いの?」と疑問を呈すると、父は不愉快そうに注意した。
父の車を借りて家を出たダニーは、ジョーと密会した。ダニーは本気でジョーを愛していたが、サラという恋人がいるジョーにとっては性欲のはけ口でしかなかった。ジョーは車内でダニーにフェラチオさせるが、友人たちに見つかったので慌てて逃げ出した。レイは怪我を追って外に座り込んでいるダニーを見つけ、仲間と寝泊まりしているアパートへ連れ帰る。レイは仮の住まいだと言い、いずれ金を貯めて引っ越す考えを語った。
フェラチオを目撃された翌朝、ダニーが登校すると噂が広まっていた。父に呼び出された彼は、ジョーが「ダニーに誘われた」と嘘を証言したことを知る。父から「お前はジョーに酒を飲ませて判断力を失わせた。処置が必要だ。助けてくれと言え」と凄まれたダニーは、無言で学校を去った。ダニーが家に戻ると、母は彼の寝室にスーツケースを用意していた。ダニーは荷物をまとめ、泣いて引き留めるフィービに「他に方法は無いんだ」と告げて家を出た。彼はジョーの家を訪れ、「なぜ嘘を?」と尋ねる。ジョーは「帰ってくれ。話すことは何も無い」と冷たく告げ、ダニーを追い払った。
ダニーやレイたちはアパートの大家に叩き起こされ、30分以内に出て行かないと警察を呼ぶと通告された。コンガはゲイバーの「ストーンウォール・イン」で踊るために、服を着替えた。コンガはダニーに、「クリストファー・ストリートでは夢は1つも叶わない」と告げた。夜、レイはダニーたちを連れてストーンウォールへ行き、「7人は無理だ」と渋る用心棒のフランキーを説得して中に入れてもらう。レイたちはダニーに、「ゲイに酒を出すのは違法だから、この辺りの店は全てギャングが経営してる。ヤクも売ってくれる。売り上げの一部を警察に渡してる」と教えた。
オーナーのエドはダニーに興味を示し、「端正なアメリカ人青年は需要が高い」と言う。レイは「彼に構わないで」と声を荒らげ、ダニーを引き離した。レイは「何があってもエドには関わらないで。元レスラーで、今は若者を男娼に仕立ててる」と警告するが、ダニーは軽く聞き流した。レイが一緒に踊ろうと誘うと、ダニーは「気分が乗らない」と断った。しかしドラッグで変な気分になった彼は、トレヴァーという男に誘われると一緒に踊った。トレヴァーはダニーに、マタシン協会の活動家でゲイの権利を求めて戦っていると語る。2人がキスする様子を見て、レイは嫉妬心を募らせた。
ストーンウォールに警官隊が突入し、客を並ばせて身分証の提示を要求した。トレヴァーはダニーに「逮捕されるのは女装のゲイか、男装のレズビアンだけだ。俺たちは、こうした差別と戦う。集会に来てくれ」と話し、店を去った。6分署のウォルター・ヒールズ巡査部長は、反発するレイを殴り付けた。新任のシーモア・パイン警視は刑事のジャック・スマイスに、「6分署は腐ってると聞いた。彼を見張れ」と命じた。レイやコンガたちは、6分署へ連行された。
ヒールズはスマイスから、「インターポールがストーンウォールを調べろと言って来た。政府公社から債券が消えたが、エドが怪しい。賄賂の件もバレるかもな」と告げられる。パインはレイを尋問し、エドについて情報を教えるよう要求した。彼は男娼だったジャスティンが殺されたことを教えるが、レイは協力を拒む。パインは名刺を渡し、レイを解放した。レイは警察署の外で待っていたダニーに不機嫌な態度を取り、「トレヴァーはベッドに誘うために活動の話をする」と告げた。ダニーは謝罪し、2人は仲直りした。
ダニーは高校卒業資格を取得するため、夜間学校に通い始めた。金が必要な彼は、リーから馴染み客である会計士のジャックを紹介される。ダニーは25ドルの報酬で、ジャックにフェラチオされた。彼がアパートに戻ると、レイが傷だらけでベッドに横たわっていた。驚いたダニーが「誰にやられた?」と訊くと、レイは「これも仕事なのよ」と泣きながら答える。「売春はやめなよ」とダニーが言うと、レイは「他に生きる道が?」と口にする。「私には安らげる場所が無い」と漏らすレイを、ダニーは抱き寄せて慰めた。
翌朝、レイはダニーがトレヴァーから集会のチラシを受け取っていたことを知り、腹を立てて部屋を出て行った。集会に赴いたダニーは、元NASA職員のフランク・カメニーの講演を拝聴した。ダニーが「将来はNASAで働きたいと思っています」と言うと、彼は「クビになった。同性愛者は政府機関で働けない。他の道を探した方がいい」と話す。ダニーはトレヴァーに、「夢が断たれた。何かを壊したい気分だ」と憤りを吐露した。トレヴァーはダニーを自宅に招き、肉体関係を持った。トレヴァーはダニーに、「しばらく一緒に住まないか」と持ち掛けた。ダニーは実家に電話を掛け、フィービにトレヴァーの住所を教えた。
ダニーはレイたちのアパートへ戻り、トレヴァーと暮らすことを伝える。レイに嫌味を浴びせられたダニーは、激しく反発した。ボブはダニーに荷物を渡し、「レイは君を案じている」と述べた。レイはダニーが働き始めた雑貨店を訪れ、「ジュディー・ガーランドが死んだ。ニューヨークの葬儀場に遺体が着いたらお別れに行くわ」と語った。夜、ストーンウォール遊びに出掛けたダニーは、トレヴァーが若い男と踊ってキスする現場を目撃した。ダニーがショックを受けて店を飛び出すと、トレヴァーが追い掛けて来る。トレヴァーが「調子に乗った。こけは間違いだ」と釈明すると、彼は「とうせ嘘をつくんだろ。薄っぺらい言葉を並べるな」と激怒した…。

監督はローランド・エメリッヒ、脚本はジョン・ロビン・ベイツ、製作はローランド・エメリッヒ&マーク・フライドマン&マイケル・フォサット&カーステン・ローレンツ、製作総指揮はアダム・プレス&クリスティン・ウィンクラー&マイケル・ローバン、製作協力はダニエル・オークレア&トレント・ケンドリック&マルコ・シェパード、撮影はマルクス・フォーデラー、編集はアダム・ウルフ、衣装はシモネッタ・マリアーノ、音楽はロブ・シモンセン、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はジェレミー・アーヴァイン、ジョニー・ボーシャン、ジョーイ・キング、ロン・パールマン、ジョナサン・リース=マイヤーズ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、マット・クレイヴン、デヴィッド・キュービット、ウラジミール・アレクシス、ベン・サリヴァン、アンドレア・フランクル、パトリック・ギャロウ、アレックス・C・ナチ、カール・グルスマン、オトージャ・アビット、ラリー・デイ、ナターシャ・マーキーウィッツ、ローハン・ミード、アティカス・ディーン・ミッチェル、マーク・カマチョ、フランク・スコーピオン、マイケル・マクナリー、アラン・C・ピーターソン、リチャード・ジュトラス、アーサー・ホールデン、トニー・カラブレッタ、ジョアン・ヴァニコーラ、ヤン・イングランド他。


1969年にニューヨークで起きた「ストーンウォールの反乱」を題材にした作品。
監督は『紀元前1万年』『ホワイトハウス・ダウン』のローランド・エメリッヒ。
脚本は『ニューヨーク 最後の日々』のジョン・ロビン・ベイツ。
ダニーをジェレミー・アーヴァイン、レイをジョニー・ボーシャン、フィービーをジョーイ・キング、エドをロン・パールマン、トレヴァーをジョナサン・リース=マイヤーズ、アニーをケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、パインをマット・クレイヴン、ダニーの父をデヴィッド・キュービット、コングをウラジミール・アレクシス、ポールをベン・サリヴァン、ジョイスをアンドレア・フランクル、ボブをパトリック・ギャロウ、リーをアレックス・C・ナチ、ジョーをカール・グルスマン、マーシャをオトージャ・アビットが演じている。

ストーンウォールの反乱はLGBTQの抵抗運動の大きな転換点となった出来事で、マーシャ・P・ジョンソンやシルヴィオ・リヴェラが暴動のきっかけを作ったとされている。
しかし多くの謎が残っており、ハッキリしていないことが多い。
例えば、それまでは警察官による連行を見守るだけだった店の客たちが、その日に限って激しく抵抗した理由は何だったのか。例えば、その日の第一分署による捜査の理由は何だったのか。
謎が多いことが噂を生み出し、様々な逸話が広まっている。

この映画が公開された時、厳しい批判を浴びた。
大きな理由は、ダニーというキャラクターの存在だ。
ダニーは家出してクリストファー・ストリートに来た新参者であり、ずっと留まるつもりも無い。秋になればコロンビア大学へ行くことが決まっているし、暴動が終わるとクリストファー・ストリートを去っている。
つまりダニーは、「クリストファー・ストリートの住人」とは言い難い人物だ。
それなのに、そんな奴を「反乱のきっかけを作った重要人物」として描くのは、正気の沙汰とは思えない。

ストーンウォールの反乱については、マーシャ・P・ジョンソンやシルヴィオ・リヴェラがきっかけということも真実かどうかはハッキリしていない。だが、もはや神格化されたような逸話となっており、そこを改変するだけでもリスクは大きい。
なのに白人青年にしちゃうんだから、そりゃあ「ホワイト・ウォッシング」としてバッシングを浴びるのも仕方がないだろう。
変えるにしても、なぜストリートに長く住んでいる黒人とかにしておかなかったのか。
ダニーをメインに据えるとしても、「反乱の目撃者」とか語り手とか狂言回しとかにしておくべきだっのたよ。

ダニーの学校や家での出来事を、回想シーンを使って丁寧に描いている。それは「ダニーの物語」を描く意味では、何も間違っちゃいない。
でもストーンウォールの反乱を描く作品としては、明らかにピントがズレている。
大事なのは、クリストファー・ストリートの住人がどんな生活を送っていたのか、どんな迫害を受けていたのか、反乱が勃発するまでにどんな経緯があったのかってことだ。
「ダニーが家を出てクリストファー・ストリートに来るまでに何があったのか」なんて、反乱には何の関係も無いのだ。

ダニーがクリストファー・ストリートに来てからの話も、ストーンウォールの反乱に向けて進んでいるとは思えない。
ダニーがトレヴァーに惹かれて関係を持つとか、レイとも関係を持つとか、金が欲しくて男娼になるとか、そんな様子を描かれても「どういうつもりなのか」と言いたくなる。
そういう様子を描くシーンに多くの時間を費やしても、それは「ダニーがゲイに対する理不尽な扱いに我慢できず、ついに爆発して」という流れには繋がらないでしょ。

そもそもダニーって、レイやコンガたちに比べると、「ゲイとしての迫害」に関する扱いが遥かにマシなのだ。
ダニーが理不尽な暴力を振るわれるシーンはあるが、それは逃げ遅れたり巻き込まれたりしているだけだ。クリストファー・ストリートで生活し、女装のゲイとして働いているレイたちとは、環境が全く異なるのだ。
レイと仲間たちは「こんな暮らしは嫌だ」と思っているが、他に選択肢が無いから仕方なく続けている。
しかしダニーの場合、選択肢は他に幾らでもあるのだ。

傷だらけでベッドに横たわっていたレイは、ダニーに「オカマはいつも殴られる。警察や客は見下すために暴力を振るう」と語る。
でも、実際にレイが客から理不尽な暴力を振るわれているシーンを見せた方が、ゲイの苦しみや悲しみを伝える力は絶対に強かったはず。
肝心な部分への意識が乏しくて、掲げているはずのテーマから遠ざかっていてる。
ダニーを主人公にしたせいで、「クリストファー・ストリートで暮らす同性愛者の悲哀や苦悩」を伝える力が著しく弱まっている。

ダニーはゲイがNASAに入れないと知り、激しい怒りを覚える。彼はトレヴァーに裏切られ、これまた強い怒りを抱く。「クリストファー・ストリートの同性愛者が受けていた理不尽な迫害」とは全く別のトコで、彼は怒りを蓄積させていく。
パインたちがストーンウォールに踏み込んでエドを逮捕したのに逃げられた後、ダニーは憤慨して投石しようとしたコンガを制止して「何もしないの?意気地なし」と罵倒される。トレヴァーが来て「やめろ」と言うと、ダニーは反発して煉瓦を店に投げ付け、暴動を煽る。
この流れだと、ダニーは個人的感情で周囲の面々を安易に焚き付けただけでしかないのだ。
「ストーンウォールに暮らす性的マイノリティーの人々の怒り」を代表して行動を起こしたわけではないのだ。

そもそも、暴動を起こした面々は、警察のマイノリティーに対する理不尽な扱いに我慢できずに爆発したわけではない。逮捕されたエドが逃げ出したのに、それを放置したことに憤慨するのだ。
そして、そんなエドが逃げたのは、腐敗しているジャックと仲間の刑事たちの仕業だ。
エドを逮捕しようとしていたパインと部下たちは、攻撃を受ける対象としては完全に御門違いと言ってもいいだろう。
ところが反乱が起きた時、そこにパインたちがいる。そして、本来ならゲイたちの攻撃を受けて然るべきエドは逃げている。
なので、その暴動は全く応援できない行動になっている。

ダニーは「ゲイが市民権を獲得するための戦い」を意識して、導火線に火を付けたわけではない。ただ暴れてストレスを発散したかっただけなのだ。
だから彼は暴動でスカッとして満足すると、さっさとクリストファー・ストリートを去る。そして彼は後のことなんて考えず、大学へ進むのだ。
ニューヨークで行われるデモ行進には参加するが、だから何なのかと言いたくなる。
最後にマーシャやボブに関して「その後」のテロップを入れるけど、虚しいだけの説明になっている。

(観賞日:2021年9月27日)

 

*ポンコツ映画愛護協会