『ザ・メッセージ』:2018、アメリカ

シカゴにある政府のラボで、大規模な爆発事故が発生した。ラボはマーティン・スタイナー博士が責任者を務め、加速器を使用した生命エネルギーの研究が実施されていた。建物は事故の後も残ったが、近くにいた多くの人々が犠牲になった。事故の真相は謎のままで、ラボは閉鎖された。爆心地から20キロ離れたイリノイ州ジュエルの町でも、残存者(レムナント)と呼ばれる人々が多く見られるようになった。10年後、高校生のロニー・カルダーが朝食を食べながら母のアンナと話している時、父のロバートは新聞を読んでいた。しかし残存者であるロバートは、しばらくすると姿を消した。
ロニーの学校では、教師のオーガスト・ビットナーが残存者の法則について講義していた。残存者には、「過去の投影に過ぎない」「同じ時間に同じ姿でしか現れない」「思考も感覚も持たず何も変えられない」という法則があった。爆発事故の犠牲者以外にも残存者が出現しているが、理由は解明されていない。ビットナーは「徐々に減って来るだろう」と語るが、ロニーは「増えている気がする」と反論した。根拠を問われたロニーは、教室の隅にいる女子生徒も残存者だと指摘した。
ロニーのクラスには、カーク・レーンという転校性がいた。ロニーは友人のジャニーンから「彼は残存者オタクで、前の学校は退学処分になったらしい」と聞き、カークのことが気になった。ロニーが家でシャワーを浴びていた時、見知らぬ残存者の青年が出現した。青年は鏡を眺め、しばらくすると消失した。ロニーが鏡を見ると、「RUN」という文字が残されていた。翌日、ロニーは授業中も青年のことが気になって上の空になり、クラスメイトの指摘で耳からの出血に気付いた。
ロニーはビットナーに「残存者のことで相談があります」と言い、自宅相談に来るよう促された。ロニーが家に行くと、ビットナーは娘のエヴァに宿題をするよう指示して無視された。「残存者との意思疎通は可能か?」というロニーの質問に、ビットナーは「出来ない。残存しているだけだ」と答えた。その夜、ロニーは前日と同じ時間に浴室で待つが、青年は姿を見せなかった。次の日、ロニーは町でカークを見掛けて尾行し、トンネルに辿り着いた。カークに見つかった彼女は、「浴室に知らない残存者が現れた」と話した。
カークはトンネルにロニーを招き入れ、空飛ぶ魚の群れを数えるよう指示した。魚は次から次に現れ、カークは「先月は16匹だった」と述べた。ロニーが「探究者なの?」と訊くと、彼は「探究心が強いだけだ。君もそうだろ。授業中も見えてた」と答えた。新しい残存者を探るための協力をロニーが要請すると、カークは断った。しかしロニーが「ビットナーの課題を手伝って仕上げる」と持ち掛けると、彼は協力を承諾した。ロニーは青年のことを話そうとした時、「ブライアン」という名前が頭に浮かんだ。
ロニーは分光写真でブライアンを撮影するため、自分に好意を寄せているチャンドラーから必要な道具や方法を教えてもらう。彼女は準備を整え、浴室でカークと共に待機した。するとブライアンが出現するが、前回とは違って顔が醜く変化した。彼はロニーに襲い掛かろうとして、姿を消した。カークは撮った写真からブライアンの情報を調べ、殺人を報じる新聞記事を見つけた。4年前、ブライアンはグリア牧師の娘であるメアリーを拉致して殺害し、その直後に自害していた。
ロニーとカークはグリアの元を訪れ、ブライアンについて話を聞く。グリアによれば、ブライアンはメアリーの学校を訪れて口論になり、その後に誘拐事件が発生していた。図書館で事件について調べたロニーは、メアリーの誕生日が自分と同じ2月29日だと知る。気付かない内に、彼女のノートには「RUN」という文字が連続して殴り書きされていた。カークは校長に呼び出され、グリアから苦情が来ていることを告げられる。牧師を訪ねた理由を問われたカークは適当な嘘で誤魔化そうとするが、校長は正直に話すよう要求した。
ロニーが高校バスケの試合を観戦していると、ブライアンが現れて次々に場所を移動した。ロニーがブライアンを追っていると、天上を突き破って校長が落下した。校長の死は自殺として処理されるが、カークはロニーの家を訪問して「牧師の件を話した。調べてくれると言ってた。校長は深入りして死んだんだ」と語った。彼は「親父が死んでから泣いてない」と言い、ロニーに父親との最後の思い出を訊く。ロニーは彼に、「あの朝、喧嘩した。そのせいで父は会社に行くのが遅れて、電車じゃなくて車で出掛けた。電車だったら、もっと東にいて無事だったはず」と語った。カークはロニーに、「残存者オタクなのは、親父が一度も現れないからだ」と話した。
アンナはカークに、もう遅いので泊まっていくよう勧めた。就寝したロニーは、ブライアンが窓に出現する夢を見た。床が凍った湖に変化し、氷が割れてロニーは水中に落下した。水中には白いワンピースの女性がいて、「ダークネス・フォールズ」という看板も脳裏に飛び込んだ。翌朝、ロバートの読んでいる新聞を見たカークは、日付が8年前だと気付いた。彼は2月29日に2人の女性が失踪した事件の記事を見つけ、「これは警告だ」とロニーに告げた。
失踪したのはクレア・ホワイトとエマ・ショウという女性で、いずれも遺体で発見されていた。ロニーとカークは情報を得るため、クレアの妹と会う。するとクレアにはブライアンという恋人がいたこと、離れたくなくてシカゴへ引っ越したことが判明した。ロニーが「遺体の発見は?」と訊くと、彼女は「死に際を見たい?」と告げた。彼女は場所が立ち入り禁止区域だと教えて警告するが、ロニーとカークは車で赴いた。2人が橋で車を降りると、「ダークネス・フォールズ」の看板が立っていた。
ロニーとカークが柵を越えて足を進めると、そこは残存者たちの町になっていた。町を歩く残存者たちは、時間が経っても消えなかった。クレアり妹が教えてくれた住所に2人が着くと、そこは爆発事故のあったアシュバーン研究所だった。ロニーたちが中に入ると、生きている男が現れて「ゴースト見物か?」と問い掛けた。カークが金を渡すと、彼は「奥へ進んで階段を下りろ」と指示した。ロニーたちが階段を下りると、大勢の見物人が集まっていた。そこへ白いワンピースのクレアが現れ、何者かに殺されて消失した。
研究所を去ろうとしたカークは、スタイナーを目撃した。スタイナーが逃げ出したので、ロニーとカークは後を追う。スタイナーは拳銃を向けて威嚇するが、ロニーがブライアンのことを教えてほしいと頼む。彼女が説得するとスタイナーは承諾し、研究所に住んでいることを教える。彼は「人は死ぬ時に残像を残す。それ以上の働きが出来れば、死者が遡る出入り口が出来る」と語り、死を目前にした被験者を集めて研究していたことを明かした。
しかし実験に失敗して巨大な穴が出現し、爆発事故が起きた。助手だったブライアンは事故で変わってしまい、クレアを殺害した。そんな説明を聞いたロニーが「他にも犠牲者はいる」と言うと、スタイナーは「スペクトル転移だ。他の人の体を使ってクレアを取り戻そうとしてる」と話す。「残存者人を殺さない」とロニーが告げると、彼は「法則はデタラメだ」と述べた。スタイナーは同じ誕生日でなければスペクトル転移は使えないのだと告げ、拳銃で自害した。学校に戻ったカークは、ロニーに「俺が君を守る」と告げる。しかし何者かがロッカーに銃を置いたため、カークは警察署に連行されてしまう…。

監督はスコット・スピアー、原作はダニエル・ウォーターズ、脚本はジェイソン・フックス、製作はポール・ブルックス&スコット・ニーマイヤー&レオン・クラランス、製作総指揮はディーパク・ナヤール&ロール・ヴァッセ&ブラッド・ケッセル&ジェフ・レヴィン&ジェイソン・フュークス&ダグラス・ジョーンズ、共同製作はジョナサン・ショア、撮影はサイモン・デニス、美術はケヴィン・バード、編集はポール・カヴィントン、衣装はヘザー・ニール、音楽はベアー・マクレアリー、音楽監修はローラ・ウェブ。
出演はベラ・ソーン、リチャード・ハーモン、エイミー・プライス=フランシス、ヒュー・ディロン、ダーモット・マローニー、ルイス・ハーサム、ショーン・ベンソン、デヴィッド・ブラウン、トーマス・エルムズ、サラ・トンプソン、スティーヴン・モロズ、マイカ・ケネディー、マリナ・スティーヴンソン・カー、カサンドラ・ポテンザ、ダニカ・フレデリック、アルデン・アルフォンソ、ロビン・デラニー、アレクサンドラ・ウィッターリング、ダーシー・フェール、エイダン・リッチー、エイドリアン・マクリーン、カーティス・ムーア、ジャクリーン・ガーティン他。


『ミッドナイト・サン 〜タイヨウのうた〜』の監督を務めたスコット・スピアーと主演のベラ・ソーンが、再びタッグを組んだ作品。
原作はダニエル・ウォーターズの小説『Break My Heart 1000 Times』。
脚本は『PAN 〜ネバーランド、夢のはじまり〜』のジェイソン・フックス。
ロニーをベラ・ソーン、カークをリチャード・ハーモン、アンナをエイミー・プライス=フランシス、マシスンをヒュー・ディロン、ビットナーをダーモット・マローニー、スタイナーをルイス・ハーサム、ロバートをショーン・ベンソン、校長をデヴィッド・ブラウン、ブライアンをトーマス・エルムズが演じている。

映画の冒頭では、「幼いロニーが窓の外を見て上空の異変に気付く」「アンナがロニーの手を繋いで励ましながら避難する」といった様子が描かれる。そこから10年後に飛ぶのに、アンナは生きていてロバートは死んでいるってのは、構成として失敗だろう。
あと、ロバートに対するアンナの思いは大切な要素のはずなのに、かなり雑な扱いなのよね。
もっと雑なのはアンナで、彼女の存在意義が皆無に等しい。
終盤に入っても、事件に巻き込まれることも無ければ、ロニーを助けるわけでもない。それどころか、ロニーに危機があったことさえ全く知らないままで終わっちゃってるのよね。

ロニーがアンナと朝食を取るシーンでは、テレビのニュースで「探究者たちの陰謀論に根拠は無い」と報じられている。ロニーがカークに「探究者なの?」と質問し、「探究心が強いだけだ」と返されるシーンもある。
だが、そもそも探究者がどういう存在なのかが分からない。それは残存者を調べているカークのような人間とは全く違うのか。
爆発事故の後、それとは無関係な残存者が増えている状況も、上手く表現できていない。
そもそも、そういう状況を描きたいのなら、「ロニーが新しい残存者を目撃する」というシーンを描き、そこから次々に新たな残存者が増えて行く流れの方がいいし。

ロニーが父への罪悪感をカークに打ち明けるシーンがあるが、それなら余計に、オープニングは「ロニーが喧嘩したせいで父が車で会社へ向かい、爆発事故に巻き込まれた」ということを描いた方がいいでしょ。
むしろ、ロニーが外の異変に気付くとか、母が励ましながら手を握って避難するとか、そういう描写はカットしたって構わない。
あと、父への罪悪感を打ち明けた夜にロニーが見る夢が、母に励まされて避難した時の出来事って、どういうことだよ。
そこは父に関する夢じゃないと、おかしくないか。

ビットナーがロニーを教室に残して課題を返却するシーンで、幼少期のエヴァと自分のツーショット写真を手元に置いている。
娘について訊かれた彼は、「つい先日のことに思える。今は君と同じぐらいの年だ」と話す。そしてロニーが家を訪れた時には、エヴァに宿題をするよう指示して無視されている。
この2つの描写だけで、「エヴァは残存者」ってのはバレバレだ。生きているなら、幼少期の写真を手元に飾ったりしないだろう。
でも、どうやら観客には秘密にして進めているつもりらしい。

研究所でクレアが見世物になっているシーンが訪れた時、「どういうこと?」と少し戸惑ってしまった。ロニーとカークは、クレアが殺害された場所を調べに行く目的で動いているのだと思っていたからだ。
振り返ってみればクレアの妹が「死に際を見たい?」と言っており、なので整合性は取れているのだが、ちょっと困惑した。
そこに関しては私の早とちりも悪いのだが、クレアだけは死に際のシーンで出現するってのが、どういうことか良く分からない。他の面々は、普通に生活している状態で出現しているのに。
あと服装を考えると、そこで殺されたわけでもないんでしょ。なのに研究所に現れるのも、これまた意味が分からない。

カークが連行された後、ロニーはビットナーに助けを求める。するとビットナーは、カークが前の学校を退学になった理由は拳銃所持だと教える。
非難されたカークは「自分を撃つためだった」と釈明するが、ロニーは彼を受け入れずにビットナーと行動する。
この辺りになると、っていうか、それより前の段階で、たぶんビットナーが何か企んでいることに気付く人は多いだろう。
そして前述したエヴァの問題に気付いていれば、「ビットナーがエヴァを復活させるためにロニーを利用しようと企んでいる」ってのも読めるだろう。

エヴァは爆発事故で亡くなっているのだが、死んだ場所はラボの中だ。それなのに、彼女はビットナーの家に残存者として出現している。クレアと同様に、死んだ場所と出現する場所は異なっている。
また、エヴァの場合、普通に暮らしていた頃の残像も、死ぬ時も残像も出現している。
どうなっているのかと。
スタイナーが「法則はデタラメだ」と言っているので、序盤のビットナーの授業で説明していた残存者の法則は全く意味が無いんだろう。でも、そうなると何でも有りじゃねえか。
残存者に関するディティールが細かい部分まで作り込まれておらず、その場に応じて都合良く設定されている印象を受けるぞ。

(観賞日:2022年11月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会